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覇道を王道にかえて エナン2006

 

「初めてラケットを握った時からバックハンドは片手打ちだった。以後、両手で打ったことはない」とエナンは自身で述べている。女の子で小さな体だった眼鏡っ子は「両手打ちにしたほうがいいんじゃない」と周囲から言われたことだろう。それでも彼女は片手で打ちつづけた。
彼女の歩む道のりは常に覇道であった。
そのテニス選手にしては小さな体格はハードトレーニングで何度も壊れかけたし、カプリアティやダベンポーとなどの元女王たち相手に体が壊れる寸前までの死闘を繰り広げた。審判のジャッジミスに対するクールな対応やフェドカップへの態度でパッシングも受けた。今年は全豪のシングルス決勝とフェドカップの優勝のかかったダブルスで棄権を余儀なくされた。彼女のキャリアには試練が何度もおとずれる。決して人並みに普通だったとはいえない家庭環境であっただけでも十分彼女には試練であったろうに、テニス選手のキャリアの中で彼女は何度も困難な壁にぶつかる。そしてその度に乗り越えてきた。
今や彼女のストロークはバックハンドだけでなくフォアハンドの威力でもトップクラスであるし、そのサーブは「身長がなければ強いサーブは打てない」という常識を完全に覆した。いわゆるアプローチショットなどというショットを使わずに、ベースラインから普通に強打して相手の体制が崩れたと見るや、そこからネットに猛ダッシュしてオープンコートにボレーを決める。必要とあらばサーブアンドボレーも普通にやる。その鍛え上げられた脚力は誰よりも早くコートの中で彼女を縦横無尽に動かし、かつ打つときはきっちりとまって打つ。そして苦しいところを我慢してしのぎ、大事なところで集中力を挙げて一気に攻めきる勝負勘は天性のモノがある。コートの外で崩れることはあるかもしれないが、コートの中でメンタルが崩れることはない。強い意志で勝利への執念を貫き通す。そして、彼女の代名詞であるその片手打ちのバックハンドは誰にも真似できない威力と正確さをもって女子テニス史上に君臨するものとなっている。彼女は自身が歩いてきた覇道を王道にかえたのだった。
そして彼女自身、WTAに君臨する機会を何度か手にしている。その何度目かの機会がまた訪れた。

2006WTAツアー選手権 決勝 エナンH 64 63 モーレスモ

モーレスモの調子は悪くない。三日前のラウンドロビンではエナンの撃退に成功している。しかし、今日のエナンの猛攻の前に、モーレスモは土俵際に追い詰められて、そのまま寄り切られた。モーレスモはできればネットに出て行きたい選手だ。だがエナンのサーブとストロークの威力の前に、ベースラインに押しとどめられた。そしてエナンのショットに押されて少しでも体制が崩れ返球が甘くなると、逆にエナンの方にあっという間にネットに詰められて叩かれた。怒涛の攻めの前に、モーレスモはまさに押し切られたのだった。
エナンはグランドスラム決勝初進出した2000年のウィンブルドン決勝こそビーナスに敗れたが、その後4回GSの決勝に進み、その全て勝利する。だがそのGS決勝連勝記録は今年になって止められた。だけでなく今年は4大大会全てに決勝進出を果たしながら、3敗してしまった。
その宿敵である二人、全米決勝で敗れたシャラポワを準決勝でくだし、全豪で勝利を譲り全英決勝で敗れたモーレスモを決勝で押し切り、年間最終ランキングNo1とツアー選手権初優勝を手中にした。絵に描いたようなドラマチックな展開でエナンは再び女王の座につくことになった。
セリーナ・ウィリアムズが生涯グランドスラムを達成した頃の強さを取り戻すことはもはや絶望的だろう。今、WTAの中で圧倒的強者の地位につける力を持つものはただ一人、エナンだけである。いよいよエナンの覇権が始まる。それがATPにおけるフェデラーのごとき圧倒的強者の存在になるのか。あるいは群雄割拠の中でかろうじてNo1を保つ苦しい展開になるのか。少なくとも、一年間健康にあって主要な大会にフルエントリーできれば、彼女がNo1であることは間違いない。今年はそのことを証明できた。だがその覇権は未だ圧倒的強者とまではいえない。モーレスモとシャラポワはそれを崩すことができるのか。そして自分で明言した引退の時期が近づきつつあるクライシュテルスは残された時間内に打倒エナンを果すことができるのか。
WTAは例年以上に充実した一年であった。熱戦を届けてくれた選手たちに感謝。そして、覇道を王道にかえて突き進むエナンとそのライバルたちの戦いに、来年も注目しよう。

 

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