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第075房 2008年 MSインディアンウェルズ大会・マイアミ大会TV観戦記(2008/11/21)

 

2008年03月19日 春の嵐2008

心を亡くすと書いて忙しいと読む。今年も心を亡くす春がやって来た。仕事が超多忙モードに突然突入した。毎年年度末 はこうだ。そこにきて確定申告やら家庭の事情とやらでテニスどころではないような3月である。ブログの更新もほぼ2週間できなかった。錦織がブレークに 勝ってATPツアー初優勝を決めた試合もWOWOWでせっかく録画中継してくれたのに、録画の予約を入れる時間さえ取れずに、見逃してしまった。
如空が多忙モードの嵐に吹きさらされていた頃、先々週のATPツアーでも嵐が吹き荒れていた。男子はATPツアーのマスターズシリーズ第一戦に当たるこの大会、第一シードはフェデラー、第二シードナダル、第三シードジョコビッチ、第四シードダビデ ンコ、以下フェラー、ロディック、ナルバンディアン、ガスケ、ブレーク、ベルディッヒ、マレー、ゴンザレス、ユーズニー、マチュー、カナス、ロブレド、と ATPツアーのエントリーランキングトップ16がトップ16シードにそろい踏みした。まさにグランドスラム級大会である。二週目に入ったところでまだフェ デラーもナダルもジョコビッチも勝ち残っている。注目はやはりフェデラー。今季未だに優勝していない。去年はカナスに敗れて、早いラウンドにで敗退した フェデラーは、ここで勝ち進めば進むほどエントリーランキングでのポイントは加算されるという比較的楽な状況ではある。しかし、果たして春の嵐はこのイン ディアンウェルズでもまた吹き荒れるのか。それとも覇権を再び固め始めるのか。そこにナダルとジョコビッチはどう絡むのか。要注目である。
女子はWTAツアーのティアT大会に当たるこの大会、第一シードはイワノビッチ、第二シードクズネツォワ、第三シードヤンコビッチ、第四シードシャラポ ワ、以下ハンチェコワ、バルトリ、バイディソワと続いていく。現女王エナン不在のこの大会で主導権を握るのは誰なのか。こちらにも注目が集まる。
今年からWTAツアーの生中継を始めたGAORAは当然今週末に男女の準決勝・決勝を生中継する。今度は忘れずに録画予約しよう。でも見る時間あるかな・・・・・

 

2008年03月23日 白・紺・紅・そして桜

忙しいズら・・・・・仕事にいかなきゃあ・・・・でも少しだけ、録画したインディアンウェルズ大会の中継を見ていこ う。GAORAで女子準決勝の中継をしているはず。あれれ、先々週のバンガローオープンの決勝を放送している。女子SFの前に進行している男子QFが終わ らないそうだ。生中継だと大変だね。別に男子QFを放送してくれてもいいのにと思うが、放送権の関係でそれはできないのだろうな。GAORAはWTAと ATPで番組も変えているからね。早送りでバンガローオープン決勝S・ウィリアムズ対シュニーダー戦を飛ばす。1時間30分飛ばした。バンガローオープン 決勝の録画放送が終わる。だが現地ではまだ男子QFは終わっていない。GAORAでは辻野隆三のテニススキルアップ講座が始まった。なんだかな・・・・ GAORA解説でおなじみ辻野隆三氏がロブレドのテニスの真似の仕方を解説している。その辻野氏のロブレドなりきり講座も終わった。まだ女子SFは始まらない・・・・・そのうち長いCMの画面の下にテロップが、「WTAパシフィックライフオープン準決勝は本日午後10時00分よりお送りいたしま す。」・・・・・・そして第80回選抜高校野球大会の開会式の中継が始まった。
結局放送出来ずかい!何じゃそれ!早送りして録画を見た時間を返せ!と叫びながら仕事に向う。一日がたった。夜中に仕事から帰ってきてTVをつけたら画面 の中で女子準決勝が録画中継されていた。女子はトップ4シードがベスト4にそろい踏み、第一試合はロシア勢対決、第二試合はセルビア勢対決となった。

パシフィックライフオープン女子準決勝
クズネツォワ 63 57 62 シャラポワ
イワノビッチ 76 63 ヤンコビッチ

そのままウィンブルドンにも出場できるような全身白で統一したウェアで出てきたシャラポワに、濃紺の精悍なウェアでシャラポワの前に立ち塞がったのはクズネツォワ。 今年年頭の全豪オープンからここまで開幕18連勝中だったシャラポワをクズネツォワが止めた。ストロークもネットへの詰めも悪くなったシャラポワだが、 サーブが大事なところで安定しなかったことが響いた。一方でクズネツォワは不安定な部分を時に見せたが、全体として充実した内容で自分のテニスをやりきった上での勝利である。この勝利は自信になったことであろう。
紅のウェアのイバノビッチは桜色のウェアのヤンコビッチを 突破した。チャレンジシステムで何度も覆るという、ライン際の際どいボールで攻め合う好勝負であった。ヤンコビッチは大事な場面で詰めがやや甘かった。一 方でイワノビッチはブレークポイントのピンチをサーブの力で乗り切り、勝負強さを見せた。第一セットは徹底したヤンコビッチのフォアへの集中打、第二セッ トは左右に展開という、ストローク戦での配球も見事であった。
決勝はクズネツォワ対イワノビッチである。トップシードの1・2対決である。女王エナン不在のこのティアT大会、勝つのはどちらだ。その行方に注目しよう。

 

2008年03月24日 要塞・鷲・皇帝そしてお魚劇場

ATPに君臨する圧倒的強者、如空が「皇帝」と呼ぶエントリーランキングNo1のフェデラーは今季まだ優勝がない。赤土の覇者にして難攻不落の「要塞」No2のナダルは去年の全仏から優勝がない。二人の地位を虎視眈々と狙う「双頭の鷲」No3のジョコビッチがその二強にジワリと迫ってきている。そんな状況下の今年のマスターズシリーズ開幕戦でNo1・2・3が順当に勝ちあがり、ベスト4に進出してきた。

ATPマスターズシリーズ2008年第一戦インディアンウェルズ大会
準決勝第一試合
ジョコビッチ 63 62 ナダル

第一セット序盤、今季初対戦の二人、キープし合った後ブレークし合って、静かにお互いの力量を測りあう。徐々にラリーが長くなる。互いのギアが上がってい く。第八ゲーム、ナダルのサービス・ゲームで長いデュースになった。最後にジョコビッチのボールがネットインして、それをナダルが拾いきれなかった。結果 としてジョコビッチがブレークに成功し、そのまま第九ゲームもキープ、最後はサービスエースで決めて、第一セットは6-3でジョコビッチが先取する。
ナダルは左足親指の肉刺を治療して第二セットに入った。ナダルは悪くない。リスクを犯して攻めに行くボールが入る。前半ナイスショットやウィナーが多いの はナダルである。だがジョコビッチの圧力が徐々に増していく。第五ゲームで先にジョコビッチがブレークに成功した。次のサービス・ゲームをキープし、 4-2になった。第七ゲームでもジョコビッチはブレークポイントを握った。ナダルのバック対ジョコビッチのフォアによる強打の応酬がクロスで展開される。 ナダルがフォアに回り込んだ。オンラインの深い逆クロスが入った。だがジョコビッチはそれをライジングで返球、我慢しきれないナダルはドロップショットを 放つがそれはネットを越えなかった。ドロップショットを放った瞬間にミスを確信したナダルはうなだれて、ボールがネットに触れる前にベンチに引き上げる。 対照的に雄叫びを上げるジョコビッチは、次のサーブイング・フォー・ザ・マッチを危なげなくキープして6-2でセット連取、ストレートで去年の覇者ナダル を下した。思い起こせばこのカードは去年のインディアンウェルズ大会決勝戦の再現であった。だが結果は去年の再現とはならなかった。
ジョコビッチはまるでNo1になった頃のヒューイットのごとく、どんなショットも切り返す。ハードコートでのディフェンス力はナダルをもしのぐ。ハード コートの上では難攻不落の要塞は今ではこのジョコビッチの方だ。強打の応酬の中でもミスが少ない。そして守るだけでなく攻めてくる。ナダルをもってしても 崩せない鉄壁の強さを身につけつつあるのが今のジョコビッチであるといえよう。ナダルは出来が悪かったわけではなく、むしろハードコートのプレーにして上 出来であった。この大会で、全豪SFでやられたツォンガにリベンジし、連敗中であったブレークを突破してここまで勝ち上がったのは、彼のハードコートでの 強さを示している。だが今後、No2としてのナダルの立場を考えるとき、このハードコートの上でフェデラー以外にナダルをしのぐ相手がいることは大いなる 脅威となるであろう。今年の後半戦でこのことがどうトップランカーの力関係に影響を与えていくか、見ものである。
そして、春の嵐は今年もインディアンウェルズに吹き荒れた。

準決勝第二試合
フィッシュ 63 62 フェデラー

フェデラーはウィルス性の疾患を抱えて、体調は万全ではないらしい。一方でフィッシュはショットが鋭い。サーブが強い。その上チップ&チャージでガンガンネットに詰める。どこかのビーチでバカンスにきているおじさんのような風貌をしていながら、早いタイミング・早い展開でフェデラーからあっという間に第一セットを6-3で取ってしまった。
フィッシュはとにかく仕掛けが早い。第二セットもいきなりフィッシュのブレークで始まる。ライジングショットが右に左に炸裂する。あっという間にゲームを 取ってしまう。フェデラーがコートの中でまったく存在感がない。フェデラーがコートの中にいるかどうかもわからない。ただひたすらにフィッシュ劇場が繰り 広げられるだけの第二セット。GAORA解説の丸山薫氏が「これはフィッシュ行きますね。(勝ち)ビビリが出ない限り行きますよ。」と試合途中で言い切っ てしまうほどに、流れがはっきりとしていた。フィッシュの5-1で迎えた第七ゲームでフィッシュはマッチポイントを握るが、フェデラーがサービス・ゲーム を際どく逆転キープして逃れる。だが次のサーブイング・フォー・ザ・マッチを勢い変わらぬままにキープして第二セット6-2、フィッシュ劇場は見事な締め くくりで打倒フェデラー劇を演じきった。
これほどまでにコートで存在を示せなかったフェデラーを見たことがない。いるかどうか、相手がフェデラーなのか他の誰かなのか、それがまったくわからない ほどに存在感が薄かった。まったく覇気を感じられなかった。そこに来て、全豪SFのツォンガ並みの驚くべき圧倒的豪快テニスの嵐の前に、木の葉のごとく吹 き飛ばされてしまった。この状況下で皇帝はNo1を守りきれるのだろうか。もはや圧倒的強者とはいえなくなってしまったのだろうか。
決勝はジョコビッチ対フィッシュである。準決勝と同じテニスを展開すれば、フィッシュはジョコビッチを倒すことは可能だろう。だが全豪でもSFで爆発的強 さを見せたツォンガを決勝で封じ込めたジョコビッチである。このフィッシュまでも封じ込めるのだろうか、この双頭の鷲は。新鮮なこの決勝カードの行方に注 目しよう。

 

2008年03月25日 ツアー激化 2008パシフィックライフ・オープン

女子決勝
イバノビッチ 64 63 クズネツォワ
男子決勝
ジョコビッチ 62 57 63 フィッシュ

まだ録画の映像を見ていないので、試合内容に関しては改めて記事にするとして、とにかくセルビアのイバノビッチとジョコビッチがタイトルを取った。去年台 頭し始めて来た新勢力が確固たる地位を築き始めている現実を見せ付けられる結果となった。築き上げたものを守らなければならない者、追われる立場である者 達の苦悩を同時に感じないわけではないが、対戦型スポーツを観戦する立場とすれば「強いものがより強いものに挑戦して、激しく競い合う。」という場面が増 えていく事は歓迎するべきことだと思う。ツアーが面白くなってきた、というのが正直な感想である。勝者が追われるものもになるのか、追うものになるのか は、という結果は年間のランキング争いという形で現れ、それが激化することも面白い。だがそれとは別として、その過程で好勝負や好プレーが続出することを 次のマイアミでも期待したい。

 

2008年03月26日 魚を喰らう鷲

ATPマスターズシリーズ2008年第一戦インディアンウェルズ大会決勝
ジョコビッチ 62 57 63 フィッシュ

第一セット、手堅いテニスで先にブレークし3ゲーム連取、ジョコビッチが先行する。が、アンドレーフ・ダビデンコ・ヒューイット・ナルバンディアン・フェ デラーを連破してきたフィッシュがそのまま終わるわけがない。地元アメリカの観客声援を受けて、すかさずブレークバックする。第六ゲームのフィッシュの サービスゲームで長いデュースになる。あせらずじっくりいくジョコビッチの前に先に崩れたのはフィッシュである。ダブルフォールトで大事なサービスゲーム を落としてしまう。ジョコビッチリードの4-2となる。次のジョコビッチのサービスゲームでもデュースになってもつれたが、ジョコビッチは巧みな配球でピ ンチを切り抜けた。次のフィッシュのサービスゲームもデュースになった。ここでジョコビッチのリターンが冴える。フィッシュのビックサーブを鋭く切り返 し、セットポイントもリターン・エースで決めた。第一セット6-2でジョコビッチ先取である。
第二セット、緊迫したキープ合戦の末、第六ゲーム、そこまでネットにガンガン出ていたフィッシュはここでストローク戦に切り替えたが、それが裏目に出たの か、ここでジョコビッチにブレークされてしまう。だが、フィッシュは次のジョコビッチのサービスゲームをリターンの強打でプレッシャーをかける。最後にダ ブルフォールトを犯し、ジョコビッチはブレークバックを許してしまった。両者ともリターンからプレッシャーをかける。スーパーショットも続出する。だが二 人とも粘り強く対応し、ピンチを迎えながらもよくしのぎ、5-5になる。地元の声援に押されてどんどんギアが上がっていくフィッシュに手堅いジョコビッチ がミスを余儀なくされる。そのプレッシャーの前に屈する格好で第11ゲームでジョコビッチが二度目のブレークを許してしまった。観客の声援に拳をかかげて 応えるフィッシュ、彼は次のサービスゲームを気合で奪い取り、第二セット7-5でフィッシュがセットオールに戻した。
第三セット、第一ゲームフィッシュの深いボールの前にミスが続き、ジョコビッチは自分のサービスゲームで0-40のピンチを迎える。だがジョコビッチはそ こからサービスエースを3本連続で取りデュースに戻した。かつてのサンプラスのように、そして今のフェデラーのように。その後二ポイント連取して第一ゲー ムをキープすると、気落ちしたフィッシュに鋭いショットを浴びせて、次のフィッシュのサービスゲームをすかさずにブレークした。ここでこの日の勝負は決 まった。ジョコビッチはそこから自らのテニスを充実させて自らのサービスゲームをキープし続け、最後のゲームもしっかりとキープして、ファイナル6-3で ジョコビッチがグランドスラムに続き、マスターズシリーズも2008年の開幕戦を優勝した。
わずか数ヶ月の間にこれほどの貫禄を身につけてしまったジョコビッチというのは何者だろう、そう思わざる得ないほどの落ち着き振りであった。時にフィッ シュのネットダッシュや高い打点からのフラットドライブに押されるシーンがあったが、そこで崩れずに、落ち着いて対処し、ピンチを乗り切り、すかさず反撃 して、チャンスを作り、それをものにした。見事な強者のテニスであった。
双頭の鷲がまた一つ、大事なタイトルを手に入れた。徐々に徐々に、少しずつ、ジョコビッチは自らの世界を広げていく。彼が次に掴むものは何なのか。その行方に注目しよう。

 

2008年03月27日 2008春の祭典第二弾マイアミ

今年もマイアミの季節がやってきた。春の祭典第二弾、ソニーエリクソンオープンが開催されるのである。アメリカのマイアミで行なわれる男女同時開催大会で二週間128ドローのこのイベントはインディアンウェルズのパシフィックライフオープンと共に「第五のグランドスラム大会」と並び称される。
男子は2008年マスターズシリーズ第二戦に当たる。第一シードはフェデラー、第二シードナダル、第三シードジョコビッチ、第四シードダビデンコ、以下 フェラー、ロディック、ナルバンディアン、ガスケ、ブレーク、ベルディッヒ、ユーズニー、ツォンガ、マレー、ロブレド、カナス、マチュー、ゴンザレス、モ ナコ、カルロビッチ、モヤ、ヒューイット、フェレーロ、リュビッチ、アルマジロ・・・・じゃなかったアルマグロ、ニーミネン、と続く豪華メンバー揃い踏み の一大イベントである。さてさて、MS第一戦インディアンウェルズ大会を全豪とほぼ同じ筋書きでジョコビッチに優勝させてしまった皇帝フェデラーと覇王ナ ダル、同じ展開をここでジョコビッチに許せば、今年の段階で二強体制が崩れる事はほぼ間違いない。ヨーロッパクレーシーズンの突入を前に二強を崩す橋頭堡 を築き上げることがジョコビッチは出来るだろうか。それをフェデラーとナダルは阻止できるだろうか。二強の揺らぎを見て牙を研ぐ他の選手たちの動向や如何 に、目の離せないマイアミ大会である。
女子はWTAツアーティアT大会に当たる。第一シードはエナン、第二シードイバノビッチ、第三シードクズネツォワ、第四シードヤンコビッチ、以下チャクベ ターゼ、Vウィリアムズ、ハンチェコワ、Sウィリアムズ、バルトリ、ディメンティワ、シュニーダー、ヴァイディソワ、サフィーナ、ペトロワ、サバイと続 く。今年の全豪チャンピオンシャラポワは不在だが、女王エナンにウィリアムズ姉妹が揃う、これまた豪華メンバーである。さて、女王エナンはここで今年の前 半戦の締めくくりを優勝で飾れるだろか。それを阻止しうる選手は出るのか。こちらも注目である。
来週末はまたGAORAで男女とも準決勝・決勝が中継される。熱戦を大いに期待しよう。

 

2008年03月31日 マイアミ再現ならず

2008マスターズシリーズ第二戦マイアミ大会(ソニー・エリクソン・オープン)
シングルス二回戦
アンダーソン 67 63 46 ジョコビッチ

つ、つまらん。去年、このマイアミでマスターズシリーズ格初優勝を遂げたジョコビッチはそこから、一気に階段を駆け上がった。その昨年の覇者は二回戦敗退である。せっかくの追い上げムードに水を差してからに。この大会以後、ヨーロッパクレーが始まる。その直前にポイントを稼いでいかないと、赤土の覇者ナダルが盛り返してくるぞ。
しかし、まあこれで今週末の男子の主役は誰か、わからなくなった面白さはある。引き続き注目していこう。

 

2008年04月04日 皇帝の危機迫る

セリーナ・ウィリアムズがエナンを止めた。女王はまだ、今年はエンジンをかけきれずにいるようだ。女王敗退、NO2イバノビッチも途中敗退、全豪覇者シャラポワ不在、頭を抑え続けてきた邪魔者たちが消えた今、眠れる女豹たちが目を覚ます。

2008ソニーエリクソンオープン、女子準決勝
S・ウィリアムズ 36 75 63 クズネツォワ
ヤンコビッチ 61 64 ズボナレワ

S・ウィリアムズはその絶頂期のような圧倒的強さを今持ち合わせているわけではないのだが、肩の力が抜けて、いい意味でプレー全体のレベルの底上げに成功 している。相変わらず一試合の中に波もあるのだが、不調時のときほど激しく乱高下するわけでなく、調子の悪い状態を短時間で乗り切り、調子のよい時間帯を より長く維持することに成功している。この数ヶ月好調をキープしているクズネツォワ相手に逆転に成功して決勝進出を決めた。
そのセリーナに立ち塞がるのはヤンコビッチである。こちらは逆に大事なところで不運と体調の不良に泣かされて優勝に至らない。ここで一つブレークスルーすることができるだろうか。決勝の行方は要注目であろう。
マイアミ大会は荒れることが多いのだが、問題は女子よりも男子だろう。

2008MSマイアミ大会QF
ロディック 76 46 63 フェデラー

直接映像で試合内容を見たわけではないので、詳しい内容はわからないが、ネットで情報を集める限り、ロディックは調子がよかったとはいえ、原則的にはいつ も通りのプレーをしただけのようだ。両者拮抗した接戦で、第一セットは6-6TBである。ロディックはフルセットマッチの中で、フェデラーのサービスゲー ムで掴んだブレークポイントはたったの一度だけだった。その一度のチャンスをモノにして勝利した。対フェデラー戦11連敗の末の勝利であった。フェデラー がロディックに負けたのだ。
ATPに君臨していた、圧倒的強者であった、如空が「皇帝」と呼ぶフェデラーは、今季いまだ優勝できずにいる。決勝にも進めない大会が続く。これから始ま る欧州赤土戦線ではナダルと共に守るべきポイントが多いフェデラー、その覇権に今、危機が迫る。皇帝の命運や如何に。今季の中盤戦は要注目である。

 

2008年04月05日 要塞と機関銃

追い上げてきたNo3ジョコビッチが負けた、目の前に立ち塞がっていたNo1フェデラーも負けた、去年の全仏より優勝から遠ざかっているナダルの前に今大きなチャンスが訪れようとしている。はたしてこのチャンスをナダルはモノにできたのだろうか。

2008マスターズシリーズ第二戦マイアミ大会準決勝
第一試合 ナダル 76 62 ベルディッヒ

第三ゲーム、先にブレークポイントを握ったのはベルディッヒであった。ナダルは粘り強くピンチを切り抜けたが、ベルディッヒのサーブの力とフラットドライ ブの強打に明らかに押されていた。ナダルはスピンの回転量を上げて、より高く弾むようにサーブもストロークも調整する。そしてより深くにボールを集める。 ベルディッヒはベースラインの後ろに押し出されるが、それでも長身を生かして、高い打点からそのスピンボールを叩きに行く。3-3の第七ゲームでベル ディッヒがまたブレークポイントを握ったが、そこもナダルはしのいだ。その次のゲームで今度はナダルがブレークポイントを握る。ナダルのスライスをベル ディッヒがネットにかける。先にブレークしたのはナダルである。5-3にしてナダルにサーブイングフォーザセットが来た。だが、ベルディッヒはストローク 戦で負けていない。打ち勝つ。ナダルのサーブの入りが悪く、ついにベルディッヒにブレークを許してしまった。次のベルディッヒのサービスゲームでブレーク ポイントを握るが、そのセットポイントはベルディッヒのファーストサーブの威力の前に防がれてしまう。ブレークポイントを握るが取りきれない。そんな展開 のまま6-6となり、TBに突入した。両者共に苦しい展開のまま、先にセットポイントを握るのはナダル、だが粘るベルディッヒは6-6まで戻した。だが、 ここまで粘ったにも関わらず、ベルディッヒッは最後にダブルフォールトを犯してTB8-6でナダルが苦しんだ上で第一セットを先取した。
TBをダブルフォールトで落としたことを引きずっていたのだろうか、ベルディッヒはファーストサーブの確率が落ちた。そこを見逃さないナダルはストローク 戦で押し切り、第1ゲームでブレークに成功した。ベルディッヒから第一セットの勢いが完全に消えた。第七ゲームでもナダルにブレークを許し、ナダルは 5-2でサーブイングフォーザマッチを迎えた。第一セットの締めくくりにあれほど苦しんだナダルであるが、このゲームは綺麗にラブゲームキープで決めて、 第二セット6-2、決勝進出を鮮やかに決めた。
第一セット終盤で拮抗した接戦を演じた二人であったが、その競り合いに最後の最後で崩れたのはベルディッヒの方であった。そして、その影響は第二セットで 回復することはなかった。どちらかといえば第一セットで押されていたのはナダルであったが、崩れず、悩まず、揺らがず、守りきり、そしてベルディッヒを自 滅させた。難攻不落の要塞ナダル城がその堅牢振りを大いに示した内容であった。

5年近くの間、自分の頭を抑え続けてきた男をトーナメントのドローから排除することについに成功した。それも自らの手で排除したのだ。今のロディックは自信に満ち溢れていることだろう。そのロディックを、ランキングでは格上のダビデンコは如何に押さえにかかったのか。

第二試合 ダビデンコ 67 62 ロディック

ロディックはそのビックサーブに物言わせて、あっという間に自分のサービスゲームを終わらせてしまう。ここまでは想定の範囲内。想定外であったのはダビデ ンコのサーブの調子のよさである。こちらも鋭いサーブと、そのサーブからの早い展開であっという間に自分のサービスゲームをキープしていく。凄い勢いで ゲームが消化されていく。当然のごとく6-6-でTBに突入する二人、サーブの威力ではロディックに分があるが、ストローク戦に持ち込まれるとダビデンコ の方が一枚上手である。先にセットポイントをつかむのはダビデンコ、最後はフォアのアングルショットを見事に決めて第一セットを先取した。
ウルトラマンのような唸り声を上げて淡々とショット左右に打ち分けるダビデンコのストロークは調子がいい。一方でロディックは負けていない。気迫でそのス トロークに喰らいつき、時に強気で攻め、第三ゲームでブレークに成功した。だがダビデンコは慌てない、すかさず、次のロディックのサービスゲームをブレー クする。次のサービスゲームをダビデンコはあっさりキープした。だがロディックはブレークポイントを握られた。デュースが繰り返される。最後にネットに出 たロディックをダビデンコのフォアハンドパスが抜いていった。ダビデンコの4-2となった。ロディックにもいいポイントは多々あるのだが、連続ポイントが 取れない。5-2になって、ロディックのサービスゲームはまたもやデュースにもつれる。長引くデュース、勢いのあるロディックのビックショット、それらを 耐えしのぎ、そして、攻め返し、ついにブレークに成功、マッチポイントを取りきり、第二セットを6-2で連取、決勝進出を決めた。ダビデンコは5連敗の末 の対ロディック戦初勝利であった。
連敗中だったフェデラーにようやく勝利したロディックは、連勝中だったダビデンコに決勝進出を阻まれた。ダビデンコの充実振りには目を見張るものがある。まさに下克上の様相を見せ始めているATPツアーで、生き残るのは誰か。難攻不落の要塞ナダル城の城壁をダビデンコのストロークマシンガンは打ち破ることが できるのか。いよいよ週末はマイアミ大会決勝戦である。

 

2008年04月06日 自らとの格闘

2008ソニー・エリクソン・オープン
女子決勝
S・ウィリアムズ 61 57 63 ヤンコビッチ

力の抜けたウィリアムズのテニスはヤンコビッチから簡単にウィナーを奪う。あっという間にゲームを連取して第一セットをウィリアムズが先取する。
第二セットもその勢いのままウィリアムズリードの5-4まで進む。サーブイングフォーザチャンピオンシップとなった第十ゲームで何かが狂った。ウィリアム ズのショットが入らなくなり、ヤンコビッチのカウンターショットが決まる。ヤンコビッチブレークで5-5となる。次のヤンコビッチのサービスゲームでウィ リアムズはブレークポイントを握るところまで行くがそこで決めきれず、チャンピオンシップポイントをまたも逃がす。第十二ゲームもヤンコビッチがブレーク した。7-5の逆転劇でヤンコビッチがセットオールに戻した。
第三セットはまたもやウィリアムズがゲームを連取して5-0になった。ところがまたここでヤンコビッチのカウンターショットが決まり始め、ウィリアムズの ショットが入らなくなった。3ゲームをヤンコビッチに連取され5-2にまでなった。第八ゲームでウィリアムズはチャンピオンシップポイントを握るがそれを 決めきれない。5-3になった。何度目かのチャンピオンシップポイントが来た。ここでようやくウィリアムズはセットを取った。6-3でウィリアムズが第三 セットを取り、結局セリーナ・ウィリアムズが優勝を決めた。
あの第二セット終盤と第三セット終盤の混迷のゲーム展開の中で、ヤンコビッチは無心であっただろう。一方で修羅場を何度も潜り抜けてきたはずの元女王のセ リーナ・ウィリアムズが、内なる自分との戦いで自らとの格闘を強いられる様を見て、テニスというスポーツの怖い部分を見せられたような気がする。


2008年04月07日 覇王の歩み

深夜の生中継であったのでまだ録画映像を見ていない。詳しい試合内容は後ほどの記事に譲る。結果だけはこういうことだ。

2008マスターズシリーズ第二戦マイアミ大会決勝
ダビデンコ 64 62 ナダル

No2ナダルは決勝にまで進みながら、そこにフェデラーもジョコビッチもいない決勝で負けた。結局ナダルは去年のヨーロッパクレーシーズンが終わってか ら、今年のヨーロッパクレーシーズンが始まるまでの間、優勝がなかったことになった。「ハードコートでも勝てる赤土の覇王」は今回に限っては実現できな かった。NO2の在位期間が既にツアー歴代最長の記録になっているというナダル、それでもNo1になるためにはハードコートである程度優勝の数を増やさな ければならない。可能ならば全仏以外のグランドスラムを年間でもう一つ取りたいところだろう。だがウィンブルドンではフェデラーの壁が厚い、全豪でその チャンスが来たかと思えばSFでツォンガの台風のようなテニスに吹き飛ばされた。そして今回、マスターズシリーズでまだ優勝していない大会であるマイアミ で、決勝に進みながらもダビデンコのベストパフォーマンスにぶつかってしまい、貴重なハードコート大会での優勝を逃した。運が悪いと考えるべきなのか、着 実にハードコートでの実績が上がってきていることを評価するべきなのか、あるいはフェデラー同様に混迷期に陥りつつあると見るべきか、判断は難しい。

ナダルが一番輝く季節がやってくる。欧州赤土戦線が始まる。赤土の覇王は今年も当然の事ながら守るべきポイントが多い。エントリーランキングで今のランキ ングを維持するためには、去年同様の結果が求められる。そしてさらに上を目指すには去年以上の結果を求められる。目標は高いはずだ。MSモンテカルロ・ MSローマ・MSハンブルグ・そして全仏のクレー4大会連続優勝の上で、さらにウィンブルドンのタイトル奪取、それをやらなければNO1にはなれない。 フェデラーの自滅による繰り上がりNo1など見たくもない。
覇王の覇権に向けての着実なる前進なのか、それとも後退なのか、それを試される季節がやってくる。

 

2008年04月08日第四の男

MSローマ大会準決勝のあの激戦から一年近く経った。対戦成績で二戦二敗、ダビデンコはまだ一度もナダルには勝てていない。だが同じく一度も勝てなかったロディックをこのマイアミ大会SFで降して来た勢いは伊達ではない。その勢いをこの試合内容は如実に物語っている。

2008マスターズシリーズ第二戦マイアミ大会決勝
ダビデンコ 64 62 ナダル

ナダルは強烈なスピンをかけて、ダビデンコに揺さぶりをかける。「ダビデンコという選手は、ラリーをしながらリズムを作っていって、リズムができるとミス しなくなるのですよね。ですから対戦相手からすると、なるべくタイミングを狂わせるようなことを考えて、プレーしていかないといけないという考えはあると 思いますね。」というGAORA解説の辻野隆三氏の解説のごとく、ナダルはいつもよりショットのスピードを落として回転量を上げて、ダビデンコのミスを誘 おうとする。強風にも助けられ、ナダルのショットは生き物のように変化し。ダビデンコは打点に入ってからも移動しなければならないほどに揺さぶれた。が、 揺さぶりきれなかった。第三ゲームで力強いストロークでナダルを押し切り、ブレークに成功した。揺らがないのはナダルも同じ、次のゲームでナダルはラブ ゲームでブレークバックを果たす。直上にあるマイアミの太陽がオーバーヘッドショットのミスを誘う。どちらもストロークのタイミングがしっくり来ないまま 試合は進む。3-3になった。ここでダビデンコがまたブレークした。徐々にペースが上がっている。ストロークのタイミングが合い始めたのだ。ナダルが持ち こたえそうな様子を見せるが、ダビデンコがきっちり押し切った。第一セット6-4でダビデンコが先取した。
調子に乗り切れないナダルは、何かが少しおかしい。第二セットでいきなりブレークを許してしまう。一方のダビデンコは次のサービスゲームをラブゲームで キープする。調子に乗り切れないナダルに対して、ギアを上げていくダビデンコ、ショットにどんどん厳しい角度がついていく。ライジングショットのタイミン グがどんどん早くなる。ウィナーが増える。第五ゲームでもブレークに成功した。ここで勝負があった。5-2となってサーブイングフォーザチャンピオンシッ プスも最後はフォアの逆クロスを見事に決めた。第二セット6-2、ダビデンコの対ナダル戦初勝利はそのままマスターズシリーズ格二勝目につながる意義ある 勝利であった。
ナダルにあまり元気がなかったことも事実だが、ダビデンコもまた完調ではなかった。だが自らのテニスの底辺を底上げし、どんどんレベルを上げていった、苦しい中でも自らを信じて、自らのテニスを一試合の中で高めていった見事な勝利であった。
フェデラー・ナダル・ジョコビッチに続く第四の男はとても地味なロシアの男、だがその地味な男が築き上げつつあるテニスはゆっくりとだが着実に進歩している。やがて3強を脅かすところまで進めるのか。その行方に注目しよう。



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