第076房
2008年 MSモンテカルロ・ローマ・ハンブルグ大会 TV観戦記(2008/11/22)
2008年04月22日
2008欧州赤土戦線本格化
今年の欧州赤土戦線は早くも白熱化する。
ATPではマスターズシリーズ第三戦モンテカルロ大会が モナコで開催されるのだ。MSクレー大会の初戦となるこの大会の第一シードはフェデラー、第二シードはナダル、第三シードジョコビッチ、第四シードダビデ ンコ、以下フェラー、ナルバンディアン、ガスケ、ユーズニー、マチュー、モヤ、モナコ、ロブレド、フェレーロ、マレー、カルロビッチ、コールシュライバー と続く。
さて、拾い物の勝利とは言え、今季初優勝をクレーで手に入れた「皇帝」フェデラー、去年の全仏よりタイトルに恵まれない「赤土の覇王」ナダル、ハードだけ でなくクレーでもそのタイトルを狙う「双頭の鷲」ジョコビッチ、そして3強との距離を詰め始めている「第四の男」ダビデンコ、このトップ4シードは本来の 実力では他の選手よりも飛びぬけている存在ではあると思うし、それはクレーでも変わりはないと思う。だが、この数ヶ月の混乱を見るにトップ四シードが四人 とも途中敗退もあるかも知れず、結果は予想し辛い。それだけに面白くなってきたともいえる。地中海を背景にした世界で最も美しいクレーコート、モンテカル ロで週末にセンタコートに立っているのは誰だ。今回もGAORAが生中継だ。熱戦を期待しよう。
2008年04月26日
四強揃い踏み 2008MSモンテカルロ大会
2008MSモンテカルロQF
フェデラー 57 62 62 ナルバンディアン
ナダル 61 75 フェラー
ジョコビッチ 64 60 クエリー
ダビデンコ 63 46 75 アンドレエフ
来た来た、4人が来た。エントリーランキングトップ4がトップ4シードなったこの大会で、四人ともSF進出、トップ4シードのベスト4そろい踏みである。 ただでさえランキング通りにいかない波乱のクレー大会である。今年前半の混乱を見るに、ひょっとしてかなり荒れることも予想していただけに、この順当なる 結果に少しの驚きを感じてしまう。
さて準決勝セミファイナルの組合せは下記の通り
第二シードナダル対第四シードダビデンコ
第一シードフェデラー対第三シードジョコビッチ
さて、孫悟空対ピッコロ・・・・・・じゃなかった、要塞ナダル対バルカン砲ダビデンコ戦が赤土の上で再戦される。マイアミ大会ではついにナダルから勝利を?ぎ取ったダビデンコ、クレーコートの上でもナダルを倒せるだろうか。今、ダビデンコはナダルにとって大きな壁になりつつある。それを阻止できるかナダル。去年のMSローマ大会SFでの死闘の再現も予想される注目の一番である。ちなみにナダルはロブレドと組んだダブルスも勝ち残っているぞ、元気だな。
クレーコートでは皇帝フェデラーと双頭の鷲ジョコビッチはどちらが強いかな。ジョコビッチ自慢のディフェンス力とカウンターショットはクレーでは効果が落 ちるだろう。ナダルさえいなければクレーでも最強の存在であろうフェデラーとの攻防にジョコビッチはどこまで対応できるか。今年の全豪SFでの敗戦が皇帝苦闘の今季の始まりだ。フェデラーもそのリベンジをこのクレーで果たしたいところだろう。こちらも注目である。さて、GAORAの生中継も日本のゴールデンタイムになっている。今週末は楽しめそうだぜ。
2008年04月27日
2008MSモンテカルロSF
審判のコールはフランス語、青い地中海を背景に、世界でもっとも美しい赤土のコートで、2008年4月最終週のATPエントリーランキングトップ4が激突した。
2008マスターズシリーズ第三戦モンテカルロ大会準決勝
第一試合
ナダル 63 62 ダビデンコ
ダビデンコの配球も展開も間違いはなかった。彼にミスはない。ただ、ナダルはそれらを全て拾う。ウィナー級のショットも拾う。そして切り返す。クレーコー トの上でのそのコートカバーは相変わらず驚異的だ。打っても打っても返される。戦術も配球もあったものではない。長いデュースも最後にはダビデンコが力尽 きる。そうしてナダルがゲームを取っていく。ハードコートの上では元気のなかった要塞はクレーコートの上では今年も厚く、堅牢に、そして高くその城塞をそ びえさせていた。赤土の上の城塞健在、覇王ナダルが自らの支配する王国に戻って来たことを告げるような、そんな試合であった。
第二試合
フェデラー 63 32 ret ジョコビッチ
第一セット第七ゲーム4-3までは互角の展開、ジョコビッチが押しているかとも思われた。第八ゲーム、ジョコビッチのサービスゲームでデュースになる。長 いデュースの後、ジョコビッチのバックハンドがラインを割り、フェデラーがブレークに成功した。その1ブレークで十分だった。ジョコビッチには3回あった ブレークポイントを生かせなかったがフェデラーはそのたった一度のチャンスをもにした。第一セット6-3でフェデラーが先取する。
第二セット、ダブルフォールトでサービスゲームを落としたジョコビッチは、すぐさまリターンから攻め立て、ラブゲームでブレークバック、2-2とする。次 のジョコビッチのサービスゲーム、長いデュースになる。うまく展開しているのだが、最後のショットが決まらずにしゃがみこんでしまうジョコビッチ。最後も バックがエラーして、フェデラーがまたブレークした。フェデラーリードの3-2で突然ジョコビッチがフェデラーと握手した。ジョコビッチ、体調不良で棄 権。フェデラーが勝利を拾った。
さて、決勝はトップシード12対決である。今年もクレーシーズンはこの二人が競い合い事になるのだろうか。赤土の上の要塞、覇王ナダルがその健在振りを見 せ付けた一方で、ATPに君臨していた圧倒的強者フェデラーはセットこそ取ったが、試合内容はジョコビッチにやや押されていた。3年連続で同一カードなる モンテカルロ大会決勝、欧州赤土戦線での皇帝対覇王の第一回戦はどのような結果になるか。その行方に注目しよう。
2008年04月28日
覇王のモンテカルロ4連覇
宿命の二人、手の内を知り尽くしたもの同士、お互いのサービスゲームをお互いがブレークし合うという激しい打ち合いで試合は始まった。
2008年マスターズシリーズ第三戦モンテカルロ大会決勝
ナダル 75 75 フェデラー
さらに1ブレークをし合って4-4まで行く二人、さらに試合は進み5-5となる。観客席からロジャーコールが沸き起こる。やや押され気味のフェデラーを観 客たちは後押ししようとしているようだが、それは皇帝の力にならなかった。ナダルの6-5で迎えた第十二ゲーム、フェデラーの攻めを鮮やかに切り返し、ナ ダルが三度ブレークに成功、第一セット7-5でナダルが先取した。
第二セットもフェデラーがナダルのサービスゲームをブレークして始まる。第三ゲームでもブレークに成功、フェデラーは3-0でリードする。フェデラーがこ れは行くだろうと思われた第二セットであるが、互いにサービスゲームをキープし合って4-1としたところで、ナダルがブレークを返した。次のサービスゲー ムをキープしてあっという間に4-3で1ブレーク差に迫る。そして更なるブレークにナダルが成功、4-4に追いついた。互いにキープし合って5-5とな る。ナダルが先にキープした。ナダルの6-5で迎える第十二ゲーム、フェデラーは自分のサービスゲームで先行するも、追いつかれデュースになる。先行する も決めきれないフェデラー、そしてナダルに逆にアドバンテージを取られる。ナダルのチャンピオンシップスポイントでフェデラーのバックがラインを割り、ナ ダルが大会4連覇を決めた。運命の第二セットはフェデラーに4ゲーム連取されてからのナダルの見事な逆転劇であった。
今日のフェデラーはファーストサーブがやや不調であったが、逆にフォアハンド・ストロークが冴え渡っていた。クロスにダインザライン、逆クロスと見事な ショットが連発した。バックもスライスを多用せず、安定したスピンを打ち続けた。だがフォアの連続攻撃からネットにアプローチした時点で、ナダルのパスに 抜かれることが多かった。またフェデラーの最大の武器である回り込みのフォアで、ナダルのストロークが深くてボールをふかしてしまうミスが大事なところで 出てしまった。基本的にフェデラーが攻め込んでいるのだが、要所要所でナダルの切り返しがフェデラーの武器をうまく封じ込めた。そしてそのパターンこそ、 クレーの上で何度も繰り返されているナダルの対フェデラー戦の勝ちパターンである。フェデラーはまたしてもナダルに封じ込められたのであった。
今年前半戦で苦戦を強いられ、スランプ説が流れていたフェデラーであるが、負けたとは言え、今日の試合内容は、強かったいつものフェデラーに近いテニスで あったかと思う。だがそれ以上に、ナダルがクレーの上でいつも見せる圧倒的強さを、彼もまた見せ付けた。クレーの上での力関係は今年もまだ変わらない。赤 土の上に聳え立つ難攻不落の城塞ナダル城は今日も健在であった。今年も健在であり続けるだろう。ナダルの支配するこの欧州赤土戦線をフェデラーは攻略する ことが出来るのだろうか。皇帝と覇王の赤土の戦いが今年も始まったのである。今年の欧州赤土戦線の行方は如何に。
2008年05月06日
2008欧州赤土戦線天王山
今年の欧州赤土戦線もまた天王山がおとずれた。
ATPはマスターズシリーズ第四戦ローマ大会が 開催されるのである。第一シードはフェデラー、第二シードナダル、第三シードジョコビッチ、第四シードダビデンコ、以下フェラー、ロディック、ナルバン ディアン、ブレーク、ガスケ、ツォンガ、モヤ、ゴンザレス、モナコ、ロブレド、マチュー、マレーと続く。今年のマスターズシリーズはジョコビッチ、ダビデ ンコ、ナダルがそれぞれタイトルを分け合い、NO1フェデラーのみタイトルがない。この状況では何が何でもこのローマ大会のタイトルが欲しいところだろ う。毎年クレーコートでのベストマッチが繰り広げられる激闘の地ローマ、今年も死闘を欲するのか。例によってGAORAが生中継だ。熱戦を大いに注目しよう。
WTAにも天王山がおとずれる。ドイツのベルリンでカタール・テレコム・ドイツ・オープンが 開催される。クレーでのティアT大会となるこの大会の第一シードはエナン、第二シードイバノビッチ、第三シードクズネツォワ、第四シードヤンコビッチ、以 下S・ウィリアムズ、チャクベターゼ、ディメンティエワ、バルトリ、シュニーダー、サバイ、ラドワンスカ、バイディソワ、サフィーナ、ピアー、ボンダレン コ、ペトロワと続く。シャラポワ不在となったこのクレーのティアT大会、現女王エナンが堂々と現れる。クレーでは圧倒的強さを誇る女王にセルビア勢・ロシ ア勢は如何に挑むのか、そして連勝中のS・ウィリアムズの勢いはクレーでも維持されるのか、大いに注目である。こちらもGAORAで生中継だ。
欧州赤土戦線の天王山、決戦の週末に期待しよう。
2008年05月08日
赤土の城塞崩れる
2008マスターズシリーズ第四戦ローマ大会 二回戦
フェレーロ 75 61 ナダル
毎年、このヨーロッパクレーシーズンではモンテカルロ・バルセロナ・ローマ・ハンブルグ・ローランギャロスと連戦を戦うことになるナダルは、クレーの上で 勝ち続ける結果としていつもここで疲れてしまう。全仏直前のハンブルグはローマ大会での疲労と故障で2005年も2006年も欠場、2007年は決勝まで 進むもそこでフェデラーにクレーでの連勝記録を止められることになってしまう。だがハンブルグで一休みするからこそ、全仏での快進撃が担保されていたとい う見方もある。今年はローマで躓いてしまった。相手はスペインの同胞、元No1にして全仏タイトルホルダーのフェレーロである。忘れた頃に復活するこの 男、先日ロディックがフェデラーを破ったように、フェレーロもまたナダルをクレーで破った。フェデラーが負ける以上にナダルがクレーで負けたことの衝撃は 大きく感じる。それほどのこの数年間、ナダルはクレーの上では無敵だった。クレーコートの上にそびえ立つ高い城塞、難攻不落の要塞、それがナダルだった。 まさに赤土の上の覇王であった。
これでナダルのスケジュールは過去3年とは少し違った形になる。それが全仏の連覇に対してどのような結果をもたらすのか。残る欧州赤土戦線で未だタイトルがないハンブルグ大会と連覇のかかる全仏、この二大会でナダルが如何に戦うのか、その行方に注目していこう。
2008年05月10日
赤土の上のTB
2008マスターズシリーズ第四戦ローマ大会QF
ステパネック 67 67 フェデラー
ジョコビッチ 61 10 アルマグロ
ロディック 63 46 76 ロブレド
ワリンカ 67 76 61 ブレーク
クレー大会QFでフェデラーが負けてロディックが勝ち残っている・・・・・・そしてそこにはもうナダルはいない。なんとも不思議な光景が映し出されている MSローマ大会の準々決勝である。QFまでにナダルだけでなくダビデンコもダウンしている。今季GS(グランドスラム)タイトルもMS(マスターズシリー ズ)格タイトルも取れていないNo1フェデラーにとって、この大会はチャンスであった。ローマ大会はフェデラーが手中にしてない数少ないMSタイトルであ る。しかも今季は第一戦インディアンウェルズがNo3ジョコビッチ、第二戦マイアミがNo3ダビデンコ、第三戦モンテカルロがNo2ナダルと順序良く取っ てきたので、順番から言えば第四戦でNo1フェデラーが優勝すればいいなと思った。そうすれば、4強がMSタイトルを分け合い、全仏・全英が天下分け目の 決戦になると予想していていたが、その予想というか希望は大きく外れた。
フェデラーはステパネックに二セット連続TBの末に敗れた。ワリンカとブレークも二セット連続TBであったがここはセットを分け合い、ファイナルでワリン カがブレークを圧倒した。注目はロディックであろう。クレーの強者ロブレド相手にファイナルセットに持ち込み、しかも最後にTBで勝っているのである。ク レーでは弱いロディック、サーブが強いくせにTBが弱いロディック、そんなロディックがクレーの上でファイナルTBに打ち勝って、ローマ大会準決勝に勝ち 上がってきたのである。
モンテカルロでは棄権でSFを敗退したジョコビッチがこのローマではアルマグロの棄権で勝利を拾った。トップ4シードの中で唯一ベスト4に勝ち残ったジョ コビッチの相手はステパネック、そしてロディックの相手はワリンカである。おそらくは誰も予想できなかったであろうこのSFの組合せの中で決勝戦に勝ち進 むのは誰か、フェデラー・ナダル不在となったこのベスト4のチャンスを生かすのは誰か。大いに注目である。
2008年05月11日
ローマの棄権
2008マスターズシリーズ第四戦ローマ大会SF
バブリンカ 30ret ロディック
ジョコビッチ 61 10ret ステパネック
ロディック君は背中を負傷して、まともにサーブが打てなくなって棄権、ステパネックさんは気分が悪くなり、試合中に吐き気をもよおし、耐えられなくなって 棄権、久しぶりに「なんじゃこりゃあああ」と叫びたくなる準決勝である。さすがに二試合ともリタイアが決まったときは、選手に罪がないことは百も承知の上 で、観客からブーイングが上がっていた。如空のテニス観戦歴を振り返っても準決勝が二試合とも棄権劇となったのはおそらく始めてのように思える。ツアーと はなんとも過酷なものである。
例年ヨーロッパクレーシーズンの天王山となるローマ大会、今年は1・2シードがダウン、準決勝が二試合ともリタイアという大波乱となった。その波乱の大会の決勝はジョコビッチ対バブリンカである。ここはいい試合を見たいものである。
2008年05月12日
双頭の鷲が赤土の上に舞い降りた。
2008マスターズシリーズ第四戦ローマ大会決勝
ジョコビッチ 46 63 63 バブリンカ
美しい片手打ちバックハンドを持つバブリンカは、クレーの上でのストローク戦ではジョコビッチより優位にあった。その勢いを持って第一セットを64で取り きる。だが総合力で優るジョコビッチはネットプレーも絡ませて、攻めに冴えを見せ、守りでは粘り強くバブリンカのストロークの圧力に耐え、第二セットを 63で取り返した。
勝負の行方を左右したのは第三セットの第一ゲームであった。バブリンカのサービスゲームをジョコビッチがブレークに成功した。競り合いに勝つようになったジョコビッチはここでギアを上げ、楽にサービスゲームをキープするようになり、一気にバブリンカを押し切った。
第一セットを落とした時点で、バブリンカに押し切られるのではないかと思われたジョコビッチであるが、徐々に盛り返し、最終セットは完全にペースを自分の ものにしていた。実に見事な逆転劇であった。前半勢いに乗っていたバブリンカは後半ジョコビッチにいつの間にか押される立場になっていた。それでも最後ま で崩れず、自分のテニスを貫いた点は見事である。二人の高いレベルでの競り合いが、好勝負を演出することになった。
ナダルに阻止され、いまだフェデラーが手にしていないMSローマ大会のタイトルをジョコビッチが先に手に入れた。フェデラーもナダルもベスト4に不在の形 での優勝であるが、その意味するところは大きい。フェデラーが支配するハードコートの大会だけでなく、ナダルの支配するクレーコートの大会もその勢力下に 置こうとする「双頭の鷲」ジョコビッチ、その野望がまた一歩前進した。そんな感じのする2008ローマ大会の決勝戦であった。
2008年05月13日
女王二人、セルビア勢二人、ロシア勢二人
欧州赤土戦線の天王山はATPだけでなく、WTAも波乱であった。ドイツのベルリンで開催されていたカタール・テレ コム・ジャーマン・オープンでは現女王エナンと元女王S・ウィリアムズがシードを守れず敗退した。二人の女王を破ったのはサフィーナである。サフィーナは その勢いのままトップハーフから決勝まで勝ちあがる。ボトムハーフではセルビアコンビ、ヤンコビッチとイバノビッチの二人がこちらも勝ち進めなかった。二 人のセルビア人を破ったのはディメンティワである。第13シードのサフィーナと第9シードディメンティエワのロシア勢対決となった決勝戦、第一セットを ディメンティワが先取するも、サフィーナはそこから逆転、今季初優勝を遂げた。サフィーナのティアTクラスの優勝はこれが始めてである。
下克上とでも言うべき大波乱のジャーマン・オープンであった。これからローマ、そして全仏へと展開する欧州赤土戦線は荒れる予感がしてきている。
2008年05月14日
ローマとゲルマニアの混戦
欧州赤土戦線は今年も舞台を中央ヨーロッパに移しながら激化していく。
ATPはマスターズシリーズ第五戦ハンブルグ大会が 開催される。第一シードはフェデラー、第二シードナダル、第三シードジョコビッチ、第四シードダビデンコ、とトップ4シードは不動にして健在である。以下 フェラー、ブレーク、ガスケ、ベルディッヒ、ユーズニー、モヤ、モナコ、ロブレド、ツォンガ、マレー、マチューと続く。ローマ大会SFでの負傷は思ったよ り重症であったのか、第六シードロディックは棄権した。
過去4回優勝しており、フェデラーにとっては自分の庭であると言ってもよいこの大会は、去年、決勝でナダルのクレー連勝記録を止めた大会でもある。そして 赤土の覇王ナダルがまだ手にしていないクレー大会のタイトルでもある。クレーでもその勢力を広げつつあるジョコビッチは今回ボトムハーフでナダルの山にい る。湿気が多くて気温が低めのドイツ・ハンブルグはレッドクレーのサーフェイスにしてはボールが弾まず、ハードコートにその特質は近づくといわれる。これ ら、欧州赤土戦線においてこの微妙に異なる今回の大会の条件下で、選手たちは如何に戦うのか。フェデラーとナダルは今年も決勝まで勝ちあがれるのか。ジョ コビッチ・ダビデンコら実力者たちの更なる台頭で、混迷に拍車をかけるのか。注目のハンブルグはGAORAで今週末も生中継される。
ATPが戦線をローマからゲルマンの地に移動するのと入れ替わりにWTAは戦線をゲルマニアからローマに南下させる。
インタナショナルBNLイタリア大会は。 ティアT大会である。第一シードはイワノビッチ、第二シードシャラポワ、第三シードクズネツォワ、第四シードヤンコビッチ以下、Sウィリアムズ、チャクベ ターゼ、V・ウィリアムズ、バルトリ、シュニーダー、ズボナレワ、サバイ、ラドワンスカ、バイディソワと続く。先週ティアT大会初優勝を遂げたサフィーナ は棄権している。さて現女王にしてクレーの覇者エナンが不在のこのティアTクレー大会、全仏前哨戦として、セルビア勢とロシア勢が激しく競い合う。ローマ で勝利してパリに乗り込むのはだれか、ATP同様混迷に拍車がかかるのか。こちらもGAORAで生中継である。熱戦を期待しよう。
2008年05月18日
ゲルマニア戦役 二強進出
2008マスターズシリーズ第五戦ハンブルグ大会
準決勝第一試合
フェデラー 63 61 セッピ
皇帝フェデラーが久しぶりに「圧倒的強さ」というものを発揮している場面を見た気がする。攻撃力が落ちるクレーコートの上でありながら、ノーシードの相手とはいえ、ウィナーを量産しての「美しいテニス」を展開して、今季マスターズシリーズ格初となる決勝進出を遂げた。
問題は第二試合である。エントリーランキングNo3とNo2が逆転する可能性があるこの試合、結果によっては今後のATPの勢力地図に大きな変化を与えるかもしれない。赤土の上の城塞に双頭の鷲が挑んだ。
準決勝第二試合
ナダル 75 26 62 ジョコビッチ
第一セット、追われる立場であるナダルの側には明らかな緊張があった。ジョコビッチにブレークを許して先行される。ジョコビッチはクレーの上でもしぶとい ディフェンスと鋭い攻めを見せ、クレーの上でも十分頂点に行ける力を見せ付ける。だが、そのジョコビッチの好プレーが、徐々にナダルを目覚めさせる。追い つけないはずのボールに追いつく。届かないはずのボールにラケットが届く。超えないはずのネットをボールが越える。入らないはずのボールがラインをとらえ る。ナダルが、最近忘れかけていた自分のテニスを思い出したかのように、スーパーショットが炸裂させる。後半にブレーク合戦に持ち込み、ナダルが追いつ く。ジョコビッチもナイスプレーを連発して、ナダルの勢いを何度も抑えるが、ナダルの勢いは抑えきれなくなった。一度は逃したサーブイングフォーザセット を二度目では果敢に攻め、最後はフォアの逆クロスを豪快に決めて7-5でナダルが第一セットを先取する。
第二セット、ナダルの勢いを受け止めて、それでもジョコビッチは押し出されない、ぎりぎりで踏みとどまる。緊迫したサービスゲームのキープ合戦の中、1ブ レークをもぎ取ったジョコビッチが、その差を守りきり、最後にさらにブレークを重ね、第二セットは6-2でジョコビッチがセットオールに戻した。
第三セット、第1ゲームをいきなりナダルが先にブレークして先行する。ジョコビッチは次のゲームでナダルがからブレークポイントを握るが、渾身のフォアハ ンドダウンザラインを放つ瞬間、ストリングが切れて、ボールがラインを割った。胸に十字を切り、天に祈るジョコビッチ。だが、祈りは届かず、長いデュース の末にナダルがキープに成功した。激しい競り合いを続けながら、4-2となった第七ゲームで、ジョコビッチの疲労がピークを迎え、ミスを連発してナダルに ブレークを許した。ほとんど致命的とも言うべきこのブレークの後、ナダルのサーブイング・フォー・ザ・マッチで、ジョコビッチはそれでもあきらめなかっ た。必死にナダルの左右の展開に食らいつく。両者スーパーショットの応酬でデュースが繰り返される、何度も何度も。No2の座とNo1への挑戦権をかけ て、覇王と双頭の鷲が激戦を繰り広げる。死力を尽くした攻防の果てに、勝利を手にしたのはナダルだった。3時間を超える長い試合であった。
長いディースにもつれる場面が何度もある接戦であった。パスの上手いナダルに対して、それでもクレーの上で果敢にネットに出て攻撃的であろうとしたジョコ ビッチの戦術に間違いはなかった。実際、奪ったブレークポイントの数はジョコビッチの方が上回っていた。だがブレークそのものの数で上回ったナダル、脅威 のコートカバーと素晴らしいカウンターショットで何度も奇跡的な逆転シーンを演出して見せた。得意のスピンボールだけでなく、ドロップショットの切り替え し、チャンスでのネットへの詰め、ネットに対するパスとロブでの見事な対応、全てのプレーに冴えとキレが戻っていた。あれこそ赤土の覇王ナダルのプレーで ある。ほころびを見せ始めていていた赤土の城塞は再び厚く、高く、強く、聳え立った。ジョコビッチのクレーの上でも見せる高いレベルのテニスに刺激され、 ナダルが蘇ったのだ。ATPの今年の前半戦でのベストマッチではなかっただろうか。
ナダルもフェデラーも自分らしいテニスを取り戻して、決勝に進んで来た。欧州赤土戦線ゲルマニア戦役は宿命の対決皇帝対赤土の覇王の今季二回戦を迎える。ガリア戦役(全仏)を前に主導権を握るはどちらだ。
2008年05月19日
ハンブルグ落城
変えられないものを受け入れる力、そして受け入れられないものを変える力を手に入れるのは、皇帝か覇王か、両雄がまたも決勝で激突した。
2008マスターズシリーズ第五戦ハンブルグ大会決勝
ナダル 75 67 63 フェデラー
自らの「庭」と言ってもよいハンブルグの赤土の上で皇帝は自ら「美しい」と自画自賛する自らのテニスを展開した。第一セット3ゲーム連取でフェデラー先 行、さらに第六ゲームでもフェデラーがラブゲームでブレークに成功、5-1でサーブイング・フォー・ザ・セットを迎える。ナダルはサーブば不安定で、フェ デラーは万全、誰がこの状態から逆転が起こると思うだろうか。だが起こった。ここから6ゲーム連取の猛チャージで、ナダルが第一セットを先取する。前半 ウィナーを量産したフェデラーの攻めが、後半ナダルのカウンターショットで逆に切り返されてしまった。
第二セット第一ゲーム、フェデラーのサービスゲームはまたしても破られる。第二セットもナダルが一気に行くのかと思われたが、その直後の第二ゲームでフェ デラーブレーク成功、これでようやくフェデラーに自信が蘇る。さらにブレークを重ね5-3、第二セットもサーブイング・フォー・ザ・セットを迎える。が、 またしてもナダルにブレークされた。5-4、またしても追い上げられるフェデラー、だが今度は崩れない、第十一ゲーム、0-40から逆転、サービスゲーム でキープに成功、自らに喝を入れた。6-6となり、TBに突入した。食い下がるナダルを振り切り、7-3でTBを取った。第二セットは7-6でフェデ ラー、苦しみながらも対ナダル戦での悪い流れを断ち切った。
第三セット、自信を取り戻しつつあるフェデラーに対して、徹底してフェデラーのバックハンドにボールを集めて攻めるナダル、その攻めが功をそうして第四 ゲームでブレークに成功する。3-1となる。フェデラーは今季最高のパフォーマンスを発揮している。ギアもどんどん上げている。見事なウィナーも量産し始 めた。強い気持ちでボールへの、ポイントへの、そして勝利への執着心を見せる。ブレークポイントも握った。だが城塞は崩れない。ナダルはその1ブレーク差 を守りきった。第三セット6-3でナダルが取った。その瞬間、皇帝が守りつづけていた欧州赤土戦線の最後の砦が落ちた。
ナダルはついにハンブルグ大会初優勝を遂げた。これでMSモンテカルロ、MSローマ、MSハンブルグ、そしてフレンチ・オープンとヨーロッパ・クレーシー ズンの主要4大大会を全て制したことになる。欧州赤土戦線を赤土の覇王は完全制覇した。フェデラーは未だハンブルグのみ、モンテカルロも、ローマも、パリ も、決勝に進みながらナダルに阻まれた。赤土に聳え立つ高き城塞、ナダルを破らぬ限り、彼の手に大きなクレー大会のタイトルは来ない。そしてそれは皇帝の 生涯グランドスラムへの最大の障壁であり続けることを意味しいている。今年もその力関係に変化はない。変わらぬ現実を再認識させられた2008ハンブルグ 大会決勝であった。