×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

 

テニスのお寺  電脳網庭球寺

 

山門

講堂

夢殿

僧房

経蔵

宝蔵

回廊

 

夢殿

 

 

 

2006テニス界10大ニュース その二
ナダル、決勝対フェデラー戦4連勝、クレー常勝無敗、そしてウィンブルドン決勝進出。

 

去年の2005年全仏男子シングルス準決勝で予想された対戦カードは世界中の注目を集め、期待通りに実現し、その結果は偉大なる記録の達成を阻止しただけでなく、ATPにおけるトップ選手たちの力関係に大きな影響を与えた。それ以後、勢力地図は塗り替えられたが、それでもATPに君臨する皇帝の座は揺らぐことはなかった。今年のヨーロッパクレーのシーズンが始まるまでは。

ロジャー・フェデラーが生涯グランドスラムの達成と年間グランドスラムの可能性を拡大させるべく、今年もガリア(フランス)の地に乗り込んだ。しかし、ここに至る道のりは去年より厳しいものだった。フェデラーが全仏オープンのタイトルを取るための最大の障壁、ラファエル・ナダルの存在は対戦を経るごとにその大きさと重みを増しつつあった。この2人がこの全仏の決勝で当たることは去年の後半からずっと予想され続け、確実視されてきた。フェデラーにポイントで圧倒的大差をつけられているとはいえ、ナダルがこの一年で稼ぎ上げたATPランキングポイントは過去の歴代No1選手たちのポイントを上回るものであり、クレーコートだけでなく、年間を通じてナダルがATPツアーNo2であることは今や歴然たる事実である。エントリーランキングのNo1とNo2がグランドスラムに出場すればシード1・2となり、決勝でしかその対戦はありえない。全仏直前で対戦成績6戦5勝1敗、ナダルは全ての対戦でフェデラーから2セット以上を奪っている。ヘンマンもナルバンディアンも最近まで対フェデラーの対戦成績は勝ち越していたが、それはフェデラーがNo1になる前に稼いだ勝ち星を換算してのことである。フェデラーがNo1になりATPに君臨する圧倒的強者になってから大きく勝ち越している選手は世界で唯一ナダルだけである。

去年の全仏SFでは1-3でフェデラーは負けた。雨により進行が遅れた上に直前のプエルタ対ダビデンコが白熱のフルセットマッチを行ったため、試合開始が大幅に遅れた。2005年MSマイアミ決勝での大苦戦から始まった対ナダルへの意識過剰、サウスポーからのトップスピンにまだ完全にアジャストしていないためと思われるフォアハンドの回り込みの際のミス多発、日没順延を予想して集中力を最後に切らしていたという油断もあっただろう。言い訳は多々あるだろうがフェデラーは負けた

そして2人の再戦はその後のグランドスラムでもマスターズシリーズでも実現しなかった。
ところが今年全豪が終わり、春のアメリカハードコートシーズン突入しようかという直前のドバイ決勝で2人はいきなりぶつかった。第一セットは2-6フェデラーが取った。しかし、第二・第三セットは6-4でナダルが取った。ベストオブ3セットマッチ、ナダルがハードコートでフェデラーを破った瞬間であった。

そしてヨーロッパクレーコートシーズン突入、MSモンテカルロ決勝で2人は5度目の激突、3-1でナダルの勝利、フェデラーはナダルの前に封じ込められた。もう言い訳はない。ナダルはフェデラーに対して完全に優位に立った。挑戦者となったフェデラーはナダル対策に万全の体制を整え、MSローマの決勝に挑む。対ナダル戦略は功を奏し、フェデラー優位で試合は進む、しかし、ナダルは崩れない。フェデラーに喰らいつき、脅威の粘りとカウンターショットが奇跡を何度も生む。その反抗の前に崩れたのはフェデラーのほうだった。最後にナダルのフォアハンドの連続強打は優位にあったフェデラーを文字通り「押し戻し」、力でねじ伏せた。5時間を超える激闘を制したのはまたもやナダルだった。

そして全仏決勝、第一セットでナダルをプラン通りに圧倒したフェデラーは、第二セット初頭にスタートダッシュに失敗すると第二セットを無理に取りに行かず、第三セットに仕切り直しをかけた。だがそこに大きな誤算があった。フェデラーのフォアハンドが深くてネットに出て行けた第一セットであたったが、第三セットではその頼みの綱、フォアが浅くなり、ネットに出ても鋭いパスに抜き返されることが多かった。ナダルが落ち着いて自信を取り戻し、フェデラーに向かっていく気迫も取り戻したからだ。第三セットも取られナダルが先行する。去年、全豪準決勝の対サフィン戦、マスターズカップ決勝の対ナルバンディアン戦、ここでフェデラーは壮絶なフルセットマッチを戦い、そして敗れた。しかし、その試合の過程で、一度も覇気を失うことはなかった。攻める姿勢を貫き、最後まで自分のテニスをやり通した。しかし、今日は途中で気持ちが挫かれていた。自信を失っていた。まるで2000年全米決勝でサフィンに、そして2001年全米決勝でヒューイットに敗れたサンプラスの如く、途中で自信を失った。第四セット、ナダルのサーブインフォーザチャンピオンシップスで偶然を味方にしてそのピンチを乗り切った時、その偶然を味方にして自分にもう一度勢いを呼び込もうとするだろうと期待してみていたが、その期待は裏切られた。彼は目の前にきたチャンスを見逃してTBに流れてしまった。勢いのなくなったフェデラーにTBを取りきることは出来なかった。ナダルのサービスポイントでTB6-4、運命の時が近づく。ラリーの末、フェデラーのバックハンドが浮いた。ナダルはそれをドライブボレーで叩き込み勝負を決めた。3時間2分、ナダルはフェデラーの中にある何かをこのとき完全に打ち砕いた

ナダルの快進撃はまだ続く。なんと直後のウィンブルドンで決勝まで勝ち進むのだ。ある意味、全仏の連覇は予想の範囲だったが、このウィンブルドンの決勝進出は今年の最大のサプライズであったといえよう。決勝でまたもや激突する二人。フェデラーは第一セット6-0で圧倒するも第二セットではTBまでもつれ込ませ、なんと第三セットはナダルが取り返す。恐るべきナダルの適応力、たった3セットで芝の上での対フェデラー戦略を習得してしまったのだ。第四セットで畳み掛けるフェデラー、ナダルにもプレッシャーがかかりともにミスを大事なところでミスをするが、最後に取りきったのはフェデラーだった。実に去年のMSマイアミ決勝より一年半、5連敗の末の久しぶりの対ナダル戦勝利であった。

ナダルの快進撃はここまでだった。NO2として、打倒フェデラーを果たしうる存在として後半戦でフェデラーを追い上げることを大いに期待されたナダルであったが北米ハードコートシーズンで失速、後半戦は打倒フェデラーどころかフェデラーの待つ決勝にまで勝ち進めなくなっていた。技術的に不調であっただけでなく勝利へのモチベーションがやや低下しつつあった感のあるナダルである。「僕は歴代のNo1を超えるポイントを稼ぎ出しているのに、フェデラーがいる限りNo1にはなれない。」とらしからぬ弱気の発言も公のコメントで発している。だが最終戦マスターズカップ準決勝でフェデラーと再戦したとき、彼の心に再び火がつき始めたことを感じた。ストレートでフェデラーに敗れたが、その過程で今年後半失いかけたものが徐々に取り戻しつつあることを感じた。何よりそれを感じたのは直接対戦したフェデラーのほうだろう。そのナダルを押し切って対ナダル戦初のストレート勝利を納めた。フェデラーもまたナダルとの対戦で更なる高みへと進化しているのだ。互いに高めあう、まれなライバル関係といえよう。
今年のATPのクライマックスはなんと言ってもマスターズシリーズ第4戦ローマ大会決勝である。壮絶な激戦の末ファイナルセットでマッチポイントを握ったのはフェデラーだった。だが彼はそこで攻めなかった、守ってしまった、フェデラーが自ら「美しい」と自画自賛するテニスができなかった。それがマッチポイントを逃し、TBでナダルに勢いつかせる結果となった。逆にナダルにもプレッシャーがかかり守りに入る場面が多々あった。試合全体を通じてみれば決してナダルが精神的強さでフェデラーに勝っていたわけではないのだ。だが勝負のかかった最後の数ゲームで開き直ることがができたのはナダルの方だった。へービートップスピン主体のナダルが最後の最後に見せたフォアハンドの連続強打、回転量を抑え、スピードとパワーを極限まで高められたフラットドライブが左右に何度も打ち込まれ、フェデラーはその連続強打を支えきれず、まるで相撲取りが土俵際に追い込まれ押し出されていくかのように、ベースラインを割って文字通りナダルの連続強打の前に「押し出された」のだった。ナダルの今年の大活躍を象徴するシーンだった。

フェデラーの今年後半の圧倒的強さはこのときの反省からなっているに違いない。「あの時攻めていれば」という後悔が「後悔するくらいなら、恐れず、ひるまず、退かず、ただひたすらに攻めるのだ。駆け引きとしてチェンジオブペースを使っても最後には攻めて押し切らなければだめだ」という不退転の強い決意を与えたに違いない。それがフェデラーをさらに強くした。打ち砕かれた何かを自力で取り戻したのだ。フェデラーは今年ATP史上最高得点をマークしている。結果だけならその強さは過去最強である。その最強の王者である「皇帝」をして、このような経験を与えうるナダルという存在がいたことが、今年の最も印象に残る出来事だった。


戻る