第029房 2005年 MSマドリッド大会・パリ大会 TV観戦記 (2006/01/08)
2005年10月18日 終盤戦突入
ついこないだシーズンが始まったと思っていたところなの、もうツアーは最後の終盤戦にかかろうとしている。ATPマスターズシリーズも残るところ後2大会、いよいよヨーロッパインドアが佳境に入るのだ。今週はスペインでマスターズシリーズ第8戦マドリッド大会が開催される。
現No1フェデラー欠場、ディフェンディングチャンピオンサフィン欠場、そしてヒューイット欠場とハードコートに強い彼らが欠場している。結果、第一シードナダル、第二シードロディック、第三シードダビデンコ、第四シードコリアとクレーの大会のような番付になってしまった。さて神の見えざる手により皇帝フェデラーとの直接対決を避けられているナダルは、今回もフェデラーと相対することなくこのハードコートの大会で第一シードに座った。全米でも直接対決は避けられた。二人が合間見えるのは最終戦マスターズカップか、あるいは来年の全豪か、はたまた次のパリ大会でいきなりぶつかるのか、いったいいつになるのだろう。このドローでは順当にいけばロディックとナダルの決勝になる。これは要注目である。ここはロディックの正念場になる。ここで負ければ来年一年間尾を引きそうだ。さて、ナダルがインドアでどこまでやるか、ロディックおも倒すのか、注目していこう。
女性モデルがボールガールをして話題を振りまいた去年のマドリッド大会であるが、今年もボールガールを採用するらしい。そちらも別の意味で注目か。GAORAも恒例の生中継してくれる。大いに盛り上がりの期待をしよう。
WTAはスイスでティアT大会、チューリッヒオープンが開催される。ティアTでありながら現No1シャラポワもウィリアムズ姉妹もベルギーコンビも出場しない。結果、第一シードダベンポート、第二シードモーレスモ、第三シードピエルス、第四シードディメンティエワと4・5年前に時代がさかのぼったかのような番付けである。男子と違い、圧倒的ポイント差をつけられていないシャラポワの状況を考えるに、今年も去年同様最終戦までもつれそうだ。そしてグランドスラムタイトルを取れなったものにも年間最終ランキングNo1の可能性があるという意味でもまた、去年と同様の状況になりつつある。それだけにこのティアT大会、誰が取るかは終盤に向けて大きな意味を持つだろう。こちらも要注目である。
2005年10月21日 最終戦を見据えているかのごとく
2005年マスターズシリーズ第8戦のSFはナダル対ジネプリ、リュビチッチ対ナルバンディアンである。そこには第二シードロディックの名がない。彼はなんと二回戦で敗退したのだ。二回戦といってもシードは一回戦不戦勝だから事実上の初戦敗退である。どうしたロディック。来年は今年より厳しい年になりそうだな。
この状況でやはり第一シードのナダルが大本命である。彼の活躍を追っていると、ハードコートの上でも試合を重ねるごとに成長しているかのようである。まるで、今年の最終戦マスターズカップ決勝で皇帝フェデラーを倒すための準備をしているかのごとく。
今回、ナダルの前に立ちふさがるのはジネプリである。地味ながら強い。QFではフェラーを倒した。ナダルとフェラーは強いーコート育ちのスペイン勢であるがハードコートでも強く、今年になって顕著な成績を上げているという点で似ている。しかし、そのプレースタイルは対照的である。高い打点からのフラットの強打で攻めるフェラーに対して、ナダルはトップスピン主体で守りを固めるタイプだ。そして攻めてくる相手をカウンターでしとめる。相手が後ろに下がって繋ぎにかかれば深いトップスピンで相手をコートの外に追い出してオープンコートに打ち込む。ジネプリは相手をいなすテニスが持ち味だ。そういう意味ではフェラーは御しやすかったろうがナダルはそうは行かない。さて、どう出るか楽しみである。
ボトムハーフの方はゴンザレスを倒したリュビチッチとカルロビッチを倒したナルバンディアンの対決である。こちらはキャラクターがはっきりしている。攻めるビックサーバーのリュビチッチに対するナルバンディアンのカウンターショット。さて決勝に進むのはどちらか。こちらは流れをつかんだ方が短期決戦で勝負を決めそうな予感がする。今晩、GAORAで生中継だ。注目しよう。
WTAティアT大会のチューリッヒオープンSFはダベンポート対ミスキナ、シュニーダー対イバノビッチである。ダベンポートは二回戦突破の時点でエントリーランキングNo1の座をシャラポワから再び取り返した。今年の最終戦はこの二人がNo1争いを繰り広げるのだろうか。ウィリアムズとベルギーコンビののうちこの争いに絡めそうなのはクライシュテルスのみである。グランドスラムを取っておきながら、4人とも今年は完全復活というわけには行かなかったようだ。
エナンは怪我のために戦線離脱した。最終戦のツアー選手権出場も危うい。ウィリアムズのしゃきっとしない。ツアー全体としては混戦模様だ。
そんな中、ブルガリアのマレーバが引退を発表した。そして、今年全豪で大活躍したモリックまでも引退の情報が流れた。モリックの方はマネージャーが報道を否定しているが、今年終盤は大物ダベンポートの引退もありうるので、なにやらコートの外の話題も気になるWTAである。
2005年10月23日 2005 MSマドリッド大会SF
GAORAの生中継は深夜でなくゴールデンタイムだった。おかげさまでゆっくりとリアルタイムで観戦できた。
2005マスターズシリーズ第8戦マドリッド大会
SF ナダル 75 76 ジネプリ
ジネプリはなかなかの曲者である。自分のテニスを淡々と行うナダルに対してあの手この手で切り崩しにかかる。ジネプリって意外とフォアのスライスタッチが上手い。絶妙なドロップショットにドロップショットと見せかけての深い球など見せるかと思うと、サービスエースにランニングからの鋭いパスと、緩急織り交ぜてナダルを揺さぶる。ナダルは結構手こずることになった。しかし、ナダルは自分のテニスを貫き、第一セットは最後にジネプリを押し切って先取した。
ジネプリはその曲者ぶりの「緩」と突然ハードヒットする「急」使いこなし、ゲームの流れがナダルに行きかけるのを何度も阻止した。第二セットは6-6になってTBに突入、ラリーを制しているのはジネプリである。しかし、最後の決めの球がことごとくアウト。6-1でナダルにTBを譲ってしまった。ジネプリにはチャンスがあった。しかし、大事なところで崩れたのはジネプリの方だった。崩れないナダルはそれだけ大人だったと言うことか。恐ろしい少年だ。
ゲームとは関係ないことだが、ジネプリのサーブとナダルのサーブ、球種は違えどフォームが妙にロディックのフォームに似ているな、とふと思った。
SF リュビチッチ 63 36 63 ナルバンディアン
ナルバンディアンペースになりそうな立ち上がりではあった。ブレークポイントが多々あった。しかし、リュビチッチの一発は恐ろしい。ピンチを一発で挽回する。結局リュビチッチはサービスゲームを守り、ブレークされたのはなぜかナルバンディアンの方であった。第一セットはリュビチッチが6-3で取る。
リュビチッチはとても不安定だ。第二セット第一ゲーム、4連続リターンミスでゲームを落とすとそのままリュビチッチはミスを多発する。一方で安定するナルバンディアンは6-3でセットを取り返す。
このままリュビチッチは自滅するだろう、と思った第三セット、自滅したのはナルバンディアンの方であった。セット途中、短くなったボールに追いつきバックハンドで打ったパスがネットにかかり、ラケットをコートに投げつけるナルバンディアン。あそこで流れが変わった。集中力が明らかに拡散してしまったナルは不安定になる。しかし、不安定なのはリュビも同様だった。リターンからもミスを恐れず強打して攻めるリュビチッチは安定しないために何度もマッチポイントを逃す。だが最後は連続サービスエースで波の激しいこの試合を締めくくった。
ナダルはナルバンディアンのようには崩れてくれないだろう。リュビチッチはそれでも攻めきれるだろうか。リュビチッチの出来次第の決勝戦の行方であろう。明日もGAORAで生中継だ
2005年10月24日 ナダルが呼ぶ嵐の予感
2005年マスターズシリーズ第8戦マドリッド大会決勝
ナダル 36 26 63 64 76 リュビチッチ
リュビチッチが集中力を維持し続ければ、ナダルはそう簡単に勝たしてもらえないだろうと予想していたが、リュビチッチは期待以上の集中力を発揮してしまった内容の素晴らしいフルセットマッチを演じた。第一第二セットはリュビチッチ、第三第四セットはナダルがそれぞれ流れを制して取るが、一方的な展開であったわけでなく、両者とも持ち味を発揮して好ゲームを展開した。
リュビチッチの強力なサーブと鋭い片手バックハンドリターン、そしてネットへのすばやい詰めはナダルのディフェンスを何度も切り崩した。対抗するナダルはいつもどおり、深いトップスピンとアングルショット、鋭いパスでリュビチッチの攻めを切り返す。見ごたえのある攻防がテンポ良く繰り返される好ゲームであった。
勝負の第5セット、先にリュビチッチがナダルのサービスゲームをブレークするが、ナダルはその次のリュビチッチのサービスゲームをすかさずブレークバックする。緊迫のクロスゲーム、両者共にピンチを何度も切り抜け、6-6のTBに突入する。この大事なTB、リュビはラインコールの判定に切れたりしてファーストサーブの確率を押してしまう。その動揺に付け込む不動のナダル。リュビは果敢に攻めるがハードヒットをミスしてTBを落とす。取ったゲーム数が多かったのはリュビチッチ、しかし優勝したのはナダル。ナダルの勝負強さが最後に示された長時間にわたるフルセットの熱戦であった。
ナダルはクレーだけでなく、ハードコートの上でも急速にその強さを身につけ、試合の勝ち方を覚えていっている。今年、彼は何度もフルセットの激戦を繰り広げている。時には敗北もしているが、その激しい試合の一つ一つが若い彼には成長の糧となっている。何か新しい技術・戦術を身につけるわけではなくて、クレーの上でもハードの上でも変わらない、揺るぎない確固たる自分のテニスを確立しつつあるように見える。
おそらく、約一ヵ月後のマスターズカップのコートに立っているナダルは全米の時のナダルよりもはるかに強くなっていることだろう。皇帝フェデラーよ、そしてヒューイット・ロディック・サフィンなどのハードコートのつわもの達よ、ナダルの不敵な挑戦を受ける準備は出来ているか。対応できなければ、ハードコートの上の勢力地図は一気に塗り替えられるぞ。
最終戦に向けて、嵐の到来を予感させる、大きな意味を持つナダルの勝利だった。
2005年11月01日 出来すぎた話
今シーズンもいよいよ大詰めである。マスターズシリーズ第9戦パリ大会が今週開催される。ヒューイット不在、フェデラー、ナダル、サフィン欠場とトップ5の内4人が見事に消えているこのマスターズ、第一シードは当然唯一のトップ5ランカー、アンディ・ロディックである。以下、第二シードコリア、第三シードダビデンコ、第四シードプエルタという顔ぶれである。マスターズシリーズにしては地味な顔ぶれになった。ロディックとしては最高でも優勝、最低でも優勝である。最近早いラウンドで敗退することが多いが、後二大会は結果重視で臨んでもらいたいものだ。来年のためにも。GAORAもしっかりいい時間帯で生放送である。
ちなみに、今年のマスターズシリーズはインディアナウェルズ・マイアミ・ハンブルグ・シンシナティの4大会をフェデラーが、モンテカルロ・ローマ・モントリオール・マドリッドの4大会をナダルが取った。両雄が仲良くそれぞれ4つずつマスターズを分け合っている。今年のATPの状況を端的に表しているといえよう。しかもこの8大会のうち、フェデラーとナダルが直接対決したのはたったの一度、マイアミの決勝戦だけである。神の見えざる手が直接対決を避けさせて大事な局面で二人をぶつけているように感じているのは如空だけではあるまい。そして今回もまた二人はそろって欠場、直接対決は避けられ、二人仲良くタイトルを同じだけ分け合って、最終戦マスターズカップに臨む。なんとも出来すぎた話ではないか。まるでスポーツ漫画のクライマックスのようだ。二人の欠場は、かえってマスターズカップでの対決への期待を盛り上げる。しかも第一シードがフェデラー、第二シードがナダルになると順当に行けばマスターズカップ決勝で再戦することになる。今年双璧たる活躍をした両雄の決着をつける試合がATP最終戦のファイナルというのは、くどいようだが出来すぎた話だ。最後の決着はどうつくのか。皇帝フェデラーが覇権を確立するか。不動のナダルがその覇権を突き崩すのか。大いに期待が高まる。
さて、こちらは純粋にNo1争いが激しさを増すWTAである。
アメリカのフィラデルフィアではティアU大会アドバンタ選手権が行われる。第一シードダベンポート、第二シードシャラポワ、第三シードモーレスモ、第四シードディメンティエワの堂々たる顔ぶれである。今年何度目かの対決が決勝で待っているダベンポートとシャラポワ、No1争いに大きな影響を与える直接対決が実現することを期待しよう。
2005年11月04日 けが人
怪我に泣かされているトップ選手のなかで一人五体満足なロディック君。しかし、今年一番元気のなかったのもロディック君である。ここは一つマスターズシリーズ最終大会のパリを取って、元気を取り戻してほしいところではある。しかし、いきなり二回戦でテイラー・デントに苦戦。6-4
6-7(2) 7-5というきわどい勝利を拾った。ロディックの場合、サービスキープが前提で1ブレークかTBでも結果勝てればよいというスタイルなので、決してスコアが競っても苦戦とは言わないかも知れないが、今年はあまり結果が芳しくないだけに、いろいろといわれてしまう。まあ、ここは一つ優勝して皆を黙らせることだな。しかし、トップランカーが欠場とはいえ、このパリ大会、地味ながらも実力者が勝ち残っている。ロディックにとってもこの週末はけして楽な道のりとはならないだろう。コアなテニスファンには、結構見ごたえのある準決勝・決勝になるのではと期待している。
一方で女子もけが人続出、なんとフィラデルフィアの大会で第一シードダベンポート、第二シードシャラポワが欠場した。1・2シードに欠場されると大会側も大変だな。ディメンティエワとモーレスモに期待していることだろう。
2005年11月05日 2005年の8人
MSにしては注目度が低いパリ大会、第一シードロディックは今季好調のフェラーをフルセットの末突破、苦しみながらもベスト4に進出、SFでこれまた今季好調のリュビチッチの挑戦を受ける。アメリカ産ビックサーバー対クロアチア産ビックサーバーの対決、鍵はリターンになるだろう。安定度も一発の威力も似た物同士、さてこの対決は注目ではあるが、どんな展開になるかは予想しずらい組合せである。ボトムハーフではダビデンコがステパネックに、ガウディオがベルディッヒにそれぞれ敗れた。SFはステパネック対ベルディヒ、地味ジャー。ステパネックは去年の後半もインドア大会で活躍していたな。燻しの銀が輝く11月である。ベルディッヒというチェコの選手は知らない。どんなテニスをするのだろう、とくと週末の中継で拝見させてもらおう。
今夜、GAORAの中継はSF1つのみ、もう一つは明日決勝の生中継の前に録画中継する。ロディック対リュビチッチがくればいいが、地味な方だとコアなファンしか見ないぞ。
WTAの最終戦ツアー選手権も出場者8名が決まった。ダベンポート、クライシュテルス、シャラポワ、ピエルス、モーレスモ、シュニーダー、ペトロワ、ディメンティエワである。今年のGSタイトルホルダー4人中出場するのは全米覇者のキムだけ、全豪覇者Sウィリアムズ、全仏覇者エナン、全英覇者V・ウィリアムズは不在と異例の最終戦となる。今年全豪全英のファイナリストリンジーと全仏全米のファイナリストピエルスはそろっているとはいえなんとも地味な最終戦になってしまった。本来のテニスを発揮すればクライシュテルスが圧倒するだろうが、ダベンポートの老獪なテニスとシャラポワの熱く激しいテニスがそれを崩せるかが見ものである。
2005年11月06日 2005 MSパリ大会SF
2005年マスターズシリーズ第9戦 パリ大会準決勝
リュビチッチ 63 75 ロディック
第一セット、ボールを追えないロディックを見て、「今日はだめだ」と誰もが感じたことだろう。腰が相当痛かったらしい。QFのフェラー戦からその兆候はあったという。それでも第二セットはかなり回復していたのだろうか、しまった内容のプレイを見せ始めた。そのロディックをTBまで粘らせず、第11ゲームでロディックのサービスゲームを破り7-5でセットを締めくくったリュビチッチは見事だった。かつてのクロアチアの英雄イバニセビッチばりのフォームから繰り出すビックサーブもさることながら、片手のバックハンドリターンが冴え渡っていた。マドリッド大会決勝の対ナダル戦でも感じたが、リュビチッチはロディックと違ってサーブだけでもなくリターンにおいても冴えを見せているところが今年の好調の理由ではないだろか。
ロディックの腰の故障はどの程度のものだろうか。一部報道では上海マスターズカップの出場を危ぶむ声もある。サフィン欠場、ヒューイットも危ない、ナダルもフェデラーも故障があるという状況でロディックまでもが爆弾を抱えてしまった。この試合の勝者でありマスターズカップ出場を決めているリュビチッチも実は膝を痛めているらしい。先行き心配な話である。
ベルディッヒ 61 36 63 ステパネック
去年マスターズシリーズ初の決勝進出を果たし、サフィンとこのパリ大会を盛り上げた地味な実力者ステパネックではあったが、今年のその活躍の再来はSFで途切れた。このベルディッヒ、去年のオリンピックでフェデラーを倒し、今年のMSシンシナティでナダルに土をつけた選手で、若いながら名の通った選手だが、今まで映像では見る機会がなくて、どんなテニスをする選手なのか知らなかった。
映像で見るベルディッヒは今風のサーブ、今風のフォア、今風のストローク戦をする今風の若者だった。とても古風なテニスをするステパネックとは好対照だった。
ベルディッヒはサーブもリターンも素晴らしかった。第一セットは速攻でセットを取った。ストローク戦そのものの展開はオーソドックスだがサーブ・リターンで相手を動かしてからすぐにオープンコートにボールを入れてポイントを淡々と積み重ねていく。ステパネックのサーブ&ボレーはベルディッヒの前には通用せず、パスを抜かれまくった。
第二セット、ミスが増え始めながらもリードするベルディッヒだが、ストローク戦で我慢するステパネックが逆転、セットオールに持ち込む。だが、最後は再び調子を戻したベルディッヒが63でテンポのよい好ゲームを締めくくった。
ナダルもフェデラーもいないMSの決勝戦、なんとも新鮮であり予想だにしない顔合わせである。さてどんな展開になることか。大いに注目しよう。
2005年11月07日 ミスター・ファイナリスト
2005年マスターズシリーズ第9戦 パリ大会決勝
ベルディッヒ 63 64 36 46 64 リュビチッチ
ボールのスピードと深さが武器のリュビチッチ、対するベルディッヒはボールの回転と角度が武器。試合前半はベルディッヒのアングルショットが冴え渡り第一第二セットを連取した。第三セット、けして調子が悪くないリュビチッチは先にベルディッヒのサービスゲームをブレーク。自らのブレークピンチもしのぎ、サービスエースも増えて始めてセットを取り返す。そのまま第4セットも連取、マドリッド大会に続きパリ大会決勝もフルセットにもつれることになった。
マドリッド大会で波があったのはリュビチッチの方だった。波が過ぎ去るのを我慢強く待ったナダルの不動が彼に勝利をもたらした。このパリ大会で波があったのはベルディッヒの方だった。不安定と言う印象のあるリュビチッチではあるがこのパリ大会の決勝戦は終始落ち着いて安定したテニスを展開した。ベルディッヒは得意のアングルショットからの左右の振り回しで主導権を握るものの、最後の決めのショットで力む場面が多々あった。第一第二セットはそこを力任せにもぎ取ったが、勝利が見えた第三第四セットではそれが枷となってポイントを取りきれなかった。セットオールになった時点で冷静さを取り戻し、力みが抜けないながらも何とかセットをとりきった。弱冠20歳のマスターシリーズタイトルホルダーがまた一人誕生した。
しかし、リュビチッチ・・・・今年何度決勝で苦杯を嘗めさせられたことか。今年年頭の大会では連続して決勝に進むもののフェデラーの壁を破れず敗退、その後2大会で優勝するも、グランドスラムでは早いラウンドで敗退、そしてついにフェデラー不在のマスターズシリーズで決勝まで進んだにもかかわらず、二大会連続でフルセットの末敗退。好調でありながらもそれに伴う結果を手に入れそこなった部分が多い今季のリュビチッチである。デ杯決勝とマスターズカップでは結果を出してもらいたいものだ。
表彰式にはサプライズがあった。前年覇者でありながら故障により欠場したサフィンがトロフィーのプレゼンテーターとして現れたのだった。長髪にパーマ、ちょび髭に私服を着ているので、登場したときに一瞬誰かわからなかった。去年、マドリッド・パリと連覇し、マスターズカップではSFでフェデラーと接戦の末敗退、しかし、そこで「フェデラーは手の届くところにいる」という手ごたえを感じたサフィンは全豪でついに打倒フェデラーを成し遂げ、二つ目のグランドスラムタイトルを手に入れることに成功した。優勝こそ出来なかったが、マドリッド・パリと決勝に進出し、ファイナルセットの激戦を戦ったリュビチッチもまた、サフィンのごとくマスターズカップで好成績を残せたなら、その自信が来年大きな結果をもたらしてくれるかもしれない。彼の今後に注目である。そして注目するべきはもう一人、チェコのベルディッヒ、彼もまたいずれ出てくる。必ず。
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