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フェデラーのガリア戦記2008 (全仏スペシャルエディション)

 

2008年05月28日 皇帝はどこへ行った フェデラーのガリア戦記2008

グランドスラムタイトルホルダーにしてエントリーランキングNO1を経験した選手を如空は「王者」と呼ぶ。サンプラ スも、アガシも、クエルテンも引退した。ATPにおいて現役の王者は如空の知る限りモヤ、サフィン、ヒューイット、ロディック、フェレーロ、そしてフェデ ラーの六人である。ジョコビッチもナダルもグランドスラムのタイトルホルダーでありながらエントリーランキングでNO1になっていないために、如空の定義 するところの「王者」にはなれない。ナダルとジョコビッチが今までにたたき出しているポイントは十分過去の王者たちに比べて遜色ない数値である。しかし、 フェデラーと同じ時代に生まれてしまったがために、彼らは王者にはなれない。そしてフェデラーがNO1になってからグランドスラムタイトルを取れたのは、 ジョコビッチとナダル以外では、わずかに2005年全豪サフィンと2004年全仏ガウディオだけ、マスターズカップも2005年のナルバンディアンだけで ある。2007年と2008年は全仏をナダルに譲っただけで、リトルスラムを連続して達成し、マスターズカップも連覇した。それほどまでに圧倒的な存在で あった。だからこそ、このATPに君臨する圧倒的強者の存在を形容する言葉に「王者」という言葉は余りに役不足であると思い、2004年の全米を制して自 身初のリトルスラム(GS四戦中年間三勝)を達成した時に、如空はフェデラーのことを王達をも従える「皇帝」という称号を与えて、今日に至る。
だが今、コートの中にいるフェデラーは如空が「皇帝」と呼んだ男ではない。
「単核症の感染により、今季に入って不調の続くNo1フェデラー」と報道では言われているが、フェデラーの全豪SF敗退とその後のマスターズシリーズ今季 無冠の原因は病気によるものだけだろうか。去年の後半と今年の前半でフェデラーのプレーに大きな違いはあるだろうか。如空の目には違いは見受けられない。 病気だけではない、対戦相手がいきなり成長したわけでもない、緩やかな衰えがフェデラーに迫りつつあるのではないだろうか。
フェデラーは去年、マスターズシリーズで大苦戦した。グランドスラムでも、2008全豪こそ失セット0優勝という驚異的な強さを発揮したが、以後全仏は決 勝敗退、全英はナダル相手にフルセットの死闘、そして全米決勝もストレートではあるが、ジョコビッチに試合内容で押されつつあった。2007全豪の時点が フェデラーのキャリアの中でもその強さがピークであったと思う。その直後のMSインディアンウェルズ・マイアミの対カナス戦の連敗から緩やかな衰退が始 まっている。もしもフェデラーが復活することなく、大きな大会で優勝できずに、このままずるずるとポイントを失って行き、NO1を陥落するようなことがあ れば、カナスの連敗が「終わりの始まり」だったと言われることになる、という如空の予言が不幸にも的中してしまうことになる。
苦戦するだけでなく、結果としての連続勝利、つまり優勝が出来なくなった。フェデラーは今でも強い、だが圧倒的に強いわけではない。圧倒的強者でなければ「皇帝」とはいえまい。
衰えが「緩やか」であることが問題を厄介にしている。突然連続で初戦敗退の大スランプ、とか怪我による長期の戦線離脱、あるいはフェデラーおもしのぐ強力 な選手の出現、などわかりやすい事象があれば、原因を探り、その対策を練り、実行し、実現できれば更なる高みに上れるだろうし、実現できなければ出来な かった己の無力を恥じればいい。だが、今のフェデラーは何が原因で「少しだけ弱くなった」のかが理解できていまい。如空にもそれはわからない。少なくても 単核症の感染だけが原因ではないだろう。病気なのだから体力は落ちる、集中力も切れる、技術にも正確さを失う。だがそれは去年の春先から同じようなテニス の内容であったと如空は思う。TV中継の画面の中のフェデラーを見ての素人の印象でしかないが、そう思う。だから病気は数ある原因の一つではあるかもしれ ないが、決定的な原因ではない、そう見ている。小さな、ほんの小さないくつかの不具合が連鎖してフェデラーの身に起こっており、強さを圧倒的なものでなく してしまった。そう思う。
圧倒的強さを何年も維持し続ける事は非常な困難を伴うことだ。ここまでNO1を続けていたこと自体が奇跡とも言える。「少しだけ弱くなった」ことは時間と ともに訪れる不可避の現実かもしれない。またこれは一時的な状態で、フェデラーは再び圧倒的強者に戻るかもしれない。先の事はまだ誰にもわからない。だが 全仏突入時点で去年までの強さを持ちあせていない事は事実だろう。
この厄介な状態で、フェデラーは今年もガリア(フランス)の地に乗り込んできた。目指すは全仏タイトル、これさえ取れば生涯グランドスラムが達成される。 No1在位期間の長さを見ても、稼ぎ出したポイント数・勝ち星・タイトル数・賞金額、どれをとっても彼の記録は偉大であり、グランドスラムのタイトル数も 12でサンプラスの14まであと二つと迫っている。これほどの強さを持ちながら、それでも果たせぬ生涯グランドスラムとはどれほど高い山なのだろうか。ク レーのタイトルも持ち、クレーは苦手ではないどころか得意と言ってもよい。だが全仏は二度も決勝に進んでいながらつかめぬタイトル、赤土の覇者ナダルが守 り続ける全仏タイトルは、フェデラーにとって、今年はさらに高い山になっているのではないだろうか。それでも挑まなければなるまい。なぜならば、彼が最も 耐えられない事は自己蔑視であろうから。
そしてローランギャロスで全仏は開幕した。

2008全仏一回戦
フェデラー 64 64 63 クエリー

スコアだけ見ればストレートの完勝であるが、WOWOWで中継された映像を見る限り、やはり不安要素は多々あった。クエリーはシードこそついていないが、 その実力は事実上シード選手であろう。初戦の相手としてはなんとも厳しい。ビックサーブにビックフォア、ライジングでさばく独特の両手うちバックハンドか ら繰り出されるアングルショットは見事である。フェデラーは前半は自身のショットに自信が持てないのか、少しもたつき、クエリーにサーブを破られたりして やや不安定であった。後半になると調子を高いレベルに安定させることに成功した。彼の代名詞である回り込みのフォアハンドからの連続攻撃も何度も見られ た。回り込むときにサイドステップでピョンピョン飛び跳ねて回るあの独特のフットワークが何度も見られた。ウィナーも量産した。だが後半調子を上げたのは クエリーも同様で、その強打にフェデラーが押し込まれるシーンも多々あった。またクエリーは武器であるサーブの確率がこの日前半が悪く、そこに助けられた 部分もあった。
具体的なプレーに目を移せば、フェデラーの「少しだけ弱くなった」部分というのはディフェンスであると思う。強い時のフェデラーはプレーが攻守一体で、攻め込んできた相手のウィナー級のショットを見事な切り返しで逆に自分のポイントにしてしまう。そして、相手に行きかけていた流れを強引に自分の元に引き戻 す。この攻守一体のプレーがあまり見られなくなった。相手に攻め込まれると防戦一方になって、押し切られるシーンも増えた。守備力が落ちた状態で攻撃力までが落ちると、勝てなくなる。こうして負けてしまうパターンが少し増えた。一回戦のクエリー戦もその兆候が多々見られた。幸い攻めが後半完璧で崩れなかったからストレートで押し切れたが、ナダルやジョコビッチ相手ではそうは行くまい。
最後まで攻めきれるか、そして守り抜けるか。自分を信じて貫くことが出来れば、タイトルは取れる。その延長線上には生涯グランドスラムがある。
フェデラーの挑戦がまた始まった。今年もその過程を書く。今年も結末の予想はつけにくい。
過去の記事はこちら
フェデラーのガリア戦記 2005
フェデラーのガリア戦記 2006
フェデラーのガリア戦記 2007

 

2008年06月01日 誤算と期待 フェデラーのガリア戦記2008

2008全仏二回戦
フェデラー 67 61 60 64 モンタネス
2008全仏三回戦
フェデラー 63 64 62 アンチッチ

二回戦、モンタネスに第一セットをTBの末に落とした。だがそのことが結果としてフェデラーの目を覚まさせたのだろうか。そこからは圧倒であった。三回戦 の対アンチッチ戦も順当で隙なしである。三回戦はWOWOWで中継されていたので、映像を見ることができた。アンチッチはトップランカーであった頃の強さ を徐々に取り戻しつつある。三回戦で当たるには厄介な相手でフェデラーにはタフドローだと予想していたが、内容では見事にアンチッチを押さえ込んだ。ギア をトップに上げているという感じではないが、全てのプレーでフェデラーはアンチッチを上回り、そしてスコアでも上回った、そんな感じであった。サーブが強 い、ドロップショットのキレは見事、何よりフォアの逆クロスのキレが良かった。特に第二セットのブレークゲームで見せたフォアハンド逆クロス三連打は見事 だった。最初はスピンでややセンターより、次がコーナーにフラットドライブ、そして最後はためを作ってストレートもあるぞと見せてからサイドラインに鋭く 打ち抜く。徐々にスピードが上がり、徐々に角度が厳しくなる、理想のフォアハンド逆クロスの連続攻撃であった。
強い頃の安定感を徐々に発揮しつあるフェデラー、彼のドローは今回タフであると思われたが、実際はどうだろう。3回戦が終わったところで残りの4回戦、準々決勝、準決勝の展望を見てみよう。
フェデラーの四回戦の相手はノーシードのベネトー、準々決勝はゴンザレスとジネプリの勝者である。強打のゴンザレスは南米育ちでクレーを得意にしている。 去年、全豪で決勝にまで進んだ、何より去年末のマスターズカップでフェデラーを一度破っている。一度負けた相手は再戦で圧倒するフェデラーである。ここで 圧倒できるか、苦しむか、ここが大きな分岐点であろうが、今のところのフェデラーのテニスがそのまま発揮されればまず突破は可能であろう。
順当に行けば準決勝の相手となるはずの第四シードダビデンコが三回戦で敗退した。ダビデンコはフェデラーにとってお得意様、未だに負けていない。ダビデン コが上がってきてくれた方がフェデラーにとってはよかったかもしれない。だが今年は事故が多い、ダビデンコも同じように連敗中であったナダルに勝ってMS マイアミを取ったところだし、ここは避けて通れたことはラッキーであったかもしれない。さて本来ダビデンコの山であったトップハーフの下半分はリュビチッ チ、モンフィス、ステパネック、フェラーの四人が勝ち残っている。順当に行けばフェラーだが、フェデラーはガンガン打ってくるフェラーとは相性がいい、 ビックサーブのリュビチッチもそうだ。問題はMSローマまで土を付けられたステパネックであろう。フェデラーはオーソドックスなプレーをするタイプには強 いが、変則的テニスをする相手には、時に苦戦して、時に敗れる。十分な注意と変則技に惑わされない強気の攻めが発揮されれば、それでも突破してきてくれる ことだろう。
願わくば、最強のフェデラーを決勝のコートに立たしてほしい。それが可能であるかのように見受けられる全仏の第一週であった。期待通りに進むことを祈っている。

2008年06月04日  今現在の力量 フェデラーのガリア戦記2008

2008全仏四回戦
フェデラー 64 75 75 ベネトー

WOWOWで少しだけ放送されたが、全容を観戦できなかったので、詳しい内容まではわからない。だがこのスコアを見て、ストレートの快勝と見るか、3セット連続で競り合いになったと見るか、難しいところである。
フェデラーは相変わらず、クレーの上でも、サーブの力は強い。また早い段階での攻め、3球攻撃などの速攻では圧倒的な力を発揮している。だが問題は少し甘 くなったディフェンス、それに伴い、長いラリーでのポイント獲得率が落ちた。それが波を相手に渡さず、自分に引き寄せる布石になっていた粘りを少なくして しまい、やや苦しくなっているように思う。
さあ、次はゴンザレスだ。去年の全豪決勝のように圧倒できるか、あるいは去年マスターズカップのラウンドロビンのように競り合いになってしまうのか、フェデラーの今現在の力量を見極めるのにいい試合になりそうである。

2008年06月05日 近づく対決 迫る対決 フェデラーのガリア戦記2008

2008全仏QF
フェデラー 26 62 63 64 ゴンザレス

第一セット、ゴンザレスの強打にフェデラーも強打で対抗しようとした。だが明らかにオーバーパワーでミスを多発、自滅してフェデラーはセットを落とした。 第二セット、慎重に相手を動かして、オープンコートにコントロールショットを入れる戦術でポイントを稼ぎ、それ以降は安定した内容で3セット連取して、ゴ ンザレスを下した。だが第二セットから第四セットまで、強打の猛攻を仕掛けようとするとミスになって、完全には波に乗れ切れていなかった。
WOWOW試合中継の解説によると、四回戦の対ベネトー戦では各セットでフェデラーは先行した。だがサービング・フォー・ザ・セットを迎えたところで、 サービスゲームをキープできず、ベネトーにブレークされて、競り合いになったらしい。フェデラーの試合後の会見でサーブが三回戦までと違って不調であった と述べている。
サーブやハードヒットが日によって波がある。ディフェンスにもやや甘さがある。全ての不安要素が一試合に集中して発現すれば、フェデラーは負ける。だが不 安要素の一つくらいが発露したくらいでは問題ない、強いときの皇帝のテニスができる。皇帝のテニスができれば負けない。少なくともここまでは。
準決勝は予想外の相手となったといってよいだろう、フランスのモンフィスである。彼はまだ若い。日に日に成長し変化していっていることだろう。予想しつらい相手であるからこそ、強いテニスで圧倒したいところだ。長引けば相手のペースにされてしまう、それは今のフェデラーは避けたいところだろう。
関心事がもうひとつ、フェデラーのいないところで大一番が迫っている。ボトムハーフの準決勝ナダル対ジョコビッチである。第三シードジョコビッチがトップハーフでなくボトムハーフに入った事はフェデラーにとっては幸運であった。ドラマティックな展開としてSFで第三シードジョコビッチ撃破、決勝で第二シー ドナダル撃破、生涯グランドスラム達成というストーリーを期待したいところだった。だが、天は今回ジョコビッチをナダルとの対決に導いた。フェデラーはSFを突破し、後は決勝で挑戦者を第一シードとして迎え撃てばよい。ナダルが牙城を守るのか、ジョコビッチが切り崩して来るのか、その結果はフェデラーの 覇業に大きくかかわることになる。だが、フェデラーは今、双頭の鷲と赤土の城塞の対決に関心を奪われることなく、目の前の相手、モンフィスの挑戦を迎え撃つことに専念していることだろう。運命の対決は徐々に迫っている。


2008年06月07日 あいつが待っている フェデラーのガリア戦記2008

去年の全仏優勝後、今年のヨーロッパクレーシーズンが始まるまで、ナダルはトーナメントで優勝できなかった。ナダル がNO2になってからの成績を考えると、今季はクレーシーズン以外ではもっとも出来の悪いシーズンであったといえる。その間、ウィンブルドン決勝での対 フェデラー戦でのフルセットの末の敗北、全米QFでの対フェラー戦の敗北、そして今年全豪SFでの対ツォンガ戦での惨敗、MSマイアミ決勝対ダビデンコ戦 での惜敗など、常人であるならば大きな傷になったであろう苦い敗北を経験してきた。だが、ナダルは常人ではない。欧州赤土戦線と如空が呼ぶヨーロッパク レーシーズンが始まると、それまでの苦戦などまるでなかったように、クレー最強のテニスが戻ってきた。MSモンテカルロで優勝、MSローマでこそ、足元を すすくわれたが、それでもMSハンブルグでは初優勝を遂げて、欧州赤土戦線の完全制覇を成し遂げた。そして全仏オープンが始まると、その強さはさらに勢い を増していった。
MSハンブルグSFでナダルはジョコビッチに追い詰められていた。エントリーランキングではこの試合で負ければNo2とNo3の交代が起こるところであっ たし、試合内容でもナダルはジョコビッチに押されていた。クレー最強のテニスにジョコビッチは互角に渡り合う。ハードコートだけでなくクレーでもその覇権 を狙う「双頭の鷲」ジョコビッチは、それだけの力がクレーであることを知らしめていた。ナダルは、際どい接戦の末にジョコビッチを退けたが、次の対戦では ジョコビッチに追い抜かれるかもしれないと、そう思われた。
ナダルはその予想を見事に覆して見せた。

2008全仏男子準決勝第一試合
ナダル 64 62 76 ジョコビッチ

ジョコビッチ自滅、明らかに力みがあった。左利きのナダルに対して、そのバックハンドにボールを集めるためのバックハンドダウンザラインが、ことごとく ネットにかかる。そしてサーブも不調、第一、第二セットをナダルに渡してしまう。第三セット、ジョコビッチはようやくサーブ・ストローク共に当たりが出始 めた。まだ遅くはない。ナダルのサーブイング・フォー・ザ・マッチをブレークして切り抜けると、一気に逆襲してTBに持ち込む。だが、ナダルは慌てない、 ジョコビッチの隙を突いて、貴重なポイントを握ると、そのリードを守りきって、ストレートでジョコビッチを撃破、今回もまたNo2の座を守りきった。
ローランギャロスでは無敗の赤土の覇者ナダル、それまで成績がどうであれ、このガリアの赤土の上に立てば、彼の全身に力がみなぎり、クレー最強のテニスが 蘇る。ジョコビッチの自滅は、もちろんジョコビッチ側の原因であるが、同時にナダルのスピン・スライス・サイドスピンなどのサーブとストロークで繰り広げ られる強烈なボールの回転がジョコビッチの精密なテニスを狂わせた結果でもある。QFでのアルマジロもそうであった。うねるように飛行するあのボールは、 ガリアの赤土の上で更なる強烈な変化を生み出し、強打もコントロールも狂わし、相手を自滅させる。その魔性の回転がここに来てますます威力を増しているの だ。
今年は崩れるか、と思われた赤土の上の城塞は今年も健在であった。難攻不落の城壁を今年もナダルは守り抜き、決勝に勝ちあがった。そして彼は待っている。彼が来るのを待っている。「俺も来たんだ、あんたも来いよ。」赤土の覇者はそういっている。
あいつが決勝で待っている。ガリアの頂点で待っている。負けるわけには行かない。自分の側にどんな事情があるにせよ、ここを突破しなければない。それが天に与えられた自らの使命なのだから。

2008全仏男子準決勝第一試合
フェデラー 63 57 63 75 モンフィス

フェデラーは第一セットを順調に取った。モンフィスの側にはフェデラーを崩せるほどの凄みが感じられない。これはこのままフェデラーが行くと見られた。だ が、モンフィスの武器は長いリーチから繰り出される、切り返しのカウンターショットである。特にフォアサイドの側で振られた時に、見事な面操作で予想外の コースのカウンターウィナーを奪う。フェデラーもそのカウンターにやられた。第二セット、先行したものの、観客を味方につけて反撃を開始したモンフィスに 追いつかれ、追い越された。セットオールになる。第三セット、警戒したフェデラーは攻めを厳しくして第三セットを奪う。が、その厳しい攻めに、若いモン フィスは対応し、再びカウンターを決め始める。そして厳しい攻めは同時にリスクを背負う。フェデラーの側にもミスが生まれ、第四セットでは5-5まで競り 合う。フェデラーは集中して最後の二ゲームを連取し、未知の才能を開花させつつある若者の猛追を制した。
今年もナダルが待つところまでフェデラーは駆け上がってきた。3年連続決勝進出、4年連続での対ナダル戦が実現する。ローランギャロス常勝無敗、ガリアの 地に聳え立つ高い城、赤土の覇者ナダルに今年もフェデラーは挑む。その壁を乗り越えるまで、何度でも、何度でもフェデラーは挑む。何度でも。今年の挑戦の 結果は如何に。いよいよ今季欧州赤土戦線の最終決戦である。

 

2008年06月09日 厳しい現実 フェデラーのガリア戦記2008

フェデラーが公開処刑されるシーンを見ることになるとは、誰が予想しえたであろうか。

2008全仏男子単決勝
ナダル 61 63 60 フェデラー

第一セット第一ゲーム、両者静かな立ち上がりであるが、フェデラーの側にややミスが多い。静かなまま、フェデラーは最初のサービスゲームをブレークされ た。第二ゲームでフェデラーは早い攻めを見せブレークポイントを握るが、攻めきれずにデュースになり長引く。フェデラーのミスとナダルのサーブの力でここ はキープされた。フェデラーはミスが多発し始めた。ナダルはボールを入れるだけでポイントが取れる。フェデラーはポイントが取れない。連続ブレークを含む 4ゲーム連取でナダルが第一セット6-1で先取した。
フェデラーはゲームどころかポイントがロクにとれない。ナダルが2ゲーム連取した。第三ゲームでフェデラーは綺麗なウィナーをようやく連続させ、ナダルの サービスゲームをブレークした。次のフェデラーのサービスゲームでナダルがまたもやブレークポイントを握るとこまで追い込むが、フェデラーは見事なアング ルショットとパスでピンチを切り抜け、キープに成功した。2-2、ようやくフェデラーの方にもエンジンがかかり始めたようであった。フェデラーがいいテニ スを展開し始めた。だがいいところでミスが出て波に乗り切れない。フォアの難しいローボレーを3回連続で決めたかと思えば、フォアの逆クロスが甘くてナダ ルに逆襲を喰らう。フェデラーとナダルの一進一退の攻防が続く。苦しみながらもキープが続くが、第八ゲームで、ナダルがついにブレークに成功した。5-3 でナダルのサーブイング・フォー・ザ・セットが来る。ナダルはシッカリと決め、フェデラーはその圧力に抗しきれない。ナダルキープ成功、6-3でナダルは 2セット連取した。
第三セットもフェデラーのサービスゲームがブレークされて始まった。ナダルの圧力の前にミスを強要されるフェデラー。第三ゲームも第五ゲームもブレークさ れた。サーブイング・フォー・ザ・チャンピオンシップも圧倒、チャンピオンシップポイントも一発で決めた。フェデラーのミスで試合は終わり、観客は静かに ナダルの4連覇を見届けた。
ナダルは失セット0優勝、そしてこの決勝戦対フェデラー戦で3セット18ゲーム取る間に4ゲームしか落とさなかった。第三セットは完封だった。フェデラー がセットを完封されたシーンを如空は初めて見たような気がする。この一年間やや低迷した感のあったナダルだが、全仏が始まってみれば過去最高のパフォーマ ンスを発揮した。今のナダルは自らのテニスキャリアの中でもっとも高みに駆け上がり、更なる高みに上っていくだろう。フェデラーは置いていかれるのだろう か。こうしてフェデラーの挑戦は今年も最後で同じ結末を迎えて終わった。過去の挑戦の中でもっとも厳しい結末であった。


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