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第055房 2006年 ジャパンオープン TV観戦記

 

2006年10月02日 皇帝東京に現る

ATPに君臨する圧倒的強者ロジャー・フェデラー。エントリーランキングNo1経験者にしてグランドスラムタイトルホルダーである王者たちですら圧倒してしまう今の彼の存在は「皇帝」と呼ぶにふさわしい。その皇帝がとうとう東京に上陸した。
AIGジャパンオープンはATPツアーきっての振られ上手だ。過去に何度、トップランカーたちの出場をドタキャンされてきたことか。全米を終えてインドアに向かうこの時期に、何が悲しくて極東の島国なんぞに行かなくてはならないのかという選手たちの本音が垣間見えている。それだけに、全豪オープン後、フェデラーがジャパンオープンの出場を表明しても、来日を疑っていた人々の方が多かったのではないだろうか。だが皇帝は東京に現れた。フェデラーが日本にやって来たのである。
皇帝を迎えて開幕するAIGジャパンオープン、惜しむらくは第一シードフェデラーの対抗馬として、最終日に全豪決勝の再現を期待されたバクダティスが欠場してしまったことだ。バクダティスに代わって第二シードの重責を担うのは今季好調のロブレドである。第三シードはアンチッチ、第四シードはマレー、以下ニーミネン、トルスノフ、ジネプリ、スリチャパンと続く。バクダティスを欠いたとはいえ、なかなか充実した顔ぶれではないか。順当に行けばSFはフェデラー対マレー、ロブレド対アンチッチである。これは要注目である。今季、ナダル以外に敗北を喫している唯一の男がマレーである。皇帝としても、ギルバートコーチとのコンビで名を上げつつあるマレーを、ここは圧倒しておかなければならないだろう。またニーミネン・ジネプリ・トルスノフという実力者がこれに代わっても十分に面白い。
ジャパンオープンは男女同時開催である。第一シードバルトリ、第二シード杉山、第三シードキリレンコである。ティアVとはいえ地味な顔ぶれである感を否めない。杉山の久しぶりのツアー優勝に期待しよう。
さて準決勝・決勝は例年通りNHKで放送されるが、一・二回戦をCSのGAORAが中継してくれる。後日決勝も録画中継してくれるので期待しよう。
ATPではアジアの情勢など関係なくヨーロッパでインドアシーズンを開幕させる。フランスのメスでモーゼルオープンが開催される。第一シードフェラー、第二シードフェレーロ、第三シードジェコビッチ、第四シードユーズニー、第五シードガスケである。こちらも目を離せない。
WTAでもインドアシーズンが開幕する。ドイツのシュツットガルトでティアU大会ポルシェグランプリが開催される。第一シードモーレスモ、第二シードディメンティエワ、第三シードペトロワ、第四シードクズネツォワである。さてモーレスモ、全米は不本意な結果だったろう。最終戦に向けここらで加速しておきたいところだが、ロシア勢の波状攻撃をしのげるだろうか。こちらも熱戦が期待できそうである。

 

2006年10月03日 生中継と胸元と

フェデラーが来日したからかどうか、GAORAは朝の10時から夜の10時まで連続12時間ジャパンオープン生中継を三日連続で行う。その初日、いきなり試合が中継されるのか、あるいはフェデラー来日を記念して何か特別番組や特選映像でも挟むかと、期待してその録画を見てみると、始まったのは
「皇帝フェデラー来日記念、公開練習生中継!!!!」
・・・・・なんかねぇ、一気にテニス観戦気分が盛り下がったよ、GAORAさん。
フェデラーのリラックスしたストロークやサーブのフォームを見て多々得ることはあったけどね。いきなり練習の生中継はないだろう。まあ東京は雨だったらしいから仕方ないのかもしれないが。
で初日のサプライズはこれ。

AIGジャパンオープン一回戦 森上 16 62 76 キリレンコ

地味な女子の面子の中で唯一、名前でお客を呼べそうなキリレンコを森上が負かしてしまった。「喜んでいいのか、嘆くべきか」という大会関係者の複雑な心中察して余りある光景である。試合自体はフルセットの好ゲームであった。まあ、これでキリレンコの胸元目当てで集まる人はいなくなり、純粋にテニス観戦モードになるかもしれないが。しかし、興行上、準決勝位までは花がないとねぇ・・・・
鈴木も勝った。あのサーブ&ボレーは見る人を魅了する。もう少し活躍してほしいものだ。
熱戦を期待しよう。

 

2006年10月04日 フェデラーのブログ

今年からATPの公式Webサイトではツアーをまわる選手たちが週替りでブログを担当している。これはなかなか好評のようでよく続いている。さて、AIGジャパンオープンが開催されている今週、そのブログを担当するのはジャパンオープンの第一シード、ロジャー・フェデラーである。当然、そのブログの内容は日本のことになるの多くなる。日本語ブログがこのフェデラーのブログの英文を翻訳して公表しているので、英語が苦手な人もそれほど時間差をおかずにその情報に接することができる(たとえばこことか)。便利な世の中になったものである。
さて、そのフェデラーのブログ、現時点でまだ二日分しかアップされていないが、ATPに君臨する圧倒的強者・皇帝ロジャー・フェデラーの日本での日常が垣間見られて大変面白い。
そのブログによると・・・・・
フェデラーは日本に来るのは初めてで、一番驚いているのはファンの対応。「まるでロックスターになったようだ」というくらい本人にとって想像以上の狂乱振りらしい。地味とはいえ、3年近くATPでNo1選手なのだから、世界中どこへ行っても熱狂的ファンに囲まれているものと思っていたが、どうもそうではないらしい。一方で世界的に見てそれほどテニス観戦が盛んではない日本で、フェデラーが驚くのほどファンが取り巻いて騒いでいるというのは確かに不思議な現象だ。もちろんフェデラーのリップサービスの部分があるのだろうが。シャラポワブームといい、日本人はやはり流行に弱いのか・・・・
そんな感じなので、センターコートでの練習を大会側から打診されたとき、フェデラーはその意味がわからなかったらしい。「何でわざわざ試合の進行スケジュールを押しのけてまで、自分の練習をセンターコートで練習させるのか?」。当日になって初めてその意味を皇帝は知る。なんと練習を公開して、それを宣伝していおいて観客に試合でなく練習を見せたのだった。考えてみれば練習を見せるという発想自体、フェデラーにとっては思いもつかないことだったのだろう。(気分は良かったと言っているが)
皇太子殿下とダブルスもしたという。皇居のゲストハウスの一つでクレーコートが裏に二面あるところでプレーしたとか。その後美しい日本庭園の中で皇太子一家と昼食を共にしたと。いやあ、さすが皇帝、扱いも国賓級ですなぁ。
初めて知ったがフェデラーは昔ベジタリアン(菜食主義者)で肉も魚も食べなかったらしい。それでもアスリートとして必要な体は作れるのだね、いやびっくり。だが今では付き合いもあってか肉も魚も食べるとのこと。ヘンマンとコーベックと一緒に神戸牛の鉄板焼きを食べに行ったという(ちなみにヘンマンの驕りである)。寿司も刺身も食べる。以前恋人のパブリネックの刺身にこっそりわさびをたっぷり塗って、彼女の鼻から火を噴出させて、今その復讐を恐れていると、楽しそうに書いている。
普段建築の設計を生業としている如空にとって一番面白かったのはトイレの話。
フェデラー曰く、「日本のトイレは世界一だ」と。暖房されている便座にウォシュレットが付いている。ボタンがいっぱい付いていて「まるでスペースシャトルの中にいるようだ」とか「ボタンを間違えて押して飛び出してしまうのではないだろうか」といってバスルームの中で長時間いて興奮しているようだ。
今時のマンションでも戸建住宅でも当たり前のこの多機能トイレ。しかし、世界的に見てこれだけトイレを多機能にしているのは日本だけだろうな。過剰装備の感もなくはない。だがフェデラーはとても気に入っていてこのTOTOのトイレを自宅にもほしいと言っている。いやあ、便器メーカーのTOTOさん、やりましたね。世界No1プレーヤーに無料で宣伝してもらったね。しかも英語で世界発信だ。TOTOのライバルのINAXさん、フェデラーの泊まるホテルのバスルームに自社製品を入れておかなかったのは痛かったですなぁ・・・・
さてそのフェデラーが本来の仕事に戻る。いよいよ本日第四試合にATPに君臨する皇帝ロジャー・フェデラーが登場するのである。ミーハーな国民性を大いに発揮して、この試合を観戦することにしよう。

 

2006年10月05日 連続TBの内容

一回戦でジネプリが負けて「おいおい」と思っていたら、二回戦ではマレーが負けてしまった。
そしてフェデラーも初戦突破は時間がかかった。

AIGジャパンオープン二回戦 フェデラー 76 76 トロイキ

初戦で初対戦の相手、いつものフェデラーらしく様子見から入ったので、第一セットのTBは想定の範囲内だったろうが、第二セットでTBまで引っ張られるとは思っていなかったろう。第一セットの第二ゲームと第三ゲームでそれぞれブレークし合って以降、完全なサービスゲームのキープ合戦になった。黄色いディアドラのウェアを身にまとったトロイキのサーブは、球種が一種類しかないが独特のフォームとクイックモーション、そしてワイド・センター・ボディとコースを散らすことで、フェデラーに狙いを絞らせず、リターンから攻めさせなかった。アングルの切り返しも見事で、ギアを上げようとするフェデラーを何とかいつもの水準以下に押しとどめることに成功した。だがさすがにTBではフェデラーを押えきることはできずに淡々と勝負を決められてしまったが、バイタリティあふれるそのプレーはフェデラーの応援に駆けつけた観客からも惜しみない拍手で評価された。
ところでサプライズといっては本人に失礼かもしれないが、鈴木がスリチャパンに勝った。76 67 64というこちらも連続TBの末の熱戦だった。勝ち進めばQFでフェデラーと当たる。鈴木にも注目していこう。

 

2006年10月06日 皇帝対バッタ男 再び

ガオラの中継が月火水でNHK地上波の中継が土日、で木金のジャパンオープンQFの放送権はどこが取ったのか・・・・と思っていたらNHKが持っていてBSハイビジョンで放送するということだった。いいかげん、色々なチャンネルに番組を分散する手法やめろよな、NHK。ちゃんと地上波にBSの料金を払っている如空にまだたかる気か。世間の不払い運動に法的措置を取るだと?国民の反発が高まるとその根拠となる法律を国会で改正させられるぞ。
で、TV観戦できなかった3回戦でフェデラーが去年の覇者ムーディーを61 62で一蹴、ようやくらしさを発揮し始めた。AIGのジャパンオープンのHPもNHK並に使えない。表示が遅い上に、アクセスが集中してフェデラーの試合の最中などまともに機能していない。こんな使えないWeb環境に困ったときのために下記のようなライブスコア専用ページがある。ライブスコアの表示速度に悩まされている人は一度試してみると良い。

LiveScore 
ScoreStand
CBS SportsLine

フェデラーの圧勝の一方で鈴木がヴァスケに67 76 61 の大逆転で勝利した。これで鈴木はQFで進出、フェデラーに対して今年の全豪に続く二回目の挑戦権を得た。狐のような目をしているが、ネットの前でぴょンぴょン飛び跳ねながらボレーのタイミングを取ってネットで壁になる姿はまるでバッタのようだ。あの飛び跳ねるフットワークは賛否両論があり、逆を突かれたときの反応が遅くなるのでよろしくないという意見もある。だが、かつてのグラフなどもベースラインで飛び跳ねるフットワークをして世界を制した。あくまで本人がタイミングを取りやすい方法を取るべきで、そういう意味では、あの飛び跳ねるフットワークは鈴木には合っているということなのだろう。小さな体で、遠くのパスを飛びついてボレーする姿は躍動感にあふれ、見ていて気持ちがいい。
バッタ男の皇帝への最初の挑戦だった全豪では、確かに善戦したと思うがスコアの上では完敗であった。今度はセットを奪えるかというところまで肉薄してもらいと思う。それを期待させるだけのものが鈴木のネットプレーにはある。熱戦を期待しよう。

 

2006年10月07日 世界王者と日本の誇りと

ああ、この試合をTV観戦できなかったことは、今年の如空のテニス観戦記の中で最大の痛恨事になるような気がするなぁ・・・・・

AIGジャパンオープン男子QF フェデラー 46 75 76 鈴木

ヒューイットやロディックですらロクにセットを取らせてもらえないのが今のフェデラーである。そのフェデラー相手に第一セットを取り先行、続く第二セットも5-5まで肉薄し、ファイナルもTBにまで持ち込んだ。見事である。すばらしい戦いだ。今日、有明のコートでこの試合を観戦できた人々は幸せである。世界No1対日本男子、かつオールラウンダー対ネットプレーヤーという近年のATPツアーではほとんど見ることのできないこの組み合わせにして、この大接戦。これを名勝負と呼ばすになんと呼ぶのか。敗れたとはいえ、そんな名勝負の舞台に立てたことを鈴木は誇りに思っていることだろう。だが・・・ファイナルTBまで行っただけに勝ちたかったろうな・・・・・皇帝相手にここまで追い上げておきながら・・・・がんばれ鈴木、アガシに比べれば君に残された時間はまだまだある。その見事なネットプレーをもっと大きな舞台で披露してくれ、そして勝ってくれ。鈴木貴男は日本男子テニスの誇りだ。
一方で日本女子テニスの誇り、杉山愛はQFを突破できなかった。キリレンコを撃破した森上も二回戦で敗退した。日本の期待を一身に背負って中村が3RとQFのダブルヘッダーを連勝してベスト4に残った。自身初のツアーSF進出だそうだ。中村の攻撃的ストロークも見ているものを魅了するものがある。ここは彼女のツアー圧優勝に期待しようか。
男子は第二シードのロブレドが負けた。これでフェデラーの決勝の相手は去年のファイナリスト・アンチッチとなる可能性が濃厚になってきた。さて、全仏でいいテニスを披露しながらもフェデラーの前に敗退したクロアチアのエースはウィンブルドンでは完全にフェデラーに封じ込められた。さて、対フェデラー対策の新たな手は何なのか。アンチッチの動向に注目しよう。

 

2006年10月09日 ヘンマンの歩んだ道

ヘンマンの試合を始めてみたのは1999年のウィンブルドンだった。ネットプレーヤーとしてのヘンマンの全盛期はこの時期だといわれる。極端なクローズドスタンスから両膝を深く折り曲げ、背中から引き抜くようにラケットを振り上げ、スピンサーブを相手コート深くに打ち込む。フォアでもバックでもラケットを立てて、肩を入れ、膝を曲げてどんなボールもボレーで打ち返す。ロブを上げられてもスマッシュで確実に仕留める。ヘンマンを止めるには彼をベースラインに押しとどめればよいのだが、リターンゲームでもチップ&チャージを見せ、美しいバックハンドスライスからキャリオカステップを使ったアプローチでネットに出てくる。ならば先にネットに出てやれと前に出ると鮮やかなパスで相手を抜き去る。ネットプレーヤーの正統派というより、むしろ古典的とさえ言われるそのプレースタイルは、やや時代遅れでも、球足が速く、バウンドが弾まない芝のコートでは無類の強さを発揮した。世界でもっとも伝統と格式を大切にする高貴な大会、ウィンブルドンで自国のチャンピオンの誕生を願ったイギリス国民の期待を一身に背負うことになったのはやむ得ない。
だがヘンマンはサンプラスと同じ時代に生まれてしまった。幾たびもサンプラスに阻まれた。1999年も準決勝でサンプラスと対決、退けられた。翌年にはベスト4にすら進めなかった。だが2001年、その芝の王者にして最大の天敵サンプラスが4回戦でフェデラーに負けた。「サンプラスさえいなければ芝の上で最強なのはヘンマンだ。」そう信じる、ヘンマニアと呼ばれる熱狂的ファンの後押しを受け、ヘンマンは準決勝に進む。準決勝で待っていたのはゴラン・イワニセビッチ。彼もまた、サンプラスとアガシと同じ時代に生まれたたがためにウィンブルドンのタイトルを決勝で三度まで阻まれた。アガシとラフターの歴史に残る名勝負の余韻が残るセンターコートでヘンマンとイワニセビッチは激突した。イワニセビッチのビックサーブに押されるヘンマン、序盤はイワニセビッチの主導で進む。だが、徐々にヘンマンはそのビックサーブにタイミングが合い始め、やがて主導権を取り返す。反撃を開始したヘンマンに地元ファンが歓声を上げて応援する。「ヘンマンヒル」と呼ばれる会場内の芝の丘で大型モニターを見て観戦するファンも大喝采だった。ヘンマンの反撃の前にイワニセビッチは平常心を失い始めた。このまま行けばイワニセビッチは自滅する。ヘンマンの決勝進出はほぼ確実と思われたそのときに雨が試合を中断させた。翌日も雨、試合を少し消化しただけですぐに中止になり、準決勝は本来決勝が行われる日曜日にまでもつれ込んだ。3日間にわたったこの試合に勝ったのは、何度も平常心を失いながら、雨などで何度も自滅寸前から息を吹き返したイワニセビッチだった。
大きなチャンスを逃したヘンマンだが、失望している場合ではない。翌年2002年ヘンマンは再びウィンブルドンで準決勝まで勝ちあがる。サンプラスもイワニセビッチもいない。そこでヘンマンの前に立ちふさがったのはヒューイットである。リターンの名手にして、パスも上手い。天下の宝刀トップスピンロブと組み合わせてネットプレーヤー・キラーとして知られる。その切れ味は前年に全米決勝でサンプラス相手にいやというほど世界に示された。コートでは当時誰よりも早く動く足を持っていた。何より地元の声援を受けて会場全体を味方につけてくる選手に対して、異様なまでの闘争心を燃やす男だ。この日も、ヒューイットの強いメンタルと鋭い対ネットプレーヤーショットが冴えまくり、ヘンマンはまたもやウィンブルドンをSFで敗退した。そして翌2003年からウィンブルドンはフェデラーの支配下に置かれることになる。年齢を重ね、サーブの威力が落ち始めたヘンマンにはもうチャンスがないだろう、と思われた。
だが、ヘンマンはウィンブルドン以外の場面で、意外な形で復活する。2004年の全仏オープン。クレーコートが苦手なはずの男が二人、勝ち進んでいた。ヒューイットとヘンマンである。ヘンマンはサーブが衰えた分、フォアハンドを強化してベースラインからの打ち合いでも打ち勝てるようになって戻ってきた。
ネットプレーヤーとオールラウンダーを分かつものは何か。男子テニスにおいてそれはフォアハンドストロークの威力である。かつてエドバーグもラフターも、そして初期のヘンマンも、美しいバックハンドを持っている選手だった。スライスを多用するが、フラットも実に美しいフォームから放たれ、ダウンザラインへ何度もウィナーとなった。だが彼らはオールラウンダーとは言えない。フォアが弱かったからだ。男子テニスにおいてフォアが弱ければベースラインで打ち合えない。それを補うためにネットラッシュを繰り返す。それがネットプレーヤーだ。サンプラスがサーブ&ボレー主体の選手でありながらオールラウンダーと呼ばれたのはフォアハンドストロークも十分に威力があったからに他ならない。
そのフォアが弱いネットプレーヤーであったヘンマンが、フォアも強い、ベースラインからも攻めれるオールラウンダーとなって帰ってきた。ネットダッシュだけでは勝ち進むことは難しかっただろうクレーの祭典、全仏オープンでベスト4まで進んだのだった。SFでコリアに惜敗するのだが、皮肉なことに、その敗因はストローク戦でなく、ネットでの決定力が後半不足したことだった。
直後のウィンブルドンで成績を残せなかったヘンマンだが、その夏、全米でまたもやベスト4まで勝ち進む。ヘンマンのテニスの充実期であったといえよう。だが、驀進するフェデラー・エクスプレスを止めることができずに、またもやグランドスラムで準決勝の壁に阻まれた。
あれから二年以上が経った今日、AIGジャパンオープンの決勝でヘンマンはフェデラーと戦った。決勝戦でギアをトップに入れているフェデラーはヘンマンのサーブゲームを1ゲームずつ、しっかりとブレークしてストレートで優勝した。フェデラーのパスが冴えまくり、ヘンマンは何度もネットで抜かれた。だがそれでもネットダッシュをやめないヘンマン、自分のテニスを貫く彼の姿は、破れたとはいえ、心打つものがあった。
ヘンマン自身は、スタートレックのMrスポックのような顔をしておきながら、奥さんはとてもきれいな人だ。年齢差があるがなぜかフェデラーと気が合うらしく、コートの外でよく一緒に行動を共にするらしい。このジャパンオープンの間も一緒に鉄板焼きを食べに行って、ヘンマンが洒落でカウンターの中に入ってコックの真似事をなどをして、楽しく時を過ごしたという。ヘンマンももう32歳、残された時間は少ないだろうが、彼はもうプレッシャーから解放され、残された時間を悔いを残さないようにすごそうとしているかのようだ。その古典的なプレースタイルを少しでも長く見せて欲しいと思う。


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