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2007年 MSマドリッド大会・パリ大会TV観戦記(2007/12/06)

 

2007年10月16日 2007欧州室内佳境へ

今年もツアーは終盤、欧州室内シリーズが佳境に入る。
ATPはテニスマスターズシリーズ第8戦マドリッド大会が開催される。
第一シードフェデラー、第二シードナダル、第三シードジョコビッチ、第四シードダビデンコ、以下ゴンザレス、ブレーク、フェラー、ロブレド、ベルディッヒ、ガスケ、ハース、リュビチッチ、カナス、モヤ、チェラ、ユーズニーと続く。ロディックの不在は残念だが、グランドスラム級の豪華メンバーである。トップシードが順当に勝ち進めばSFはフェデラー対ダビデンコ、ジョコビッチ対ナダルとなる。この形は当分の間、大きな大会の基本形となろう。ジョコビッチがナダルを追い越してNo2になってものこの図式に大きな変化は見られないだろうから。
フェデラーはリトルスラムを達成しておきながら10月の第二週でまだ年間最終ランキングNo1を確定できていない。過去3年間に比べれば今年は接戦となっているといっていいだろう。それはこの豪華メンバーの顔ぶれを見てもわかる。皆この時点でポイントが欲しいのだ。毎年消化試合になって盛り上がりに欠けてしまうMSマドリッド大会とパリ大会であるが、今年は大いに楽しめそうである。GAORAも生中継だ。熱戦を期待しよう。

 

2007年10月19日 3強プラス1

現時点でトップ30の内、28人が出場する豪華な大会、それが2007MSマドリッド大会・・・・って、あれ、ロディック以外にトップ30で欠場しているのは誰だ・・・・あ、ヒューイットがいない。ヒューイットは今年のジャパンオープンが今季最後の大会になる可能性があるそうだ。残念なことである。
さて、そのMSマドリッド大会は第四シードダビデンコが直前で棄権した。だがダビデンコはマスターズカップの出場権をすでに確保している。一方今年グランドスラム決勝進出者4人の内、未だマスターズカップの出場権を得られていないのが全豪準優勝のゴンザレスだ。この大会第五シードのゴンザレスはダビデンコのいないトップハーフの下半分を目下進撃中である。フェデラー、ナダル、ジョコビッチの3強も順当だ。フェデラーは三回戦で今年の天敵カナスをストレートで撃破、ナダルも今の所は怪我の影響が出ていないようで順当だ。ジョコビッチはフルセットの苦戦が続いているが、それでも勝ち上がる強さを今持っている。
QFの組み合わせは
フェデラー対ロペス
ゴンザレス対キーファー
ジョコビッチ対アンチッチ
ナダル対ナルバンディアン
である。
第六シード以下のシード選手たちは総崩れで、ベスト8はノーシード対4強(ゴンちゃんを含む)という図式となった。だがこれはトップ5以降の選手の実力差はほぼ同列で、混戦状態であるということ示しているのかもしれない。さてトップシードたちが順当にQFを突破すればSFは今年のグランドスラムファイナリスト揃い踏みという豪華なベスト4となる。熱戦を期待しよう。

 

2007年10月21日 2007MSマドリッド準決勝

いつの間にかトップ10から陥落して忘れられていたナルバンディアン。だがこのMSマドリッド大会QFでナダルをストレートで下し、準決勝に上がってきた。そこに待ち受けるのはナダルをランキングで追い越すべく駆け上がる昇り竜、ジョコビッチである。

2007マスターズシリーズ第8戦マドリッド大会準決勝
ナルバンディアン 64 76 ジョコビッチ

第一セットはジョコビッチのサーブから始まる。長いデュースになった。それでもジョコビッチがキープした。だがその次のジョコビッチのサービスゲームはキープできなかった。2-1でナルバンディアンがリードを奪う。今日のナルバンディアンはリターンがいい。特にバックハンドのキレがいい。レシーブからガンガン攻める。ライジングからのコースの切り返しも相変わらず見事である。第5ゲームでもナルバンディアンはブレークポイントを握る。だがジョコビッチはリターンのいいナルバンディアンに対してサーブの力でこのピンチを乗り切った。ショットの威力では負けていないジョコビッチは次のナルバンディアンのサービスゲームでブレークポイントを握る。だが今度はナルバンディアンがサーブの力で乗り切る。緊迫したキープ合戦になった。それだけに第三ゲームのブレークが効いた。第一セットは6-4でナルバンディアンが取った。
第二セット、二人のストローク戦は徐々に熱を帯びて激しさを増していく。共にサービスゲームをキープしていくがラリーの中にスーパーショットの応酬が繰り広げられていく。5-5まで来た。まずジョコビッチがキープ成功。そして6-5でナルバンディアンのサービスゲーム、ジョコビッチがついにブレークポイントを握った。だがナルバンディアンは慎重に危機を克服する。6-6でTBになる。ナルバンディアンのショットにキレが増す。5-2までナルがリードする。ここでジョコビッチは痛恨のダブルフォールト、6-2でナルバンディアンにマッチポイントが来る。2ポイントジョコビッチが取り戻した。だが最後はサービスポイントで決めた。第二セットもTBの末に取ったナルバンディアンが決勝進出を決めた。
ナルバンディアンは強力なリターンに加え、尻上がりにサービスの調子が上がり、元々のライジングからの切り返しが冴え渡った。一方でジョコビッチは自慢のバックからの攻めが使えず、ナルバンディアンの広角打法に振り回され封じ込められた感があった。ジョコビッチは決して不調であったわけではなく、見事なウィナーも何度も見せたが、この試合に関してはナルバンディアンの方が一枚上手であった。

キーファーもいつの間にかトップ10から陥落し忘れられていた。だが全豪ファイナリストのゴンザレスを下してフェデラーの待つ準決勝まで勝ちあがってきた。

フェデラー 64 64 キーファー

キーファーの柔らかいテニスは健在である。そしてガンガンネットに出て来た。フェデラーに対して先手を取り、主導権を握るべく、前に何度も何度も出て来た。だがフェデラーは慌てない。パスで真っ向勝負を挑み、打ち勝つ。フェデラーはサーブの調子がよく、サービスゲームは一気に取りきった。マッチポイントはネットインで決まり、フェデラーがストレートでキーファーを下した。

ナダルとジョコビッチをストレートで突破したナルバンディアンが、決勝でフェデラーに挑む。この好調さを維持して皇帝に迫ることが出来るだろうか。決勝戦での熱戦を期待しよう。

 

2007年10月22日 感動のナルバンディアン 再び

ジュニアの頃から互いを良く知る二人、様子見などあるわけもなく、共にエンジン全開で試合に入ってきた。

2007マスターズシリーズ第8戦マドリッド大会決勝
ナルバンディアン 16 63 63. フェデラー

フェデラーの圧力は抗しがたい。ナルバンディアンは第4ゲームでフェデラーにブレークを許す。だが第5ゲームでナルバンディアンが今度はブレークポイントを握った。フェデラーにやや気負いが見られ始める。際どいフェデラーのサービスエースに対してチャレンジシステムの判定を要求するナルバンディアン、だがここでホークアイシステムが故障、チャレンジが使えないというハプニングが起こる。フェデラーはこのピンチを乗り切り、4-1となった。ナルバンディアンが集中力を乱した。フェデラーは一気に次のナルバンディアンのサービスゲームもブレークし、5-1まで持ってきた。第7ゲームも先行されたが取り返し、最後はサービスポイントで決め、第一セットを6-1という圧倒的なスコアでフェデラーが先取した。
第二セット、気合を入れなおしてナルバンディアンがフェデラーに挑む。フェデラーの方にミスが増え始める。第二ゲームでフェデラーのサービスゲームをナルバンディアンがブレークに成功、さらに次のサービスゲームをラブゲームキープして3-0とナルバンディアンがリードする。だがここで今度は会場の植栽に給水する散水栓が故障して試合が中断した。この中断で試合は落ち着きを取り戻し、キープが続き、1ブレークを守りきったナルバンディアンが6-3でセットオールに戻す。
第三セット、1-1で迎えた第三ゲームでナルバンディアンがフェデラーのサービスゲームをブレークした。長いラリーのポイントはナルバンディアンが取るようになっている。ストローク戦でナルバンディアンがフェデラーを押しているのである。徐々に緊張感が高まっていく。このまま続ければナルバンディアンがフェデラーを倒す。5-3となった第9ゲーム、フェデラーのサービスゲーム、ナルバンディアンはバックのカウンターでポイント先行する。フェデラーの鬼のようなサーブでポイントを取り15-15、さらに深い切り返しで30-15とする。だがナルバンディアンのバックのリターンがオンラインでエースになる。30-30でセカンドサーブになった。フェデラーのフォアがラインを割る。マッチポイントがナルバンディアンに来た。またセカンドサーブになった。リターンをワイドに打ち込む、フェデラーが飛びついて返すが、それをネットに詰めたナルバンディアンがオープンコートにボールを入れた。第三セット6-3、ナルバンディアンの見事な逆転勝利であった。

ナダル・ジョコビッチ・フェデラーの3強を連破しての優勝である。2005年マスターズカップ決勝の再現ともいえる素晴らしい内容であった。実はマスターズカップこそタイトルを取ったが、マスターズシリーズはこれがナルバンディアンの初タイトルである。決勝戦では決して運が味方したわけではなく、むしろ試合中に起こった様々なハプニングはどちらかといえばフェデラーに利するものであった。そんな状況でも自分を見失わず、自分のテニスを最後までやりきった。そしてATPに君臨する圧倒的強者、皇帝フェデラーに真っ向勝負を挑み、打ち勝ち、倒したのである。ナルバンディアンの偉大なる勝利に賞賛を送りたい。

 

2007年10月31日 フェデラーのガリア戦記 2007室内編

インドアシーズンもいよいよ終幕を迎える。
今週はATPマスターズシリーズ第九戦パリ大会が開催される。第一シードはフェデラー、第二シードナダル、第三シードジョコビッチ、第四シードユーズニー以下、フェラー、ブレーク、ゴンザレス、ロブレド、ハース、ガスケ、カナス、ベルディッヒ、リュビチッチ、モヤ、マレー、チェラと続く。今回も3強がそろって出場する。特にこのパリ大会はフェデラーが手にしていないマスターズシリーズタイトルのうちの一つである。フェデラーは3年ぶりに出場する。さて、ガリア(フランス)の地にて行われるこのインドアMSパリも皇帝のコレクションに並んでしまうのか。それを阻止するものは現れるのか。年間最終ランキングNo1は決まったが、それでも注目に値する大会である。
GAORAもいい時間帯で生中継をしてくれる。熱戦を期待しよう。

 

2007年11月02日 皇帝の鬼門


フェデラーは今年も年間最終ランキングNo1を決めた。4年連続でツアー最終戦マスターズカップを待たずにNo1を決めた。今年も4大大会全てに決勝進出、かつ三度目のリトルスラム達成である。全豪では失セット0で優勝した。まさにその強さは圧倒的で、単に「王者」と呼ぶには役不足と感じ、如空はこのブログで勝手に「皇帝」という称号を与えて、フェデラーを皇帝と呼んでいる。
だが4大大会では無類の強さを相変わらず発揮した皇帝であったが、グランドスラムとマスターズカップに次ぐ格付けであるマスターズシリーズにおいては、2007年の皇帝はどうであっただろう。

第一戦インディアンウェルズ大会  優勝ナダル  準優勝ジョコビッチ
第二戦マイアミ大会  優勝ジョコビッチ  準優勝カナス
第三戦モンテカルロ大会  優勝ナダル  準優勝フェデラー
第四戦ローマ大会  優勝ナダル  準優勝ゴンザレス
第五戦ハンブルグ大会  優勝フェデラー  準優勝ナダル
第六戦モントリオール大会  優勝ジョコビッチ  準優勝フェデラー
第七戦シンシナティ大会  優勝フェデラー  準優勝ブレーク
第八戦マドリッド大会 優勝ナルバンディアン  準優勝フェデラー

既に終了している8大会中、5大会で決勝進出、内2大会で優勝した。ちなみに2005年のマスターズシリーズは5大会で決勝に進み5勝を上げる。去年2006年は6大会で決勝に進んだがナダルにクレー(モンテカルロ・ローマ)で連敗して4勝であった。比較すれば決勝に5大会進出は例年と変わりないが、結局優勝が二大会しかないというところが今年の苦戦を物語る。また決勝進出にいたらなかった大会も去年までは欠場したためであったことが多かったが、今年のフェデラーはなんとマスターズシリーズ皆勤賞なのである。それだけにカナスとポランドリーに決勝進出を阻まれた事は「事件」であったといえよう。またフェデラーは決勝戦では負けない男、特にクレー以外の決勝戦での勝率は100パーセントに近い男という印象がある。それだけにハードコートの大会の決勝戦でナダル以外の男、ジョコビッチとナルバンディアンに負けたことも「事件」かもしれない。マスターズシリーズの成績だけ見てもフェデラーはNo1である事は間違いないのだが、過去3年と比較すると「圧倒的強者」と言えるまで圧倒的であったわけではないと言えそうだ。
フェデラーはここ数年欠場を繰り返してたマスターズシリーズの第九戦パリ大会に乗り込んできた。これでフェデラーはマスターズシリーズ全九戦全てに今年は出場したことになる。「パリにはあまりいい思い出がないから」というフェデラーのコメントを聞いて改めて思い出す。そう、MSパリ大会はガリアの地、つまりフランスで行なわれる。全仏オープンと同じ都市で行なわれるのだ。そして全仏同様、フェデラーがまだタイトルを手にしていない大会でもある。この大会を取れば、ガリア制覇を一部遂行したことになる。よし、これは「フェデラーのガリア戦記2007」の室内編として書き記そう。
そう思っていた矢先にまた事件は起こった。

MS第九戦パリ大会三回戦
ナルバンディアン 64 76 フェデラー

フェデラーが対ナルバンディアン戦二連敗である。決勝にまで進めなかった。やはりガリア(フランス)は皇帝にとって鬼門なのだろうか。
フェデラーだけではない。第三シードジョコビッチ、第四シードダビデンコ、第六シードブレークも既に敗退している。大荒れのガリアを制すのは誰か。週末の展開に注目しよう。

 

2007年11月04日 ライジング打法対トップスピン打法 MSパリ大会SF


この大会の直前で、フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、ダビデンコ、ロディック、フェラーの6人がツアー最終戦マスターズカップ上海大会の出場権を得ている。この大会の最中、ユーズニーの敗北をもって全豪ファイナリストゴンザレスの出場権が決まった。最後の椅子は一つ、この大会のベスト4にその可能性を持つガスケとバクダティスが残っている。その二人に立ち塞がるのは赤土の覇者ナダルと皇帝フェデラーを今年二度も倒した男ナルバンディアンである。

2007マスターズシリーズ第九戦パリ大会SF
第一試合 ナダル 46 64 63 バクダティス

ナダルは序盤ネットプレーをさかんに仕掛けたが、それが途中でうまく機能しなくなった。一方で途中から当たりの出だしたバクダティスの柔らかいテニスは見事にウィナーを量産し始める。ナダル3ゲーム連取の後、バクダティス5ゲーム連取、その後、1ゲームずつサービスゲームをキープして、第一セットはバクダティスが6-4で先取した。
第二セット第1ゲーム、バクダティスはナダルのサービスゲームをいきなりブレークした。だがナダルはもうネットへの突進をやめ、いつものベースライン主体のプレーに戻して、バクダティスと互角に打ち合い始めた。依然、バクダティスは早いタイミングのライジングで攻め続けるが、ナダルのカウンターショットが決まりはじめた。そして第6ゲームのバクダティスのサービスゲームでナダルはブレークポイントを握ると、フォアのリターンエースでブレークバックに成功した。3-3となった。緊迫したキープ合戦が展開する。ナダルの5-4となった第10ゲームで、ナダルがブレークポイントを決めて、逆転で6-4、ナダルが第二セットを取ってセットオールに戻した。
第三セット、ナダルのストロークがどんどん勢いを増していく。その圧力に抗しきれず、第四ゲームでバクダティスはサービスゲームをブレークされてしまう。ナダルのトップスピンはさらに鋭さを増していく。これはアウトになるだろうと思うボールがライン際で落ちてコートの中に入る。そんな角度には打てないだろうと思うようなコースでボールがサイドラインを抜けていく。バクダティスはコートの中に入ってライジングから角度をつけて攻めようとするのだが、ナダルのコートカバーはそれを上回り、さらに角度をつけて切り返す。ナダルリードの4-1で迎えた第6ゲーム、バクダティスはサービスゲームで0-40にされるが、そこでスーパーショットを連発して、逆転でキープに成功した。観客もバクダティスを後押しする。だがナダルは崩れない。バクダティスに負けずにコートを縦横無尽に走り回り、バクダティスのライジングからのスーパーショットをトップスピンで切り返す。互いにキープでナダルのサーブイングフォーザマッチが来た。バクダティスは素晴らしいバックハンドのアングルショットと芸術的なストップボレーを見せてポイントを先行するが、ナダルは乱れずポイントを積み重ね、マッチポイントまで迫る。最後はバクダティスのコードボールがラインを割り、第三セットは6-3、フルセットの末ナダルが決勝進出を決めた。この時点でバクダティスは上海への夢が絶たれた。だがコートを走り回り、見事なスーパーショットを見せ、ナダルにくらいいついたバクダティスの見事なテニスに観客は大きな拍手で彼を見送った。

バクダティスの敗北を受けて、自動的にマスターズカップの出場を決めたガスケであるが、気分よくこの上海チケットを受け取ることは出来なかった。

第二試合 ナルバンディアン 62 64 ガスケ

ナルバンディアン強い。一つ一つのポイントを見ればガスケは悪くはなかった。ナルバンディアンに圧倒され、第二セット1-5にされたところから、元フランスの観客達の声援を受けて見事なウィナーを連発して、4ゲーム連取の追い上げを見せた。だがナルバンディアンはそこを我慢して乗り切り、手堅く勝利を決めた。圧倒的勝利ではなかったが、ガスケの追い上げをしのいで勝ちきってみせるところに、逆に今のナルバンディアンの強さを感じた。

決勝はナルバンディアン対ナダルである。共にフェデラーの天敵と呼ばれた者同士、バクダティスを上回るツアー最高のライジング打法を駆使するナルバンディアンと、ガスケを上回る、脅威のコートカバーとツアー最高のトップスピン打法を駆使するナダル、対照的なこの二人がフェデラーの消えたこのMSパリ大会の決勝でぶつかる。大一番になる予感がひしひしとするこの決勝戦、熱戦を期待しよう。

 

2007年11月05日 眠れる獅子、目覚める 2007MSパリ大会決勝

ツアー最高のトップスピン打法とツアー屈指のコートカバー力で武装された要塞ナダルがガリア(フランス)の完全制覇に後一歩まで迫った。その要塞に挑むのはツアー最高のライジング打法を備えたナルバンディアンである。

2007マスターズシリーズ第九戦パリ大会決勝
ナルバンディアン 64 60 ナダル

第一セット、両者共にラブゲームでサービスゲームをキープして、試合は静かに始まった。進行するにつれ、お互いのショットに対して徐々にタイミングが合い始めていくのがわかる。お互いに攻勢をかけるきっかけを探り合っている。第6ゲームと第7ゲームでお互いにデュースまで競るが、それでも互いにキープして乗り切る。第8ゲームのナルバンディアンのサービスゲームで、再びデュースになったが、ナルバンディアンは逃げ切った。第9ゲームで今度はナルバンディアンがポイントを先行する。ベースラインよりサイドラインを抜けていくボールの方が多いような、アングルの厳しいラリーが続く。ナルバンディアンにブレークポイントが来た。ナルバンディアンのフォアのリターンがダウンザラインに抜けていく。ナルバンディアンブレーク、5-4としてサーブイングフォーザセットを迎える。これをラブゲームでキープして、第一セットをナルバンディアンが6-4で取った。
第二セット第1ゲーム、ナダルのサービスゲームでまたもやナルバンディアンがブレークポイントを握る。右に左に角度の厳しいアングルショットを繰り出すナルバンディアン、ナダルは脚力を駆使して拾い捲るが、最後にネットに出てきたナルバンディアンに決められてしまった。ナルバンディアンはブレークに成功した。ナルバンディアンはコースを変えるのがうまい。アングルショットから逆サイドのアングルへライジングで切り返す。今日はそのショットのキレが凄まじい。ナダルのコートカバーをもってしても追いつくのが精一杯で、踏ん張ってショットを打てていない。いつもの逆転を呼ぶカウンターショットが打てない。ナダルがナルバンディアンに押され始めた。第三ゲームもナルバンディアンにデュースまで追い込まれ、最後はダブルフォールト落とした。2ブレークの3-0でナルバンディアンがリードを広げる。試合は完全にナルバンディアンペースになった。4-0となった第5ゲームでもアングルショットの応酬からポール回しでナルバンディアンがブレークポイントを握ると、ナダルはその圧力に抗しきれずにショットのラインを割り、またもやブレークに成功、5-0としてサーブイングフォーザチャンピオンシップスが来る。攻め立てるナルバンディアン、ウィナーを量産してチャンピオンシップスポイントを握る。最後はコードボールがナダルの左サイドに入って、6-0で第二セットを取った。マドリッド大会に続くマスターズシリーズ連破である。

難攻不落の城塞ナダルの防壁を突き崩したのはナルバンディアンのアングルショットであった。ライジングから早いタイミングで打ち込まれるアングルショットはフォア・バック共にスピードも角度も驚異的な威力を持っていた。次はストレートだ、今度こそストレートだ、とセンターに戻ろうとするナダルのワイドをどんどん角度を付けていき、ナダルの防御を貫いた。ナダルの脚力をもってしても、このアングル合戦で有効なカウンターを打つことが出来ずに、最後にはナルバンディアンに押し切られた。また、ダウンザラインショットもここぞというとき出し、さらにボレー、サービスエース、リターンエースも要所要所で決めて見せ、ナダルに的を絞らせずに攻略に成功した、ナルバンディアンの素晴らしい勝利であった。

この大会初出場であったナダルは全仏を含むパリでの連勝記録を止められ、ガリア(フランス)の完全制覇を阻止された。ナルバンディアンの中に眠っていた獅子がついに目覚めた。そんな2007年MSパリ大会決勝であった。



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