2006テニス界10大ニュース その一
男女No1が全グランドスラム決勝進出かつ最終戦優勝
ニュースの衝撃度やその影響力では大きなニュースではないかもしれないが、No1らしいがNo1らしく一年を終えたという意味ではこの事柄が実は今年の最大のニュースである。しかも男子のNo1フェデラーは予想通りとしても、混戦状態であった女子シングルスにおいてエナンがNo1として求められる結果を実績として残した上でNo1を手に入れたことは意味深い。
人によってNo1にふさわしい実績とは定義が異なるだろう。個人的に如空が考えるNo1らいしいツアーのシングルス年間最終ランキングNo1の結果とは「四大大会全てに出場して全てにベスト4以上へ勝ち上がり、かつ一つ以上の優勝を勝ち取り、その上でツアーの最終戦(ATPならマスターズカップ、WTAならツアー選手権)に出場して優勝すること。」である。これはかなりハードルが高い。だがこれくらいの結果を出さないとNo1でありながら何かとケチがつけられてしまうのが現実なのだ。ちなみにこの三年間、ATPに圧倒的強者として君臨し、如空が「皇帝」と呼ぶロジャー・フェデラーですら、No1になった2004年は全仏で二週目に残れなかったし、2005年はエントリーランキングでNo1でありつづけ全仏でもSFで勝ち上がったが最終戦のマスターズカップ決勝でナルバンディアンに敗れている。実に厳しい要求だ。勝てる力があるだけでなく、過酷なツアーのスケジュールの中にあって、一年間主要な大会にフルエントリーできることが条件だからだ。だが「圧倒的強者」の「圧倒的」という意味を結果として証明しようとするとこれくらいのハードルになるものだと如空は考える。
今年はフェデラーがそれをやってのけた。エナンもやってのけた。しかも二人とも四大大会全てでベスト4以上へ進出しただけでなく、4大大会全てに決勝進出をし、いくつかの優勝をした。そして最終戦も見事に優勝。実にすばらしい。この4大大会と最終戦以外の大会では二人ともスキップした大会がいくつかあった。だがその調整のおかげで長期の戦線離脱を避けることができたという意味では適切な判断であったといえよう。また異なるサーフェイスでも強さを結果として示したことも大きい。全豪・全英・全米を取りリトルスラムを達成したフェデラーには全仏を含む対ナダル戦決勝4連敗の上生涯グランドスラム(と同時に年間グランドスラム)を阻止されるという大きな挫折があった。フェデラーとは逆に全仏を取ったエナンだが、全豪は決勝を途中棄権で批難を浴びせられ、全英・全米決勝では自らの壁を突破してエナンに近づきつつあったモーレスモとシャラポワに真っ向勝負を挑んで敗れてしまった。フェドカップ決勝に進んだベルギーチームの大黒柱として勝負のかかったダブルスに臨んだときも棄権を余儀なくされた。二人とも決して完璧な一年ではなかった。挫折があった。だが、その挫折を帳消しにして有り余る結果を実績として示した。「全グランドスラムに決勝進出、かつ一以上の優勝、かつ最終戦も優勝」というこのすばらしい実績がフェデラーとエナンを最強にして唯一の存在であることを証明してくれる。男女ともにNo1らしいNo1が生まれた年であった。これは如空がテニスを観戦し出してはじめての出来事である。だからこれが今年の10大ニュースの筆頭なのである。
ニュースとして大きさはフェデラーとエナンがこの一年経験した数々の挫折の方が大きいのだろう。だがそれはこの二人が「あたりまえのことをあたりまえのようにする」という最も困難で、ある意味最も地味な作業を黙々と行い、それをやり遂げたことによる、その見事な実績ゆえに、途中に経験した挫折が大きなニュースとなるのだ。10大ニュースの「その2」以降ATPのNo1とWTAのNo1が経験した挫折を取り上げることになる。だから、筆頭として先にこの二人の偉業を称えておきたい。