2008年テニス界10大ニュース その五
ヤンコビッチ 無冠の女王
WTAではかつてモーレスモもクライシュテルスもグランドスラムタイトルを取ることなくエントリーランキングでNo1になったことがある。またヒンギスや ダベンポートは一年間の間にグランドスラムタイトルを取らずに年間最終ランキングNo1になったこともあった。ATPではこの数年、あまり考えにくい現実 がWTAではよく起こる。トップランカーが固定されてしまっている感もあるが、トップランカー同士の競争は熾烈を極めているという現状を反映しているとい えるだろうか。今年もまた無冠の女王が誕生した。セルビアのエレナ・ヤンコビッチである。
2008年WTA年間最終ランキングNo1のヤンコビッチは今年年間4勝を上げた。グランドスラムでは全豪と全仏がベスト4、ウィンブルドンは4回戦、全 米でようやく決勝進出を果たすもS・ウィリアムズに破れ、最終戦ツアー選手権ではSFでV・ウィリアムズに敗れている。各大会の個々の成績だけ見ると No1らしくない結果だが、彼女が今年たたき出したポイントは4710ポイントで二位のS・ウィリアムズの3866ポイントを大きく引き離している。出場 した全ての大会で上位に食い込み続けた安定した成績の積み重ねがこの無冠の女王を生み出したのだろう。またエナンの引退とシャラポワの戦線離脱が大きく作 用したことも事実だ。
去年同時期に台頭したために「セルビア・コンビ」とし注目を浴びることになった同国のイバノビッチはグランドスラムの決勝に三度進み、今年はついに全仏タ イトルを取った。そして一時的にだがエントリーランキングもNO1になった。ヤンコビッチは今年の全米でようやくグランドスラムの決勝に初進出を果たした が、まだタイトルには恵まれていない。しかし、年間最終ランキングNo1はヤンコビッチが先にとることになった。かつて「ベルギーの月と太陽」と呼ばれた エナンとクライシュテルスは本人達の意識に関係なく、奇妙な縁につながれていたた。このセルビアの二人も「月と太陽」のような奇妙な縁で結ばれているのかもしれないと思わせる。来年こそはグランドスラム初タイトルを手にして、無冠の女王を返上してもらいたいものである。