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第045房 2006年オーストラリア・オープンTV観戦記 (2006/03/07))

 

2006年01月13日 2006 全豪ドロー

2006年オーストラリア・オープンのドローが出た。例によって独断と偏見による今大会の展望を見てみよう。

ナダル、サフィン、アガシが不在の男子シングルス。
第一シードはロジャー・フェデラー。一昨年のチャンピオンにして昨年の第一シード、そして2年連続年間最終ランキングNo1として現在ATPツアーに君臨する皇帝が当然のごとく指定席についている。この山には第五シードダビデンコの他はハーバティなど地味な面々である。そんな中で光るのが2005年フェデラーに土をつけた4人の内の一人ガスケが、一回戦でこれまた先日皇帝に2006年の初敗北を与えたハースと当たる(といってもエキジビジョンだったのだが)。この一回戦は要注目である。この勝者が4回戦でフェデラーの前に立ちはだかることになるだろう。ハースは2005年のリュビチッチと似たようなポジションで今年活躍するものと如空は予想している。だがまだ10代のガスケの成長振りにも期待が持てる。

第三シードは地元の英雄ヒューイット。山の反対側からはコリアが第6シードで控えている。この山にはチェラ、フェレーロ、ゴンザレス、クレメン、モンフィスなど実力者が揃った。1回戦からキーファー対スリチャパン、グロージャン対フィリポーシスなど豪華カードが目白押しである。このタフドローを前哨戦ではまだ完全に調子を取り戻していないヒューイットが突破できるかどうか。その道程は険しい。

ボトムハーフ第四シードはナルバンディアン、去年年末のマスターズカップでフェデラーを破り、初のビックタイトルを手にしたこの実力者がいよいよGSのトップ4シードに名を連ねてきた。山の反対側にはガウディオが控える。この山には他にシュトラー、サントロ、モヤ、アンチッチ、フェラー、ロブレド、ヘンマン、ブレーク、ニーミネン、など曲者ぞろいである。ナルバンディアンがシードを守ることは決して容易ではない。ブレークが大いにチャンスのある位置についた。去年の全米に続いて大いに活躍して欲しいものだ。

第二シードはロディック、山の反対側に第七シードでリュビチッチが控える。他、マリッセ、T・ヨハンソン、ジネプリ、メルツァー、ビョークマン、ステファンキー、デントがこの山にはいる。かつてのロディックなら余裕で突破しただろうが、現状では苦戦が続くような気がする。特にQF対リュビチッチ戦が実現したとき、その勝利の行方は予想しづらい。

フェデラーは去年末のTMC同様、足に爆弾を抱えてのエントリーである。ベストパフォーマンスの発揮は今回も難しい。ライバル達はその隙を突くことができるだろうか。去年同様、男子はトップ4シードがSFでベスト4揃い踏みとなる可能性が大ではある。だがそうなった場合、フェデラー優勝の可能性が高まるだけである。ロディック・ヒューイットと他の選手との差は去年よりも縮まっていると思われる。他の選手がシード選手を破ってSFに出てきた方が決勝・準決勝は面白くなると思し、それに期待したい。フェデラー対ナルバンディアンの決勝という去年末のTMC決勝の再現も見てみたい気がするが、ナルバンディアンと再戦するならフィジカルが万全の状況であって欲しいものだ。もちろんロディックとヒューイットが打倒フェデラーを成し遂げられるなら、それが一番盛り上がる展開ではあるのだろうが。


女子は役者が揃った。

第一シードはダベンポート、過去二年最終ランキングNo1の安定した実力を誇るWTAツアーの総元締めである。しかし、長きに渡りGSタイトルに恵まれていない。去年2度もGS決勝に進みながら2度までも阻まれた。「最後にもう一つグランドスラムを取ってからやめる」という野心を心に秘めて、今回も女王としてトーナメントに挑む。しかし、この山の反対側には第八シードエナン-Hが控えている。QFで激突するであろうこの二人、2006年の女王の座をかけた戦いになるやもしれず、激戦必至である。しかもそこに至るまでにダベンポートはクズネツォワ、エナンはV・ウィリアムズを突破しなくてはならない。ほかキレリンコ、ゴルビン、杉山などいるが前出の4人の前には霞んでしまう。それほどのタフドローである。

第四シードはシャラポワ、WTAのお局様がダベンポートなら、プリンセスはもちろんこのシャラポワだろう。そのお姫様にはS・ウィリアムズが4回戦で待っている。こちらもトンでもないタフドローだ。しかもその先はおそらくはペトロワとディメンティエワの勝者が待ち構えていることだろう。彼女のSFへの道程は高く険しい。他に小畑、ハンチェコワが名を連ねている。

ボトムハーフ第3シードはモーレスモである。この山には第七シードシュニーダーを始めとして浅越、中村、ドゥルコ、サフィーナ、ミスキナがいる。比較的ドローに恵まれたモーレスモ、去年末のツアー選手権で初のビックタイトルを手にした彼女が次に狙うのはGSタイトルである。今度こそ無冠の女王の名を返上すべくオーストラリアに乗り込んできているはずだ。今回は大いにチャンスがある。

第二シードはクライシュテルスである。彼女の山には第五シードピエルスを筆頭に藤原、ヒンギス、イバノビッチ、デシー、スキアボーネがいる。QFでクライシュテルス対ピエルスという去年の全米決勝の再現になる可能性が大ではある。期待を寄せられるヒンギスではあるがこの二人を突破するのはとても難しいだろう。

ボトムハーフはクライシュテルス対ピエルスの勝者がモーレスモと雌雄を決することになるだろう。比較的楽なドローになったボトムハーフに対してトップハーフは波乱必至、ウィリアムズ姉妹にエナンと去年のGSタイトルホルダーが3人固まってダベンポートとシャラポワに挑む。ここは誰が決勝に出てくるか予想だにできない。ウィリアムズ姉妹もベルギーコンビもシャラポワもフィジカルは万全ではない。それだけに誰か一人が飛びぬけた強さを発揮して優勝するということはないだろう。第二週は様々なドラマが生まれることになる。

全豪は去年・一昨年と実に充実した大会であった。男子の方はそれに比べるとやや盛り上がりに欠けそうだが、その分女子はトップ選手たちが覇を競い合う素晴らしい大会にしてくれるだろう。熱戦を期待しよう。

2006年01月16日 ポイントトラッカーとトラックの壁打ちと

全全豪初日、V・ウィリアムズダウン、ディメンティエワダウン。ゴルビンも負けた。シード選手ではないがドキッチも負けた。強豪がひしめき合い、しのぎを削るはずだった女子シングルスは,いきなり波乱の幕開けである。ひょっとしたら今年はトップシードの第二週揃い踏みがあるかと思ったが、やはり女子は波乱になる。日本女子も初日は全滅している。森上は左に振られて、それを左足一本で返球したときに左足首をグキッと内側にぐねってしまった。如空もやったことことがあるが、あれは痛いぞ。全体重が足首を内側に折る方向にかかるからな。結局森上は3ゲームしたところで棄権した。無事であることを祈りたい。杉山もマルチネス相手のベテラン対決にいいとこなく敗退。余裕で圧勝したダベンポート、シャラポワ、エナン、S・ウィリアムズも次はどうなるかわからない。いつもながら本命不在のWTAである。
男子は順当にシード選手は勝ち残ったが、結構皆苦戦していないか。一回戦なのに長い試合が多いぞ・・・・何気なくモヤが初戦敗退している。こちらも明日はどうなるかわからない。さてこの先どうなるか。
ナルバンディアンの試合がWOWOWで放送されていたが、彼はやはり才気だったテニスをするねえ。見ていて面白い。ライジングでボールのコースを変えるのが巧みだ。アングルショットの角度が他の選手よりもさらに厳しい。ハイライトはネット際の股抜きショット。ネットに一気に詰めたナルバンディアンにタイの新鋭ウドンチョが厳しいパッシングをナルの足元に放つ。体をさばき切れないナルバンディアンはとっさに股間にラケットをセットしてそれを返球、それが絶妙なアングルショットになってウィナーになった。拍手喝采の観客に両手を上げて応えるナルバンディアン、地味な印象である彼だがようやく華が身につき始めたのだろうか。人が地位を作るのではない。地位が人を作るのである。去年末の打倒フェデラー・TMC優勝が彼に自身を与え、その自信が彼をさらに強くする。初戦はウドンチョにフルセットの大苦戦を強いられたが最終セットは6-1で圧倒だった。彼が優勝候補の一人であることにかわりはない。
ところでグランドスラム4大会の中で設備的にもっとも充実しているのがこの全豪であるが、HPも4大会中最も充実している。特にオンデマンド・スコアボード。ライブ・スコアで現在考えられる機能をほとんど盛り込んでいる。注目はPointTracker。コートの3DCGでボールのコースを表示して、直前のポイントのラリーを立体的に再現する機能であるが、これは凄い。TVの映像を見るより高低差や角度が良くわかる。今年はネットからも楽しめそうだ。
凄いといえばWOWOWの中継で流れているヨネックスのCMも凄い。ラケットだけでなくウェアもヨネックスとなったヒューイットが全身黄色尽くめで今年のCMに出ているのだが、そのヒューイットが走るトラックのコンテナの横っ腹にボールを壁打ちしながらトラックに併走するのだ。トラックはそれほど速くなく、徐行程度のスピードなのだが、それでもそのトラック、途中でカーブするのにそれでもヒューイットは続けている。それに場所はコートでなく道路だ。一見平らに見えるがコートに比べてかなり凸凹していると思うぞ。あれは凄いわ。プロ選手なら誰でも出来る程度のものかも知れないが、それでも素直に感動してしまった。ヒューイットよ、その凄さ、コートでも見せてくれ。
二日目は注目のガスケ対ハースがある。熱戦を期待しよう。


2006年01月17日 もったいないカードが1回戦で

全豪オープン二日目 一回戦 
ヒンギス 61 63 ズボナレワ
ヒンギスがズバナレワに勝った。3年間試合から離れていた人間がグランドスラムのシードNo30に勝つか普通。復帰宣言をしてからトレーニングを再開したわけではあるまい。トレーニングを再開して「これでいける」と確信をもったから復帰宣言したのだろう。しかし、快勝ではないか。ズボナレワに特にトラブルがあったという報道はない。実力で降したのだ。恐るべき女だ。6年連続で決勝に進み、三連覇したこの大会はヒンギスをして「私の庭」と言わしめる。しかし、この結果には正直驚いた。こうなってくると問題はウィリアムズとベルギー勢だが彼女の山にはキムがいる。これはかなり厳しい結果を突きつけられることになるが、誤算はここでも起こりうるのだろうか。
日本女子は藤原が敗退したが浅越と中村が初戦突破、全滅をまぬがれた。次はシード選手に当たる二人、さてもう一つ、勝つことができるか注目である。
 ヒューイット 64 26 57 76 63 ベック
危ないったらありゃしない。3セットマッチなら負けていた。第四セットは相手のサーブインフォーザマッチもあればTBにもつれもした。良くまあこの苦しい状況を乗り切ったものだ。しかし、タフドローの方がこの男を燃えさせるのかもしれないな。
 ハース 62 75 62 ガスケ
ハースが来た。ハースのテニスはかっこいい。見ていて「おお」とうならせる美しいウィナーを連発する。色々苦労していたがもう一花咲かせるかハース。
しかし、5年程前はバックハンドが片手打ちの選手はもうハードコートの大きな大会では勝てなくなり、ツアーから絶滅するのではないかと思われたが、なかなかどうして、フェデラーを筆頭にブレークやハース、リュビチッチ、ゴンザレス、スリチャパン、フィリポーシスなど素晴らしい才能が生き残っているではないか。クレーコートに特化しても、ガウディオを筆頭にガスケ、ロブレド、がいる。ヘンマンやクエルテンもまだ現役でがんばっている。こんな片手打ち同士の対戦がハードコートの上で見られるのも彼らのおかげである。これからも期待しよう。
キーファーはスリチャパンを、ダビデンコはカルロビッチを、其々フルセットの末難敵を下した。一回戦とは思えないカードが続く。コリアもハーバティもフルセットで初戦突破に苦労した。ゴンザレスは初戦を突破できなかった。そんな中で皇帝フェデラーはストレートで初戦を突破した。本人の口から「体調は完全だ」という発言があった。もう去年末の足の故障は克服したのか。それならば、もはや彼の優勝を疑う要素はなくなってしまった。それでも打倒フェデラーに挑む男達。彼らの更なる活躍に期待しよう。


2006年01月18日 全豪2006 三日目

全豪三日目のシードダウンはジネプリ他、地味な人ばかり。皆順当に勝ちあがっている。だけれどもどうも男子シード選手は苦戦が多いな。それだけATPは実力が拮抗しだしているということか。女子もストレートが多いがセットの内容は競っている。それもでもこちらの山場は4回戦からだろう。WOWOWはロディックにダベンポート、エナンである。今日は気軽に見れるかな。

2006年01月18日 ヒンギスが帰ってきた!

ヒンギスの試合を見た。明日も仕事がある。早く寝て、明日に備えなければならない。録画してあるから後日見ればよい。そう思ったが、それでも見てしまった。疲れているにもかかわらず、深夜2時から3時まで見た。見たら眠気が吹き飛んだ。TVの画面の中にはまごうことなきヒンギスのテニスが展開されていた。
WOWOWはその直前にハース対ガスケを放送していた。これも好ゲームだった。ハースが才能あふれる素晴らしいテニスをして、見ているものを魅了していた。しかし、その直後放送されたヒンギスのテニスはハースのそれを上回る、見ているものをひきつけてやまない素晴らしいテニスだった。
相変わらずの入れるだけのスピンサーブ、相変わらずのムーンボール主体のフォアハンドである。現在のビックサーブとハードヒット主体の女子テニスを見慣れたものにとってはスピード感がないかのように見えてしまう。しかし、対戦者のズボナレワは何時の間にか動かされ、オープンコートが作られ、そこにきれいにウィナーが吸い込まれていく。動かされて、コートの外に追い出され、苦しい状況になったズボナレワはセンターに戻り体制を立て直す時間を稼ぐために中ロブを上げるが、そこで粘ることをヒンギスは許さない。スルスルと前に詰めるとズボナレワの反対側に大きくあいたがら空きのコートにダイレクトでボレーを叩き込み。鮮やかなノータッチウィナーを決める。それも何度も何度もウィナーを決める。見ていて思わず歓声を上げてしまうほどの見事な攻めだ。おそらく、シングルスの試合をしている人が「こんなふうにウィナーを決めてみたい」と思うテニスだ。そして、テニスをしたことのない人、テニスを見るだけの人、テニスを普段あまり見たことのない人でも「かっこいい」と思わずにはいられない見事なテニスだ。あれこそがマルチナ・ヒンギスのテニスだ。ヒンギスがコートに帰ってきたのだ。
ズボナレワはショットの威力でヒンギスを崩したいのだが、ヒンギスは崩れない。ショットの威力はズボナレワの方が上だろうが、ラリーの主導権を握っているのはヒンギスである。ヒンギスはコートの中に入って下がらない。ズボナレワの深いストロークもライジングでさばいて切返す。ライジングで打ち返すとボールはフラットになりやすいものだが、ヒンギスのフォアはそれにヘビースピンをかけてムーンボールを返す。深いフラットなストロークをライジングからムーンボールで打ち返すことなどそう簡単にできるものではない。スピンが多くかかったムーンボールはハードヒットされたフラットドライブのショットより威力は劣る。しかし、その代わりにより厳しいコース、厳しい角度、厳しい場所にボールを入れることができる。迫撃砲を乱れ打ちするかのように厳しい場所にボールを落とすヒンギス。ズボナレワは動かされる。「ウィナーを取るためにオープンコートを作る。その為に相手を動かす。」テニスにおける大原則をヒンギスは忠実に実行しているだけである。相手のミスを待つわけでもない、ショットの威力で相手を崩すわけでもない。威力のあるショットを打つというのはその目標を達成するための手段であり、選択肢の中の一つでしかない。威力のなるショットを打つことは目的ではないのだ。こんな当たり前だが忘れられがちなことをヒンギスのテニスは実践をもって教えているようだ。
ヒンギスは攻めが早くなった。コートが少しでもあけばそこにハードヒットするようになった。ボールが浮けば、すぐに前に詰めるようになった。スライスボレーだけでなく、スイングボレーも使ってすぐに決めにかかるようになった。特にフォアのドライブボレーは見事だ。ネットより低い位置に落ちたボールをヘッドを落として強引に打ちに行く。それがワイパースイングできれいにボールを拾い上げてコーナーに吸い込まれていく。ドライブボレーというよりトップスピンボレーと呼ぶほうがふさわしい。あんなスイングボレー、男子でもアガシしかやった所を見たことはない。
ヒンギスはバックが強くてフォアが弱い。ゆえにヒンギスと対戦する選手はヒンギスのフォアにボールを集めてくる。ズボナレワもこの試合、ヒンギスのフォアにボールを集めた。だが、ヒンギスはそれを想定してフォアを鍛えてきていた。相手の深い威力のある球もライジングでさばく、フォアの逆クロスに鋭いショットを何度も打ちムーンボールだけではないのだと言うところを見せつけた。絶えずコースを変えつづけるヒンギスの配球であったが、時にズボナレワとのクロスの打ち合いにも引くことなく立ち向かい、何度も打ち勝った。「ハードヒットもいつでもできるのだ」というところをコートで存分に表現した。そしてバックハンドは相変わらず彼女の武器であることも示した。
この試合、ヒンギスが素晴らしいテニスを展開したとはいえ、ズボナレワには厳しい評価がされることだろう。ヒンギスのセカンドサーブが弱いところは相変わらずであるのにリターンから攻めなかった。得意のハードヒットの応酬も何度もあったのに、そこでヒンギスを押し切れなかった。当人にとっては不本意なテニスであったろう。ヒンギスに現在のWTAの厳しさを教えるはずだったシードNo30は完全にヒンギスの引き立て役にされてしまった。
アガシやロディックを育てたことで名高いコーチのギルバートは常々「相手のミスでも、自分のウィナーでも、同じ1ポイントなのだ。」ということを力説し、リスクを背負ってウィナーを狙うだけのテニスを暗に批判している。それはテニスと言う勝負の世界で試合に勝つためには正しい意見だ。しかし、プロテニスは観客にテニスを見せることでお金を稼ぐエンターテイメントでもあるのだ。そして観客が最も期待し、喜ぶのはラリーの末のノータッチウィナーなのだ。ヒンギスのテニスはウィナーを取りに行く。そのための手段として相手を動かしオープンコートを作るのである。きれいにあいたオープンコートにウィニングショットが吸い込まれていくシーンほどテニスファンを魅了するものはない。ウィナーを狙うテニスこそプロのテニスだ。「魅せるテニスをして、なおかつ試合に勝つ。」これがプロのテニスなのだ。男子のフェデラーが「自分のテニスは美しい」と自画自賛するその皇帝のテニスもまた、これと同じ美学に基づいている。
ベルギー勢やウィリアムズ姉妹どころか、ロシア勢のハードヒットにも抗し切れずにヒンギスは負けるだろうと如空は予想していた。本来のヒンギスの美学に基づいたテニスができないのであれば復帰などしないほうが良いと考えていた。だがヒンギスはテニスのレベルを上げて復帰してきた。それでも打倒ベルギー勢、打倒ウィリアムズ姉妹とまでは行かないだろう。だが、ストレートで圧勝した試合でこれほど見ているものを魅了する、面白いテニスをする選手は女子には他にいない。男子でもフェデラーを含めて数人しかいない。テニスを見ようという気にさせてくれるテニスだ。これこそがプロのテニスだ。試合を見終わったあと、考えが変わった。ヒンギスが復帰してくれて本当に良かったと今は思える。
表情豊かで、感情を常に発露させ、そのくせ頭の中はクレバーで、プライドが高くて、くそ生意気で、タブーの発言をわざとして物議をかもし出す目立ちたがり屋、ファンも多いがアンチも多い、好きでも嫌いでもとにかく人の気を引かねば気がすまない典型的なアイドル気質、日常の世界ではおそらくトラブルメーカーにしかならないだろう面倒な存在、しかし、コートの上では多くの人を魅了してやまない「ウィナーを狙い、なおかつ試合に勝つテニス」を展開する貴重な存在。それがマルチナ・ヒンギスだ。その存在感は今もかわらないことを示してくれた。
初戦は幸運にも恵まれた、これから先には厳しい現実も待っているだろう。それでもヒンギスのテニスを見てみたいと思う。忙しくても、睡眠時間を割いてでも、見てみたいと思うテニスが帰ってきた。マルチナ・ヒンギスがコートに帰ってきたのだ。

2006年01月19日 ピエルス敗退から始まる混乱

ピエルスダウン。去年全仏・全米・ツアー選手権で決勝にまで行った2005年ミス・ファイナリストが二回戦敗退である。2004年にウィリアムズ姉妹とベルギー勢が失速し、代わりにロシア勢が台頭してから2年以上経つが、相変わらず予想不能の混乱期にWTAはある。ピエルスは3回戦でヒンギスと対戦することを期待されていた。ヒンギスのファンは一回戦の快勝を見てもまだ素直に喜ばない。「初戦は相手の自滅、浮かれてはいけない。喜ぶのは3回戦でピエルスを突破してからにしよう。」と祝杯をあげるのを控えている。そしてアンチヒンギスの人は「どうせ3回戦でピエルスにやられるさ。」と世間のヒンギス過熱報道を冷めた目で見ていた。そんなファンの立場もアンチの立場も丸潰れにしてくれたのがピエルスさんだ。如空もヒンギスファンでありながら3回戦でのピエルス戦突破は不可能だろうと予想していた。ヒンギスが3回戦にたどり着けないことはあってもピエルスがヒンギスに当たる前に負けるなど予想だにしていなかった。去年全豪・全英で決勝にまで行った2005年ミセス・ファイナリストのダベンポートは勝ち残っているのに、なんてこった。
一方でファンの期待とアンチのひがみ・恨み・呪いを一身に背負ったヒンギスはそんな気負いを一切感じさせずに二回戦を61 61 で快勝。強い強い。またあの一回戦のような楽しいテニスを展開してのだろうか。見たいぞー。ピエルスの敗退でヒンギスはQFベスト8までは行ける可能性が出てきた。しかもそこで待っているのは間違いなくクライシュテルス。どちらもテンポの良いテニスで右に左に相手を振りまくるタイプだ。これは要注目である。ヒンギスがラリーの主導権をキムから奪い取れればとてつもなく面白い試合になる。ただし最後に勝つのはやはりキムだろうが。
日本勢の中村はドゥルコを破り3回戦に進出したが、浅越は2回戦でシュニーダーの壁を破れなかった。そのシュニーダーに中村が挑む。日本勢が一人だけ勝ち残る方が応援しやすいね。TVの放送枠を気にしなくて良いから、素直に中村を応援できる。さあ、第二週のドローに日本人の名を刻め、中村。


2006年01月20日 そしてヒューイットの敗退が混乱に拍車をかける

パソコンモニターの片隅に表示されていた全豪のライブ・スコアにヒューイットの苦戦が記されていた。2セットダウンになったが、ヒューイットはここからでも逆転するさと信じていた。第三セット、接戦が続く。リードが奪えない。ゲームが進むにつれていやな予感が頭をかすめる。TBになった。これはかなり厳しいぞ。背筋に冷たいものが走る。それでもヒューイットがTBを取った。これで流れが変わる。ここからヒューイットが2セットを連取するだろう。そう思った。しかし、流れは変わらなかった。
2006全豪オープン二回戦
 チェラ 46 46 67 26 ヒューイット
去年年末のマスターズカップ欠場は、奥さんの出産に立ち会うためだけでなく、ヒューイット自身故障を抱えてフィジカルが万全の体制でなかったことも一因である。それでもTMCの欠場者の内、最も軽症だったのがヒューイットである。フェデラーもロディックも回復しているのだ。ヒューイットも回復しているだろうと楽観していた。だが、前哨戦でも不本意な結果が続き、どうやら体調不調は回復しないまま全豪に突入したようだ。フェデラーと共に体調管理には定評のあるヒューイットにしては珍しい事態ではある。
しかし、ヒューイットよ、よりにもよってチェラに負けるなよ、チェラに。去年のあの事件、ヒューイットの態度にも問題はあったがチェラの態度にはもっと問題があったと思うぞ。原因はヒューイットにあるが、それでも責任はチェラにある。リベンジなんぞさせるべきではなかった。
だが、試合後のインタビューなどでうかがい知る範囲では、チェラの方があの事件を精神的に引きずっていたようだ。かなり後悔していたらしい。これで彼の心の中にある枷が外れたのであれば、それは意味のあることだ。今後のチェラの活躍に好影響を与えるのであればそれは喜ばしいことである。
第三シードの敗退で、皇帝フェデラーGSにおける鬼門、SFの相手はヒューイットではなくなった。さあ誰が来る。チェラのこの山に勝ち残っているシード選手はコリア、グロージャン、キーファー、フェレーロである。うむ・・・・去年、キーファーはフェデラーとGSで当たってセットを取る大健闘を二度ばかり見せている。ここはキーファーに期待しようか。フェデラーにとってはSFより4Rで予想される対ハース戦の方が山場になりそうである。
ボトムハーフではロディックとナルバンディアンが順当に勝ち上がっている。ロディックはQFで予想される対リュビチッチ戦が山だ。そしてナルバンディアンにはおそらくSFまでにブレークが立ちふさがるはずだ。
4RからQFでトーナメントの鍵を握る試合が来ることが予想される全豪男子シングルス。ヒューイットは敗退してしまった。アガシもサフィンもナダルも今回はいない。それでもそれなり盛り上がりそうな予感はする。熱戦を期待しよう。

2006年01月21日 風雲急を告げる全豪3回戦

セリーナダウン!!!勝ったハンチェコワのかわいいこと。こんな娘が欲しいものだと思う。さてさて、女子シングルスはいよいよ混迷を極めてきたぞ。ダベンポートもキレリンコ相手に3回戦突破に苦しんでいるし、エナンもクライシュテルスもフィジカルが万全ではない。好調なのはヒンギスとシャラポワの二人。もしかして決勝の組合せはこの・・・・っとここら辺でやめておこう。個人的にはクライシュテルスに優勝して欲しいしな、今回は。
ただヒンギスの二回戦をダイジェストで見たが、一回戦と違ってハードヒットをしてサーブのスピードも上げたようだ。マルチナさん、高速サーブとハードヒットを封印して一回戦ズボナレワに勝ったのかい。おそろしい人だな、相変わらず。
男子も如空の予想を裏切る結果が待っていた。アンチッチダウン、去年より好調のフェラーがアンチッチを降した。フェラーはクレー育ちのスペイン勢だが、そのストロークは打点が高くかなりフラットである。あれはハードコートでも強い。ナダルの代わりにスペイン旋風をオーストラリアに吹かせるか。スペイン旋風のもう一人はロブレドである。なんと去年より好調のブレークをストレートで降した。シードではロブレドの方が上なのであるが、やはり波乱という気にさせる結果である。
そしてガウディオがダウン。曲者サントロとフルセットの激闘の末敗れた。サントロに粘り負けたといいうところがいかにもガウディオらしいといえば、らしいといえる。
ところでセリーナを破ったかわいいハンチェコワ、確か彼女は去年の全米で杉山とのダブルスペアを解消したと思っていたのだが、いつの間にか復活しているではないか。この全豪でも杉山・ハンチェコワペアがエントリーしている。どうせなら優勝まで突き進んでくれ。あまり話題にならないが杉山にはダブルスの生涯グランドスラムがこの全豪にかかっているのだ。ダベンポートより年上の杉山である。彼女に残されているチャンスもそう何度もあるわけではない。出来ればここで夢をかなえておいてくれ。

2006年01月23日 かわりゆく顔ぶれ

ロディックダウン!!!!第三シードヒューイットに続き第二シードロディックまでも二週目に残れなかった。サフィンもアガシもナダルもいないこの状況は去年末のマスターズカップと同じ状況ではないか。勝ち残っている選手は打倒フェデラーの可能性を見出せるのだろうか。とりあえず第四シードナルバンディアンはロブレドを降して勝ち残っている。
リュビチッチが全豪タイトルホルダーT・ヨハンソンをストレートで破った。ボトムハーフのSFはナル対リュビになるのだろうか。これはこれで面白そうだが。
フェラーがサントロに負けた。サントロがGSでここまで勝ち上がるとは誰が予想しただろう。スピンだろうがフラットだろうがハードヒット主流の現代ATPで玄人好みの曲者テニスを展開するサントロ、大穴狙いの人には買いの選手だ。
トップハーフではグロージャンが素晴らしいテニスを展開してコリアを降した。コリアは肩の調子がまだ完全ではないので評価にはそれを差し引く必要があるだろうが、それでも高い打点からのフォアがさえていた。グロージャンは同じフランスのサントロ同様曲者テニスが本領だったところもあるがここにきて王道を身につけつつある。身長が低いくせにサーブが強いのも魅力だ。孫子の兵法曰く「正をもって合し、奇をもって勝つ。」ではないが、変則技による奇襲と基本技による正攻法をプレイに組み合わせるのが理想の強さであろう。その究極の完成形がフェデラーだと思うのだが、グロージャンはフェデラーの待っているはずのSFに進めるだろうか。
当のフェデラーは未だセットを落とさず優勝に向けて侵攻中。トップランカーがいないこの状況では次の対ハース戦がやはり最大の山場になるだろう。このフェデラー対ハース戦は要注目である。
女子は第一シードから第4シードまで順当に勝ち上がっている。ここまでも好試合に恵まれたが、ここからさらに白熱する。
第一シードダベンポートはクズネツォワを突破、QFでエナンと激突する。第3シードシャラポワもハンチェコワを打撃戦の末撃破、QFでペトロワと当たる。いよいよトップハーフはボルテージが上がり始めた。ボトムハーフは第二シードクライシュテルスと第三シードモーレスモが順当に勝ち上がっているが、こちらの方はヒンギスに話題の中心を奪われている。さてクライシュテルス対ヒンギスは実現するのだろうか。こちらも要注目である。
二週目に入ろうとするこの時点でアメリカ人は男女通じてダベンポートだけ、スペイン人はいない。ほんの数年で様変わりするテニス界の勢力地図、ロシア勢、アルゼンチン勢のこの影響力を誰が予想できただろうか。両勢力が望むのはもちろん全豪タイトルである。

2006年01月24日 2006全豪男女ベスト8出揃う。

モーレスモはシコラーとなった。2006年全豪4Rで注目の美少女選手バディソワ相手に中ロブ気味のムーンボールとバックハンドスライスでひたすら繋ぐだけのテニスをした。バディソワは若き未熟さがもろに出た。このゆるいつなぎ球を打ち込めず、ミスを重ね、自滅していった。61 61 でモーレスモの圧勝、ただムーンボールとスライスを相手コートに入れただけでこの圧勝である。WOWOW解説の遠藤愛は「ビターな結果」と言った。苦くて辛口の感触、バディソワには確かに酷な結果となった。シコラー相手の自滅ほど腹立たしい負け方はないからだ。しかし、モーレスモ、その豪快でりりしい姿とは裏腹にえぐいことするねえ。格下のチャレンジャーが格上の選手相手に戦って、万策尽きてミス待ちのシコラーとなるのはわかるが・・・・。モーレスはこの試合、ガンガン攻めても勝てただろう。であるのに格下の若いチャレンジャー相手に自滅させる作戦を取るのかい。体力を温存したかったのか?実は故障を抱えていて攻められなかったのだろうか?会場にモーレスモのテニスを見に来ていた観客たちはシコラーとなったそのモーレスモをどんな目で見ていただろう。
そのモーレスモを神経質にさせ、心ひそかに復讐の機会をうかがわせる相手がモーレスモの反対側から勝ちあがっている。その名はヒンギス。7年前、この全豪決勝でモーレスモを「男女」と言い放ち、その上で初のGS決勝に進出したモーレスモを粉砕、二重の意味でモーレスモの心に傷を負わせた恐れも遠慮も知らぬ元女王である。
そのヒンギス、4Rで地元ストーサーと対戦、第一セット61で圧倒するも第二セットは追い上げられ、ブレーク合戦の末、TBに持ち込まれる。肩で息する苦しいヒンギスはTBでも大苦戦、先行を許し、あわやと思われたがこつこつとポイントを取り返し、ピンチを何度もしのぎ、ついに10-8でTBを制して勝利した。
ヒンギスには天運が今の所味方している。初戦の相手ズボナレワは御しやすく、2R、3Rも圧勝、最初の難関といわれたピエルス戦を回避して、調子を上げ続ける。そしてQFに入る前に苦しい試合も経験して、接戦を勝ちきるすべも思い出せた。グランドスラム復帰戦としては理想的な形で次のQFを迎えることができる。元女王ヒンギスは次のQFでようやくNo1経験者にしてGSタイトルホルダーである「女王」の一人に挑戦する。
WTAに現在君臨する女王の内の一人、キム・クライシュテルスは下半身に故障を抱えながらの参戦である。4Rで粘り屋スキアボーネに苦戦させられたが、それでもストレートで勝利、ヒンギスの挑戦を受けて立つ形でQFに臨む。さてキム、3年も実戦を離れていた「元女王」に現役バリバリの「現女王」が負けるわけにはいかないぞ、試合に出るからには故障を負けの言い訳にしてはいけない。好調ヒンギスに対して勝ちきれるかクライシュテルス。試されているのはヒンギスでなくキムの方である。そしてそのキムの向こう側でヒンギスとの因縁の対決を待ち構えているモーレスモも今大会は試されている。無冠の女王が真の女王になるか試されている大会であるのだ。
という訳で出揃った女子ベスト8QFの組合せは
 ダベンポート対エナン-アーデン
 シャラポワ対ペトロワ
 シュニーダー対モーレスモ
 ヒンギス対クライシュテルス
である。
エナンとクライシュテルスがまたもや反対側の山にいるということがこの二人の因縁を物語る。そしてヒンギスがダベンポートと反対側の山にいることも。テニスの試合にもめぐり合わせというものがある。同じツアーを回り、同じトーナメントに出ているのに対戦が少ないもの同士もいる。一方で同じトーナメントに出ることがめったにないのになぜか良く当たるもの同士も多い。そしてなぜかGSの決勝でよく当たるというめぐり合わせも。そのめぐり合わせがここでも生きるのか。
男子のベスト8QFは下記の通り
 フェデラー対ダビデンコ
 キーファー対グロージャン
 サントロ対ナルバンディアン
 リュビチッチ対バクダティス
ハーバティは勝負シャツである背中に二つの穴が開いたシャツに最終セット着替えて必勝をきっしたがそれでもフルセットの接戦を制したのはダビデンコであった。
そして、この大会、男子でもっとも期待されていた試合は期待にたがわぬ好ゲームとなった。
2006全豪男子シングルス4R
 フェデラー 64 60 36 46 62 ハース
WOWOWよ、おそらくは今大会男子ベストマッチになるであろうこの試合をアナログでは中継・放送しないのか!それはないだろう!受信料返せ!

2006年01月25日 2006 全豪QF(その1)

ナルバンディアン 75 60 60 サントロ
曲者として名高いサントロのテニスを一試合まともに見るのは実はこれが始めてであった。しかし、本当にフォアの両手打ちでスライスしか打たないのね。同じバックハンドの両手打ちはフラットなのに不思議な選手だ。ストロークだけ左利きの選手と試合をしているかのようだ。それでもナルバンディアンはサントロのバックにボールを集め続けた。あのフォアのスライスは皆いやなようだ。
サントロはもっと守りの選手かと思ったが、実際はガンガンネットに出る攻めのプレーヤーだった。サントロのネット対ナルバンディアンのパスの対決はなかなか見ごたえのあるいい勝負だった。後半のスコアは一方的だが、ナルバンディアンはスコアほど楽をしていなかった。
 バクダディス 64 62 36 46 63 リュビチッチ
おお、バクダディスが勝っている。ロディックに続いてリュビチッチまで突破した。素晴らしい。とてもロディックやヒューイットより年下とは思えない親父くさい顔をしている。だが動きはやわらかい。そしてショットは鋭い。カウンターショットでロディックやリュビチッチのようなハードヒッターをカウンターショットでしとめていく。さて、評判のキプロス応援団と共にどこまで行くのか注目しよう。
 シャラポワ 76 64 ペトロワ
この二人は接戦になるね。大ブレーク合戦でお互いにサービスをキープさせてもらえない。第一セットTBも当初ペトロワが押していたのだが、崩れないシャラポワが最後には逆転した。第二セットも取り、去年に続いてベスト4SFに進出を決めた。
 エナン 26 62 63 ダベンポート
WOWOWアナログの中継は第三セット序盤からだった。互いにゲームを取り合った第一・第二セットはいらないと言うのか。まったく。最後には疲れの見え始めたダベンポートの守りをエナンの鋭さが断ち切った。
現No1を降してエナンが勝ち上がってきた。こうなるとボトムハーフの方はやはりクライシュテルスが上がってくる運命になりそうだ。しかし、エナンの前にシャラポワが立ちふさがる。去年のグランドスラム女子シングルスの優勝者は皆、その過程でシャラポワと対戦している。それも全豪Sウィリアムズ、全英V・ウィリアムズ、全米クライシュテルスは3人そろってSFでシャラポワとあたり激戦を繰り広げている。だが全仏チャンピオンのエナンだけはSFより早い段階であたり、比較的楽に勝った。去年楽した分、今年はシャラポワに苦労しそうな予感がするが、勝敗の行方はいかに。
更なる熱戦を期待しよう。

2006年01月26日 2006 全豪QF(その2)

2006全豪QF
モーレスモ 63 60 シュニーダー
クライシュテルス 63 26 64 ヒンギス
ヒンギス凄いなぁ・・・・負けたとはいえ、第二セットを取っている。6ゲーム連取だが、それもキムの自滅でなく、自分のテニスをしてなおかつ取った。最終セットもマッチポイントをしのいで4-5まで追い上げている。今後に期待の持てる内容だったのではないか。WOWOW解説の遠藤愛がヒンギスの敗れ去る姿を見て涙ぐんで声を詰まらせていた。リスクを承知でカムバックしたその勇気をたたえていた。それでも基本的にはクライシュテルスの横綱相撲であった。これはこれでよい結果であったと思う。
これで女子SFはエナン対シャラポワ、クライシュテルス対モーレスモである。シャラポワとエナンの対決は見ものだぞ。共にタフなメンタルの持ち主、闘争心の塊のような二人がこのグランドスラムの高いラウンドで当たる。どちらも一歩も引かないだろう。地力で勝るのはエナンだが、その地力で勝る相手と何度も接戦を繰り返して、時には勝ち、そして成長してきたのがシャラポワである。まさに死闘となる予感がする。
 フェデラー 61 36 76 76 ダビデンコ
フェデラーはまたしても苦しんだ。フルセットではないが、最後の2セットは連続でTBだ。WOWOW解説でも良く言われているが、フェデラーと他の選手との差は2005年年頭に比べるとこの2006年頭において縮まって来ているのだろうか。そしておそらく次のSFも楽には勝てそうにない予感がする。
毎年思う。テニスマスターズカップ(TMC)と全豪はつながっていると。TMCと同じ展開になることが多いからだ。去年はハードコート四天王フェデラー・ロディック・ヒューイット・サフィンがランキングトップ4としてトップ4シードとなり、そのままベスト4SFで激突した。TMCで起こった展開がそのまま全豪でも再現されている。毎年、この傾向がある。今年もそうだ。TMC同様、全豪男子シングルスはトップ選手の欠場および2・3シードの早期敗退で同じような状況になった。同じように期待はしぼんだが、試合を見ていると中々どうして好試合が続いているもんだ。
 キーファー 63 06 64 67 86 グロージャン
ベッカー引退後のドイツテニスをトミー・ハースと共に牽引するキーファーであるが、その実力のわりにグランドスラムでは結果が出ていない。まるでアルゼンチンのナルバンディアンのような存在である。それがようやくここまで来た。自身初のGSSF進出である。フェデラー相手に大いにその才能を発揮してくれ。
しかしこのQFの試合は凄まじい。地味な二人による派手なフルセットマッチである。共にテクニシャンの二人だ。審判とグロージャンが少しもめたらしいが(キーファーがラケットを投げたことが原因)、試合の内容はいいものであったことだろう。であるのにWOWOWさんよ、これをアナログでは放送しないのかい。一昨日のハース対フェデラー未放送といい疑問の残る試合のチョイスだね。
第一週の3時間で3試合を編集して放送するというスタイルはなかなか良かった。時間的にも観戦の集中力の維持的にもデジタルの生放送を朝から晩まで全て見るわけには行かないからね。でももう第二週、QFだよ。シングルスは男女合わせて4試合だけ。ならばQFの二日間は時間を一時間延ばして4試合全て放送するべきだろう。
もう一つ、WOWOWアナログ放送の3試合は女子2試合に男子1試合。なぜ?男子2試合の日が隔日であってもよいではないか。テニスみたけりゃデジタル契約しろってか。NHKみたいじゃないか。せめてQFは4時間4試合にしてくれ。
これで男子SFはフェデラー対キーファー、ナルバンディアン対バクダティスである。地味ジャー。フェデラーがいなければ誰も見なくなるのではないか、このSF。フェデラーの第一シードにしてNO1ランカーの責任感を強く感じる
明日からはシングルスは全試合中継放送だ。
更なる熱戦を期待しよう。

2006年01月27日 決戦は木曜日
グランドスラムは二週間にわたる男女同時開催の4大大会のことである。
GSにおける男女シングルスの日程は通常二週目準々決勝(QF)から、
火曜日 女子QF
水曜日 男子QF
木曜日 女子SF
金曜日 男子SF
土曜日 女子F
日曜日 男子F
となっていた。今でもフレンチ・オープンとウィンブルドンはこの伝統を極力守ろうと努力している。しかし、ナイター設備を持ちナイトマッチを日中とは別チケットで運営するUSオープンは近年この伝統のスケジュールを崩している。土曜日のデイセッションに男子シングルスSFを行い、ナイトセッションで女子シングルス決勝を行う。所謂「スーパーサタデー」で観客の増員とTV中継の視聴率アップをねらい、狙い通りの成果を上げている。さすがはショービジネスの国である。だが大事な試合を後半にずらすこの
スケジュールは雨の影響を受けやすく、運営には気を使う。
さて、南半球で真夏の真っ只中で行われるオーストラリア・オープンは大事な試合を前倒しする。金曜日に行われるはずの男子SFをUSオープンとは逆に木金のナイトセッションに振り分け、女子SFを木曜日のデイセッションに組む。「スーパーサーズディ」方式である。
去年の「スーパーサーズディ」は凄かった。シャラポワ対S・ウィリアムズ、ダベンポート対シュニーダー、そしてサフィン対フェデラーと全てフルセット、しかもシャラポワとフェデラーはマッチポイントを握ったにもかかわらず負けていった凄まじい試合だった。そして長かった。WOWOWは一日中テニスを放送しっぱなしだった。良くぞまあ、放送枠を延長して録画予約していたものだと、自分をほめたものだった。
そして今年の「木曜日」も去年と同じ、「スーパー」な一日になった。
2006全豪シングルスSF
 エナンH 46 61 64 シャラポワ
シャラポワ・・・・・またGSのSFでフルセットの末負けた。それも相手を成長させ、目覚めさせて負けた。エナンは第二セットから突然火がついた。去年のセリーナと同じ展開だ。エナンはそれほど感情を表に出さないタイプだが、それでもQFのダベンポート戦とこのSFのシャラポワ戦でモチベーションが上がったことが見とれる。今年もリンジーの局とマリア姫は女王たちの牙を研ぐことになるのか。
エナンが勝ったことにより、決勝はエナン対クライシュテルスになると確信していた。そういう運命の元に二人はあるのだと勝手に思い込んでいた。そしてまたキムは決勝で負けるのだろう、なぜだかわからないが。しかし、悲劇は決勝でなく準決勝で起こった。
 モーレスモ 57 62 32(棄権) クライシュテルス
キム・クライシュテルスはファイナルのこれから勝負というところでコートに足を取られて転倒し、足首を捻挫、その後それが理由で棄権した。TV中継されている試合でもGSのSF、Fクラスのラウンドで、協議中の怪我で棄権と言うシーンは始めてみた。ここ数年好ゲームが続く充実した大会となっている全豪であるが、開催時期とサーフェイスについては選手たちからかなりクレームが出ている。それでも条件は皆同じだからといって毎年過ぎていっているが、今回のキムの転倒はさすがに波紋を起こすのではないかな。元彼ヒューイットもブーブー言っていることだし。
そして、やはり「スパーサーズディ」の男子SFは毎年ドラマが待っていた。
 バクダディス 36 57 63 64 64 ナルバンディアン
ナルバンディアン、ここまで来てダウン。GS初タイトルを期待されていただけになんとも残念だ。しかし、バクダディス、ノーシードでロディック、リュビチッチ、ナルバンディアンを連覇して決勝に挑む。ついこないだ大阪のスパージュニアで見たときはそれほどの選手とは思えなかったのだが、男の子は突然化けるねぇ。
今日もWOWOWは一日中放送しっぱなしであった。この長い試合、3試合ともTVにかじりついてライブで見ている人もいるのだろうな。うらやましいことである。一日一試合見るのが精一杯だ。来年はこの決戦の木曜日を休みにしよう(←あくまで希望)。明日は幸いフェデラー対キーファーの一戦だけ。早く終ればハース戦を録画放送してくれるかもしれない。もっとも、如空はこのキーファー戦も長引くと見ているが。


2006年01月27日 凡庸な金曜日

なぜか知らんが毎年全豪準決勝から決勝にいたる1月の最終週というのは仕事が忙しい。ろくに録画を見る暇もない。毎年ここらあたりは如空的に消化不良だ。
そしてこれも毎年のことだが、「スーパーサーズディ」の翌日の金曜日の全豪男子シングルスSFは今一つ盛り上がらない。
全豪男子シングルスSF
 フェデラー 63 57 60 62 キーファー
お約束どおり、キーファーは1セットだけ取ってフェデラーの前に敗れた。フェデラーから1セット取るだけでも凄いことである。だが・・・・ハースとダビデンコがかなりフェデラーに肉薄しただけに、物足りない印象がある。キーファーはかなりテニスのタイプがフェデラーに似ているのだな。だからフェデラーは圧倒できないけど、同時に油断するとやられるという危機感も持っていないのではないだろうか。なぜなら同じタイプであればこそ、力の絶対的な差を二人とも実感しているだろうから。
さあ、男子シングルス決勝はバクダディス対フェデラーとなった。若いくせに親父くさい顔、親父くさい腹筋をしているという意味でフェデラーを上回るバクダディスであるが、果たしてテニスの内容でもフェデラーを上回ることが出来るだろう。あのバクダディス、どこかで見たことがある顔だなあと思っていたら大阪の梅田地下街や難波の高島屋前で民族音楽をストリートパーフォーマンスで魅見せているジプシーだか南米系だかの人々に顔が似ているのだ。バクダディスもポンチョなんか来て笛でも吹けば似合うのかも。
今年最初のGS決勝戦が近づいてきた。


2006年01月28日 禍福は糾える縄の如し

今年の全豪は男子より女子の方が充実していそうだった。事実途中までそうだった。しかし、結末がこれでは・・・・・
全豪女子シングルス決勝
 モーレスモ 61 20 (棄権) エナン
GSの決勝で棄権が発生する場面をはじめてみた。GS優勝者がその過程で3試合棄権による不戦勝だという大会もはじめて見た。肩の痛みを和らげる為に服用していた痛み止めの薬の副作用で胃を悪くした。結果エナンは胃の痛みで足が思うように動かなくなり第二セット途中で棄権を決心したという。
第一セット、モーレスモの集中力は凄まじかった。迷いがまったくなかった。エナンのバックにヘビートップスピンを集めてエナンを攻めさせなかった。フォアの打ち合いになっても負けずに打ち勝った。ネットでの安定感も抜群だった。取るべくして取った第一セットだった。
バックハンドが片手打ちの選手はバックに高く弾むボールの処理にやや手こずる。それは男子のトップフェデラーから趣味でテニスをしている人まで共通の弱点である。ただ、それを克服するために高い打点で打たされるときはスライスでしのぎ、可能ならば打点を前にしてライジングで高く跳ねる前に打つ。それが出来ずにムーンボールで押し出されたあたり、やはりエナンは不調だったのだろうか。
ちなみにこの片手打ちバックの選手に対して高く弾むムーンボールをバックに集めるというのは誰でも思いつく作戦であるが、実行することは意外に難しい。右利き同士の対決であれば、相手のバックにボールを集めるためにはバックハンドのクロスかフォアハンドのストレートか逆クロスを打たなければならない。バックでムーンボールを打つこと。フォアの逆クロスでムーンボールを打つこと。これって簡単ではない。どちらもフラットになりやすいからだ。それはプロのトップ選手でも同じ傾向にある。それを難なくやってしまうモーレスモはやはりスピンボールの使い手としてかなり高いレベルにあるのだろう。
ストロークは極厚グリップのヘビートップスピン、そのストロークからネットに出てポイントを取る。この組合せはとても珍しい。ネットに出るのが好きな選手はグリップが薄くてストロークがフラット気味、タッチのテニスをする選手が多いからだ。男子でもあまり見られない。誰にもまねできないモーレスモ独特のスタイルである。他人と同じであることをよしとしない、王道より覇道を選ぶ、そんなサントロやグロージャンやガスケなどと同じ、フランス人選手たちの伝統の血がモーレスモにもやはり流れている。リターンではバックだけでなくフォアでもスライスのブロックリターンを見せる。そしてリターンからのチップ&チャージも見せる。流れるようなネットへの動きは美しい。スタッタードステップと呼ばれる、徐々にスタンスを広げて、重心を落としながらネットに詰める独特のネットアプローチはかつてのラフターを彷彿させる。女子選手の多くはネットでボレーするとき、脇を締めて両肘を前に突き出し、ラケットを顔の前に構えて、腰高に前傾姿勢になる。しかし、モーレスモはネットにつく時、脇を空けて肘を両側に広げてラケットを寝かせてバックハンド面を上に向けて、スタンスを広げて腰を落とし、上体を起こしてネットに構える。あれこそ、純然たるネットプレーヤーの構えだ。回転系ストロークと男性的なネットプレー、この組合せによるオールラウンドプレー、モーレスモオリジナルの見事なテニスがここに完成した。
モーレスモは結果として3回戦対クライチェック戦、準決勝クライシュテルス戦、決勝対エナン戦の重要な3試合を棄権で勝ちを拾った。準々決勝のバディソワ戦は相手の自滅だった。この結果は全て相手に責任のあることでモーレスモにその原因があるわけではない。それでもこの優勝にはやはりケチがついてしまうだろう。「真の実力で勝ち取った結果なのか」と。試合後、TV中継の実況者や解説者はそんなモーレスモに気を使って、まるで腫れ物に触るかように、モーレスモの優勝の正当性を主張し続けていたが、そこまで気を使う必要はないのではないか。けちはけちでつければよい。テニスはマッチポイントを取ってからが苦しいスポーツだ。マッチポイントを経ずに手に入れた勝利の価値は、やはり薄れてしまうというのが事実だろう。本人は今後、そのことで色々言われるだろう。だがそれは、次のグランドスラムタイトルをしっかりと取って、結果をもってして周囲を黙らせればよいのだ。少なくともエナンはそうしてきた。モーレスモにだって出来るはずだ。
モーレスモは怪我で何度も泣かされた選手だ。2年前の全豪でも絶好調でベスト4に進みながらも練習中の怪我で棄権を余儀なくされた。そんな彼女が、去年末にツアー選手権を取ったと思ったら、今度は相手に怪我や不調が一気に押し寄せて、あれとあれよいう間に全豪で優勝まで上り詰めてしまった。運の良し悪しは順番で持ち回りだ。禍福は糾える縄の如し。そんなことを改めて感じさせられた決勝戦だった。


2006年01月29日 再び皇帝の挑戦がはじまる。

2006年全豪男子シングルス決勝
フェデラー 57 75 60 62 バクダディス
フェデラーまた泣いた。ウィンブルドンの優勝時以外ではじめて泣いたところを見た。
去年負けたのはたったの4度、しかし、そのうちの二つがグランドスラムの準決勝、一つは3連覇がかかりおそらくはウィンブルドン並みに重要視していただろうマスターズカップの決勝だった。ウィンブルドン・USオープンを圧倒的強さで優勝していながら、その他の大会で無敵の存在でありながら、たった4敗しかしていないにもかかわらず、去年は不本意な一年の結果だったのではないだろうか。そんな中ですがり付きたいのは結果だ。欲しいのは結果だ。その結果を手に入れた。その感情はおそらくフェデラーにしかわからないものだろう。表彰式のスピーチで、彼は感極まって言葉が出なくなった。
第一セット第二セットは際どい接戦だった。フェデラーは確固たるゲームプランを立てずにこの試合に臨んだのだろうか。それとも、フェデラーの目論見を崩してしまうほどにバクダディスのテニスが素晴らしかったのだろうか。とにかくフェデラーのテニスは不安定で、逆にバクダディスの高いパフォーマンスを発揮した。特にバクダティスのリターンを含むカウンターショットに冴えがあった。あのカウンターショットを封じる攻めを試合中に見出せたことがフェデラーの勝機だった。そこからはフェデラーがゲームをひたすら連取した。途中バクダディスが足を攣るシーンがあったが、それは大局に影響を与えるほどのものではなく、順当にフェデラーは勝利した。
4回戦対ハース戦、QF対ダビデンコ戦、SF対キーファー戦、そしてファイナルの対バクダティス戦とどれもセットを落とし、相手を圧倒することが出来ず、苦しい第二週であった。ロディック・ヒューイット・アガシ・サフィン・ナダルなどのビックネームが相手ではない。そこでこれだけ競る試合になるというところにATPツアー全体のレベルの底上げが感じられる。今年はフェデラーにとって厳しい年になるだろう。しかし、それでも、苦しみながらでも、さらに自らを高め、勝つ方法を試合中に見つけ出し、そして最後に必ず勝つ。そんな皇帝のテニスをいつまでも見ていたい。そう思わせる2006年の全豪男子シングルスの結果だった。

年間グランドスラムを狙う権利は全豪優勝者にのみ与えられる。フェデラーはその権利を手に入れた。そして、生涯グランドスラムを狙う資格も手に入れている。去年より厳しい状況になってきているATPツアーの中で、皇帝フェデラーは生涯グランドスラムと年間グランドスラムを掛けて、半年後に全仏に挑む。皇帝の覇業への挑戦を今年も見守ろう。


2006全豪雑感 女子編

全豪オープンで考えたことをつらづらと綴る。

ヒンギスがミックスダブルスで優勝した。ペアはダブルスの名手として名高いインドのブパシである。意外なことだったのだが、ヒンギスはミックスのグランドスラムタイトルは初獲得なのだそうだ。女子ダブルスでは生涯グランドスラムを達成しているヒンギスである。今度はミックスでもグランドスラムの達成を狙うのか。そうすればシングルスでリトルスラムを既に達成しているヒンギスは、後全仏女子シングルスのタイトルを取れば、元祖マルチナであるナブラチロワが達成した「全種目グランドスラム達成」、つまりシングルス、ダブルス、混合ダブルスの三つの競技でグランドスラムタイトルという偉業を成し遂げることになる。だけどなぁ・・・・ヒンギスの全仏シングルス優勝は混合ダブルスのグランドスラム達成より困難なのだろうな・・・・・期待せずに見守ろう。
それより、ヒンギスのダブルスが見たい。ウィンブルドンならGAORAが中継してくれる。あるいはGSで杉山ペアが高いラウンドまで勝ち残って、そこでヒンギスペアと当たるとどこかが中継してくれるかもしれない。いや、待てよ、ヒンギスがフェドカップのスイスチームに選抜され勝ち進んだらJスポーツで見られるかも。とにかく、混合でも、女子でもどちらでもよい、ヒンギスのダブルスが見たいぞー。

今回の全豪はWOWOWにとってベテラン岩佐アナ抜きで中継するはじめてのGS大会中継でもあった。全体的に上手くいっていたようだが、岩佐氏の名コンビだった解説の柳恵誌郎氏は時折、話のかみ合わない実況担当者のコメントにいらいらしながら受け答えをしていた。相手に合わせることも大事だよ、柳さん。岩佐氏がテニス中継にとって如何に優れた実況者であったかを知る。

その岩佐氏は仕事をしていないので、自身のHPでブログの記事をせっせと更新している。内容はもちろんテニスだ。後でその岩佐氏のブログを読むと、時にこの僧房の如空の記事とかぶっていることがあってあせらされる。今回もモーレスモの優勝に対して「マッチポイントを経ずして得た勝利の価値は下がる」と記事にして「これを指摘したのはこの如空だけだろう」と自画自賛していたら、どっこい、岩佐氏のブログに先にかかれていた。「マッチポイントなき優勝」と。やられた、やられた。

もう一つ、岩佐氏のブログで気になるところがある。例の1999年ヒンギスのモーレスモに対する「男女」発言に関する詳細を記事にしていること。他のブログやサイトを読むと経緯がかなり歪曲・誤解されている部分がある。如空も、知っている限り正確な内容を記事にしようかとも思ったのだが、微妙な問題なので触れにくかった。しかし、岩佐氏のところで語られてしまったのは良いことかもしれない。誤った事実が流れるよりは。そう、あの「Half Man」つまり「男女」とヒンギスが語ったのはレズピアンであるモーレスモを揶揄したと報道されたことに、事件は端を発しているのである。ただ、ヒンギスはあくまでそれを否定している。そしてヒンギスだけでなくダベンポートも同時に同じトラブルに巻き込まれている。発言の真意がどこにあったか、発言自体あったかどうかは色々な説があるが、報道によりモーレスモが傷ついたことは事実である。原因はヒンギスにあるが、それをモーレスモに対して残酷な形で報道したマスコミに責任がある事件だった。
ちなみにヒンギスの人生はまさに「口は災いの元」を地で行く、いたるところで余計な一言が端を発っしたトラブルに見舞われている。誤解もあったろうが、確信犯的にタブーを口にするところも多々あった。その性格は大人になった今でも健在なのであろうか。ちなみに例の「男女」発言もヒンギスはわざと言ったのだと如空は想像している。

余計な一言と言えば、モーレスモのGS初優勝を決勝戦棄権の形で実現させてしまったエナンは試合後のインタビューでわざわざ「試合前から勝てると思わなかった」と言ってしまった。ネットでその発言を知ったとき「余計な事を言ってまたマスコミに噛み付かれるのではないか」と思っていた。心無い人が「エナンは本当に全力を尽くしたのか」「体調不調を負けの言い訳にするために棄権したのではないか」「勝つ気がないならコートに出るな」といわれることぐらい予想できそうなものだ。案の定、翌日のWOWOWの放送でダバディ氏も取り上げていたが、英語圏・フランス語圏の新聞はエナンを批判し、ネット上ではパッシングされていた。面白いことに日本国内の世論はそれほどエナンに批判の声はあがっていなかった。
シングルスが一試合しかない決勝戦というのはそうそう簡単に棄権できるものではない。かつてヒューイットは足の親指の爪が裂けていたにもかかわらずフェデラー相手にマスターズシリーズの決勝戦を戦い、かなわぬまでも喰らいつき最後まで戦い抜き、試合をやり遂げた。東レの準決勝でドキッチもまた、体調不調で棄権しようとしたが、もう一試合の準決勝も棄権で中止になったことを知ると「高いチケットを買って見に来た観客にシングルスを一試合も見せずに返すわけには行かない。」とコートに立った。結果はダベンポートの前に見るも無残な惨敗をしたので、あれなら棄権したほうが良かったのではと言われたが、それでも彼女は彼女なりにプロスポーツの選手として責任を果たしたのだろう。そういう意味では、グランドスラムの決勝での棄権を避けようとコートに入ったエナンの気持ちはよく理解できる。
だが、かつての全米準決勝で痙攣した足を引きずってカプリアティを破り、直前まで点滴を打ちながら臨んだ決勝でクライシュテルスを破ったエナンである。数年前の全豪対ダベンポート戦でも同じような死闘を乗り切った。そのエナンがなんとなくこの決勝第二セットで「あっさり」と「すんなり」と棄権を決めたことに少し不信感をもった人も少なからずいたようである。何せ、ベストではないにせよ直前まで走れていたのだから。後、残り4ゲームをプレーすると選手生命を脅かす大事なるような切羽詰まった状況だったのだろうか。「このままプレーしても勝てそうにないから」棄権したと思う人もいるだろう。2003年全米のSFカプリアティ戦は「こちらの状況はきわめて悪いし、後日に引きずる大けがの原因になるかもれない」状況だったが「試合内容は十分勝ち目がある」と判断して選手生命をかけて試合を続行した。しかし、今回の全豪では「勝ち目がないので」無理せず棄権した。もしそうだとしたら「エナンは勝てないまでも続行しようと思えば出来たのに、勝ち目がないので棄権した。」事になる。その姿勢を批判している論調がある。
想像の域を越えない範囲でこんな批判をするほうも問題があると思うが、仮にエナンが上記のような状況にあり、そのような判断をしたとして、わざわざ新聞の一面を大きく使う記事にするほどのことか。如空自身、多分エナンの心境はそれに近い思いがあったと推測する。ただ、忘れてならないのはその判断をさせたのは彼女の胃の具合だけでなく、モーレスモの第一セットの出来にあったと言うことである。あの決勝戦の第一セット、エナンが不調だと、いつもと違うと感じた人はどれほどいただろう。如空の目にはやや元気こそないが、体調的にはいつもエナンと同じに見えた。そのエナンをモーレスモは素晴らしいテニスで圧倒したのだ。「試合に入る前から勝てない」と予想していたエナンは試合に入って「勝てない」事を確信した。その理由は、戦前は自分の体調によるものだけだっただろう。しかし第一セットが終わった時点で「体調にかかわりなく、今日のモーレスモには勝てない」と思ったはずだ。2003年の全米で「足が痙攣していても今日のカプリアティには勝てる」という思いが彼女に試合を続行させた。今回2006年の全豪では「この体調では今日のモーレスモには勝てない」という判断が彼女に試合の棄権を決断させた。カプリアティやダベンポートでは打ち砕くことの出来なかったエナンの強い心、その強い心が挫けたのは第一セットのモーレスモの見事なテニスが原因である。
三試合の棄権と一試合の自滅で勝利を拾ったモーレスモの優勝にはけちがつくかもしれない。しかし、エナンの体調がどうであったとしてもあの決勝戦第一セットのモーレスモの素晴らしいテニスにはけちをつける箇所は微塵もない。強いエナンの心までもくじけさせるテニス、それはモーレスモが長年かけて完成させたものである。そのテニスの内容に関しては賞賛を惜しまない。

しかし、「何を言っても叩かれていた。」といわれるエナンの決勝棄権劇だが、試合後の会見を見るに、そうとも思えない会見であった。エナンは言葉が足りない。言語が違うので微妙なニュアンスは汲み取りにくいが、それでも記者に揚げ足を取られることをわざわざ言っている時がある。去年2005年は復帰を飾るいい年になるはずだった。しかし、母国ベルギーではマスコミにパッシングされ釈明の記者会見を開かざるをえない状況に追い込まれている。コートの中での振る舞いに問題があるのではない。やはりマスコミへの対応・会見が稚拙であるゆえに引き起こしているトラブルであるように思える。エナンは、と言うよりエナンの周囲の大人達は何をしているのだろう。「自分の言いたいことを、忠実に相手に伝えるためには、使う言葉の選択が大事であること」をエナンに伝えているか。不器用なエナンがそのようなことに煩わされずにすむようにスポークスマンやエージェントのような役割をしている人はいないのか。
マスコミの対応だけではない。今回決勝戦棄権騒ぎの原因は肩の痛み止めの薬の副作用が胃を悪くした事である。これは本当に防げなかったことなのか?痛み止めなど誰もが口にするモノで特殊な薬ではないだろう。それともエナンが特殊体質でエナンにだけ副作用が出るものなのか。これほどドーピングがうるさく言われている時期に、薬の知識の欠如は致命的だ。選手になくても周囲にそれを相談し指導してくれる人は必要だ。そんな人材がエナンのまわりにはいないのか。
あの小さな体で世界No1にまで上り詰めるテニスを育て上げたという意味で、エナンとその周囲の人からなるチームは大いに賞賛されてしかるべきだ。しかし、コートの外における一連のテニスに関わるが直接には関係ない事柄の処理と問題の解決の能力において、エナンのチームはあまりにもお粗末といわざるをえない。何より最も気の毒なのは当事者であるエナンその人である。

去年の四大大会は全てシャラポワに勝った選手が優勝した。今年もそのジンクスが生きてきるのかと思ったが、そのシャラポワを降したエナンは決勝で棄権してモーレスモに優勝を譲ってしまい、ジンクスは崩れた。それをシャラポワはどんな心境で見ていたのだろう。自分に勝った選手がGSで優勝する、それはGSを一年間取れていないシャラポワのプライドを少なからず慰めていたことだろう。いやシャラポワのことだから自分が優勝しなくては誰が優勝しても同じと考えているのだろうか。まあ、プロの選手ならそうでなくてはならないとは思う。

2006全豪雑感 男子編

女子のことを書いているとあれもこれもと色々考え初めて、何時の間にか長文になっ
てしまった。男子は短く行こう。

ファイナリストとなるバクダティスに4回戦で破れたロディックは、負けたとたん、各方面からその敗北の分析と、どうすれば強くなるかの考察が論じられた。各方面とは現解説者で引退した元選手から始まり、著名なスポーツライターから、実況アナウンサーの日記、個人のブログに至るまで多くの人がロディックの今後のテニスの目指すべき方向を論じている。これはとても面白い現象だ。なぜならかなり近い立場にあるヒューイットに関してはそのような論調が起こらないからだ。
ヒューイットがGS二回戦で負けたからといって、あれを直せ、これを覚えろ、あれはこうしろという議論は起こらない。しかし、ロディックは起こる。これは端的に言えばヒューイットのテニスは完成されているがロディックのテニスは未完成だと世間は捉えているということではないだろうか。如空はロディックを「未完の大器」と呼ぶ。人によっては「大器」ではないという人もいる。しかし、評価していようが評価してなかろうがロディックのテニスが「未完成」であるという点ついては意見の一致を見ることが多い。ロディックのテニスが完成する日は来るのだろうか。今後も注目していきたい。

フェデラーはこの大会の第二週、非常に苦しい戦いを強いられた。ハース、ダビデンコ、キーファー、そしてバクダディス。この四試合、共通して言えることはリターンを含むカウンターショットがフェデラーを苦しめたということだ。フェデラーのテニスは攻めのテニスである。その攻めてくるフェデラーのショットを、コースを隠して、ライジングで厳しい角度に、タイミング早く切り返す。そのカウンターの前に苦しんだ。かつてフェデラーの天敵だったナルバンディアンやヒューイットもこのカウンターショットでフェデラーを苦しめたのだった。この二年ほどはカウンターショットで切り返せないほどにフェデラーの攻めが厳しくなったので、カウンターショットによるフェデラー崩しは効果がなかった。しかし、去年のナダルを筆頭に、再びフェデラーの攻めを切り返せるカウンターショットが台頭してきた。去年末のマスターズカップにおけるナルバンディアンの打倒フェデラーもその流れの延長線上にある。ならば、ヒューイットのテニスの延長線上にも打倒フェデラーの可能性は大いにあるといえるだろう。

もう一つ、フェデラーを倒す方法は強打を正解に打ち続け、フェデラーの流れるような連続攻撃をさせないことだ。だが、フェデラーを圧倒できるほどの強打を一試合正確に打ち続けることが出来るのは集中して調子の良い時のサフィンくらいだろう。ロディックはサフィンに比べればよっぽど安定している。強打も引けを取らない。サーブとフォアハンドストロークの威力はサフィンに匹敵するといってよい。ロディックのサフィンの手法をやれば出来るような気はする。しかし、悲しいかなロディックはバックハンドとリターンが弱い。サフィンはサーブとフォアだけでなくリターンとバックからでも強打を打ち続けることが出来る。だからいつでもどこからでも大砲を連射し続けることができるのだ。だがロディックはいつでも、どこからでも、というわけには行かない。ここがつらい。そして、そこを補うために色々といわれてしまう。
しかし、あまりやりたくないスタイルを自分に取り入れようとして元気をなくしていないか、ロディック。もう大人なのだし、ヒューイットやアガシを見習って、テニスを変えるのではなく、今のテニスの延長線上に打倒フェデラーを目指した方がロディックには良いのではないかと最近如空は思えてきた。
もう、余計なことはしない。サーブとフォアだけで試合に勝つ。サービスゲームは絶対に落とさない。ストロークは全てフォアで打つぐらいのつもりで臨む、バックを打たざるおえないときはひたすら繋ぐ。リターンもバックはブロックリターン。そしてフォアとサーブだけでポイントを取ってサービスゲームを全てキープする。その上で、TBで勝負する。TBではサービスポイントを一つも落とさない。そしてミニブレーク一つでセットを取る。セットを取るのは全てTBだ。それでいいじゃないか。多分、ロディックはその方がのびのびと楽しくテニスが出来るようになる。そして楽しんでテニスする奴は強い。色々といわれるが、ロディックはその未完のテニスのまま悩まず突き進む方がよいと、最近思う。

ところでそのロディック、私生活では順調なのだろうか。最近、シャラポワと一緒にいるところを何度かスクープされているが、本当の所、付き合っているのだろうか。二人とも相手の試合を応援しに行き会うようなタイプではなさそうなのでかつてのキムとヒューイットのような雰囲気にはならないだろうが、それでもアガシ・グラフペア以来のビックカップになるな、事実なら。

フェデラーを苦しめたキーファーは去年、全英でも全米でもコンスタントにフェデラーからセットを取っているなかなかの実力者だ。そのキーファー、フェデラーと当たる前のQF対グロージャン戦でひと悶着起こしている。フルセットにもつれる大接戦になったこの試合、白熱した終盤戦でネットに二人とも詰めてボレー対ボレーのシングルスでは珍しい状況になった。このときキーファーはボールをふかしてしまった。そのボールがアウトになると思ったキーファーは自分のミスに腹を立ててラケットを放り投げた。その放り投げたラケットはネットを越えてふけたボールをボレーしようとしていたグロージャンの眼前に飛んできた。驚いて身をかわすグロージャン。当然ボレーできなかった。ところがキーファーがアウトすると思ったボールがラインの中に納まってしまった。この状況で審判はキーファーのポイントを告げた。当然納得できないのはグロージャンである。「今のは妨害行為だろう。ポイントのやり直しじゃないのか。」と審判に詰め寄ったが判定は覆らなかった。そしてグロージャンはその後、試合そのものにも敗退した。
自分はあの時通常の精神状態ではなかったキーファーは弁明しているが、この行為、当然許されるものではなく、キーファーは批判さえてしかるべきだ。だがキーファーはこのポイントがやり直しになったり、あるいは失点したり、警告されたりした場合、それを受け入れていたと後で語っている。審判が毅然とした適切な対応をしなかったことも大きな問題であった。

そのキーファー、ヒューイットが良くやる北欧式ガッツポーズをやるようになっている。掌を顔に向け指を第三間接で折り、四本の指を自分に向けるあのガッツポーズである。あれ、あんまり格好よくなしガッツポーズの割には力が入らないように思えるのだが、キーファーやヒューイットはあれが好きらしい。そういえば、キーファーのウェア、いつの間にかディアドラになっている。いつ変ったのだ?昔はディアドらといえばクエルテンぐらいしかいなかったものだが、いつの間にかガウディオにリュビチッチ、そしてキーファーと地味な実力者に静かに浸透しているようだ。

フェデラーが全豪後、ジャパンオープンに出場するという公式発表をした。日本テニス協会の盛田正明会長が全豪オープンの会場に出向いてフェデラーに直接出場を依頼したということが報道されている。そのジャパンオープンはここ数年酷い状況になっている。毎年、ビックネームが来る来るとアナウンスされているのにふたを開けてみると棄権者ばかり。これ、選手の故障が直接の原因であるが、間接的な原因として「ジャパンオープンがなめられている」「選手たちにとって魅力ある大会になっていない」という部分もある。行った事のある人は良くわかると思うが、会場の有明コロシアムというのは、センターコートは立派だが、それ以外のコートがあまりに貧弱で「これが国際試合の会場か」と思うほどである。テニスショップ裏日記というブログの記事で紹介されていたのだが、ロッカールームも貧弱らしく、かつてクエルテンは「シャワールームが一杯だったため、200メートル先のクラブハウスに行けと言われてから来日していない」らしい。全豪後開催される東レの東京体育館も槇文彦という著名な建築家が設計した巨大な体育館だが、所詮は体育館でしかなく、本来テニスの国際試合を出来るような会場ではない。大阪の靭テニスセンターなど有明よりもっと小さい。大阪はオリンピックを誘致しようとしたときこの靭テニスセンターをテニス競技の会場にしようと考えていたわけだが、あそこに世界のトップランカーを迎えようと本気で考えていたのだろうか。あまりにテニスの大会に関して理解がなさ過ぎる。もちろん、理解があってもそれを実現する予算がなければ施設を充実させることが出来ないことは重々承知しているが、それでも情けない状況である。
それに比べれば、オーストラリアオープンは、選手が来てプレーをしたいと思わせるように最大限の努力をしている。四大大会の一つとは言え、オフからあけた1月に南半球のオーストラリアに来てもらうのはかなりの努力が必要であったといわれる。全豪を4度も優勝したアガシが実はデビュー当初、中々全豪に出場しようとせず、「サーフェイスの性質が君にぴったりだよ」とサンプラスなどに散々誘われてよやく出場したという話も伝わっている。
そのため、オーストラリアは大会運営に向けて大変な努力をしてきた。そのため今では会場の充実は四大大会でも最高と評価する者が多い。開閉式屋根を持つテニス専用大型会場を持つ大会はそう多くはない。雨によるスケジュール遅延に悩まされたUSオープン運営者が視察に来ていた全豪関係者に「屋根を持ってきてくれたのだろうな」と皮肉を言った話は有名である。インターネットの大会公式HPももっとも充実している。リバンドエースというボールがやや遅めでバウンドの高いサーフェイスはクレーコートスペシャリストたちにハードコートの試合に出ようという気にさせる。観客のマナーも実に良く、また好プレー好勝負に対して拍手を惜しまない。大会の努力が実り、去年、一昨年は男子でランキングトップ選手のほとんどが出場し、好試合が続き、実に充実した大会になってきた。女子も以前から充実している。特に去年2005年の全豪はここ数年で最高のグランドスラムトーナメントであった。それは選手たちの努力だけでなく、大会運営者達の裏方の努力もあればこそだ。日本の大会運営もオーストラリアの姿勢をぜひ参考にして欲しいものだ。

だが、だからといって全豪が完璧な大会というわけでもなく、いくつかの問題を抱えている。女子では5人も棄権者を出すことになった。そのうち原因の大半はリバンドエースというサーフェイスの問題。ハードコートの上にゴム状のコーティングをしているリバンドエースは靴が引っかかりやすい。日本の森上も足をとられて挫いた。準決勝でクライシュテルスが足を挫いたことはなにより衝撃的たった。地元ヒューイットの要求にかかわらず、サーフェイスを変えなかった全豪であるが、今回は何らかの動きがあるのではないだろうか。
もう一つもかなり以前から言われているのが開催時期の話だ。南半球が真夏になる1月に行うことが問題になっている。ヒート・ポリシーといわれる独自のルールが全豪にはある。気温が一定以上の高さになると屋外のコートは試合中止、屋根つき会場は雨天でもないのに屋根が閉じられる。灼熱の日光を遮断するためだ。数年前まではこのヒート・ポリシーはただ単に2セット後少し長めの休憩を取るだけだった。しかし、2002年の女子シングルス決勝戦、灼熱のコート上でカプリアティ相手に死闘を繰り広げていたヒンギスはこの休憩だけでは体力を回復しきらず、脱水症状を起こし、最終セットふらふらになって自滅していった。それを見てさすがにこれはまずいと思ったのか、今では高気温での屋外試合はヒート・ポリシーで中止になった。それでも屋根つき会場があるので重要な試合は強行できる。世論では二月か三月に開催時期を移動させる案がよく言われているが、実際開催時期を移動させると他の大会のとの調整がありATPもWTAも慎重な姿勢のようである。

そのほか様々な問題もやがて柔軟に対応していくのではないだろうかと思う。より良い大会を目指して、全豪の大会運営の更なる改善は進むことだろう。来年もその先も、さらに素晴らしい大会となっていって欲しいものである。

いかん、気づいたらやっぱり長文になってしまった・・・・・・・





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