第047房 2006年MSインディアンウェルズ マイアミ大会TV観戦記 (2006/05/13))
2006年03月06日 大荒れの春、大いなる野望
今週も波乱が続出した。
豪華メンバーで行われたドーハのWTAティアU大会SFはヒンギス対モーレスモ、杉山対ペトロワであった。モーレスモは因縁の相手ヒンギスをストレートで一蹴、杉山を破ってきたペトロワと決勝で対戦した。ここでペトロワも一蹴、見事に優勝してエントリーランキングNo1となり、モーレスモは名実ともに2006年の女王となる予定であった。しかし、予定は未定、なんと、ヒンギスを倒しておきながらモーレスモはペトロワに敗れた。これでまたモーレスモはNo1お預けとなった。
相変わらず大事なところでピリッとしないモーレスモである。先週末、GAORAで録画中継されていたベルギーの大会の決勝戦対クライシュテルス戦をTV観戦したが、あの試合、クライシュテルスは足がまだ完治していない状況で戦っていたのだね。大事なところで下半身のふんばりが利かずに、ボールがそれる事が多く、それがミスとなり、モーレスモにポイントを献上することが多い試合であった。「試合に出るからには故障を負けのいい訳にしてはいけない。」とは故障をしている側に対して言われる現実的な意見だ。故障をしていない側は「勝って当然の上で、相手が万全でも勝てなかったと自他共に納得させる試合をする」事が大事だ。全豪の決勝対エナン戦はそういう意味でモーレスモは素晴らしいテニスをしていた。だが、このベルギーの大会は残念ながらクライシュテルスのミスに助けられた勝利だった。春になり暖かくなるとベルギー勢が万全の体制を整えてくるぞ。そこで勝ちきるためには、体力的に苦しい連戦の上の決勝進出でも勝てる力がなくてはならない。少なくても今のモーレスモがいる地位ではティアUクラスの大会の取りこぼしは許されない。このところ好調で、毎週決勝まで残っている彼女は疲労もそろそろたまり始めているころではあろう。しかし、その状況を克服して連勝するからこそ、過酷なツアーで女王と呼ばれる存在になりうるのだ。これは彼女を女王にするための産みの苦しみなのか、モーレスモが宿命として背負う限界なのか。彼女のこの数ヶ月の動向は今後数年にわたるモーレスモの地位を左右することとなるだろう。
ATPも波乱であった。
メキシコのアビエルト・メヒカーノ・テルセルではコリアもモヤもマシューもシードを守れず、一人気を吐くガウディもSFで敗退、決勝はチェラ対ナルオとなり、ノーシードのナルオが優勝してしまった。
ラスベガスではヒューイットが順当に決勝に進出、決勝の相手は対戦成績6連勝中のブレークであった。ヒューイットの優勝は確実と思われた決勝戦、フルセット7-5,
2-6, 6-3の末、優勝したのはブレークのほうだった。ブレークは今季すでに二勝目、いよいよ遅咲きの花が開くのだろうか。ハースといい、ブレークといい、片手打ちの遅咲きのオールラウンダーが台頭してきそうな気配が漂う。
そして最大の波乱はドバイの決勝戦で起こった。
ナダル 2-6, 6-4, 6-4 フェデラー
皇帝フェデラー、宿敵ナダルの前に痛恨の逆転負けだ。いつも負けるときはフィジカルに問題があるときだが、このナダル戦だけはなぜか万全の体制で負けてしまう。しかもここはハードコートだ。去年のマイアミ決勝で2セットダウンまで追い詰められ、全仏SFでは日没順延かと思われた直前のブレークで試合を決められてしまった。それから10ヶ月、全米オープンでもマスターズカップでも実現しなかった二人のハードコートでの対決が季節はずれの中東で実現し、しかもハードコートの上で打倒フェデラーをナダルが成し遂げてしまった。
去年、ハードコートの上で負けたのは全豪SF対サフィン戦とマスターズカップ決勝対ナルバンディアン戦だった。この二試合に関してフェデラーは足に故障を抱えての参戦だった。今回、フェデラーは足に特別問題がある訳ではない。その状態で復帰明けのクレーコートスペシャリストに敗れてしまった。いよいよナダルがハードコートをも征する赤土の王となるのか。かつてクエルテン・モヤ・フェレーロ・コリアなどが挑み、果たせずにいるその夢を、手に届くところまですでにきているというのか、ラファエル・ナダル。
「フェデラーは全仏を征して生涯グランドスラムを達成するのか」「フェデラーは年間グランドスラムを達成することができるのか」「誰がフェデラーを止めるのか」今季ATPの話題は全てフェデラーの記録への挑戦にかかっていた。しかし、もうひとつの期待が現実のものになりつつある。「ナダルは全仏を連覇することができるのか。」「ナダルはクレーを征した上で全仏以外のGSタイトルを取る事ができるのか。」そしてその期待が実現したとき、更なる大いなる野望が頭をもたげてくる。
「今年のシーズン終了直後にNo1になっているのは誰なのか」と。
2006年03月07日物足りない顔ぶれ
今週はいよいよアメリカ・インディアナウェルズでパシフィックライフオープンが開幕する。マイアミの大会と共に男女同時開催で二週にわたる大会だ。グランドスラム以外では最大級で、男女それぞれの最終戦(ツアー選手権とマスターズカップ)に匹敵する大会である。「第五のグランドスラム」と呼ばれるテニスツアー春の祭典が今年も始まるのだ。
先に試合を消化する女子の方のドローが発表されたので、例によって独断と偏見による展望を見てみよう。
WTAティアTに当たるこの大会の第一シードはエナンH、いつのまにかこの大きな大会で第一シードを張るとこまでランキングを回復している。当然ここは優勝を狙うだろう。特に全豪決勝の棄権劇直後の大きな大会である。ここで圧倒的強さを示して優勝してうるさい外野を黙らせたいところだ。彼女の山には杉山、ゴルビン、ドゥルコなどが顔をそろえるが、エナンのSF進出を阻めそうな選手はいない。
トープハーフの第4シードはディメンティエワ、先日の東レでティアT初優勝を決めたところだ。クライシュテルス、モーレスモが立て続けにGSタイトルを取り「無冠の女王」を返上した。ディメンティエワはエントリーランキングNo1の経験はないものGS決勝に進出すること2回、SFにも進出している。彼女もまた「無冠の女王」と呼べなくもない。ここで東レに続いてティアT連覇すれば全仏・全米あたりを狙えるかもしれない。彼女の山には第八シードイワノビッチほかキレリンコもいるが、デメを止めれそうにはない。
ボトムハーフ第三シードはWTAのプリンセスマリア・シャラポワ、このところ大きな大会でSF敗退が続いている。ここは意地でも決勝に進出してその存在感を示したいところだろう。第九シードのデシーあたりが手ごわそうだが、基本的には順当にSFへ進出できるだろう。
第二シードはいつのまにかNo1から陥落していたWTAの局ダベンポートである。第五シードのミスキナ、第十シードサフィーナ、そして第19シードにヒンギスが待ち構えている。彼女にはタフドローとなってしまった。果たしてSFまでたどりつづけるか。ヒンギスとの久しぶりの対戦は実現する可能性大であり、期待がもたれる。
とここまでドローを見て「第五のグランドスラム」と言われる割にはさびしい顔ぶれになっていないかと気づく。クライシュテルスがいない、モーレスモがいない、ウィリアムズ姉妹もいない、クズネツォワもいない、これでは物足りないぞ。順当に行けばSFはエナン対ディメンティエワ、シャラポワ対ダベンポートである。なんとなくエナンの圧勝で終わりそうな予感がしないではない組み合わせだが、ようやくシードがつくところまで来たヒンギスの活躍に期待しよう。
2006年03月08日 全豪より豪華な顔ぶれ
アメリカ・インディアナウェルズでパシフィックライフオープンの男子のドローも出たので女子同様独断と偏見による展望を見てみよう。
男子はATPマスターズシリーズ2006年の第一戦である。
第一シードは皇帝陛下フェデラーの指定席である。トップハーフの上半分の山には第六シードリュビチッチが反対側に控える。以下、マシュー、ルゼドスキー、ロクス弟、ハーバティ、ユーズニー、ガスケ、キーファー、アンチッチ、モンフィス、とベテランから中堅、若手と多彩な顔ぶれがそろうなかなかのタフドローとなった。フェデラーのSFへの道のりは決して楽ではない。
第四シードはナルバンディアン、トップハーフ下半分の山は第5シードダビデンコを筆頭に以下、マチュー、ジネプリ、スリチャパン、フェレーロ、フェラー、フィリポーシス、ニーミネン、モヤ、サフィンと実力者がそろった。それでもQFは順当にナルバンディアン対ダビデンコとなるだろう。ただしサフィンがノーシードでこの山に入っているということは二人にとって大変迷惑な話になるのではないかと少し期待している。
第三シードはロディック、ボトムハーフ上半分の山は反対側に第八シードとして生きる伝説アガシがその姿を久しぶりに見せている。以下、クレメン、ハース、ブレーク、デント、ゴンザレス、ソーダーリン、メルツォアー、アンドレーフ、カルロビッチ、アカースソがいる。この一年ばかり元気のないロディックである。ここらでひとつ存在感を示したいところである。だが今季好調のブレークとハースがこの山にいる。この山で勝ち残ることは今のロディックはかなりの困難を伴うことになるだろう。アガシは今年クレーの大会は全てスキップしてハードコートとウィンブルドンにフォーカスするらしい。フォーカスするからにはそれに伴う結果を出さなくてはならない。勝てなくなれば引退するだろう。ここは彼の進退がかかっているような気がする。
第二シードはナダル、先週故障を抱えた訳でもないフェデラーをハードコートの上で倒した19歳である。 ボトムハーフの下半分の山には第七シードにガウディオがおり、以下ミルニー、ビョークマン、バグダティス、ベルディッヒ、ヘンマン、シュトラー、ヒューイット、ステファンキー、マリッセ、サントロ、グロージャン、ポランドリー、フィッシュ、ベック、とATPの曲者が集結した。去年のファイナリストヒューイットが今や第9シードというところが悲しい。だが、ナダルに勝ち越しているヒューイットである。ここらでナダルを止めてほしいものだ。全豪ファイナリストのバクダティス、去年のMSパリ優勝のベルディッヒもこの山にいる。「俺たちの時代は始まったばかり、次世代No1はお前とまだ決まった訳じゃないぜ。」という新世代の選手たちの意地をナダルに対して見せてほしいものだ。
さて、女子に比べてトップランカーと実力者が勢ぞろいした男子のドローである。数ヶ月前の全豪よりも豪華な顔ぶれとなった。その中でフェデラーとナダルは順当に決勝まで進めるだろうか。そして、1・2シードが決勝で合間見えるとき、フェデラーにとって今後を左右する大きな山場が訪れる。ハードコートの上でナダルに連敗を強いられることになれば、彼の覇権はクレーシーズンを待たずに崩れていく。それを簡単に許すわけには行かないだろう。現皇帝の力を今こそ発揮しろ、フェデラー。
2006年03月17日 二強時代、今昔
ヒンギスがダベンポートに勝った。アメリカ・インディアナウェルズで行われているティアT大会、パシフィックライフオープンの4回戦のことである。フルセット6-3,
1-6, 6-2の末の勝利である。ダベンポートは決して調子が悪かったわけではない。ヒンギスはまた一人、トップランカーを下した。
ヒンギスのキャリアの後半はウィリアムズ姉妹とカプリアティ、そしてこのダベンポートのパワーの前に屈する形で終わっている。その中でダベンポートはヒンギスが国際大会に出場するようになったころから共に頭角をあわした、年齢こそダベンポートの方が5つ近く上だが、まさにヒンギスとNo1を競い合うために現れてきたライバルそのものだった。グラフ引退後のWTAはヒンギスとダベンポートの二強時代となるだろうと世紀末のころは思われていた。次第にウィリアムズが台頭してきて、カプリアティが復活、ベルギー勢の台頭、ロシア勢の進出、と二強時代は訪れることなくヒンギスは引退し、ダベンポートは安定した成績でNo1に何度もつきながらもグランドスラムタイトルからは遠ざかっている。力は十分に備わっていても、ややモチベーション不足が感じられるダベンポートである。若き日のライバルヒンギスの復活と意外なまでの強さに、かつての闘争心がよみがえってくれればと思う。
それにしてもヒンギス・・・・ダベンポートに勝つかね。この調子なら、最近調子を落としているウィリアムズ姉妹にも勝てるかもしれない。問題はやはりベルギーの二人、エナンとクライシュテルスだろう。心身ともに充実期に入りつつあるこの二人を破る糸口を今年中に見つけることができるだろうか。ベルギーの二人を破らない限りGSタイトルを手にすることはできない。
ヒンギスはQFでサフィーナを撃破。SFでシャラポワと3度目の対決を迎える。シャラポワもまたグランドスラムタイトルを狙う上で、ヒンギスごときに負けてはいられまい。反対の山からは順当に第一シードエナンが勝ち上がっている。SFで第四シードディメンティエワと当たるが、まずエナンの優位は動くまい。むしろエナンと決勝で当たる相手が誰になるかのほうに興味が注がれる。ヒンギスかシャラポワか、その勝者は決勝でエナンにいかに立ち向かうのか。要注目である。
マスターズ・シリーズ開幕戦である男子の方は第一シードフェデラー、第二シードナダルが順当にベスト8進出。QFでフェデラーはリュビチッチを下してSFに進出を決めている。ナダルはバクダティスとぶつかる。一方で去年前半までハードコートで暴れていたヒューイット、ロディック、ナルバンディアン、サフィンは途中で敗退、彼らの前途に希望はまだ見えない。そんな中、期待のブレークは同じく今季好調でアガシを破ってきたハースと激突、名勝負になるかと思われたが途中棄権となってブレークがQFに進出した。これからって時にいつもいつも頓挫するハース君、もっと大舞台で暴れてほしいものだ。
順当に行けばフェデラー対ニーミネン、ナダル対ブレークというSFになる。ナダル対ブレークは非常に楽しみな対決だ。そして決勝、再び両雄が顔を合わせるのか。皇帝の覇権は続くのか、二強時代の幕開けとなるのか。GAORAも生中継で対応だ。今週末はテニス中継から目が離せない。
2006年03月19日 2006 インディアナウェルズSF
マスターズシリーズ第一戦 インディアナウェルズ パシフィックライフオープンSf
フェデラー 62 63 スリチャパン
スリチャパン君久しぶりではないか。元気だったかい。と声を掛けたくなるようなタイの英雄スリチャパンとATPに君臨する皇帝フェデラーがSFでぶつかった。共にバックハンドが片手打ちのオールラウンダーである。コートを縦横無尽に使うアグレッシブなテニスが展開されるかと期待されたが、試合内容は要所要所をしっかりと締めた皇帝のシナリオどおりの試合であった。
第一セット、1ブレークで先行するフェデラーは第8ゲームで再びブレークして第一セットを先取。続く第二セットのフェデラーのサービスゲームをスリチャパンがいきなりブレークして反撃なるかと思われたが、第四ゲームですかさずブレークバックするとフェデラーはいつものようにギアを上げてたたみかけ、もう1ブレークをもぎ取り63で押し切った。スリチャパンに特に大きな問題はなく、フェデラーがまさに横綱相撲で押し切った試合内容だった。
波乱は第二試合で起こった。
ブレーク 75 63 ナダル
フェデラーをハードコートで打ち破るまでに成長しているナダルをブレークが止めた。サービスキープが続く緊迫の第一セット、6-5になった第12ゲームでブレークがナダルのサービスゲームをついに破り7-5で先取。第二セット、ナダルは得意のカウンターショットで何度もサービスを破るチャンスを得るが、ブレークはそのつどサーブの力と見事なフォアハンドで切り抜ける。ナダルもまた大事なところでファーストサーブが入らず何度もピンチを迎える。緊迫するゲーム、共にドロップショットからロビングと緩急をつけたオールラウンドプレーで見事なプレーの応酬が繰り広げられる。第8ゲームでナダルのロビングがアウトになり、ブレークがナダルのサービスを破った。5-3でブレークのサーブインフォーザマッチが来る。攻める手を緩めず、ナダルに圧力を掛け続けるブレーク。マッチポイントを一発でものにしてブレークが初のMS決勝進出を決めた。
ブレークのテニスは実に充実していた。強いサーブ、堅実なバックハンド、縦横無尽のネットプレー、ロブとドロップショットの巧みな使い方。しかし、何より素晴らしいのはフォアハンドだ。落としてスピンを続けてタイミングをナダルが合したところでライジングからのハードヒット、素晴らしいウィナーをクロスに逆クロスに何度も決めていた。
また足を使ったオールラウンドプレーも見事だった。今ではハードコートの上でもヒューイットを越えるのではないかとさえ言われるナダルのオールラウンドコートカバー、その恐るべき守備力を誇る赤土の若き王相手に走りあいを挑み、走り負けなかった。ナダルは足に故障を抱えている事が報道されているが、今日はブレークに勝つチャンスがナダルにも十分にあった。勝負を分かつポイントは何度も試合中訪れた。ナダルがそれをものにする場面も何度もあった。しかし、ブレークは崩れず、一歩も引かずに、真っ向勝負を挑み、ついに競り勝った。ブレークの見事な勝利であった。
直前のハードコートの大会でナダルはフェデラーを倒した。そのナダルをブレークが破った。決勝戦では強さが増すといわれる皇帝であるが、今のブレークを負かすことはギアをトップに入れたフェデラーといえど簡単なことではあるまい。激戦必至、マスターズシリーズ初優勝をかけて、ブレークがフェデラーに挑む。迎え撃つフェデラーの命運は如何に。期待の決勝戦である。
2006年03月20日 お姫様の私服の趣味
男女同時開催のインディアンウェルズのパシフィックライフオープンはグランドスラム同様女子が一日早く決勝を行う。セミファイナルでヒンギスとぶつかったシャラポワは見事にストレートでこれを下し、決勝に進出した。ダベンポート・サフィーナに勝ってここまできているヒンギスを破るとは、強い強い。このところ大きな大会での優勝から遠ざかっているが、ようやく波に乗れそうだ。決勝では東レで初のティアTタイトルを取ったディメンティエワを一蹴、これもストレートで片付けて今季初タイトルをようやく挙げた。ん?決勝の相手はディメンティエワ・・・・・エナンはどうしたんだ、エナンは、あの第一シードはどこに行った。ドローを見てみると、ディメンティエワにSFフルセットの末負けているではないか。どうなっているのだ。なにやらまたエナンが体調を崩したという報道もちらほら流れているが、健康管理には気を使ってほしいものだ。
ところで、グランドスラムでは各トーナメントの優勝者に私服でのフォトセッションがある。このインディアンウェルズでもグランドスラム同様に優勝者のフォトセッションが組まれていて翌日には世界に配信される。で、その配信されているシャラポワのウィナーズ・フォト、これまた口の悪いネット上の女性陣からぼろくそにけなされそうな服で出てきている。シャラポワってモデルをサイドビジネスでやっている割には「服のセンスが悪い」「あんな格好でオープニング・パーティーに出てくるなんて信じられない」「私服手抜きすぎ」とかよく言われる。けど、まあ、服のセンスだけを言うならウィリアムズ姉妹やキムの方がもっとひどいと思うぞ。だいたい、テニス選手は女の子の割に体が大きいのだ、背が高いのでモデル体型かと思われているが、肩幅や背中の広さがモデルではない。選手だけ見ているとシャラポアなんぞすごくスリムに見えるが、本職のモデルの中に混ざるとまあ、でかいことでかいこと。それに手足が長いので細く見えているが、手足の各部位も鍛えられているのでそれなりに実は厚みがある。あれで普通の女の子の着るような服を着たりドレスアップしたりすると、体のオーバーサイズが強調されてしまう。それならば少し大きめのシンプルな服を着ていたほうがよいのではないか。特に容姿にある程度自信があるなら、服に凝ることはないだろうに。ヒンギスやエナンも体が小さいといわれるが私服の彼女たちはやはりがっちりしている。あれでは普通の服は難しいだろう。
だけど体格がよくなってきたとはいえ、白人・黒人に比べるとアジアの女子はまだまだ小柄だね。日本女子選手は私服で普通の人ごみに混ざるとわからなくなる程度に普通だ。あれであの巨人たちに立ち向かっているのだからたいしたものだと思う。
2006年03月21日 2006 マイアミ女子ドロー
第5のグランドスラムと呼ばれるのはインディアンウェルズともう一つ、アメリカのマイアミで行われるナスダック100オープンである。インディアンウェルズ同様、男女同時開催の二週間にわたる大規模大会である。ドローが出ているので、例によってグランドスラム同様独断と偏見による展望を見てみよう。
女子はティアT大会である。第一シードは全豪覇者モーレスモである。先週のインディアンウェルズの結果を受けて棚ボタ式にエントリーランキングNo1の座に着いた。経緯はどうあれ現女王である。ここで優勝してその地位にふさわしい力を備えていることを結果をもってしめしたい。女王の山であるトップハーフ上半分の山には第五シードペトロワを筆頭に、ストーザー、中村、ベネソバ、イバノビッチ、バイディソワ、が控える。この顔ぶれではNo1としては圧倒的強さを見せ付けて突破しなくてはならないだろう。
第三シードはエナンH、先週のインディアンウェルズでは第一シードでありながらSFでディメンティエワに敗退した。ここは当然優勝を狙っていることだろう。トップハーフ下半分は第七シードシュニーダーを筆頭に、杉山、クズネツォワ、ヒンギスがいる。QFでエナン対ヒンギスが実現すれば面白い。復帰戦直後に一蹴されているヒンギスであるが、ここは一つ骨のあるところを見せてもらいたい。
第四シードはシャラポワ、先週のインディアンウェルズで今季初優勝を遂げてようやく波に乗り始めたWTAのプリンセスである。彼女の山であるボトムハーフ上半分は、第八シードにヴィーナス・ウィリアムズが控える。他にミスキナと森上がいるがQFでシャラポワ対ヴィーナスを阻止することは出来まい。
第二シードはクライシュテルス、No1から陥落したところで出てくる去年の全米覇者である。彼女の山であるボトムハーフ下半分は第六シードにディメンティエワが控え、以下、ゴルビン、スキアボーネ、デシー、浅越が顔をそろえた。東レ優勝、インディアンウェルズ準優勝と波に乗るディメンティエワをキムは突破できるだろうか。
ダベンポートとセリーナ・ウィリアムズ、そしてピエルスが不在であるがベルギーの二人とモーレスモが参加している。SFでエナンとモーレスモはぜひとも実現して欲しい。モーレスモはここでSFエナン、決勝クライシュテルスと対戦してそれを突破して優勝をしたいところだ。それで全豪の未完の対決を完結させることが最高のドラマだろう。しかし、それを簡単に許すベルギー勢ではない。そして今年のティアTでそれぞれ一勝を挙げているシャラポワとディメンティエワがどう絡むのか、そしてヒンギスはまたトップランカーを倒すことが出来るのか、注目していこう。
2006 インディアンウェルズ決勝
皇帝陛下、こんなスコアで圧勝しないでくださいよ。昨日、「激戦必死」とか「ブレークを負かすことは簡単な事ではあるまい」とか記事で書いていた如空の立場がないではないですか。
2006年MS第一戦 インディアンウェルズ大会パンパシフィックオープン男子決勝
フェデラー 75 63 60 ブレーク
ブレークは第一セットから飛ばしていた。低い弾道のフラットドライズをフォアの逆クロスで集中させ、フェデラーのサービスゲームを二回連続破り、4-1まで先行していた。が、突然集中力が切れたのか、第6ゲームでミスを連発、ラブゲームでブレークバックされる。その後サービスゲームをキープし合い5-2でブレークのサーブインフォーザセットが来る。フェデラーはそこでハードヒットせずにゆるいボールをひたすら繋ぐ。ペースの遅いラリーにミスを誘われてしまうブレーク。フェデラーにブレークポイントが来る。攻めてディースに戻すブレーク。しかし、緊迫した雰囲気の中の連続ディースで先にダブルフォールとで崩れたのはブレークの方だった。5-5にされフェデラーにサービスゲームをキープされて5-6となり、ブレークはまたもミスを連発、サービスゲームを落として第一セットをフェデラーに譲った。
第二ゲームは3-3まで行ったがそこまで。そこから少しだけギアを上げたフェデラーがサーブを破って6-3でものにする。第三ゲームは6ゲーム連取、フェデラーは少しペースを上げただけだったが、ブレークは完全に攻める気が空回りしてミスを多発させていた。
ブレークのテニスはフラットサーブにフォアのフラットドライブで攻める。弾道が低いのでネットするリスクが高いテニスだ。調子の良いときは面白いように決まるが、崩れると中々たち直せない。それでも崩したのは終始ペースを崩さないフェデラーのテニスであり、高いレベルで安定させているその力が勝利をもたらした。
終ってみれば皇帝の磐石の勝利であった。さて、ライバルたちは次なるマイアミではその皇帝を苦しめることが出来るだろうか。すぐにMS第二戦ナスダック100オープンが幕を開ける。
2006年03月22日 2006 マイアミ男子ドロー
男女同時開催のマイアミ大会、男子はマスターズシリーズ2006年第二戦となる。男子のドローも見てみよう。
第一シードは皇帝陛下フェデラーの指定席。皇帝の山、トップハーフの上半分は第八シードガウディオを筆頭にクレメン、ハース、アンドレーフ、フェレーロ、ブレーク、フィリポーシス、ニーミネン、ルゼドスキーがそろった。ハースとブレークのいる山になるとはフェデラーも第一シードのわりにタフドローになっているが、ここ最近、づっとこんな感じである。それだけATPのレベルが底上げされているということか。それでもフェデラーは勝ち上がってくることだろう。
第四シードは地元ロディック。彼の山であるトップハーフ下半分は第七シードコリアを筆頭にハーバティ、スリチャパン、サフィン、ヘンマン、ヒューイット、フェラー、ロペス、グロージャンが続く。ロディック・ヒューイット・サフィンが同じ山にいるって去年までは考えられなかったことだ。さて、誰が出てくるか。その存在感を十分示して欲しい。
第三シードはナルバンディアン。彼の山であるボトムハーフ上半分は第五シードにダビデンコを控え、以下バクダティス、アンチッチ、ガスケ、マリッセ、ステファンキー、ラペンティ、マシュー、ロブレドが続く。去年末にマスターズカップで優勝してから、好成績を残してはいるがいまいちぱっとしないナルバンディアンである。ここらでもう一花咲かせたい。そのためにはなかなかのタフドローだが、負けてはいられまい。
第二シードはナダル。第六シードにリュビチッチがいるこのボトムハーフ下半分は以下ビョークマン、ジネプリ、アガシ、キーファー、サントロ、モンフィス、モヤと曲者がそろった。さてドバイで打倒フェデラーに成功していながらインディアンウェルズではフェデラーの待つ決勝に進めなかったナダルはである、今度こそ決勝まで進みたい。
注目はSFでフェデラーの相手は誰になるかというところである。存在感の薄くなったロディック・ヒューイット・サフィンは再び日の当たるところに出てこれるのか。そして、ボトムハーフでは順当に行けばナダル対ナルバンディアンとなる。共にカウンターショットの使い手でありながらまったくスタイルの違うテニスをする二人である。実現すれば注目に値する対戦となろう。去年は決勝でナダルとフェデラーがフルセットの激闘を繰り広げた。今年も熱戦が実現することを期待しよう。
2006年03月27日 大荒れの春、マイアミでも
エナンダウン、クライシュテルスダウン。おいおい、モーレスモとの対決を楽しみにしていたのにどうしたの。去年も波乱が続出したが、今年も同じ状況になりつつあるマイアミである。
男子は女子より酷い。ヘンマンがなんとサフィン・ヒューイットを連覇、モヤは第二シードナダルを下し、今季好調のはずだったハースが三回戦敗退、そしてアガシは棄権した。
男子も女子もベスト4の顔ぶれはちょっと予想しつづらい。マイアミの春も大荒れである。週末にはどんなドラマが用意されていることだろうか。
2006年03月30日 ヒンギスとエナン、そしてクズネツォワ
マイアミ大会の女子SFはモーレスモ対クズネツォワ、シャラポワ対ゴルビンとなった。露仏対決でベルギー勢もアメリカ勢もいない。ある意味、去年は4人のグランドスラムタイトルウィナーがそのまま4大女王となって君臨するかと思ったが、今年になってみればロシア勢の巻き返しとモーレスモの充実が光るシーズンとなっている。少なくともこの春まで結果はそうだ。
今月発売のテニス雑誌にWOWOW解説陣の遠藤愛が二回にわたっての復帰したヒンギスのテニスを分析した記事を掲載している。一回目はヒンギスのサービスの分析。復帰前までヒンギスはトスアップ後右足を左足に引き付けるフォームで打っていた。今年になって現役復帰したヒンギスのサービス・フォームでは右足を引き付けずに後ろに残したまま、スタンスを広げたまま打っている。そしてこのサービス・フォームはジスティーヌ・エナン・Hのそれと類似している。そこに注目した遠藤氏は復帰前に弱点とされたサービスを強化するのに、同じ体格のエナンが、背が低いにもかかわらず、長身の選手に引けを取らないサーブを打つシーンを実際に目撃して、そのことに影響を受け、自身のサーブ強化にエナンのサーブを取り入れたいのではないかと推理している。
なかなか面白い考察であるし、実際、ヒンギスは同じような体格のエナンの活躍に影響を受けたかもしれない。技術的にも精神的にも。
しかし、体格は同じでも二人のテニスの資質はまったく違う。エナンのテニスは瞬発力とバネを使ったテニスだ。対するヒンギスのテニスは回転を使ったテニスだ。少なくともスイングとフットワークに関してはそうだ。詳しいことは去年の年末に10大ニュースのエナンの記事で述べたので割愛するが、エナンのテニスの真似は他の女子選手が簡単にできるものではないと如空は個人的に考えている。サービスに関してもそうで、エナンがあの身長でサーブが強いのは全身のバネ、特に肩甲骨まわりのバネが男性並にあるからではないかと推察する。ヒンギスは背中でラケットを回して遠心力を使うサーブだ。彼女にはエナンのようなバネがあるとも思えないし、これからハードトレーニングをしても手に入れられるとは思えない。ヒンギスはエナンとは別のテニスを目指すべきだと思うのだが、さて、ヒンギス自身はどう考えているのだろうか。一度伺ってみたいものだ。
エナンと同じ「瞬発力とバネ」を使ったテニスをする女子選手はほとんどいない。男性並みのバネを備えている女性が少ないからだ。そんな女子選手の中で、エナンと同質のテニスをする数少ない女子選手、それがロシアのスベトラーナ・クズネツォワだと如空は見ている。そのクズネツォワがこのマイアミでヒンギスを破ってSFまできた。モーレスモとの一戦は要注目である。クズネツォワは2004年に全米を取ったあと、上位陣にランクされながらも期待されてほどに結果が出ていない。しかし、男子で同じロシアのサフィンもそうだったが、グランドスラムの決勝であまりにも素晴らしいテニスをして優勝してしまうと、その残像を追い求めてしまって現実の自分が見えなくなってしまうこともある。彼女も去年はそのような一年だったのではないだろうか。しかし、今年こそは目覚めてほしい。
2006年マスターズシリーズ第二戦である男子では波乱が続出したが、勝ち残った選手はそれなりに実力者である。ボトムハーフはQFが終了、SFでナルバンディアンとリュビチッチが激突する。トップハーフはフェデラーがハースを突破して順当に勝ち進み、QFでブレークと対戦する。その先にはロディックとフェラーの勝者が待っている。フェデラーが決勝に進む道程はブレーク・ロディックとフェラーの勝者・ナルバンディアンとリュビチッチの勝者である。皇帝の前に立ちふさがるライバルたちの中で、実績・ランキング・シードともに一番高いのはロディックである。だがこの顔ぶれの中で打倒フェデラーの可能性が一番低いと世間に思われているのもロディックである。悲しすぎるぞ、ロディック。男だろう、意地を見せろ。勝てとは言わん。せめて1セットとってくれ。フェデラー相手に1セットだけ、サービスゲームを6回連続でキープしてくれ。そしてTBで二ポイントフェデラーを上回ってくれ。それができれば、そこから何かが変わると思うから。
今週末もGAORAの中継である。熱戦を期待しよう。
2006年03月31日 後ろ向きの希望
クズネツォワ来たー!
マイアミ・ナスダック100オープン女子SF
クズネツォワ 61 64 モーレスモ
シャラポワ 63 67 43(リタイヤ) ゴルビン
クズネツォワが現女王を破ってティア1大会の決勝進出である。エナンと双璧をなすバネを使った瞬発力のテニスで女子テニスに再び旋風を巻き起こせるか。彼女には十分その資質が備わっている。対するはティア1大会二連勝を狙うWTAのプリンセスシャラポワ。シャラポワはSFでゴルビンに苦戦した。第二セットでリードしていながら追いつかれTBで落とすと、ファイナルセットも拮抗したゲームになった。ゴルビンが棄権しなければ勝負がどちらに転んだかわからない。さて、オールロシアンファイナルとなった。次世代を牽引するのは誰かを示す好機である。共に負けられない決勝戦だ。注目しよう。
マイアミ・ナスダック100オープン男子QF
フェデラー 76 64 ブレーク
フェラー 63 46 64 ロディック
インディアンウェルズ決勝の再現となったQFでブレークは健闘した。二週間前には皇帝の前に圧倒されたが、今回はTBおよび1ブレーク差まで詰め寄っている。ただ、それでもセットを落とさないところにフェデラーの地力の強さを逆に感じてしまう。
そして去年から引き続き好調を維持するフェラーの前にロディックは破れ去った。ヒューイットもロディックもフェデラーを倒すどころか、フェデラーの待つところにたどり着けなくなってしまっている。まあ、いっか。この調子で負けつづけて順当(?)にランキングを落としていけば、シードも下がって、大きな大会で四回戦やQFでフェデラーと当たるようになる。今年の全米の頃には二・三回戦でフェデラー対ロディックあるいはフェデラー対ヒューイットが実現するかもしれない。そうすればWOWOWは必ず中継してくれる。グランドスラム第一週の注目カードとなるだろう。なんて後ろ向きな希望なことか。
さて男子SFはフェデラー対フェラー、ナルバンディアン対リュビチッチである。去年地味に好調だったリュビチッチ・ナルバンディアン・フェラーが待ち受けるマイアミで皇帝は再びタイトルを守れるのか。熱戦に期待しよう。
2006年04月02日 2006 MSマイアミ大会SF
2006年マスターズシリーズ第二戦マイアミ大会SF
リュビチッチ 61 62 ナルバンディアン
フェデラー 61 64 フェラー
・・ナルバンディアンとフェラーは自滅じゃん。確かに相手は強かった。相手は対戦相手に本領を発揮させないようにプレーするものである。テニスとはそういうスポーツだ。だけどね・・・・フェラーなんか第二セット先にフェデラーのサービスゲームをブレークしているのに、じわじわと崩されてしまった。熱戦を期待していただけにとても残念だ。
さて決勝はリュビチッチ対フェデラーである。去年何度も決勝で実現したカードが今年も実現した。さて他の多くの選手同様、フェデラーに連敗中のリュビチッチであるが、その連敗記録をここで止めることが出来るのか、あるいはフェデラーが何事もなかったように連勝記録を伸ばすのか。結果も大事だが、せめて決勝は熱戦・接戦を期待したい。そして期待に応えてくれ、リュビチッチ。
同時開催の女子の決勝は待ちわびた人がいよいよ帰ってきた。
クズネツォワ 64 63 シャラポワ
イヤー、強い強い、ヒンギス・モーレスモ・シャラポワを連覇である。それもストレートで。これで彼女も自信をつけたことだろう。来週からクレーシーズンが始まるが、赤土の上で大いに暴れて欲しいものだ。
2006年04月03日 2006 MSマイアミ大会決勝
2006年マスターズシリーズ第二戦マイアミ大会決勝
フェデラー 76 76 76 リュビチッチ
スコアだけ見ると大接戦のように思えるが、第一セットに関してはお互いにピリッとしない試合だった。フェデラーはらしくないミスが多かったし、リュビチッチはファーストサーブが大事なところで入っていなかった。TBもなんとなくフェデラーが7-5で取った。
お互いがその持ち味を発揮しだすのは第二セット中盤、第七ゲームでフェデラーがリュビチッチのサービスゲームをブレーク、その直後第八ゲームでリュビチッチがブレークバックしたところ当たりからだ。二回目のTB、今度はリュビチッチが先行するが、そこでたたみかけようとしてミスを重ねてしまう。6ポイントを連取されてTB7-4、フェデラーが2セット目も取った。
第三セット、リュビチッチがいきなりブレークでスタート、あとはサービスゲームを5つキープするだけという状況だった。今度こそリュビチッチがセットを取る。そう見ていたが、追うより追われるほうが苦しいもの。ちょっとしたリュビチッチの隙を突いてフェデラーが第6ゲームでブレークバック。三度TBにもつれこむ。三回目のTBはリュビチッチもがんばった。TB6-6まで食らいつく。フェデラーがサービスをキープしてTB76。リュビチッチのサーブがワイドに来た。フェデラーがバックハンドでリターン、打球はネットの帯にかかる、が、コードボールが落ちた先はリュビチッチ側のコートだった。TB8-6でフェデラーがまた優勝を決めた。
リュビチッチという選手は見た目の印象とはかなり違ったテニスをする。ビックサーバーでありながらサービスエースを量産するわけでなく、ストロークもハードヒットするわけでもなく、配球とペースでポイントを取っていくタイプだ。サーブは緩急をうまく使って、欲しいときにエースを狙える。が、ストローク・ラリーの時に一発がない。配球はよく考えられているのだが、ボールそのもの球種が一種類しかないところが辛い。特にフォアハンドはもう少し強いショットが欲しい所だろう。その点、同じようなテニスをしていてもフェデラーは多彩だ。スピードだけでなく、打つタイミング、軌道の高さ、バウンドの高さ、回転の量、ワイドに打つときの角度、落下点の深さと、多種多様な組み合わせを持っており、それをその場その場のアイデアで、さまざまな組み合わせを打ってくる。相手はタイミングを合せられず、サーブにもラリーにも慣れる事もできず、ラリーを続けられるようになろうと努力している間に試合が終わる。先日の準決勝対フェラー戦のフェラーがまさにそんな感じだった。この決勝戦も同様、スコアは競っているが、リュビチッチがフェデラーのテニスに対応しとうと努力しているが対応しきれず、結局試合が終わってしまった、という印象を受る。それがフェデラーの強さなのだろう。
さて、デ杯をはさんでいよいよヨーロッパクレーシーズンが始まる。フェデラーの多彩なテニスは球足の遅いクレーでも強さを発揮するはずだが、同時にクレーコートスペシャリストとフェデラーの格差はハードコートほどに開いていないことも事実。夢の生涯グランドスラム、そして年間グランドスラムへの野望を掲げて、皇帝フェデラーの挑戦が今年も始まる。注目していこう。
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