第083房 2008年全米 TV観戦記 (2008/12/21)
2008年08月22日 全米2008ドロー
USオープン2008のドローが発表された。例によってドローを四つの山に分け、独断と偏見による勝手な展望を見てみよう。
第一シードはナダル、今季は全仏、全英を連覇し五輪で金メダルも奪取、チャンピオン・レーストップにして、ついにエントリーランキングNo1をも手に入れた。現在ツアーに君臨する「覇王」である。この新王者の山であるトップハーフの上半分は第七シードナルバンディアンを筆頭にブレーク、カルロビッチ、ベルディッヒ、マチュー、コールシュライバー、モンフィスとシード勢が続く。他ロクス弟、シュトラー、ヤング、フィッシュ、グロージャン、ソーダーリン、フェレーロらが集う。実力者ぞろいのドローではないか。このドローをナダルは苦しむか、余裕で突破するかで、今後のハードコートでの彼の位置づけがなされることだろう。もちろん、ベスト4進出を阻止されればナダルの覇権は早くも危険信号が灯る。
第四シードはなんとフェラー、このクレーでもハードでも強いスペイン選手は去年より着実に結果を出し始め、ついにグランドスラム(GS)でトップ4シードの一角を占めるところまで来た。彼の山であるトップハーフの下半分は第六シードマレーを筆頭にバブリンカ、シモン、デルポトロ、ユーズニー、ロペス、モナコとシード勢が続く。他に錦織、カナス、アカスソ、ラペンティ、メルツァー、ロドラ、などが集う。ここは激戦区だ。好調マレーに連勝中のデルポトがいる。フェラーを含めて大混戦が予想されるが結果は如何に。
第三シードはジョコビッチ、サーフェイスを問わずに覇権を目指す「双頭の鷲」である。彼の山であるボトムハーフの上半分は第八シードロディックを筆頭にゴンザレス、ロブレド、ツォンガ、キーファー、チリッチ、セッピらシード勢が続く。他にもサントロ、ヨハンソン、ガルシアロペス、ハーバティ、ニーミネン、サフィン、モヤ、マチュー、クレメンらが集う。なかなか個性的な面子がそろったこのドロー、だが鍵はやは波のあるジョコビッチの動向だろう。ベストパフォーマンスを安定して発揮できれば突破は容易だと思われるが、如何せんまだ調子を安定させるまでにはいたっていない。少しでも不安定になればそこを百戦錬磨の曲者・猛者たちがついてくることだろう。ジョコビッチにしては油断の出来ないドローになるだろう。
第二シードはフェデラー、前年覇者にして四年近くATPに圧倒的強者として君臨し続けた彼もついにNo1を陥落したが、それでも第二シードである。彼の山であるボトムハーフの下半分は第五シードダビデンコを筆頭にガスケ、ベルダスコ、アルマジロ・・・・じゃなかったアルマグロ、アンドレーフ、ツルスノフ、ステパネックをシード勢が続く。他にもセラ、カレリ、ティプサレビッチ、ハースなどが集う。比較的楽なドローになっていると思うのだが、今のフェデラーにはこのドローを余裕で突破するような安定した力はない。気を引き締めて、一気に勢いに乗りたいところである。
ジョコビッチがボトムハーフに入った。当然ナダルとジョコビッチが決勝で激突する公算が大になると思う。ナダルが優勝すればリトルスラム(年間GS3勝)達成で年間王者に王手をかける。しかもクレー・芝・ハードと異なるサーフェイスでの3勝になり、その覇権は磐石、王者としてふさわしい結果となろう。ジョコビッチが優勝すればナダルとGS二勝同士で年間王者を賭けた終盤戦の展開になる。クレー・芝での結果が順調ではなかっただけに「ハードコートの覇者はこの俺だ」というアピールをしたいところだろう。だがナダルもジョコビッチもまだ「圧倒的強者」と呼べる存在ではない。彼らを阻止するべく、皆がチャンスを狙っている。少なくとも去年までより、今年の方が多くの選手に優勝の可能性があると感じているはずだ。「下克上の末にATPを混戦の乱世にもって行きたい」と追うもの達は牙を研ぐ。そして自身の力の衰えゆえにこの状況を生み出してしまった「元皇帝」フェデラーは復活しうるのか、再び皇帝と呼べる日が来るのか。その行方に注目しよう。
女子の第一シードはヤンコビッチ・・・・ではなくてイバノビッチである。WTAエントリーランキングの順位が週替りで入れ替わっている。予想されたとおりの混戦状態にWTAはある。イバノビッチの山であるトップハーフの上半分は第六シードサフィーナを筆頭にハンチェコワ、ペンネッタ、コーネット、ペトロワ、ラッツアーノ、モーレスモとシード勢が続く。順当に行けばQFでイバノビッチとサフィーナが激突する。今年全仏ファイナルの再現はこの大会、そして今季終盤戦に大きな影響を及ぼす一戦となるだろう。
第四シードはなんとセリーナ・ウィリアムズ、そして彼女の山であるトップハーフの下半分の対抗シードはなんと第七シードヴィーナス・ウィリアムズである。シードはラドワンスカ、サヴァイ、キブルコワ、バイディソワ、ボンダレンコ、杉山と続くが、やはり順当に今年全英ファイナルの再現がQFで実現する可能性が大だと思う。ウィリアムズ姉妹対決が実現すればこれもまた影響の大きな一戦となる。
第三シードはクズネツォワ、彼女の山であるボトムハーフの上半分は第五シードディメンティエワを筆頭に掃くベターゼ、シュニーダー、キリレンコ、ピア、スキアボーネ、スレボトニクとシード勢が続く。ここは混戦、誰が出てきてもおかしくはないが、やはり順当にクージーとデメがQFまで来ると思う。
第二シードはヤンコビッチ、彼女の山であるボトムハーフの下半分は第八シードズボナレワを筆頭にバルトリ、アザレンカ、ウォズニアキ、ダベンポートらが続く。地味ジャー、No1になった者としてヤンコビッチはここは圧倒的強さを見せて突破しなければなるまい。
トップハーフがタフだ。順当に行った場合QFで全仏と全英のファイナルが再現される。イバノビッチ、サフィーナ、ウィリアムズ姉妹、この四人の内、決勝まで勝ち残るのは誰か、激戦必至である。一方のボトムハーフは比較的楽だと言える。ヤンコビッチは決勝まで一気に勝ち上らなければならない。だがそこまで圧倒的な強さを発揮できないのが今のヤンコビッチである。クズネツォワなどにもチャンスはある。
前年度全米覇者のエナンはいない、今年全豪覇者のシャラポワもいない、混戦状態のWTAで台頭するのは誰か。今季の女王の座を賭けた戦いがNYで始まる。
WOWOWは初日からディセッションもナイトセッションもLIVE中継だ。熱戦を期待しよう。
2008年08月26日 錦織初戦突破 全米2008初日
忙しいぞー、土日も仕事しているぞー、テニスできないぞー、見れないぞー、ブログの記事もアップできないぞー、北京オリンピックも終わったぞー、男女同時開催だったパイロットペン・テニスは男子はフィッシュ・女子はサファロバが優勝しているぞー、全米オープンは始まっているぞー、仕事はまだまだ続くぞー。
とぶつぶつ言いながら家に持ち帰った仕事をしていた月曜日の深夜、というより翌火曜日の深夜、息抜きにリビングのTVをつけると画面の中で錦織がモナコと戦っていた。
2008全米一回戦男子
錦織 62 62 57 62 モナコ
WOWOWで中継されたいた全てを見たわけではないので(何せ仕事中)、勝利を知ったのは翌日の朝であるが、しかし少しだけ見た映像の中でも、錦織は十分モナコを押していた。ベースラインの上に位置して短い球は極力ベースラインの中に踏み込んでライジングで打ち返していた。サーブもかなり強化されていた。セカンドサーブからネットに出てポイントも奪う多彩さも見せていた。何より全体的な雰囲気が淡々としていた。「リードして当然、セットを取って当然」というばかりの堂々とした貫禄を見せていた。錦織は「エアー・ケイ」などと呼ばれて高い打点のジャンピングショットを得意としているが、この日、試合の主導権を握った要因はコートの中に入って打つライジングショットからの速い展開であった。ハードでもクレーでも対応できるフットワークを持っているがゆえの見事なオールラウンドプレーであった。
全米オープンは初日デイセッションまでではシード勢はほぼ安泰である。女子では第10シードチャクベターゼがダウンした。そして男子では第29シードのモナコがダウン、そのモナコを倒したのが錦織である。この大会での活躍も大いに期待できそうである。ただ映像では見なかったが、途中太ももを痛めてメディカルタイムアウトを取っているようだ。また故障を抱えての棄権だけは起こらないように祈りたい。
2008年08月27日 全米2008二日目
キーファーが棄権、ベルディッヒダウン、ガスケダウン、ハンチェコワダウン、ラッツァーノダウン、その他のシード勢は順当に初戦を突破した。比較的静かな開幕となった全米オープン二日目の一回戦である。
ガスケは初戦でいきなりハースと当たった。一回戦屈指の好カードで勝利したのは第12シードのガスケでなく、現在ノーシードのハースだった。しかしハースがノーシードって言うのも迷惑な話だが、相変わらずランキングが上下する浮き沈みの激しいハースである。
全身をグレーで包んだフェデラーが順当に一回戦を突破した。順当に行けばSFはフェデラー対ジョコビッチになる。そこまではこの調子で勝ち進んで欲しいものである。
2008年08月28日 全米2008三日目
第八シードズボナレワダウン、スキアボーネもダウン、男子シード勢は順当、静かな静かな全米2008三日目である。
ジョコビッチが順当に三回戦進出を決めている。ナダルのNo1奪取で少し影の薄くなった感のあるジョコビッチ、オリンピックでもナダルは金メダルだったが、ジョコビッチは銅メダルだったからね。しかし、去年の全米ファイナリストである。この一年、フェデラーの皇帝の座を揺るがし続けた一人である。この全米では大いにその存在感を発揮して欲しいものである。
2008年08月29日 イバノビッチダウン 全米2008四日目
WOWOWのデジタルは全米オープンの中継では、デイセッションをナイトセッションをそれぞれほぼ二試合づつ計四試合ほどを生中継している。全米のデイセッションは日本時間で翌日の深夜、そしてナイトセッションは翌日の早朝から昼前にかかる。このWOWOWデジタルの中継を全てリアルタイムでチェックしている人って日本でどれくらいいるのだろう。録画しているとしても、その録画内容を全て見るのにどれほど時間がかかるのだろう。そんな人はどんな生活を送っているのだろう、などとテニスに関係ないところを気にしていしまう。ちなみにWOWOWアナログは日本時間のゴールデンタイムに二時間、前日の試合の録画中継をする。二時間枠に入れるので編集されまくっているのだが、一日に見る分量としてはこれぐらいがちょうどいいような気がする。
昨日は早くに帰宅できたのでそのWOWOWアナログの録画中継を夕食を食べながら見た。登場したのはフェデラーでもなく、ナダルでもなく、ジョコビッチでもない、なんとツォンガである。WOWOWさん、渋い選択っすね。約半年振りにツォンガを見た。あの全豪2008SF対ナダル戦で見せたあの豪快なテニスはまだ影を潜めている。全体的に穏やかな感じだ。この半年、故障の連続でほとんどプレーしてないらしい。それでも後半になるにつれ、豪打のテニスがコートに現れてきた。第一セットをTBで落としたが、その後は安定したテニスで3セットを取りきり勝利した。しかし、もう少しコートで暴れて欲しいものだ。
深夜0時を回り、WOWOWデジタルのライブ中継が始まった。錦織君登場。ストローク戦で主導権を握って、相手を押し、ボールが短くなると、コートに踏み込んで、フォアの強打で決める。実に頼もしいテニスである。対戦相手は精神的にやや不安定な様子で、色々おかしな言動がつきまとっていた。
錦織の二回戦の結果を見届けることなく寝た。翌日も仕事があるのだ。翌朝、錦織の試合の結果を知る。相手の棄権で三回戦進出を決めたらしい。あの相手は精神的にだけでなく肉体的にも少しおかしかったようだ。ちなみに錦織の次の相手は第四シードのフェラーである。ここからが正念場だろう。
しかし、そんな錦織三回戦進出などぶっ飛ぶのがこの結果
全米2008二回戦女子単
コイン 63 46 63 イバノビッチ
女子第一シードダウン、現女王二回戦で敗退、イバノビッチよ・・・・・期待していたのに・・・・今回はウェアもいまちイケていなかったようだ。後半戦に向け、女王の座争いは更なる混迷を極めるようだ。
2008年08月30日 ヤンコビッチの出方 全米2008五日目
クズネツォワダウン、これで第一シードと第三シードが消えた全米2008四日目の女子シングルである。
トップハーフに比べ、やや楽なドローだったボトムハーフはこれでさらに楽になったはずだ。第二シードヤンコビッチは決勝まで邁進しなくてはなるまい。だが昨日WOWOWで放送されていた対チェン・ジー戦を見る限り、余裕があるようには思えない。ストレート勝利だが、二セットとも7−5、強気で攻めてくるチェン・ジーを上手くいなして、ミスさせて、そして競り勝ったという印象のゲームだった。三回戦でこの調子では少し心もとない。これでこの先、いなすことの出来ないほどの相手と相対したときに、ヤンコビッチはどう出るのか。その出方に注目しよう。
2008年08月31日 錦織対フェラー 全米2008六日目
フェラーダウン、男子はトップ4シードの一角が崩れた。これでトップハーフはナダルの独壇場になるだろうか・・・・・・って待てよ、フェラーを負かしたのは誰だ、確か対戦相手は日本の錦織、え、何!錦織がフェラーに勝ったのか!慌ててTVをつけた。WOWOWはライブ中継でなく追っかけ中継でフェラー対錦織戦はファイナルセットに突入したところだった。
全米2008三回戦
錦織 64 64 36 26 75 フェラー
錦織はよく勝ったな、この試合。取ったゲーム数はフェラーの方が多いのである。フェラーは2セットダウンからから2セットオールまで追いついてきたのだ。
ファイナルセットも錦織が先にブレークして先行、マッチポイントまで握ったが、フェラーはそこから5−5まで戻した。大事なところで守りに入らず、攻めの姿勢を貫くフェラー、どんなボールも喰らい着いて打ち返すフェラー、見事なまでの勝利への執念、あれでこそ第四シード、世界No4のプレーである。錦織はそのNo4の壁に堂々と立ち向かい、何度も何度も跳ね返されながらも、あきらめず、自らのテニスを貫き、そして最後の最後のでついに突き破った。ファイナルTB突入をもくろむフェラーのサービスゲームでブレークポイントを握る。フェラーの攻めをかわしてあげたロブがベースライン深くに落ち、それを拾ったフェラーの返球を錦織がフォアハンド逆クロスにジャンピングショットで叩き込んだ。3時間33分、深夜に及ぶ大接戦を見事に錦織は勝利したのだった。
第四シードを倒した以上SFまでいくのが彼の使命だろう。それに応えることができるか錦織、その行方に注目しよう。
2008年09月01日 全米2008後半戦展望
錦織が第四シードのフェラーを破った試合は大反響で、月曜日の朝刊では一般紙でも大きく取り上げられていた。それだけ注目されているということはよいことだ。
全米2008も中日の日曜日を終えた。男子シングルスは、フェラーのダウン以外はほぼ順当のように見えるが、じつは結構シードがダウンしている。そんな中でナダル・フェデラー・ジョコビッチのトップ3シードが勝ち残っていることが全体としての安定感をかもし出しているのだろう。特にフェデラーは今年に入って敗れているステパネックが三回戦の相手だったので、「もしかして今回も」と心配したが、圧倒して勝ち進んだ。
トップハーフを見るとナダルの優位に変わりはない。ついでに日本が期待する錦織の前途は多難だ。次の相手は今年4大会連続優勝した昇り竜デルポトロ、そこを突破すると今度はバブリンカとマレーの勝者である。そしてそこを抜けるとおそらく待っているのは覇王ナダルである。タフじゃー、彼がどこまで行くか、大いに注目しよう。
ボトムハーフはおそらくQFでロディック対ジョコビッチ、ダビデンコ対フェデラーになる可能性が強いと思う。四人ともここからが正念場だろう。ジョコビッチは絶好調というわけではないようだ。第二週に入ってギアを上げられるのは誰か、ここも注目である。
女子は波乱含みだ。ボトムハーフは既に四回戦が終了、QFはヤンコビッチ対バーマー、ディメンティワ対シュニーダーである。当然ヤンコビッチが決勝まで行くべきだが、そこまで圧倒的でない、途中で波乱が起こる可能性は大きいだろう。
トップハーフはウィリアムズ姉妹の進撃が続いている。姉妹対決の後に待ち構えるのおそらくサフィーナだろう。ここが今大会の山場になりそうである。
今年最後のグランドスラムも後半戦だ。更なる熱戦を期待しよう。
2008年09月02日 デルポトロ強し 全米2008四回戦(1)
全米2008男子単四回戦
デルポトロ 63 64 63 錦織
結果をネットで知ってから録画を見た。もう少しデルポトロに一方的にやられたのかと思っていたが、錦織は敗れたとはいえ中々の善戦であった。素晴らしい得点シーンも多々あったし、デルポトロのサービスゲームを何度かブレークしている。全盛期のフェデラーのようなディフェンスからの切り返しが数多く出るようになれば、もっとチャンスが広がると思う。とても期待の持てる内容であったように思う。
さて、全米はトップハーフが四回戦を終了、男子は前出のデルポトロの他にマレー、フィッシュ、ナダルがベスト8に進んだ。QFはナダル対フィッシュ、デルポトロ対マレーである。ナダル優位のこの状況下で、鍵を握るのはデルポトロだろう。彼のテニスは強い。そして勢いがある。ナダルとぶつかった場合、いい試合をしてくれるのではないかと期待している。
女子のトップハーフは第一シードイバノビッチこそ途中敗退したが、それ以外は順当、QFでウィリアムズ姉妹が対決し、反対側からサフィーナとベネッタが勝ち上がる。何度もいうがここが山場だ。全米だけでなく、混迷のWTA2008年の後半戦をも左右する一番になる。大いに注目しよう。
2008年09月03日 スリリングな展開 全米2008男子四回戦・女子QF
ダビデンコダウン、フェデラー・ジョコビッチはフルセットの大苦戦、スリリングな展開となった全米四回戦のボトムハーフである。この全米、フェデラー以上にピリッとしないがジョコビッチだ。SFでぶつかった場合、全豪同様にジョコビッチが勝つだろうと如空は予想しているのだが、ここまでの調子を見ていると、フェデラーの方が優位かもしれないなと思い始めている。忘れてはいけないのは、地味に勝ち上がっているロディックである。まだ如空はこの全米でのロディックを映像で見ていないので、はっきりとしたことはいえないのだが、報道によると、今のロディックはここ数年見せていた繋ぐテニスやらスライスからネットへアプローチするテニスとは縁を切って、デビューした頃のようにビックサーブとビックフォアを打ちまくって、ガンガンに押すテニスをしているという。ロディックは小細工せずにその方があっているのかもな、ミスの数よりウィナーの数が上回れば単純に勝つわけだ。それはかつてのコーチ・ギルバートの哲学とは相反するものであるが、一面真理でもある。
女子はボトムハーフで準々決勝が行われ、ヤンコビッチとディメンティワがSFに進んだ。デメはオリンピックから連勝中である。デメは全米で優勝まですればエントリーランキングNo1の可能性もあるという。ヤンコビッチにとっては高いハードルになりそうである。その高い壁を彼女は乗り越えることができるだろうか。その行方に注目しよう。
2008年09月04日 接戦続く 全米2008QF2
全米2008男子準々決勝
マレー 76 76 46 75 デルポトロ
ナダル 36 63 61 64 フィッシュ
マレーがデルポトロの迎撃に成功した。しかし、凄いスコアだね。大接戦だ。WOWOWで映像を見た。マレーが終始クレバーにテニスをしていたのに対して、デルポトロはよくも悪くも感情的だった。デルポトロは闘志が前面に出ているときはよいが、一方で固くなる場面も多々あり、波が激しかった。デルポトロが高いレベルで安定すればもっと怖い選手になることだろう。
ナダルも勝った。これでSFはナダル対マレーである。未だに対ナダル戦連敗中のマレーは更なる強さを増したナダルにどう挑むのか。ここは注目である。
女子準々決勝
サフィーナ 62 63 ペンネッタ
S・ウィリアムズ 76 76 V・ウィリアムズ
姉妹対決は妹セリーナが制した。だがストレートだが連続TBの大接戦だった。ショットそのものは姉ヴィーナスの方が上回っていた。だが大事なところで連続してポイントを取ったのがセリーナだった。真紅のウェアに身を包んだセリーナは全盛期のような覇気が戻りつつある。その溢れんばかりの覇気を若きサフィーナはねじ伏せられるか。SFサフィーナ対S・ウィリアムズも注目の一戦である。
四回戦からQFにかけて接戦が続いている。男女とも実力が拮抗した乱世になりつつあるのということだろうか。更なる熱戦を求めて、全米2008は準決勝を迎える。
2008年09月05日 4つの道 全米2008QF3
全米2008男子準々決勝
フェデラー 76 64 76 ミュラー
ジョコビッチ 62 63 36 76 ロディック
フェデラーはストレートながらも競ったスコアで勝利した。だが、フェデラー自身のミスは少なく、接戦ではあったもののフェデラーが試合そのもをコントロール化においての内容であったと思う。フェデラーにしては最近ではまれに見る会心の出来ではなかったろうか。特にミュラーの深いストロークをベースライン際で下がらずにライジングでさばくあたりに調子のよさをうかがわせた。
ジョコビッチも順当だった。威力と正確さを併せ持つジョコビッチのストロークの前にロディックは試合序盤封じ込められていた。第三セットからのロディックの反撃は見事ではあったが、集中力を維持できずに大事なポイントで自滅していた。一方、劣勢になっても強い気持ちで抵抗し続けたジョコビッチは見事であった。
フェデラーもジョコビッチもこの全米ではベストパフォーマンスには至らない試合内容でここまで来た。だがようやくギアが入ったようだ。二週間のグランドスラムで決勝戦まで行くことを前提にしている二人らしい展開ともいえよう。
男子も4強が出揃った。SFは下記の通り
ナダル対マレー
フェデラー対ジョコビッチ
第四シードフェラーは錦織の前に敗れた。その錦織を降したのがデルポトロであり、そのデルポトロを破ったのがマレーである。今のマレーには3強に挑む第四の男としてふさわしいだけの資格がある。
ベスト4の男子4強で誰にでも優勝のチャンスがある、そんなグランドスラムは久しぶりだ。それだけに、タイトルの行方は今後のツアーの力関係に影響を少なからず与えることになる。覇王ナダルが覇権を磐石にするのか、双頭の鷲ジョコビッチがナダルとの二強体制に持ち込むのか、元王者フェデラーが復活の狼煙を上げ皇帝の称号を取り戻すのか、マレーがATPツアーを圧倒的強者不在の乱世に導くのか。
4つの道筋のいづれをツアーは歩むのか、その行方を見極めるために、全米男子の準決勝、決勝の行方に注目しよう。
2008年09月06日 円熟の元女王と試される新鋭 全米2008女子SF
全米2008女子準決勝
S・ウィリアムズ 63 62 サフィーナ
ヤンコビッチ 64 64 ディメンティワ
もっと競るかと予想していた。だがウィリアムズとヤンコビチが綺麗に勝利した。今年好調の波に乗る二人のロシア人を退けて、元女王とグランドスラム決勝初進出の新鋭がぶつかることになった。
セリーナ・ウィリアムズが四大大会連続四連勝した頃の強さを取り戻すことはないと如空は決めてかかっていた。特に体型が崩れだしてからはトップランカーにとどまることもできず、その選手生命は姉ヴィーナスよりも短いだろうと予想していた。だが彼女は帰って来た。力強さだけでなく柔軟さも身につけた、かつてとはまた一味違う強さを手に入れて、コートの上に帰ってきている。
優勝した方がWTAのエントリーランキングでNo1になるという劇的な効果を持つ全米2008女子決勝戦、ヤンコビッチが勝てばグランドスラム大会初制覇となり、No1経験者にしてグランドスラムタイトルホルダーという、如空の定義する「女王」にふさわしい資格を得ることになる。しかし、今のセリーナに勝つことは容易なことではあるまい。円熟のテニスを見せ始めているセリーナに対して、未完成のテニスで立ち向かうヤンコビッチはどこまで対抗しうるだろうか。この全米でヤンコビチにかけていると思われていた勢いを準決勝でつけることができただろうか。試されているのはヤンコビッチである。
2008年09月08日 女王の資格 全米2008女子決勝
全米2008女子決勝
S・ウィリアムズ 64 75 ヤンコビッチ
ストレートであったが、好試合だった。強力なサーブとストロークの強打、ネットへの早い詰め、セリーナは本来の武器で果敢に攻め込む。対するヤンコビッチは正確なリターン、粘り強いストローク、そして鋭いパスでセリーナに簡単にポイントを取らせない。2セットとも先にブレークしたのはヤンコビッチだった。第二セットはセットポイントも握っていた。だが攻め切れなかった。セリーナが苦しい状況を乗り切り、けして多いとはいえなかったチャンスをものして、見事な勝利を挙げた。マッチポイントでショートクロスにバックハンドを叩き込んで、優勝を決めたとき、彼女はラケットを夜空に高々と放り投げ、何度も何度も飛び跳ねて喜びを体全体で表した、何度でも。
優勝したセリーナ・ウィリアムズはWTAエントリーランキングNo1の位置に着くことになっている。だが彼女が安定した覇権を確立するとは思えない。特に今日のヤンコビッチのテニスは素晴らしかった。レベルがまた一回り上がったように見受けられる。今度、再びチャンスを掴むときが来れば、今度は決して離すことなく、その手に掴み取ることだろう。敗れたとはいえ、むしろこれで真の女王に必要な何かを学んだのではないだろうか。混沌とし始めたWTAのツアーの中で「女王の資格」を候補者たちに知らしめた、そんな感じのする元女王の復活劇であった。
2008年09月08日
強き者と大いなる器と 全米2008男子SF
嘘だろう・・・この結果、予想できたに者はどれほどいただろう。
全米2008男子準決勝
フェデラー 63 57 75 62 ジョコビッチ
マレー 62 76 46 64 ナダル
ベスト4の4人の内、4人とも優勝の可能性があるとは言った。だが正直なところ決勝はナダル対ジョコビッチ、あるいはナダル対フェデラー、第三候補がマレー対ジョコビッチだと思っていた。まさかマレーがこの大舞台で、一度も勝ったことのないナダルに勝つとは思っていなかった。しかもナダルはおそらくそのキャリアで今最も高いレベルにあるであろう。そのナダルに勝つとは、マレーもなかなかの大器ではないか。
フェデラーはQFをいい感じで勝利した。如空はそれを目撃したのでSFはいい試合ができるだろうと思った。だがそれでもジョコビッチが優位と予想していた。土曜日のSF第一試合で去年の決勝カードは再現された。同時にそれは今年の全豪SFカードの再現でもある。だが試合内容はそのどちらとも違った。第一セットでフェデラーはいきなりギアをトップに入れて入ってきた。サーブの凄みが違った。ジョコビッチをねじ伏せるのだという強い意志が伺えた。フェデラーのシナリオ通りに第一セットはフェデラーがとる。だがジョコビッチは慌てない。ストローク戦で打ち合えば勝つのは自分だという自信が彼にはある。競り合いの中でもクレバーに対応して第二セットをジョコビッチが奪う。ここでジョコビッチが一気に押し切ると思った。事実、今年はここで持ちこたえられなかったからこそ、フェデラーは大事な試合で勝てなかった。この日は違った。ここでフェデラーはさらにギアをあげて、押し返した。ジョコビッチは喰らいつけない。そして振り切られた。久しぶりに見た「圧倒的強者」のテニスであった。
第二試合マレーが二セットを先取したところで雨天順延となった。スパーサタデイは中止、日曜日に男子SFの続きと女子決勝、そして男子決勝は月曜日に延期になった。
全米のシーズンになる度に、日付変更線が太平洋上にあることを恨む。日付変更線を大西洋にもって行ってくれれば、北米大陸はアジアより時間が先に進むので、現地の土曜日の男子準決勝・女子決勝は日本時間で土曜日の朝に、日曜日の男子決勝は日本時間で日曜日の朝にTV観戦することができる。だが現実には男子決勝は日本時間で月曜日の朝である。長引くと出勤前に見終わることができない。まして今回のようにスケジュールが伸びたときにはもうライブでは観戦できない。決勝
準決勝だけはライブで観戦したいと思う如空にとって日付変更線の位置は恨めしい。
ネット上の情報でマレーがナダルに勝ったことを知った。試合内容がどのようなものであったかは、まだ知らない。だがマレー対フェデラーという予想外の決勝カードに、少しわくわくしている。フェデラーの復活なるか、マレーの大器が花開くか、今年最後のグランドスラム男子決勝はこれまでと違ったドラマが待っている。そのドラマの結末を大いなる期待を持って見守ろう。
2008年09月09日 マレーの目に映ったもの 全米2008男子決勝
如空が「皇帝の戴冠式」だったと述べている2004年の全米オープン決勝フェデラー対ヒューイット戦、この試合をマレーはスタンドで観戦していたという。マレーはこの年の全米ジュニアのチャンピオンだった。圧倒的強さを見せ付けて全米初制覇を遂げたコートの中のフェデラーをマレーは観客席で目撃する。やがてマレーはツアーのトナーメントでフェデラーのいるとこまで勝ち上がるようになり、同じコートの中で戦う。対戦成績ではフェデラーに三戦中二勝一敗と勝ち越すマレー。彼の目に同じコートの中のフェデラーは圧倒的強者として映っていたかどうか。そして四年後の2008年全米オープン決勝の舞台で、マレーは初のグランドスラムタイトルをかけて徐々に圧倒的強者とはいえなくなりつつあるフェデラーに挑んだ。
2008全米男子単決勝
フェデラー 62 75 62 マレー
第一セット、トップギアで試合に入り相手を圧倒するフェデラー、彼のいつもの決勝戦の入り方だ。予定通り第一セットはフェデラーが先取した。
勝負は第二セット、フェデラーの調子が落ちた。そしてマレーが本来のテニスが発揮され始める。ビックサーブ、鋭いリターン、長い手足を有効に使った広い守備範囲、そして何より高い打点からのフラットドライブ、マレーのクレバーかつ強いテニスがポイントを奪う。フェデラーのミスが増え、マレーのミスが減る、勢いが拮抗してきた。1ブレークづつ取り合って緊迫した展開となる。マレーには0-40というブレークポイントが来た。だがフェデラーに乗り切られた。5-5まで来る。先にフェデラーがサービスゲームのキープに成功する。6-5でマレーのサービスゲーム、マレーは一歩も引かずにコートを全面に使った前後左右の打撃戦を繰り広げる。フェデラーがリードしてブレークポイントを握った。それでも打ち合いを挑むマレー。コートを縦横無尽に走り回り、フェデラーのウィナー級のショットを切り返す。だが短くなったボールを鋭く切り返し、ネットに詰めようとしたマレーの横をフェデラーはフォアのショートストレートで抜き去った。フェデラーはブレーク成功、第二セット7-5で連取、ここで勝負が決まった。
第三セット、再びギアを上げたフェデラーの前にマレーは押し切られた。少なくとも今日のマレーの目には今日のフェデラーのテニスが「圧倒的強者」のテニスとして映ったことだろう。
フェデラーは全米5連覇を達成し、これで今季グランドスラム無冠は免れた。全仏・全英・全米の三大会連続決勝進出は見事でもある。翻って見れば、今季強力な存在となったナダルも今年の全仏の第一週までは今まで通りのレベルであった。QFの対アルマグロ戦で突然強くなった。フェデラーもまた全米の第二週で突然ギアが上がったように思える。今季中盤のナダル同様、フェデラーもまたここから快進撃を始めるのだろうか。それともナダルやジョコビッチ、マレーらがそれをも押さえにかかるのか。ここ数年、消化試合になっていたATPツアーの後半戦であるが、今季は壮絶なNo1争いが待っているような予感がする。そんな想像を思わせる、2008全米男子決勝戦であった。