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第057房  2006世界スーパージュニア観戦記

 

チケットの予約というのを始めてコンビニエンスストアでした。木曜日の夜にファミリーマートの掲示板にチケットの掲示があってうつぼテニスセンターの「世界スーパージュニア選手権」の準決勝と決勝のチケットが張り出されていた。土曜日は仕事だが、日曜日は何とか時間を作れそうだ。ここで注文していこうと唐突に思い立った。カウンターに行って日曜日のチケットを注文しようとしたら、「ご案内いたします。」といわれて銀行のATMのような装置の前に連れて行かれた。画面の案内にしたがって操作してくれと言われた。機械音痴のおじさんよろしく、人差し指でその都度その都度、画面を確かめながら、たどたどしく進める。やがて操作が終わると、長いレシートがガリガリ音をたてながら出てきた。そのレシートをカウンターに持っていくと、店員さんがレジのバーコード読取機でレシートの4行にも渡るバーコードをチェックした。するとカウンターの後ろにあったプリンターからカラー印刷されたA4サイズの用紙が出てきた。A4を切り取り線に4等分するとチケットの出来上がりである。A4の残った部分は破棄するそうだ。なんかもったいないと思いながらもチケットを財布にしまいこんだ。

そのチケットを持って、日曜日の朝、大阪うつぼ公園にあるうつぼテニスセンターに向かった。途中、近くのローソンで飲み物や食べ物を買って行くのがいつもの手順だが、この日、ローソンは例年になく大混雑していた。ここ数年、スパージュニアを見に来ているが、ここまで混雑はしていなかった。ジャパンオープンで二年前にシャラポワが来たり、今年フェデラーが来たりしたことの余波だろうか、テニスを見に来ようとする人が増えたことはいいことである。

忙しかったので、事前にドローを確かめてこなかった。おかげで新鮮な目で決勝を見ることができた。男女とも日本人が決勝まで勝ち進んできていたのである。だが結果は明暗を分けた。

少女決勝は第一シードキャロライン・ヴォズニアキ対第二シード森田あゆみである。この二人、実はダブルスのペアーで前日の少女ダブルスで優勝している。試合は第一セットをヴォズニアキが取り、第二セットを森田が取った。セットオールでファイナル突入したが後半森田は力尽き、ヴォズニアキが押し切って優勝した。デンマークのヴォズニアキは一昨年のチャンピオンで、そのときの試合を如空はこのうつぼで観戦している。あの時、彼女はまだ14歳だった。だがやせっぽちだったが身長は日本男子の大人より高かった。あの時彼女は高い打点からの広角打法で相手を翻弄、圧倒的強さで優勝を飾ったのだった。あれから2年、16歳になったヴォズニアキは体格ががっしりして見た目は完全に20歳台の大人の女子選手になっていた。フォアハンドを打つフォームがとてもキレイだ。だが、ネットプレーがまだまだで、森田をストローク戦で押していながらもネットで決めきれず、ずるずると試合を長引かせた。一方日本期待のジュニア森田は森上・中村と同じフォアバック共に両手打ちの選手で、フットワークも良く、右に左にブンブンスイングを振り回してテンポ良くストロークを打ってくる。見ていてとても小気味よい。ストロークの威力はヴォズニアキの方が上なのだろうが、フットワークや配球などを含めたストロークの総合力は森田の方が勝っているかのように思えた。ネットプレーの安定度も森田の方が良い。だが、際どい判定に不服を漏らしても終始プレーは安定していたヴォズニアキに対して、森田は不利な判定や自分のミスを精神的に引きずりやすく、メンタルに波があり、調子に乗り切れなかった。共にフォアだけでなくバックハンドからの逆クロスが武器であったが、森田のそれはラインを割ることが多かったが、ヴォズニアキの逆クロスはしっかりとラインをとらえてポイントを取っていた。そのあたりの差が、結果として出てしまったかのように思える少女決勝であった。

少年決勝は第十二シードハリー・へリオバラ対ノーシードの杉田祐一である。この二人に関して如空は予備知識がまったくない状態だった。試合は当初ヘリオバラ主導で進む。サーブ・リターン・フォア・バックともに安定しいている二人、深さと威力の面でヘリオバラが優位にたっているが杉田も鋭い角度をつけたショットで対抗している。第一セットをヘリオバラが取ったが、第二セットで先にブレークしたのは杉田のほうだった。杉田の3-2で迎えた第六ゲーム、杉田のサービスゲームでディースになった。一進一退の攻防が続き、延々とディースが繰り返される、どちらも守っていない。盛んに強気の攻めを見せ、ミスしてもひるまず、厳しい攻めのボールに必死に喰らいつき、ゲームへの執着心をあらわにする。スーパープレーも続出し、おとなしかった観客達も徐々に拍手のボルテージが上がる。白熱した攻防戦が延々と続く。だが最後に押し切ったのは杉田だった。帽子を叩きつけるヘリオバラ。観客が杉田を称える。これで杉田が波に乗った。ヘリオバラもあのディースを落として気落ちはしただろうが、決して切れたりはしなかった。むしろ淡々と自分のプレーをそれ以後もしていたところは見事である。だが杉田のプレーの方に切れが増した。今まで以上にショットの角度が厳しくなった。ネットでも安心してみていられるほどにしっかりとボレーを決めていた。第二セットを取り返し、第三セットはヘリオバラが失速したわけでもないのに6ゲーム連取の6-0で圧倒、鈴木貴男以来12年ぶりというスーパージュニアの日本人による少年シングルス優勝を決めたのだった。

男女共に精神戦であったような少年・少女の決勝戦であった。あの幼さであの辛い精神戦を一人で戦う彼らに尊敬の念を感じずにはいられない。秋晴れの空の下でそれを強く感じた。


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