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フェデラーのガリア戦記2007 (全仏2007スペシャルエディション)

 

2007年05月30日 未来を予想する方法

ローマに帝政をもたらすカエサルはガリアを制圧するのに8年かかった。ATPに君臨する皇帝フェデラーは全仏オープンを制するのに後どれくらいかかるだろう。
今年も生涯グランドスラムの達成を果たすべくフェデラーがガリア(フランス)の地に乗り込んできた。彼の行く手を阻む最大の障壁、赤土の覇者ナダルを直前のマスターズシリーズハンブルグ大会決勝で下してのガリア侵攻である。それなりに手ごたえを感じての大会突入ではあろう。2003年に全英を初制覇、以後ウィンブルドンでは無敗、2004年に全豪・全米を制覇してリトルスラム達成、この時点で残る全仏を取ることを至上命題として挙げられることになる。ただのランキングNo1であるだけなら、ウィンブルドンを取っただけの選手であるならそれほどまでにこの全仏タイトルの奪取を戦前に期待され、注目されることもなかったろう。だがフェデラーはただのNo1ではなく、年間で数えるほどしか負けない、ATPに君臨する圧倒的強者であり、ただの「王者」と呼ぶだけでは役不足と感じて「皇帝」と呼んできた。それほどの男であるがゆえに全仏を制覇して生涯グランドスラムを達成するところを見てみたい、と期待され注目されるのだ。それが彼の背負った宿命である。
4大大会のサーフェイスが異なるサーフェイスになってから生涯グランドスラムを達成したのは男子テニス史上唯一、アンドレ・アガシのみである。だがそのアガシも全仏には二度までの決勝に進みながら阻まれ、スランプで落ち込み、そこから復活して3度目のチャレンジで決勝に勝った。そのときには既に29歳になっていた。フェデラーが全仏の決勝で勝利するにはあとどれくらいかかるだろう。
面白いことにフェデラーが圧倒的強者として、生涯グランドスラムに王手をかけたところに、ナダルが現れた。まるでフェデラーのガリア制圧を阻止するべく、一夜にして赤土の上に難攻不落の城塞が築かれたかのようにナダルは現れた。そしてフェデラーを一度ならず二度までも全仏で阻止して見せた。全仏だけでなく、クレーコートの上では常勝無敗だったのだ。つい10日ほど前までは。
フェデラーがナダルをクレーコートで倒した。しかも全仏直前に。だがそこにいたる道のりは、フェデラーが「皇帝」の座についてから、もっとともその力を落としていた時期となる。ピークは去年の後半から全豪ファイナルまでだろう。強かった。ただ試合に勝つだけでなく、勝ち方が圧倒的だった。並み居るトップランカーたちを次から次へと公開処刑をしてなぎ倒していった。2007年全豪は失セット0優勝だった。そこからなにかかがおかしくなった。カナスに二連敗した後、ボランドリーにも不覚を取り、マスターズシリーズのインディアンウェルズ、マイアミ、ローマで準決勝にすら進めなかった。自ら「美しい」と言って自画自賛していたテニスが機能しなかった。そしてモンテカルロではナダルと決勝で今季公式戦初対決を迎えたが、皇帝の攻撃の基点となるフォアハンドが決まらずに自滅した。そんなどん底の状態からハンブルグでナダルを倒して優勝した。
今のフェデラーの状態をどう見るかは難しい。ただ波があるのは確かだろう。果たしてこの全仏、勝ち進んで、最後に大きな波を自らに呼び込めるだろうか。決して準備は万端ではない。だが、同時に神がかり的な勢いを得ることも出来るかもしれない。期待と不安を天秤にかけながら、フェデラーは今年もガリアに乗り込んできた。
初戦は雨に悩まされながらも二日かかりで突破した。

全仏1回戦
フェデラー 64 62 64 ラッセル

まずは順当な滑り出しといえよう。だがこの先、どのようにその道が蛇行するかわからない。だがそれだけに、今年は先が見えない不安だけでなく、予想だにしない成功が待っているかもしれない。未来を予想することは簡単だ、未来を予想通りに実現してしまえばいい。フェデラーには天からその力が与えられている。あとはその力を発揮するだけである。
今年もそのフェデラーの挑戦を書く。今年は今まで以上に、結末の予想はつけにくい。

 

2007年05月31日 全仏仕様Ver2007

全仏2回戦
フェデラー 61 62 76 アショーヌ

サーブが強い、フォアが強い。打って打って撃ちまくってフェデラーは勝った。後ろに下がらず、ベースラインに陣取り、深い球はハーフボレー並みのライジングで打ち返し、右に左にとにかく打ち込んで、フェデラーはハードヒットし続けた。バックハンドのスライスなどほとんど使わない。チェンジオブペースもない。フォアハンドも、逆クロスに肩を入れてコースを隠してから打ついつものフォアハンドではなかった。スタンスを広げて、体を勢い良く回して、ラケットをぶんぶん振り回す。いつものタメがないので、ラリーの展開が早いこと。ミスしても気にせずガンガン打ってくる。一方でバックはスライスがない代わりにヘビートップスピンを多用した。
タメがなくて、サーブもフォアもクイックで打ってくる。ベースラインから下がらずに深い球もライジングで切り返す。だから展開が早い。クレーでもハードコートのようなテニスが展開されていく。WOWOWの解説によると一回戦も同じようなテニスだったらしい。ハンブルグでナダルに勝った時のテニスと大分違っているな。トニー・ローチがチームから去り、フェデラーは自分の頭脳だけで今テニスをしている。そのフェデラーが出した今年の全仏仕様のテニスがこのテニスなのだろうか。果たしてこのテニスが赤土の上の強者にどこまで通用するか、この全仏でいきなりモデルチェンジとは思い切ったことをする。何でも出来る皇帝であるからこそ出来ることであるのだが、何がこのモデルチェンジを決意させたのだろう。なにもグランドスラムに突入してから変えることもなかろうに。サーブやフォアを打つときにタメがあまりないフェデラーは見慣れていないので、大きく変わった印象を受けるのだが、本人は少しテンポを速めた程度の変化かもしれない。
第三セット第三ゲームでポールの外側からコートの中に入れるバックハンドパスを見せ、フェデラーは観客を大いに沸かせた。だがミスが多発してTBまでもつれた。ここでアショーヌの猛攻がフェデラーをしのぎ始め、TBでは10-8というデッドヒートであった。だが最後はフェデラーが押し切った。
とにもかくにも二回戦突破である。このテニスでどこまで行くのか、しばし見守ろう。

 

2007年06月02日 封鎖作戦

全仏3回戦
フェデラー 62 63 60 スタラーチャ

スコアは圧勝である。映像を見ていないので、コメントしづらいがネット上の情報から判断するに内容は結構いい試合だったらしい。スタラーチャはフォアの逆クロスが強力で、フォアの逆クロスを起点にした攻撃でフェデラーを何度も守勢に追い込んでいった。だがフェデラーは一・二回戦とは打って変わって、強打の打ち合いに付き合わず、前後左右にスタラーチャを振り回し、フォアの逆クロスからの連続攻撃を封じてから、自ら攻勢にでる展開で対抗し、ポイントは与えてもゲームは渡さないしたたかにして堅実なテニスで、厄介な相手を見事に料理したという。サーブも好調で、サーブの力にかなり助けられたそうだ。ふむ、安泰というべきか、少々手ごわくてもうまく処理して、第一週を省エネテニスで乗り切った。4回戦の相手はいよいよシード選手、ユーズニーである。ユーズニーも今季好調で手ごわい相手となろう。どう乗り切るか、注目である。
ところで4回戦対ユーズニー戦の次のQFでフェデラーがあたる予定の相手は、ロブレドとボランドリーの勝者である。MSローマ大会でフェデラーに土をつけたこのイタリアのクレーコートスペシャリストがこの全仏でフェデラーと同じ山にいる。それだけでなく第七シードのリュビチッチを3回戦でフルセットの末、破っての4回戦進出である。ビックサーバー・リュビッチは早いサーフェイスで活躍するが、クレーが苦手というわけでななく、母国クロアチアはクレーコートの国だし、リュビチッチ自身、去年この全仏でベスト4にまで進出している。そのリュビッチを破るかねボランドリー。フェデラーをローマで倒した自信が彼を目覚めさせたか。次のロブレドも強いが、ひょっとすると、QFでMSローマの対決再現なるかもしれない。なんともドラマティックな展開だ。
ついでに今季、フェデラーに二連敗を喰らわせたカナスもフェデラーと同じ山だ。ただカナスは4回戦でモナコを突破しても、その先にダビデンコとナルバンディアンの勝者が待っているので、フェデラーの待つところまでいけるかどうかは微妙である。しかし、ダビデンコとナルバンディアンが4回戦であたるかね。去年のベスト4ナルバンディアンは今季調子を落として第15シードである。このあたりで目覚めてほしいが、好調のダビデンコは高いハードルとなるだろう。
適度に難易度を上げつつ、フェデラーの対戦相手たちは、打倒フェデラーを果たすべく牙をむく。どこまで突き進めるかフェデラー。第二週の皇帝の戦いにも注目しよう。

 

2007年06月04日 不安要素

2007全仏4回戦
フェデラー 76 64 64 ユーズニー

フェデラーは本来スロースターターである。試合そのものも、トーナメント全体の勝ち上がり方も。前半は相手と向かい合い、ペースを合わせて、テニスをする。そして後半、一気にギアを上げて押し切る。二週にわたるグランドスラム大会での勝ち上がり方、優勝の仕方も同じような傾向がある。だがこの全仏は最初からギアを上げて入ってきた。第一週はそれで走り抜けた。この4回戦で少し、ギアを緩めたのだろうか、4回戦のフェデラーはやや不調であった。シード選手相手にとても危険なめぐりあわせだったが、フェデラーのうまさが光って、最初のTBを乗り切ると、1ブレーク差で第二・第三セットをものにして、終わってみればストレート勝利だった。
さてローマでフェデラーに土をつけたボランドリーは4Rで負けた。QFはロブレドである。ロブレドは去年、フェデラーとナダルがローマの決勝での激戦で疲労困憊に陥り、出場できなかった2006MSハンブルグを取った男である。フェデラーは今年、ハンブルグを取り返した。去年ハンブルグに出場していれば連覇できたかもしれない。2004年、2005年と連覇しているのであるから4連覇の可能性もあったわけだ。ハンブルグはフェデラーのマスターズシリーズ初タイトル奪取の場であり、皇帝の庭といってもよい。フェデラーがクレーでも強い、という根拠となっている大会である。それをロブレドが鬼の居ぬ間にと取ってしまった。「去年のタイトルを返せ」とまさか言わないだろうが、この全仏でQFの相手としては十分に役者が務まる赤土の実力者であると同時に因縁浅からぬ相手でもある。
一方で、カナスがいい調子で勝ち上がっている。4Rで好調モナコをストレートで下し、QFでダビデンコとあたる。カナスは謹慎を受ける前よりも今のほうが体の切れは良い。フェデラーにしてみればダビデンコがあがって来てくれたほうが良い。WOWOW解説の柳恵四郎氏も指摘していたが、ダビデンコのアップテンポなラリーはフェデラーには御しやすく、やりやすい相手なのだ。むしろ、カナスのように走り回ってカウンターをためてから打ち返すタイプの方がやや苦手としている。カナスがくれば「2度ある事は3度ある」と事故が起こらない可能性がなくもない。否が応でも気合を入れなければならない局面になってきた。果たして皇帝は決勝まで勝ち進めるか。その力量のほどをとくと見届けよう。


  

2007年06月06日 競った、崩れた、そして完璧になった。

何じゃ、この試合は。

2007全仏準々決勝
フェデラー 75 16 60 61 ロブレド

第一セット、フェデラーはゲームを取るときはラブゲームで取る、攻めは好調であった。だが気合の入ったロブレドに押されるシーンも多々あり、ブレークを取り合って5-5まで競ることになった。だがここはフェデラー、その後のロブレドのサーブを破り、自分のサーブをキープして第一セットを先取する。
第二セット、フェデラーの攻めているボールがふけてラインを割るシーンが目立つ。フレームショットも目立つ。何より攻めが単調でロブレドにタイミングを合わされている。ロブレドはいいテンポでフェデラーと打ち合い、フェデラーから長いラリーの末にポイントを取る。フェデラーのテニスが狂い始めた。フェデラーのエラーが続く。第七セットで長いディースが何度も続くが、最後にロブレドが取りきった。なんと6-1でセットを落とした。去年の全米決勝第二セット、ロディックに第二セットを取られて以来のグランドスラムの失セットである。
そして第三セット、フェデラーのテニスは突然完璧になった。軽くラリーを続けた後、回りこみのフォアを高い打点から叩き込みウィナー、サーブをセンターに叩き込んでウィナー、ポイントで先行するとネットに出てさらにウィナー。連続ウィーナーでセットを連取し続け、ロブレドが1ゲーム取る間に12ゲームも取って第三・第四セットを連取して準決勝進出を決めた。
第二セットのフェデラーに今年のMSモンテカルロ大会のフェデラーがダブって見えた。あの時もフォアの強打が入らずに自滅した。ただ、今日の第二セットでフェデラーはショットが入らず、アンフォーストエラーを重ねてもなぜか落ち着いていた。ひょっとすると試していたのかもしれない、何かを。
さて、準決勝でフェデラーを迎え撃つのはカナスでなくダビデンコになった。二連勝しているという対戦成績だけでなく、テニススタイルからも、フェデラーを苦しめるのはカナスのほうだと思っていたので残念ではある。だが、今年のMSローマSFでナダル相手に激しいドックファイトを演じたダビデンコである。フェデラーに対しても大きな壁になるかもしれない。その行方に注目しよう。

 

2007年06月09日 見極めたものは何か

2007全仏男子単準決勝
フェデラー 74 76 76 ダビデンコ

ダビデンコは具体的に何か対フェデラー対策を施してきたわけではない。自分が今まで築き上げて来たテニスでフェデラーに挑み、堂々と戦った。対するフェデラーも、攻撃オプションは多彩にあったであろうに、ダビデンコのアップテンポな高速ストロークに付き合った。あえてダビデンコと同じ土俵の上にのって戦った。ダビデンコが常に先にブレークして、先行する展開であった。右に左にフェデラーを振る、ダビデンコのアングルショットの鋭さ、角度の厳しさは、さらに磨きがかかり、フェデラーの足を振り切る。だがスコアでフェデラーを振り切ることは出来なかった。フェデラーもまた、このローランギャロスではライジングからの早い展開のテニスを推し進めている。まさにこの試合、フェデラーは赤土の上での自分のテニスをダビデンコと同じ方向に見出し、同じテニスでダビデンコを上回ろうとしていた。セット後半、勝負を決めようとするダビデンコを阻止して、ポイントを長引かせ、粘り、最後に追いつくことに成功する。第一セットでは逆転に成功したが、第二・第三セットはTBまでもつれた。TBもダビデンコとフェデラーは同じテニスで打ち合い、そしてフェデラーがわずかに上回ることに成功した。結果はストレート勝利であったが、いい試合だった。試合を見ていて、自分でもテニスをしたくなって、腕が疼くほどに気持ちのいい試合であった。決勝に行く前に競った試合での勝利を経験できて、フェデラーもさぞ満足であろう。
MSハンブルグでの対ナダル戦クレーコート初勝利において、フェデラーは対ナダル対策を見極めたといわれる。多くの人がそう解説しているし、フェデラー自身そう語っている。だが、その「対ナダル対策」が具体的に何かということを、言葉で語られているかというと、そうでもないような気がする。如空自身、MSハンブルグの決勝戦をTV観戦したが、具多的にフェデラーがいつもと何かを変えたとは見えなかった。全仏に入って、ライジングとクイックモーションの早い展開のテニスを繰り広げている。ナダルのスピンボールを跳ねる前に捕らえようとする意図であろうか。だが、攻撃そのものはやはり高い打点からのフォアハンド・ハードヒットからの連続攻撃である。そしてナダルと対戦するときに、いつもその肝心の高い打点のフォアが思うように打てずに崩れていくのが、フェデラーの負けパターンだった。またナダルは今年になって去年のような強打を基本的には封印して、スピンボールの配球とカウンターで戦う本来のスタイルに戻っている。フォアの強打と強いサーブは切り札として大事なところに取ってある。フェデラーはフォアからの連続攻撃が主力武器だ。だがそれを基軸にせず、ライジングからの切り替えしで、ナダルに対抗しようとしているのだろうか。
とにかく、決勝戦でその見極めたというフェデラーの対ナダル対策の全容が明らかになる。皇帝の攻城作戦はいかなるものかがそこで示される。だがナダルはそのフェデラーの対ナダル対策を見る前にジョコビッチを突破しなくてはならない。フェデラーほどには楽に決勝には進めまい。両雄の激突なるか。フェデラーは静かにその行方を見守っている。


ナダル 75 64 62 ジョコビッチ

城塞はより高くなっていた。
第一セット、ナダルが2ブレークで先行した。そこからジョコビッチが盛り返した。ナダルのサーブインフォーザセット破り、5-5にまで戻した。波に乗るジョコビッチ、いや波乗ろうとしたのだが、乗れなかった。ナダルが乗せなかった。ナダルの脚力とカウンターが、ジョコビッチの決まったと思うショットを切り返してウィナーを奪い、ジョコビッチを振り切った。第一セットは7-5で結局ナダルが取る。
第二セット、ジョコビッチはいいテニスをしている。長いラリーでナダルに負けていない。だが勝てない。主導権を握れそうで握れない。ナダルの鉄壁のディフェンスを崩しきれずに、1ブレークを逆に許してしまう。その1ブレークをナダルは守りきり、6-4でナダルが第二セットも取った。
第一・第二セットを連取されてしまい、ジョコビッチの気持ちは挫かれてしまった。第三セット初頭、覇気のないジョコビッチに、ナダルは難なくポイントを積み重ね、4ゲームを連取した。観客からジョコビッチの踏ん張りを期待する応援の拍手と声援が沸き起こる。ジョコビッチは声援にこたえようとして、懸命にボールに食らいつくが、ナダルは動じることなく、ギアを上げて、ジョコビッチを振り切り、第三セット6-2で試合を決めた。3年連続決勝進出である。
実にナダルらしい勝ち方であった。強敵の猛攻をしっかりと受け止めて、守りきり、攻め切れない対戦相手が崩れていく。そこにフォアとサーブの強打を出してとどめを刺す。難攻不落、赤土の上の要塞ナダル城は今日も健在だった。はたしてこの高い城塞を皇帝は攻め崩すことが出来るのだろうか。
今年もまた、天は両雄を決戦の場へと導いた。勝利の行方は何処に。

 

 

2007年06月11日 変わらぬままのコート

フェデラーのファーストサーブは際どくフォールトになった。ナダルはセカンドを厳しい角度にリターンしてフェデラーにミスを誘う。二ポイント目もセカンドになったが、今度はナダルがフォアをふかしてエラーした。お互いの手の内を知り尽くしている、宿命のライバルの対決は、静かに幕を開けた。

2007全仏男子決勝
ナダル 63 46 63 64 フェデラー

フェデラーは予想通り早い展開の攻めを見せる。肩を入れてのスクエアスタンスからの高い打点で叩くフェデラーのフォアの逆クロスが火を噴く。第四ゲームでナダルからブレークポイントを二つ手にした。だがナダルもギアを上げる。体を開いてのオープンスタンスからボールを落として低い打点で打ちぬくナダルのフォアの逆クロスが逆襲する。ディースに押し戻し、サービスゲームをキープした。第六ゲームでもフェデラーにブレークポイントが来た。だが今度はナダルがサーブの力でディースに戻すが、取りきれない。長いラリーが続き、ディースが繰り返される。フェデラーのライジングからの切り返しが冴え渡る。だが、ナダルは奇跡的なランニングショットでそれをさらに切り返し、最後に結局サーブの力で乗り切った。ピンチの後にチャンスあり、3-3でフェデラーのサービスゲームである。フェデラーがここでミスを連発してラブゲームでブレークされた。その後のナダルのサービスゲームで今度はフェデラーが0-40でまたブレークポイントを握る。が、そこからのポイントがフェデラーは取れない。崩れないナダルはまたもやこのピンチを乗り切りサービスゲームをキープした。さらに、フェデラーのミスは続く。第九ゲームでナダルにまたブレークポイントをつかまれてしまう。ナダルはこのチャンスでフォアの逆クロスを鋭く決めて、第一セット、6-3でナダルが先取した。10回あったブレークポイントをミスで潰したフェデラーに対して、たった二回のブレークポイントを二本ともブレークに成功した、ナダルの見事な集中力であった。
ナダルのトップスピンは、縦回転だけでなく、時に横回転も加わり、相手を惑わす。タイミングで打つフェデラーにはその処理が、他の選手より苦手なのかもしれない。この3年間で何度も対戦していながら、相変わらず、ナダルの回転にショットを狂わされて対処できずにいる。第二セットでもフェデラーは先にブレークポイントのピンチを自ら呼び込んでしまった。だが今度はサーブの力で乗り切った。ファーストの入りが悪かった、フェデラーのサーブが入りだした。いいサーブからの連続攻撃が決まり始めた。ネットに出て行く。第七ゲームでも果敢に攻めるフェデラー、ついにフェデラーがブレークに成功した。次のフェデラーのサービスゲームでフェデラーはやや不安定でブレークポイントをナダルに握られる。ファーストがまた入らなくなってきている。だが乗り切った。この日、フェデラーはバックハンドスライスを高い打点からストレートに入れてアプローチする戦術を多く採用している。このピンチも最後はこのバックのストレートへのアプローチがそのままポイントになった。5-3でナダルのサービスゲームをさらにブレークポイントまで追い詰める。だが、最後の一本をフェデラーは決められない。長いディースの末、ナダルに守りきられた。次のサービブインフォーザセットをフェデラーはすごい気合でラブゲームキープにて取った。
第三セット第二ゲーム、フェデラーのサービスゲームをナダルがブレークした。攻め込んだフェデラーが逆襲されて落とした。その後、ナダルはこつこつと自分のテニスをして、自分サービスゲームをキープして、6-3でナダルが第三セットを取った。
第四セット第三ゲームで、ナダルがまたもやブレーク。ここで勝負は決まった。ナダルはそのままサービスゲームをキープし続けた。サーブインフォーザチャンピオンシップス、フォアの逆クロスでマッチポイントをつかんだ。。ナダルのフォアの逆クロスをフェデラーがストレートに切り返したが、その軌跡はラインを割った。6-4でセットを取った。ナダルの全仏三連覇が決まった。
第一・第二セットでブレークポイントを何度もつかみながら、自らのミスで失っていく。第三・第四セットではそのブレークポイントそのものが一度しか来なかった。ラリーがそれほど長くもなく、TBまで競ったわけでもないのに、試合時間が長いのは前半で長いディースがあったからであり、そのディースをほとんどものに出来なかった。ナダルの待ち受ける城塞に攻め込みながら、攻めきれずに、ミスを重ねた。攻めていてもフェデラーは攻めきれなかった。一方でナダルはまったく崩れなかった。それだけでなく、ナダルのトップスピンはフェデラーのストロークを崩し、ネットでもミスさせた。そしてここぞと言う時に出す、サーブとフォアの強打は必要なときにナダルに欲しいポイントを与え続けた。磐石にして鉄壁、不動にして揺るがず、攻めに転ずればその強打は矢のように射抜く、赤土の上の要塞は依然として落ちなかった。
フェデラーが見極めたと言っていた対ナダル対策とは何であったのだろう。全仏に入って多用した、ライジング打法を積極的に使った早い展開のラリーはほとんど使われることがなかった。高い打点からのハードヒットに相変わらず固執していた。変則的回転のかかった高く弾むナダルのスピンボールをうまく処理できずにミスを重ね、主導権を握ないまま試合が進むという、対ナダル戦におけるフェデラーのいつもの負けパターンであった。ナダルのトップスピンがハンブルグ以上で対ナダル対策を出せなかったのか、あるいは対ナダル対策は実行できているのにナダルが崩れなかったのか。敗因は良くわからない。ハッキリしているのは皇帝のガリア制覇はまた持ち越されたということだけであった。