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2008年テニス界10大ニュース その十
フェデラー マスターズ・シリーズ無冠

 

今年の全豪SF、優勝することになるジョコビッチに敗れた後、フェデラーは語った、「自分の中に怪物をいつの間にか作り出していた。」と。フェデラーが自 ら「怪物」と呼び、如空がこのブログで「皇帝」と呼んだもの、それがATPに君臨していた「圧倒的強者」ロジャー・フェデラーのテニスである。今年はその 「圧倒的強者」は全米優勝のシーンでしか見ることが出来なかった。

フェデラーは今季、全豪ベスト4、全仏・全英準優勝、全米優勝である。グランドスラムだけを見れば2008年はそれほど悪い年ではない。当たり前のようにリトルスラムを達成し、当たり前のように年間グランドスラムを狙っていたこの4年間が凄すぎたのだ。

だがマスターズ・シリーズに目を移すと、事情は異なる。

インデアンウェルズ大会 優勝ジョコビッチ (フェデラーベスト4)
マイアミ大会 優勝ダビデンコ (フェデラーベスト8)
モンテカルロ大会 優勝ナダル (フェデラー準優勝)
ローマ大会 優勝ジョコビッチ (フェデラーベスト8)
ハンブルグ大会 優勝ナダル (フェデラー準優勝)
トロント大会 優勝ナダル (フェデラー二回戦)
シンシナティ大会 優勝マレー (フェデラー三回戦)
マドリッド大会 優勝マレー (フェデラーベスト4)
パリ大会 優勝ツォンガ (フェデラーベスト8)

そしてツアー最終戦マスターズ・カップ上海大会はラウンドロビンでシモンとデルポトロに敗れて二勝一敗、4人中3位という成績で予選リーグ敗退決勝トーナメントに進めなかった。

グランドスラムは一勝、マスターズ・カップはラウンドロビン敗退、マスターズ・シリーズは無冠、フェデラーは今年最終ランキングをNo2で終えたが、 No2の成績にしてはマスターズ・シリーズが悪すぎる。全仏・全英の準優勝が大きくポイントに貢献した結果のNo2といえる。

全豪3勝、全英5勝、全米5勝、全仏は3年連続決勝進出、ATPツアーで史上最長No1在位記録更新、かつエントリーランキングポイント史上最高得点記 録、「皇帝」であり「怪物」であったフェデラーのこの4年間の実績はテニス史上最高の記録であろう、そして当分破られそうにない。フェデラーは今後、皇帝 であり怪物であった自分自身と比較され続けることになる。他者からも、そして自分自身の中でも。それはテニス界で最も大きな壁である。彼はこれから過去の 自分自身と戦わなくてはならない。そして乗り越えていかなければならない。それはもっとも過酷な挑戦である。しかし、それは偉大なる記録を打ちたててし まったものの宿命だ。彼自身が自ら背負わなければならない十字架である。再び、コートの上でフェデラーが自らを「美しい」と言ったテニスを見せてくれる日 を待っている。

とにかく、一時的なものなのか、これで終わりなのか、それはまだわからないが、皇帝によるATPの支配は崩れ、フェデラーの覇権は大きく後退した。それは フェデラーのエントリーランキングNo1陥落よりもマスターズ・シリーズ無冠で終わったと言う事実の方がより象徴的であると考え、十大ニュースの最後の ニュースとした。


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