2006テニス界10大ニュース その九
ATP・WTAルール改正
去年から話題になっていたコンピューター判定システムが導入された。
選手はラインジャッジに関して判定に不服があった場合、コンピューターでボールの軌跡をトレースした情報を開示ししてもらって判定の正誤を確認できるようになった。「チャレンジ」は各セットに二回まで。もしチャレンジしてそれが成功して判定が覆れば、それはチャレンジの回数に含まれない。
このルールはこのシステムを導入できている会場でしか使用できない。グランドスラムを開催するような大きな会場でも全てのコートに設置されているわけではない。だからグランドスラムの1回戦などでセンターコートに入った選手と、端のほうのコートに入った選手ではコンピューター判定システムを使える・使えないの差が出るわけである。これはフェアではないなと個人的には思う。
だが、このシステムは選手たちにはおおむね好評で、少なくとも今年一年間、如空がTV観戦したテニスの試合では選手がラインジャッジをめぐって審判とトラブルになって試合が中断するという「よくあるシーン」がまったく見られなかった。
だが選手たちはあのホークアイと呼ばれるコンピューター判定システムを全面的に信用しているのだろうか。審判はミスするがコンピューターに誤差はまったくないと考えているのだろうか。「あのコンピューター判定は間違っている。さっきのラインズマンのジャッジが正だ!」と主審にくってかかる選手が一人くらいいてもよさそうなものだが、やはり皆現代っ子なのかね。コンピューター判定が示されると皆、素直に納得して引き下がる。またチャレンジの権利二回を使い切るとそのあとはホークアイを使えないのだから、その使えない状況になってからミスジャッジが起これば当然昔のようなトラブル、つまり「よくあるシーン」が繰り広げられそうなのだが、そんなことも目撃することはなかった。チャレンジの権利を使い切れば、そのあとは審判のミスジャッジも素直に受け入れなければならない。暗黙のうちにそんなマナーが浸透してしまっているのだろうか。とにかく試合を運行してく上でトラブルを回避したいという運営側の要望に対しては大いに効果を発揮しているし、選手たちも感情的に納得しやすい状況を作り出しているので、このシステムの導入は成功したといえよう。
一方でダブルスでは試合の内容そのものを大きく変えるルール改正が大規模に行われた。全ての変更を完全に把握しているわけではないので詳細は省くが、とにかく、時間短縮のためにゲーム取得条件、セット取得条件が変わった。特にディースをなしにしてノーアドバンテージの一本勝負にしたのは大きい。男子ダブルスではキープ合戦の末、ディースの連続、TBでもなかなか決着がつかないという状態が発生しやすい。それを短縮するためだが、これはたとえば0-40だと通常ブレークポイントを3本握ったことになり、40-40になった時点で2ポイント連取の義務が生じるためブレークポイントは消えるところを、もう一本ブレークポイントがある状況になる。一発勝負のノーアド制は40-40で両者にゲームポイントがある。0-40はノーアドではブレークポイント4本なのだ。これは気持ちの入れ方が大分変わってしまうことだろう。
タイブレーク導入以来の大改正と呼ばれた今年のルール改正だが、シングルスに関しては試合の進行をスムーズにするための比較的穏やかな導入であったかのように思う。その一方で試合の運行方法そのものに手をつけたダブルスははたして浸透して根付くことになるだろうか。今後も適正なルールを模索して二転三転するように個人的には思うのだが来年以降の行方に注視しよう。とにかく、今年の大きな話題であったことに変わりはない。