2008年テニス界10大ニュース その一
ナダル、ウィンブルドン優勝
ナダルは今季８大会で優勝を上げた。グランドスラムでは全豪・全米でベスト４、そして全仏と全英で優勝、全仏は4連覇だ。そして8月の第三週にＡＴＰツアー・エントリーランキングでＮ０１となった。
史上最強・最長のＮｏ１だった男、如空が「皇帝」 と呼んだフェデラーからナダルがついにＮｏ１の座を奪い取った、という意味で今年最大のニュースはナダルとフェデラーのＮｏ１交代劇かもしれない。しか し、それはエントリーランキング上での結果論だ。ナダルはＮｏ１就任確定となる試合ＭＳ第七戦シンシナティ大会の準決勝を勝利で飾ることが出来なかた。その後も北京オリンピックの影響でスケジュールが去年と違っていたため、ランキング上のＮｏ１は確定後も一週間はフェデラーのままだった。なんとも冴えない政権交代劇だっ た。また、Ｎｏ１就任後は優勝できない大会が続き、最終戦マスターズカップ上海大会とデビスカップの決勝戦は故障のため、欠場してしまった。2008年の 年間王者と呼ぶには後半戦が失速気味だ。それだけにナダルのＮｏ１就任はニュースというにはインパクトが弱い。やはり、両者の政権交代の象徴的事件とし て、その事実が目前でテニスの試合の結果として現れたウィンブルドン決勝での勝利と優勝が今年最大のニュースだろう。
若くして注目されていたナダルであるが、やはり世界の表舞台に登場したのは2005年前半の全仏初優勝を含む活躍からだ。ナダルのＮｏ２としてのキャリア はここから始まる。彼のたたき出しているポイントは歴代のＮｏ１に比べて遜色ない数値であった。しかし、フェデラーがいた。フェデラーがたたき出す年間の ポイントはＡＴＰ史上最高を記録するほどに大きかった。ナダルはクレーで連勝記録を続け、フェデラーの生涯グランドスラム達成の野望を阻止しながら、 Ｎｏ１の座を狙ってフェデラーに挑み続けた。その象徴がウィンブルドンのタイトルであったと思う。2005年のウィンブルドンでナダルは二回戦敗退だっ た。それが翌年の2006年全英では決勝まで勝ち進んでくる。しかのその2006年決勝では芝の上でナダルは第一セットを一ゲームも取れずに0-6でフェ デラーに圧倒される。だがそこからがすごかった。なんと第二第三セットを連続ＴＢまで持ち込むのである。そして一つ取った。ナダルの適応力の高さに驚かさ れるシーンだった。そして、2007年全英決勝で再び対戦する二人はフルセットマッチの熱戦を繰り広げる。ここ数年でもベストオブベストの名勝負だった。だがナダルはフェデラーを追い詰めながらも詰めきれず、優勝を逃してしまった。貴重なチャンスを逸してしまったナダルはロッカールームで涙したという。
そんな歴史を経た上での今年の全英決勝だった。三年連続で全英と全仏の決勝戦が同一カードとなった。2008全仏でナダルは急激に強くなった。そして決勝 では皇帝を公開処刑した。かつての勢いを失いつつあったとはいえ、あのフェデラーを一試合でたった4ゲームしか取らせず、第三セットは完封するという圧倒 的強さで優勝した。その勢いに乗ってウィンブルドンの乗りこむナダル。既にエントリーランキングＮｏ２在位記録最長というありがたくない記録を更新中のナ ダルは今年こそという気迫で芝の上に君臨する王者に挑む。第一・第二セットを連取、第三セットも押していた。ナダルがストレートで優勝を決めると如空は ＴＶ観戦していて予想した。だが雨の中断が入った。フェデラーは息を吹き返し、追いつき、ＴＢの末、第三第四セットを取り返し、セットオールに戻した。そして第五セットでも雨の中断があり、再開してもキープ合戦が続き、6-6になっても勝負がつかず、第14ゲームでフェデラーのサービスゲームをナダルがようやくブレークして、次の第15ゲームで勝負を決めた。
この決勝戦、前半でナダルの方に流れがあったが、途中の雨の中断で、その流れが消えた。また第四セットでも流れはナダルにあり、マッチポイントまで握る が、決め切れなかった。ナダルには今日ツキがない。運命の女神はナダルに微笑みかけてはいない。そう思える試合経過だった。テニスの内容でフェデラーを押 しながらも、ナダルは優勝を逃すのではないかと如空は見て思った。しかし、ナダルはあきらめなかった。最後まで挑み続け、そして何度も見放されそうになっ た勝利をついにつかんだ。自分に向いて流れていない運命に逆らい、運命を強引に引き寄せたのだ。その扉が開くまで、何年かけても、何度も何度も挑み続け、 そしてついに運命の扉をこじ開け、解き放った。
フェデラーは全豪を落としているので、この時点で、グランドスラム二勝を上げたナダルにチャンピオンズレースで大きく差をつけられた。そしてその約一ヵ月後、ナダルはエントリーランキングでＮｏ１となる。4年間挑み続けた皇帝の壁をついに乗り越えたのだった。
テニス史上最も偉大で最も大きな壁に挑み続け、ついに成し遂げたそのナダルの偉業に、心から拍手を送りたい。