2007年 MSインディアンウェルズ・マイアミ大会 TV観戦記(2007/06/18)
2007年03月07日 春の祭典 2007
春の祭典、パシフィック・ライフ・オープンがアメリカのインディアンウェルズで開催される。二週に渡る男女同時開催のドロー、「第5のグランドスラム」とも言われるこの大会、女子はティアT大会である。第一シードはマリア・シャラポワ、第二シードはクズネツォワ、第三シードヒンギス、第四シードペトロワ、以下ディメンティエワ、バイディソワ、ヤンコビッチ、と続く。東欧勢の祭典とも言うべき実力者たちがそろったが、物足りなく感じてしまうのはモーレウスモ、エナン、クライシュテルスがいないからだ。今季、ライバルたちが結果を次から次へと出していく中で結果に恵まれない現女王シャラポワのために準備されたかのようなドローである。ここまで準備されれば優勝しないわけには行かないのが今のシャラポワの立場である。当然のごとく優勝を飾ることが出来るかシャラポワ、打倒シャラポワなるか女王候補者たち、そしてヒンギスの動向は如何に。役者の数は足らなくても大いに楽しめそうな舞台が待っているような気がする。その期待に大いにこたえてもらう。
男子はマスターズ・シリーズの第一戦に当たる。第一シードはATPに君臨する皇帝、史上最高の記録を更新し続けるロジャー・フェデラーである。第二シードナダル、第三シードロディック、第四シードダビデンコ、以下ゴンザレス、ブレーク、ロブレド、リュビチッチ、ハース、ナルバンディアン、ベルディッヒ、ジェコビッチ、マレー、フェラー、ガスケ、ユーズニー、バグダティスと続く。ヒューイット、フェレーロ、サフィンといった往年のスター(←失礼)達にもシードがついて元気に出場してくれている。ATPのオールスターが勢ぞろいだ。現在のテーマはとにもかくにも対フェデラー戦である。ATPのオールスターといっても、フェデラー以外はもうスターではないといわれても反論できないこの状況下である。ATPの実力者達が束になって挑んで少しでも皇帝を苦しめてもらいたい。少なくとも皇帝の失セット0優勝なんて大会になることだけは絶対に許してはならない。そんなテニストーナメントは一度見れば十分だ。何度も見たくない。強い奴がさらに強い奴に挑み、激しく競い合う。その競い合いを見たいのだ。ナダルはやや元気を無くしているが、徐々に台頭しつつあるベルディッヒ、ジェコビッチ、マレー、バクダティスら若手には期待している。
GAORAは今年もマスターズ・シリーズの準決勝・決勝を週末に中継してくれる。週末のテニス観戦を今年も大いに楽しみたい。そのためにも熱戦を期待しよう。
2007年03月13日 地味な金星
2007ATPマスターズシリーズ第一戦インディアンウェルズ大会二回戦
カナス 75 62 フェデラー
皇帝の人間宣言というわけでもないのだが、まあフェデラーといえど負けるときはある。足にもやや故障を抱えていたようだ。トップシードは二回戦から登場するこの大会ではシードNo1のフェデラーはこれが初戦であった。初戦敗退も皇帝にはよくある話である。決勝か準決勝、あるいは初戦がフェデラーの負けパターンで、三回戦とかQFではまず負けないのがこの数年のフェデラーである。(←注意:実際は初戦敗退は久しぶりで、ついでに色々なラウンドでフェデラーは負けています。これは思い違いでした)だから定期的にめぐってくる敗北の一つと思えばよいのだろうが・・・・・相手がねぇ・・・・カ、カナスですか・・・・・。めったに負けないフェデラー、このATPに君臨する圧倒的強者、如空が皇帝と呼ぶこの男に勝つことは、普通ならATPトップランカーへの道を期待されてしかるべきところであるが、カナスとはまた地味な選手に負けたものだ。別にカナスがそれだけの力を持っていないといっているわけではない。むしろ、カナスはその知名度の割にはかなりの実績を持っている。グランドスラムこそあまり上位に上がってこないが、マスターズシリーズではTV中継のあるSFまで何度か勝ち上がっている。大きな武器もないが、穴もない。堅実なテニスを最後までやりきる。カナスから勝利をもぎ取ることは簡単なことではない。トップ10にだって十分狙える力の持ち主ではある。今季もドーピング疑惑の謹慎から復帰して早速優勝を遂げている。だが、それでも地味だよな・・・・この数年、フェデラーに勝つ選手はみんな華のある選手だっただけになあ・・・・・地味な奴に負けたものだ。別に、だからと言ってカナスがダメだとは言わないが、むしろ知名度よりもはるかにその実力はある選手なのだが・・・・・地味だよなあ・・・・・・フェデラーを負かすにしては地味だよな・・・・・
これで今週末はフェデラーのいないMSの準決勝・決勝が見られることになった。久しぶりにフェデラー以外の選手たちのテニスを大いに観戦することとしよう。しかし、カナスかあ・・・・・地味だよなあ・・・・。
2007年03月14日
覇権の品格
2007パシフィック・ライフ・オープン女子4回戦
ズボナレワ 46 75 61 シャラポワ
シャラポワは今期に入ってティアT以上のレベルの大会での優勝がない。インディアンウェルズでは去年の優勝者である。エントリーランキングでは守らなければならないポイントが多いことになる。この敗退により、シャラポワの伸び悩んでいたポイントは大きく削減されてしまい、ついに来週WTAツアー・エントリーランキングNo1の座から陥落することになった。そして、全豪を欠場し、このインディアンウェルズも欠場したが、去年すべてのグランドスラムと最終戦ツアー選手権で決勝に進出したエナンが女王の座に戻る。シャラポワは苦しいな・・・・去年の全米優勝で壁を突破したかのように思えたのだが、実際には新たなる壁に突き当たってしまっているようだ。逆にエナンは試練を乗り越える度にさらに強さを増していく選手だ。コートの上でも、コートの外でも、彼女に振りかかる試練はそのたびに彼女を強くする。今度の覇権は今までのような短命政権でなく、長期にわたる本格的な覇権として磐石さを増して行くのではないだろうか。この次のマイアミからヨーロッパクレーシーズンにいたる今年の前半戦でその覇権の品格が問われることになる。同時にシャラポワの資質も試される。エナンの覇権の品格がどれほどのものか。それはこのインディアンウェルズの段階ではまだ未知数で想定の範囲を超えはしない。だが磐石なる予感はひしひしと伝わってくる。「No1のジスティーヌ・エナンですが、それが何か!」と超然としてNo1を維持していくような予感がする。そんな静かなだが大きな流れを感じさせるシャラポワの敗退であった。
2007年03月18日
2007MSインディアンウェルズSF
去年までGAORAのATPマスターズシリーズのオープニングに名前入りで画面に出てきた選手はフェデラー、ナダル、サフィン、ロディック、ヒューイット、アガシ、コリアの7人であった。如空の言う「華のある選手」たちである。だが、今年のオープニングは違った。ドキメンタリータッチのスタイリッシュな映像と渋い曲にのって名前入りで画面に現れた選手はロディック、ブレーク、ナルバンディアン、ナダル、フェデラーである。GAORAもいよいよATPの勢力地図が塗り変わっていることを認めざる終えないということか。だが地味とは言わないがブレークとナルはオープニングを飾るほどの華がないよなあ・・・・あとチョイ出しでアンチッチ、ガウディオ(?)、ゴンザレスも顔を出す。GAOURAさん、実績重視のこのメンバーならダビデンコをはずしてはかわいそうだと如空は思うのだが・・・・去年、ナダル・ブレークと優勝数同じなんだよ。あの独特の風貌はそれなりに絵になると思うのだが。
テニスマスターズシリーズ2007年第一戦インディアンウェルズSF
ナダル 64 63 ロディック
シードNo2とNo3の激突である。意外なことにことにこの両者の対決は3年ぶりで戦績は1勝1敗のタイである。フェデラーがいなくなったこのMS第一戦だけに両者共に「ここは俺が取る」という強い気持ちで試合に臨んでいる。その強い気持ちは試合開始直後からひしひしと伝わってくる。二人とも得意のショットでウィナーを狙ってくる。そしてポイントを重ねていく。ロディックのサーブが強いのは当たり前のことだが、ナダルのサーブも負けていない。エースも取るし、威力のあるスピンサーブでロディックを押し下げる。一方ストローク戦ではナダルの方に一日の長があると思われたが、ロディックはナダルにも劣らず、右に左に丁寧にコースを振り分け、共にストロークからもウィナーを取っていく。ロディックもナダルも強力な武器もなるが弱点もあるという覇道のテニスからどこでも守れてどこからでも攻められる王道のテニスへの進化が伺える。打倒フェデラーへの準備が見とれる内容である。だが詰めが甘かったのがロディックのほうである。第一セット第5ゲームでロディックのファーストサーブが入らなくなった。ナダルが先行するゲームで挽回すべくネットアプローチを見せ、ミスで貴重なサービスゲームを落としてしまった。ナダルはこの1ブレークを守りきり第一セットを6-4で取る。
第二セット第一ゲームいきなり0-40でロディックはブレークピンチを迎えるがそこから自慢のサーブを全開にしてサービスポイントを3連取してディースに戻す。地元アメリカの観客たちはロディックのサービスエースに拍手喝采、これでキープにつながるかと思われたが、ロディックはそこでやや集中力を欠いた。それを見逃さない不動のナダル、きれいにウィナーを決めて結局サービスブレークに成功したのだった。
ロディックはストレスが溜まりいらいらしてはいるが、切れずにナダルに必死に喰らいついている。1ブレーク差で5-3になったところでロディックのサービスゲームである。30-30になった。今日のナダルはフォアのダウンザラインのキレが良い。ここでもウィナーを放ってブレークポイントを握る。ロディックにファーストが来ない。それでもセカンドでナダルを攻めさせず、逆にロディックがネットに出たが、そこでミス。そのブレークポイントはマッチポイントであった。6-3でナダルのストレート勝利であった。
ロディックは決して調子が悪かったわけでもなく、今日のテニスの内容も良かった。特にストローク戦ではナダル顔負けのウィナーを何度も放ち、十分にその力を示した。終始ナダルに先行され、ややいらいらしていたが、切れてはいないし、懸命に自分のテニスをし続けた。だが、大事なところでファーストサーブが入らなかったことと、強引なネットへのアプローチをパスで抜かれて、チャンスを逃し、ナダルに逆にチャンスを与えてしまった。ロディックに流れが行きかかった部分は多々あるが、ナダルは終始落ち着きをもって自分のテニスを淡々とやり続けた。試合内容だけを見ているとまるでナダルの方がロディックより年上ではないだろうかと思ってしまう。そんな見事なまでのナダルの落ち着き振りであった。
ジェコビッチ 62 63 マレー
予想に反してブレーク合戦になった第一セットであるが、押し切ったのはジェコビッチである。ショットのキレはマレーの方が良いようにも思えるのだが、ミスも多い。対するジェコビッチは終始落ち着きを払ってプレーしている。まるで第一試合のナダルとロディックを見ているようであった。第一セットはジェコビッチが最後に畳み掛けて62で取った。
マレーはQFの対ハース戦で足を痙攣させている。それでも勝ち上がってきたことはすごいことだが、この日のマレーはその影響を引きずっていた。左右に振られると踏ん張りが甘くなる。盛んにトレーナーを呼んで続行すべきか中断するべきかを問っていたようだが、最後まで明確な結論が得られずに最後までずるずると行ってしまった。崩れないジェコビッチはこれまた第一試合の第二セット同様、1ブレーク差で5-3まで行き、最後のマレーをサービスゲームを最後に破って6-3で決めた。
マレーには残念な結果であったが、ショットのキレは依然見たときよりも増している。これは大きく期待が持てるだろう。それ以上にジェコビッチの充実具合は見事であった。若さに似合わぬ老獪な戦術と落ち着きを持った二人、ナダルとジェコビッチが決勝で激突する。去年の全仏で初めてぶつかったこの二人、だがジェコビッチの体幹部の負傷により棄権で終わっている。クレーでの未完の対決が約一年後のハードコートの上で決着をつけることになった。次世代No1筆頭候補の座をかけて、ナダルとジェコビッチが合い見える。ジェコビッチが勝てば、今後のATPの勢力地図に少なからず影響を与えることになるだろう。その行方に注目である。
2007年03月19日
春の再起
2007MS第一戦インディアンウェルズ決勝
ナダル 62 75 ジェコビッチ
インディアンウェルズ決勝第一セット第一ゲーム、ジェコビッチのサービスゲームはいきなりナダルに4ポイント連取で破られた。さらに次のナダルのサービスゲームもナダルの4ポイント連取でラブゲームキープ、試合はナダルの圧倒的威圧の中で始まった。ナダルのフォアの逆クロスのキレが良い。打点が高く、フラットドライブでライン深く捕らえる。ヘビートップスピンで相手を押し下げて、角度の付いたフラットの強打で決める。これはハードコートでの強者としてのテニスだ。ナダルはさらに第3ゲームもフォアの逆クロスで見事なウィナーを決めてジェコビッチのサービスゲームを破った。ナダルが4ゲーム連取し4-0になったところでジェコビッチも落ち着きサービスキープにようやく成功した。キープが続き結局6-2でナダルが第一セットを取った。
第一セット後半から落ち着きを取り戻したジェコビッチは第二セット序盤よりその本領を発揮し始めた。ボールがパンクしてポイントのやり直しが行われるほどのハードヒットの応酬が繰り広げられる。第4ゲームで初めてジェコビッチにブレークチャンスが来た。強打で押すジェコビッチ、踏みとどまるナダル。長いラリー、度重なるディースの末、取ったのはナダルだった。これで流れがナダルに行くかと思われたがいいサーブをナダルのバックに集めてサービスポイントを重ねキープ、試合は緊迫したキープ合戦へともつれていく。ジェコビッチのリターンがナダルのサウスポー特有の回転を持つスピンサーブにタイミングが合い始めた。ナダルはサービスキープに苦しみ始め、何度もディースにもつれるがナダルはぎりぎりのところで踏ん張る。ジェコビッチのサービスゲームもナダルに何度も先行を許す苦しい展開だ。5-5になった第11ゲーム15-30でジェコビッチが痛恨のダブルフォールト、ナダルに二つブレークポイントが来た。果敢にネットに出るジェコビッチ。一つ目はそのジェコビッチがボレーでしのいだ。だが30-40でナダルのバックハンドパスがネットに出たジェコビッチの眼前を抜けていった。ナダルついにブレーク、均衡が破れた。ナダルのサーブインフォーザチャンピオンシップがある。ナダルの強烈なキックサーブがリターンの上手いジェコビッチから二ポイント連続で奪う。ジェコビッチがサイドラインの外側から放ったフォアの強打がベースラインをオバーした。ナダルにチャンピンシップポイントが来た。ナダルがフォアを一つミスした。そして長いラリーの末、フォアの逆クロスをジェコビッチが決めた。40-30になった。ナダルはジェコビッチのバックに執拗に厳しいボールを集めた。耐え切れずにボールを大きく打ち上げたジェコビッチ。打ち上げられたボールはベースラインを超えた。ナダルはコートに倒れ込んで、両手の拳を突き上げた。
中盤より見事なテニスでナダルに対抗したジェコビッチは、敗れたものの来週でランキングトップ10に入る。表彰式のスピーチで19歳のジェコビッチが「こんな大きな大会の表彰式は始めてで、スピーチも興奮している。」とすがすがしい笑顔を見せていた。一方の二十歳のナダルも「久しぶりの(優勝)スピーチだ。」と切り返した。ナダルは去年の全仏優勝以来9ヶ月ぶりの優勝であった。ナダル陣営に去年までのコーチであるナダルの叔父の姿がなかったかが、コーチを変えたのだろうか。詳しいことは後日ネットの情報源でわかることだろう。スコアだけ見ればこの大会、セットを落とさず、準決勝も決勝もストレート勝利であったし、スタートダッシュにも成功している。だからナダルの圧勝かと思われるが、実際には試合中盤でロディックとジェコビッチにかなり押されていた。だがそこで押し切らせないところにナダルの真骨頂がある。その脚力とリカバーショットの鋭さで、ウィナー級のショットを拾い、切り替えし、チャンスを潰して、逆襲する。このナダル本来の粘りとカウンターショットのキレで相手の攻撃を防ぎ、逆にスピンボールとエッグボールと呼ばれるフラットドライブの緩急による攻撃で攻めに幅が出てきた。サーブもキックサーブで相手を押し下げるだけでなく、センターに高速サーブを入れてエースも狙ってくる。ハードコートの上でも攻守に優れた見事なオールラウンダーとしてのテニスを展開している。
去年の全仏優勝以降、タイトルを取れずにいたナダルが9ヶ月ぶりにタイトルを取った。9ヶ月もタイトルを取れていない選手がエントリーランキングでNo2であることも驚きだが、同時に去年のクレーシーズンでナダルがたたき出したポイントの大きさをいまさらながらに驚かされる。とにかく、ナダルが優勝した。しかもハードコートのマスターズシリーズである。ナダルはこれでATPテニスマスターズシリーズのタイトル9大会の内、5つを制覇したことにった。残るはマイアミ・ハンブルグ・シンシナティ・パリの4大会である。ちなみに皇帝フェデラーは去年マドリッドで初優勝を決めMS9大会中6大会を制覇し、残すはモンテカルロ・ローマ・パリの3大会である。インディアンウェルズの次はマイアミだ。因縁のマイアミ、二年前の決勝、ナダルはフェデラーをベストオブ5セットマッチで2セットダウンまで追い込んだ。逆転負けをすることになるのだが、事実上ナダルがトップ選手の仲間入りをし、No2への道を歩むきっかけとなったのがあの試合だ。そしてそれ以後、フェデラーは翌年のウィンブルドン決勝でナダルを倒すまで、実に対ナダル戦5連敗を喫することになる。それ以後フェデラーが連勝しているが、ナダルのこのハードコートでのMSタイトルコレクションを増やした事実をどう見るべきだろうか。叩いたはずの出る杭が再び頭をもたげ始めた。しかもハードコートで。少なくとも、これにより、次なるNo1とNo2の対決が俄然面白くなってきたことはいうまでもない。 いよいよ半年以上のスランプを経てクレーでもハードでも強いナダルが帰って来たのだ。さらに強さを増して。次のマイアミでも期待しよう。再び熱き戦いがNo1と繰り広げられることを。
一方、WTAティアT大会でもあるこのパシフィックライフオープン、女子決勝はハンチェコワがクズネツォワを63 64 のストレートで下して優勝を決めた。ハンチェコワもその活躍を期待されながら何度も挫折してきた。これが再起のきっかけになればよいのだが。髪を下ろしたハンチェコワは相変わらずかわいいねぇ。
2007年03月22日
ソニー・エリクソン・オープン
春の祭典第二弾、マイアミ大会が開幕する。インディアンウェルズ同様二週にわたるドローで男女共催、それ故に第五のグランドスラムと呼ばれる。ところでこの大会、去年まではナスダック100オープンという名前の大会だったが今年はソニー・エリクソン・オープンと言うそうだ。スポンサーがめぐるましく変わりますな。でもアメリカの景気の内情が垣間見えて面白い。ナスダックも完全にスポンサーを降りたわけではないらしいが、冠がないとねえ・・・ソニー・エリクソンってWTA全体のスポンサーでもある。やたらとテニスに力を入れますね。ありがたいことではありますが。恒例のイルカと遊びまショーも今年も行われたようだ。
さて男子はマスターズシリーズ(MS)第二戦である。第一シードフェデラー、フェデラーの山にはアルマグロ、フェレーロ、ガスケ、ステパネック、ハース、ロブレドらがそろった。第四シードはダビデンコ、ダビデンコの山にはアカスソ、チェラ、ベルディッヒ、ナルバンディアン、リュビッチがいる。第三シードロディック、ロディックの山はゴンザレス、ヒューイット、マレー、フェラー、ツルスノフの顔ぶれである。第二シードナダル、ナダルの山は天敵ブレーク、サフィン、ハーバティ、ジョコビッチ、ユーズニー、バグダティスと実力者がそろう。
まあ、これだけ豪華な顔ぶれでかつ、満遍なく均等に強い選手がバラけているドローも珍しい。波乱が起きても順当に行っても、第一週から楽しめるドローだ。さてこの大会でもフェデラーを止める選手は現れるだろうか。そしてナダル対フェデラーの今季初対戦は実現するのか。楽しみな大会である。
ちなみに先週のインディアンウェルズの決勝はベストオブ3セットマッチだった。MSの決勝戦は基本的に5セットマッチだが例外の大会もある。だがインディアンウェルズは去年まで5セットマッチだった。GAORAの中継での解説で知ったのだが、今年のマスターズシリーズはマイアミ以外はすべて決勝も3セットマッチだそうだ。最終戦のマスターズカップの決勝は5セットマッチだそうだが、MSはマイアミだけであると報じていた。ここ数年、MSの決勝ベストオブ5セットマッチの熱戦のため、翌週の大会をキャンセルせざるをえない事態が皇帝フェデラーはじめ多くのファイナリストたちに発生している。それを防ぐことが目的だろか?でもそれならなぜマイアミだけ5セットマッチなのだろう。その翌週はデ杯だからATPは知ったこっちゃないというのだろうか。とにかく、今年はMS決勝で5セットマッチを見れるのはこのマイアミだけである(と多分GAORAの放送で言っていた)。大いに熱戦を演じてもらいたいものだ。
女子は当然ティアT大会である。
第一シードシャラポワ、第二シードエナン、第三シードクズネツォワ、第四シードクライシュテルスである。モーレスモは虫垂炎の手術のために戦線を一時離脱、ヨーロッパクレーシーズンに復帰の予定だそうだ。だがモーレスモがいなくてもベルギーの月と太陽、エナンとクライシュテルスがいる。そしてNo1を陥落したシャラポワも第一シードで登場する。女王たちの熱き戦いが展開されることだろう。熱戦を期待しよう。
2007年03月28日
皇帝連敗、女王進攻
ソニー・エリクソン・オープン 4回戦
カナス 76 62 76 フェデラー
フェデラーまた負けた。同じ相手に続けて二回も負けた。ナダル以外の相手に続けて負けた。ハードコートで続けて負けた。二大会連続で決勝に進めなかった。今週末はフェデラーのいないマスターズシリーズの中継が二大会連続で見ることになる。しかも相手は地味なカナスである。カナス相手にTBを二つも落とすとは・・・・すべてのセットで6ゲーム取っている状態での敗北である。そして連敗。この試合のみのフィジカルに問題を抱えていた様子もない。「単なる交通事故にあったようなもの」と楽観できる状態なのかどうか。それは次の大会で試されることだろう。そして次の大会はおそらくハードコートではない。これで春のハードコートシーズンは終わり、ヨーロッパクレーが始まる。ATPに君臨する圧倒的強者、皇帝フェデラーは今季4大会出場で二勝、内一つはグランドスラム大会、これは見事。だが残り半分は初戦敗退と4回戦敗退である。今年のクレーシーズンでのフェデラーと他の選手の出来式次第では、チャンピオンレースで一時No1を陥落する可能性が大いにある。去年後半の貯金があるから、エントリーランキングはこの状況でも安泰だろう。だが去年のクレーシーズンもモンテカルロ・ローマ・ローランギャロスと3大会連続で決勝進出しているので、意外とクレーで守らなくてはならないポイントが多いはずなのだよね。マイアミはやはり何かが起こる。
MSマイアミ大会のQFはカナスVSロブレド、チェラVSリュビチッチ、マレーVSロディック、ナダル(あるいはPotro)VSジュコビッチ(あるいはロペス)である。
トップハーフは皇帝敗退で4人全てに決勝進出のチャンスが来た。このチャンスを生かすのは誰か。一方ボトムハーフは激戦、ここに先週のインディアンウェルズベスト4の4人が集まっている豪華な顔ぶれだ。だがインディアンウェルズの調子を維持しているならナダルが来るだろう。エントリーランキングNo1が連敗している間にNo2がマスターズシリーズで連勝し、そのままヨーロッパクレーに突入すれば・・・・・欧州赤土戦線は今年も大いに盛り上がりそうだ。マイアミ大会のSFは金曜日と土曜日に分けて行われるようだ。GORAの中継も金曜深夜からである。そしてGAORAの解説が正しければMS唯一の決勝5セットマッチが行われるのがこのマイアミだ。熱戦を期待しよう。
女子4回戦
S・ウィリアムズ 61 61 シャラポワ
シャラポワがまたもやセリーナに圧勝された。全豪決勝の再現となってしまった。あの全豪決勝での公開処刑がトラウマになってしまったのだろうかね。シャラポワの元気のなさが気にかかる。女子はクライシュテルスも4回戦で敗退した。そんななか現女王エナンが着々と勝ち進んでいる。決勝のウィリアムズ対エナンは久しぶりに見て見たいと思うが、果たして決勝までの行方は如何に。こちらも大いに注目しよう。
2007年03月29日
げ、ナダルまで・・・
ソニー・エリクソン・オープン QF
ジェコビッチ 63 64 ナダル
せっかく、フェデラーとの差を詰めるチャンスだったに、ナダルももったいないことをしたものだ。ストレートだが締まった内容のスコアである。ジェコビッチはナダル特有のテニスにようやく慣れたのだろうか。とにかくNo2を破ったのだから金星と呼べるだろう。SFの相手は二週続けてマレーである。マレーはQFでロディックの棄権により勝ちを拾った。おかげでフィジカルは万全だろう。インディアンウェルズのときはマレーが前日の足の負傷を引きずったままの対戦でジェコビッチに敗れたが、今度はそう簡単には終わるまい。いよいよ期待の新星同士、力を存分に発揮しあっての対決が見られるだろうか。熱戦を期待しよう。
女子の方はセリーナがバイディソワに快勝、エナンはペトロワ相手に2セット連続TBをものにして辛勝、内容はともかく、二人ともSFに進出した。この調子ならば決勝進出の可能性は大きいだろう。それぞれ一時代を築いた女王同士、復権をかけたこの戦いは大いに注目である。
2007年03月31日
マイアミに注目
MS第二戦マイアミ大会準決勝
ジョコビッチ 61 60 マレー
静かな、とても静かな立ち上がりだった。共に最初のサービスゲームをキープした。強打もなく、見事なウィナーもなく、相手のミスでポイントが積み重なっていく。第三ゲームのジョコビッチのサービスゲームで0-40になった。最初にブレークポイントが来たのはマレーの方だった。しかも三つ。ところがここでジョコビッチがいきなりギアを上げた。ドロップショットの応酬にサービスエース、バックのラリーでディースに戻すジョコビッチ。さらびポイントを重ねてサービスをキープした。今日のマレーはストローク(特にバック)をネットにかけることが多い。バックのラリーはジョコビッチが最後にポイントを取る。第四ゲームで今度はジョコビッチがブレークポイントを握り、彼はものにした。ジョコビッチブレーク成功して3-1、そしてこの日これ以後、マレーがサービスをキープすることはなかった。さらにマレーのサーブを破り3ゲーム連取して6-1でジョコビッチが第一セットを取った。
第二セットになって流れは決定的になった。ロングラリーの末、最後にポイントを取るのはジョコビッチである。マレーはアンフォーストエラーが多い上にファーストサーブの入りが悪い。一方のジョコビッチはメリハリのあるショットの使い分けと強いサーブ、そして冴え渡るドロップショット。雄たけびを上げるマレーの横で淡々とポイントを積み重ねるジョコビッチ。マレーも不調なりによく喰らいた。ディースが何度もあり、それぞれのゲームでポイントは競っている。だが連続してポイントを最後に取るのはジョコビッチである。6ゲームを一気に連取して6-0でジョコビッチが二大会連続でマスターズシリーズの決勝進出を決めた。
カナス 75 62 ルビチッチ
あれれ、第一試合と同じ金曜日に第二試合が入っている。こんなスケジュールだったけ?録画試損ねた。まあ、夜の再放送で見られるのだが、内容は第一試合よりも競ったようだ。特に第一セットは5-5まで行っている。それなりにいい試合だったようだ。
さて皇帝フェデラーに連勝した男カナス、このドーピング違反(服薬の判断ミスにより引っかかってしまった)による謹慎から帰って来た男カナス、もう決して残された時間が豊富にあるというわけではない年齢になっている男カナス、綺羅星のごとくいるアルゼンチン勢のスター選手の中で地味な存在であったカナス、そのカナスがマスターズシリーズの決勝まで来た。相手は昇り竜のジョコビッチである。フェデラーとナダルだけに注目が注がれているかようなATPにおいて、この春、一気にその存在感を大いに示した二人が春のハードコートシーズン最後の大舞台で当たる。No1フェデラーを二度破った男カナス、No2ナダルにリベンジを果たした男ジョコビッチ、この春の祭典のMVPに名乗りを上げるのはどっちだ。
その日曜決戦の前に女子の決勝が土曜日にある。決勝のカードはエナン対S・ウィリアムズ。2003年の女王対2002年の女王の女王対決である。もしも全盛期の力で二人がぶつかればどちらが勝つのかという「IF」は如空のこの数年の興味の対象であった。それが実現する試合となるかどうか。今回は女子も注目の春の祭典である。
2007年04月02日
ジョコビッチの鮮やかなる勝利
快晴のマイアミは強い風が吹き荒れていた。そのマイアミの紫色のハードコートの上で、No1フェデラーに二連勝した29歳の男と、No2ナダルに先週決勝で負けた雪辱を果たした19歳がタイトルをかけてぶつかった。
MS第二戦マイアミ大会決勝
ジョコビッチ 63 62 64 カナス
共にラリーの中から強打で押すストローク、激しい打撃戦が序盤から繰り広げられた。第四ゲーム、カナスのサービスゲームで0-30とジョコビッチが先行する。ここでカナスは痛恨のフットフォールトを取られてブレークポイントになった。ジョコビッチはタメを作ってからバックハンドをダウンザラインに入れた。見事なウィナーでそのワンチャンスをジョコビッチがものにした。ギアを上げるジョコビッチ、次のサービスもキープして4-1にした。カナスは決して切れずに見事な執着心を見せ、突き放しにかかるジョコビッチにしっかりと食らいついき、時にすばらしいスパーショットを見せて観客を沸かせた。だが最後にはジェコビッチがそのカナスの粘りを断ち切り第一セット6-3でジョコビッチが取った。
第二セット、豪打の応酬の中、ドロップショットを織り交ぜ、主導権を握ることが多いのはジョコビッチである。第四ゲームでカナスがダブルフォールとでスタート、あっという間に0-40にされブレークポイントが来た。カナスが1ポイントを返すが、次の長いラリーの末、ジョコビッチ渾身のフォアハンドダウンザラインに叩き込まれた。ウィナーでブレーク成功、このセットもジョコビッチが先行する。次のカナスのサービスゲームも0-40になった。バックハンドダウンザラインをきれいに決めて、2ブレーク。ジョコビッチのサービスゲームで第6ゲームと第8ゲームをカナスはブレークポイントを握るとこまで追い上げるのだが、長いディースの末、ゲームを取りきったのはジョコビッチだった。6-2でジョコビッチが第二セットも取った。
GAORAの解説が正しければ今年マスターズシリーズで唯一のベストオブ5セットマッチであるこの試合、第三セットも緊迫したキープ合戦が続く。ジョコビッチにいらいらしたしぐさが見られ、ミスするとラケットやボールに八つ当たりするシーンが見られたが、決してプレーそのものが崩れることなく、粘るカナスに対抗する。4-4でカナスのサービスゲーム30-30になった。勝負に出るジョコビッチは長いラリーからバックハンドダウンザラインを強打で打つ。必死に返すカナスの返球をフォアの逆クロスでウィナー、ブレークポイントが来た。ここでカナスががなんとダブルフォールト!ジョコビッチが土壇場で大事なブレークポイントをものにした。次のサーブインフォーザチャンピオンシップを強い気持ちでプレーするジョコビッチ、最後まで粘るカナスの執念を断ち切る。フォアでウィナーを決め、6-4で優勝を決めた。
ジョコビッチのテニスは終始崩れることがなかった。サーブは強いし、リターンは堅実、ストロークでコーナーを丁寧について相手を左右に振り、ボールが短くなれば踏み込んで強打、そのままネットに詰める。その連続攻撃中でドロップショットを絶妙に織り交ぜる。ブレークポイントを何度も握られながらもの逃げ切り、逆に自分のチャンスは確実にものにした。王道というべきテニスを淡々と最後まで続けたジョコビッチの見事な勝利であった。カナスはベテランのクレーコーターらしい強打と粘りのテニスでジョコビッチに食らいついた。そしてチャンスも何度か来たが、そのチャンスを生かしきれなった。強打だけでなく、もう少し緩急をつけてジョコビッチを揺さぶれば違った展開もあったかも知れないと思う。前後左右に振られてもあきらめずに走るカナスの姿に観客は大いに声援を送り、その声援にこたえるかのように、時にすばらしい逆転のショットも見せた。だが最後の詰めの部分で厳しかったのはジョコビッチであった。ゲームそのものは長引くものが多かったが試合そのものは見事なストレート勝利である。
観客席の中に「次のNo1だジョコビッチ」というカードを上げているファンがいたが、それは決してただの夢ではないことを示したジョコビッチのマスターズシリーズ格初優勝であった。
ところで土曜日に行われた女子の決勝ではセリーナ・ウィリアムズが優勝している。エナンに第二セット、チャンピオンシップポイントを取られるところまで追い込まれていながら、そこから逆転したらしい。あのグランドスラム4連勝したころの強さを取り戻しつつあるというのだろうか。エナンの覇権は男子のフェデラーのごとく磐石のものになると予想していたのだが、どうやらそう簡単にはいかないようだ。そのエナンを脅かす相手がクライシュテルスでもモーレスモでもシャラポワでもなく、また新しい才能でもなく、過去の人になりつつあったウィリアムズであるところに驚きを感じるが、それがやがて驚きでも何でもなくなるかもしれない。今後のWTAの行方はまだ定まらない。それを予感させるマイアミ春の祭典であった。