第018房 2005年オーストラリア・オープン TV観戦記 (2005/05/06)
2005年01月14日 2005 全豪ドロー
2005年オーストラリアン・オープンのドローが出た。いつものように、男女シングルスのドローをそれぞれ4つの山に分けて如空の独断と偏見による展望を見てみよう。
男子第一シードは当然のごとくフェデラー。絶対の本命であり、ウィンブルドンにおけるサンプラス以降これほど大会前に優勝が確実視される選手はここ数年のATPではいなかった。去年は決勝の勝率100%、対トップ10選手の勝率も100%だったが、一年間常勝無敗だった訳ではない。去年は6回負けた。その6回はトップ10以下の選手でほとんどが大会の序盤の試合である。そのことを考えると彼の第一週の相手には上位シードの選手よりストップ・ザ・フェデラーの希望があるのかもしれない。フェデラーの位置は初戦でサントロ、その後順当に行けばギャンビル、そしてスリチャパンとリュビチッチの勝者とあたるなかなかのタフドロー。しかも反対の山にいるのはあのアンドレ・アガシとヨアキム・ヨハンソンである。この新旧対決を制したほうがフェデラーの前に立ちはだかることになる、QFはなかなか見ものだ。トップ2・3・4シードをお得意様としているフェデラーにとっては、むしろここが最大の山になりそうだ。この反対側の山にはあとロブレド、シャルケン、デント、エンクビストがいる。意外に厳しい山となったものだ。
第4シードはトーナメントでは第5シードと同じ山になる。だからどのトーナメントでもQFで最大の激戦が予想されるのがこの山だ。その注目の第4シードはサフィン、第5シードはモヤ、おお、要チェックだ。この二人の激突は今回の男子ドローでもっとも注目している。名勝負の期待大だ。二人とも順当に勝ち上がってほしいが、この山はなかなか曲者がそろっている。カルロビッチ、コスタ、アンチッチ、キーファー、ロクス、リード、ハース、ガウディオ、ギメルトブ、フィッシュ、ソーダーリン、ハーバティ、T・ヨハンソンとまあ、サフィンもモヤも結構苦労するだろう。しかし、そこで勝ち上がってこそ強者だ。サフィンとモヤに大いに期待しよう。
第三シード、地元期待のヒューイットの山はなぜかクレーのスペシャリストたちが多く集まった。第六シードのコリアを筆頭に、フェレーロ、ゴンザレス、コレチャ、ナルバンディアン、ユーズニー、ナダル、マシュー、チェラブレーク、クレメンなどがいる。最近のクレー育ちの選手はハードコートでも強いので一概に言うべきではないのだが、やはりハードコートでのヒューイットには勝てないだろう。フェレーロもハードで何度もヒューイットと接戦繰り返し、2003年の全米で破ってもいるが、今年はヒューイットが充実している。むしろ順当に行く場合、二回戦の対ブレーク戦がヒューイットの鍵になるだろう。ほか、ナルバンディアンはヒューイットに対抗できそうな期待がある。
第二シードロディックは他の3つの山に比べれば比較的楽なドローになったといっていい。第7シードのヘンマンを筆頭にして、ステファンキー、マンテラ、カナス、グロージャン、マシュー、ビョークマン、ルゼドスキーとロディックと止められそうな選手が見当たらない。むしろ問題はロディック自身でコーチを変えた直後のグランドスラムである。安定して第二週に進めるかポイントだ。不安定のままだとQF以降でシードを守れないかもしれない。
ボトムハーフからはロディックを破ってヒューイットが決勝に出てくると予想する。問題はトップハーフで、フェデラーが本命といいつつもアガシ・ヨハンソン・サフィン・モヤがフェデラーを止めそうな予感もする。その勝者はおそらく決勝でヒューイットといい勝負をするだろう。トップハーフのQF・SFにおそらくクライマックスが来ると予想するが結果は如何に。
去年のファイナリスト、ベルギーのエナンHとクライシュテルスがそろって欠場の女子シングルス。男子とは対照的に本命不在である。
第一シードダベンポートは初戦でいきなりマルチネスにあたるが後は比較的安泰そうである。反対の山からVウィリアムズが上がってくるが、今の状態ではダベンポートが優位だろう。
第三シードミスキナの山には反対側に第6シードのディメンティエワが入った。順当にいくとQFでこの二人がぶつかる。去年の全仏決勝の再現だ。GS決勝の2連敗のディメンティエワ、今年こそはと執着心をもって臨んでいるに違いない。インターネット上ではサーブが改善されているという情報もある。ここは大きな山場になりそうだ。ただ、ディメンティエワはそこに行くまでにハンチェコワとゴルビンを突破しなくてはならない。このハンチェコワ、初戦で森上とあたる。
第4シードは去年の全英覇者シャラポワ、そして第5シードは去年の全米覇者クズネツォワ、この二人が同じ山に入った。男子同様この4・5シードの山のQFは激戦になる。全米後失速しているクズネツォワである。去年末のままだとシャラポワに一蹴されるだろうが、もし全米決勝でのテニスの再現に成功すればこれはいい試合になる。要チェックである。クズネツォワ、期待にこたえてくれ。
第二シードモーレスモは第七シードセリーナと同じ山になった。天敵カプリアティが欠場した上、比較的相性のよいモーレスモにあたるセリーナには運のよさを感じる。モーレスモはセリーナを突破して決勝まで届くだろうか?
順当にいった場合のQFはどれも接戦だろう。特にロシアのトップ4、ミスキナとディメンティエワ、シャラポワとクズネツォワがお互いに星を潰しあう。雲霞のごとく出てきているスラブ系選手の中でもこの4人が頭一つ抜けはじめている。最強は誰なのかを一度このトーナメントで決めておくのも悪くはない。この4人の中から優勝者が出れば、女子シングルスのグランドスラムは去年の全仏から一年間4大会連続でロシア人選手ということになる。今度はディメンティエワの番だと如空は期待している。
モーレスモはセリーナを突破できるだろうか。そこさえ突破できればロシア勢が出てきてもダベンポートが出てきても彼女が勝つだろうと予想している。個人的にディメンティエワを応援しつつも、やはり本命はモーレスモと予想するが結果は如何に。
ちなみに先日の記事で付けたし忘れていたが、杉山が女子ダブルスでの生涯グランドスラムに王手をかけている。その最後の一つが全豪だ。全豪を取り残す例は珍しいが、毎年ペアを変え、1月からスタートする杉山の今のスタイルだと、ペアを組んで間もない状態で全豪に臨むので全豪が一番厳しくなるのだろう。今年シドニー国際ではディメンティエワとのペアで決勝まで進んでいる。杉山のダブルスグランドスラム達成にも大いに期待がかかる今年の全豪である。熱戦を期待しよう。
2005年01月17日 前哨戦が終わり、全豪の幕が上がる
全豪前哨戦のシドニー国際ではオーストラリアのヒューイットとモリックがめでたくアベック優勝、全豪オープンへ向けて地元の期待が高まるだろう。オークランドではゴンザレスが優勝している。ハードでも強いクレーコーター、ハードでも強い南米勢、今年はハードコートでもアルゼンチン勢やチリ勢が旋風を吹かせるかも知れない。
全豪を前に負傷者が続出していると報道されているが、主役たちは順調にメルボルンに入った。さあ、今日から2005年グランドスラムの第一戦、オーストラリア・オープンが開幕する。100周年記念大会だそうだ。設備も年々よくなっている。なんといってもセンターコートに可動式の屋根があるのだ。第二週は雨でスケジュールが狂うことはない。日本とほとんど時差がないので夜にいい感じで編集した録画が中継される。SF以降は日中からゴールデンタイムにかけて生中継だ。真夏のオーストラリア大陸で繰り広げられる熱き選手たちの戦いを二週間存分に楽しもう。熱戦を期待します。
2005年01月18日 モヤが負けた。鈴木が勝った。
モヤああああ、初日に負けるなよ。君に期待していたのだよ、QFでサフィンと名勝負を演じることを、そしてそこで勝てばSFでフェデラーを止めてくれることを。悲しい・・・杉山も負けたし・・・。
他のシード勢は順当な初日だったが、鈴木貴男がギャンビルに勝っている。おお、凄い凄い。一時の勢いはないとは言えギャンビルはGS本戦常連選手だ。予選を勝ち上がってきただけでも評価される今の鈴木の位置を考えると、大金星だ。それだけではない、次は第一シードフェデラーだ。これは面白い試合になるかもしれない。鈴木は今時珍しい純粋なネットプレーヤーだ。アプローチではバックだけでなくフォアでもスライスを使って前に出る。ストロークのラリーはでもバックはほとんどスライスだ。これほど特徴がはっきりしているネットプレーヤーも珍しい。背が高くないのだがバッタみたいにぴょんぴょん跳ねる独特のフットワークでネット際を走り回る。ネットで壁になるというより、開けたサイドにパスを呼び込んでそれに飛びついてエースを狙う。ここ数年でサーブがとても強化されている。GSで対戦する側にすればほとんどデータを持っていない選手であり、珍しい両サイドスライスアプローチを多用する背の低いネットプレーヤー、ベースラインから強打してネットに出るのでなく、それ以外のあらゆる手段を駆使してとにかく前に出てくるテニス、けしてやりやすい相手、攻め方の解っている相手というわけではあるまい。それがたとえフェデラーであっても。今のこの時期、フェデラーと対戦できるということがどれだけ幸運なことか。しかし、それに甘んじることなく勝利を目指してフェデラーに立ち向かって欲しい。去年のデ杯ではいいところが無く、本村の活躍の前に存在感が薄れつつある日本男子のエース、鈴木貴男、ここで存在感を示せ、フェデラーを苦しめろ、そしてかなうならば・・・・・。
2005年01月19日 ブレークとヒューイット
TVでテニス観戦をしたり、ネットで試合結果をチェックしたりするようになってからかなり年月が経ったが、その間、グランドスラムの第一週というのは毎日誰か大物がシードダウンをしていた。昨日の全豪二日目のように上位シードがほとんど安泰という波乱のない一日はかえって珍しい。まあ、本来はこうあるべきなのだが。毎日波乱続きでは二週目がつまらなくなる。
さて、フェデラー対鈴木の試合もさることながら、二回戦で注目はヒューイット対ブレークだ。過去に人種差別発言などテニス以外の因縁も多々あるが、何よりテニスの内容においてこの二人の試合は接戦になることが多い。ライジングからの前後左右に振り分けるストローク、ネットを含め様々なアイデアをコート上で駆使する多彩な攻め、ブレークのテニスは見ていて面白く、ファンも多い。コート上を所狭しと走り回り攻めてくるブレークと、同じくコートを縦横無尽に走り回りその全てをカウンターショットで切り返すヒューイットの対決は、テニスが噛み合うというかとにかく好勝負になる。戦績では最後にヒューイットが勝つ結果が多いようだが、最近少し影の薄くなってきたブレークは巻き返しを図ることができるだろうか。好勝負を期待しよう。
2005年01月20日 シャラポワ辛勝ながらも・・・
三日目でハースとスリチャパンがシードダウン、女子はズボナレワが負けた。ハースは最近TV中継にも出てくるとこまで上がってきている。しかし、残念なことにいつも負ける試合を放送されている。勝った試合を中継してもらえるとこまでハースよ、早く上がって来てくれ。
鈴木もフェデラー相手にストレートで負けた。3セットとも1ブレーク差、負けたがサービスをしっかりキープして、しまった内容の試合をしたようだ。ヒューイットが相手ですら6‐0でセットを取るフェデラーである。フェデラーのギアがトップに入っていないGS一週目であることを差し引いても善戦だったといってよいではないだろうか。
さて、せっかくHDD付DVDレコーダーを購入し、テニス中継の鑑賞三昧と行きたかったのだが、新年早々仕事が多忙モードで、録画したWOWWOWの全豪中継が見られていない。昨日も帰宅したら既に三日目の中継が始まっていた。疲れてすぐに寝たかったのだが、家のことでやることがあったので、眠い目をこすりながら家事をしつつ、片手間に全豪の中継を見ていた。
中継一試合目はシャラポワ対ウォータースーだった。シャラポワがフルセットの末、辛勝したが非常に危ない試合内容でもあった。ロシア勢全体にいえることだが、彼女たちはアメリカ勢やベルギー勢のように緩急をつけない。つないでおいていきなり強打をドカーン、いきなりアングルにズバッと切り返す、といった攻撃がアメリカ・ベルギー勢のスタイルだが、ロシア勢はあまりつなぎと決めの球にメリハリがない。決めの強打が緩いのでなく、つなぎのショットが強いのだ。チェンジオブペースをあまりせず、左右の振り合いとハードヒットの応酬の中で相手がボールを追いきれなくする、それが戦術の基本目的だ。シャラポワのテニスはその代表格なのだが、昨日の相手ウォータースーはアメリカ人のくせにそのテニスはまったく持ってロシア勢のテニスだった(というより女子テニス全体が基本的には今のロシア勢のテニススタイルを一般的にしており、ウィリアムズやエナン・クライシュテルスのスタイルが女子の中では特異なのだ)。
同じタイプのテニスなので当然ハードヒットの応酬合戦になる。第一セットで競り負けたシャラポワは第二セットで集中力を上げて6-0で取り返す。この当たりはさすが第4シードと思わせるテニスだ。このまま第三セットも一気にたたみかけるかと思われたが、ウォータースーもさらにギアを上げて攻め返してくる。壮絶な打撃戦にシャラポワの応援一色だった会場からもウォータースーの声援が出始めた。なかなかの好勝負になったが。最後はシャラポワの勝利に終わった。
ウォータースーは見事だった。勝利の可能性を何度も見せた。ショット自体は互角だった。しかしながら、すさまじい左右の振り合いとハードヒットの応酬に明け暮れた二人のうち、大事なところでミスをしたのがウォータースー、大事なところで集中してミスしなかったのがシャラポワだった。それが二人の差であり、勝負の明暗を分けることになる。シャラポワは第一セットダウンにも動揺せず、ジャッジミスにも切れることなく、ウォータースーの厳しい追撃も見事にしのぎきった。「二回戦で苦戦」といえば第4シードとしては不安を覚える結果だが、そのテニスの内容は逆にメンタルでの安定を見せつけた。彼女は強くなっている。反対の山からクズネツォワが勝ち上がってきているが、クズネツォワよ、今のシャラポワを止められるか?
2005年01月23日 全豪の好試合とドーピング疑惑と
WOWWOWが中継している2005年全豪オープンは男子の試合で好試合が続いている。
全豪2回戦のヒューイット対ブレークは好試合だった。二人ともよく走る。ボールに追いつくだけでなく、ボールの後ろをポンと叩いて相手コートに返すのだから凄い。予想を上回るオールコートカバーのテニスの展開はブレークがファーストセットを取り、第二セットもタイブレークにもつれブレーク有利かと思われたが、ヒューイットがじわりと反撃、タイブレークを制してセットオールにしたところで勝負が決まった。第三セットを6-0で簡単に取ると、第4セットは調子を取り戻す気配を見せ始めブレークをしっかり抑えてヒューイットが勝利した。WOWWOWの解説を聞いていて知ったのだが、ヒューイットと何度も接戦を演じているブレークはツアーでは5戦全敗でまだ一度もヒューイットに勝てていない(ホフマンカップでは一度勝っている)。この試合の前半、チャンスがあっただけに残念な結果になった。しかし、見ていて二人のコートを走り回るフットワークに見せられた。
全豪3回戦のサフィン対アンチッチはサフィンが圧倒するかと思われたが、アンチッチが中々いいテニスをしてその成長振りをアピールした。去年までもウィンブルドンなどで何度か見ているが、ビックサーブと窮屈そうなバックハンドしか印象に残っていなかった。しかし、この試合ではあの不細工だったバックハンドが素晴しく振りぬけている、いい感じの両手打ちバックハンドストロークに見違えていた。サーブのコントロールも上がっているし、何よりストローク戦での配球が素晴しい、クロスラリーからの展開に戦術面での成長をうかがわせる。サフィンから一セット取っただけで負けてしまったが、意外とこのアンチッチ、もっと上に上がってくるかもしれない。見直した、要チェックだ。
ヒューイットの山はクレーコーターが多い。3回戦ではなんとフェレーロ対コリアなどという豪華な顔合わせが実現した。ランキングが31位まで落ちている元エントリーランキングNo1にして全仏チャンピオンのフェレーロと、去年全仏決勝でケイレンにより優勝を逃したコリア、現時点ではコリアの方が上だろうが、今日の試合ではフェレ-ロが左右に強打を放ちコリアを押す。しかし、コリアがカウンターショットで上手く切り返してストレートでコリアが勝利した。フェレーロが順調に復調すればこの対決は今年の全仏決勝で再現してもおかしくない。ストロークはコリアを押していた。スコア的には圧倒されたとはいえ、充分復活を期待できる試合内容だった。
コリアは次に同じアルゼンチンのナルバンディアンと当たる。ヒューイットは成長著しいスペインのナダルと対戦する。アガシはいよいよJ・ヨハンソンと対決、T・ヨハンソンはガウディオを破ったハーバティと4回戦で当たる。ん?ヘンマンがいつの間にか負けている。あと、心配なのはサフィン、4回戦の相手は以前ウィンブルドンで負かされた小さな巨人、ベルギーのオリビエ・ロクスだ。大物食いのロクスを調子に乗せるとまた負けるぞ、サフィン。
エキシビジョン・マッチで前日風邪薬を飲んだためにドーピング検査に引っかかったクズネツォワには気の毒としか言いようが無い。しかし、それを大会終了後、全豪開催中を狙って発表する大会主催者側のお粗末な対応は批判されてしかるべきだろう。
コリアも過去に検査に引っかかり、後にシロと判明するが疑惑をかけられ迷惑している。コリアはそれに懲りて少々風邪気味でも薬を取らず、スポーツ選手なら常識的に使用するサプリメントやドリンクさえ取らずに、水だけで試合を戦うようになった。そのつけが皮肉にも去年の全仏決勝で足の痙攣を阻止できなかった原因の一つになってしまった。敗戦の記者会見でそれを涙ながらに語るコリアを見るとこちらまで辛かった。
100パーセントクロと断定することは難しいと聞いているが、それでも検査側はほとんど確実と言えるまではその疑惑を公に発表するべきではない。
2005年01月24日 ナダルは力尽き、アガシが牙を研ぐ
おお、ヒューイット、フルセットの激戦を制して新鋭ナダルに逆転勝ち。ナダルやるじゃないか、ヒューイットからセットアップでリードするなんて。セットカウント2-1リードで迎えた第4セットのタイブレーク、ここが勝負を分かつ山となったようだ。最後にはヒューイットが押し切った。今年の全豪男子シングルスは去年に負けず劣らず好試合の連続で非常に充実している。実に素晴らしい。中継録画の試合を見ることが今から待ち遠しい。
さあ、これで男子は1・2・3・4シードがそろってQFに進出した。本当の戦いはここから始まる。しかし、皮肉なことには、このQFでトップ4シードのうち、一番タフな状況にあるのが実は第一シードのフェデラーだということだ。QFでアガシとあたる。ロディックとサフィンは順当にもう一度勝てるだろう。ヒューイットもコリア・ナルバンディアンの勝者が相手だが、今のヒューイットではそれほど問題はないだろう。フェデラーだけが気の抜けない相手となった。
順当にいった場合、フェデラーが優勝するためにはアガシに勝ち、サフィンに勝ち、そしてヒューイット対ロディックの勝者に勝たなければならない。去年の対戦成績とその試合内容を考慮するに、フェデラーにとっては後になるほど楽になる組合せだ。去年のUSオープンで二日にわたる試合、しかも二日目は強風の中で満足するプレイで戦えなかった二人、アガシとフェデラー。アガシは去年ランキングNo8であるにもかかわらず、全仏覇者のガウディオに参加の席を取られて年末のマスターズカップを出場できなかった。しかし、今思うとあの時出場して、絶好調のフェデラーにあったっていなかったことが幸いしているようにも思う。少なくとも他の選手ほどフェデラーに対して苦手意識も対抗意識過剰にもなっていないはずだ。全米のかしを返すべく、そしてあの不完全燃焼の試合をやり直すべく、アガシよもう一度よみがえれ。
2005年01月24日 ミスキナダウン・ディメンティエワダウン
ディメンティエワダウン、ミスキナダウン、ロシアの4強のうち半分がQFに進めなかった。
この二人がシードを守れず崩れるとは。ディメンティエワは第一第二セットをそれぞれタイブレークで取り合い、第三セットで力尽きた。破ったのはスイスのシュニーダーだ。デメのGS初タイトルの夢を見事に打ち砕いてベスト8入りである。
ミスキナはあっさりとストレートで敗退した。彼女を破ったのはフランスのデシー、フェドカップ決勝のシングルスで負かされたかりをしっかりとミスキナに返した。見事だ。
一方去年の全英チャンピオンと全米チャンピオンはベスト8に進出し、シードとおりのロシア対決を実現させた。去年全米後はスランプだったクズネツォワが力を存分に発揮して順調に勝ち上がっている。対して去年の後半絶好調のシャラポワはここまでフルセットが2回で結構苦戦している。しかし、この二人の対決はやはり現時点でシャラポワ有利であることに変わりはない。シャラポワをフルセットに追い込んだのは相手がそれだけいいテニスをしたからで、シャラポワ自身が不調という訳ではないからだ。クズネツォワは今まで以上のテニスを勝利のために要求される。シャラポワはいつも通りのテニスをしてくるだろう。クズネツォワの出来次第の試合結果になりそうだ。
1・2シードはウィリアム姉妹と激突しそうだ。第二シードモーレスモはセリーナの壁に挑む。優勝を狙う彼女には最大の山になる。第一シードダベンポートはヴィーナスとモリックの勝者を待っている。ヴィーナス順当とみたいが、去年のアテネメダリストモリックはこれまた静かに強さを増している。地元の声援もあろう。ヴィーナスはシードを守れるだろうか。彼女も大きな壁に差し掛かる。
2005年01月24日 何だ、何だ
何だ、何だ、このスコアは、
アガシ 67 76 76 64 J・ヨハンソン
サフィン 46 76 76 76 ロクス
それぞれ3回もタイブレークしている。タイブレークでない唯一のセットも6-4で1ブレイク差だ。凄い接戦だぞ、これは。WOWWOWの中継が楽しみだ。明日は仕事があるのですぐには見られないが。
フェデラーも最終セットでタイブレークにもつれている。シャラポワもフルセットにもつれた。シード勢が勝ち上がっているとはいえ、けして安泰とはいえない内容である。充実した全豪4回戦である
何だ何だ、一方でダブルスは杉山組も浅越組みも鈴木組も敗退し、日本勢は次々と敗退しているじゃないか。杉山は生涯グランドスラムがかかっていただけに残念だ。しかし、これでディメンティエワはシングルスに専念できる。4Rを突破すればミスキナがおそらく待っている。女子は珍しく上位8シードがそのままQFベスト8になりそうだ。女子も充実している。楽しみなQFになりそうだ。
何だ、何だ。WOWWOWはいつの間に「フェデレ」を「フェデラー」、「フェレロ」を「フェレーロ」と呼ぶようになったんだ。何だ、何だ。
2005年01月25日 戦術家二人の好勝負、そして大会は佳境に入る。
全豪4Rの壁をビーナスは突破できなかった。地元の声援を受けてモリックがベスト8に名乗りをあげた。そしてQFではモーレスモがセリーナの壁を越えられずあっさりと敗北した。クズネツォワはシャラポワに逆転負け、前半はいい感じだったのに残念だ。如空が本命視していたモーレスモが敗れ、ボトムハーフのSFは因縁の対決、セリーナ対シャラポワになった。若きグランドスラマーセリーナウィリアムズが今、挑戦者の立場になってしまっているほどシャラポワの勢いは強い。セリーナ、策はあるのか。彼女は去年よりさらに強くなっているぞ。
昨日、ついつい深夜のWOWOWでヒューイット対ナダル戦を見てしまった。如空はナダルの試合を映像で見るのはこれが初めてだ。今のナダルは話題ばかり先行して本人の試合をなかなか見ることが出来なかった。ナダルの今の期待度と言うものは数年前のロディックに匹敵する。話題ばかりが先行していたので、報道などから如空はてっきりナダルが豪快なハードヒッターだと思い込んでいた。しかし、昨晩の映像をみて驚いた。ナダルは若いくせに老獪な戦術家だった。サフィンやロディックのように豪打で押すのではない。アガシやヒューイットのようにアップテンポのラリーで相手を前後左右に振り、オープンコートを作ってそこに確実にボールを入れてくる。クレーコートでのテニスをスピードアップさせてハードコートに適応させているが、その基本戦略は相手を動かしてオープンコートを作ることだ。左利きだからという訳ではないが、フォアハンドとサーブのフォームはモロッコのアラジに似ている。もっと豪快なテニスを想像していただけに意外だった。
対戦相手がヒューイットだったこともあって、試合内容は二人の戦術家による配球の妙を堪能できる好試合になった。
サーブではワイドに入れて相手をコートの外に追い出して、リターンされたボールをオープンコートに切り返す。クロスへ深い球を打ちつづけ、相手が根負けしてクロスから甘くセンターにそれたボールをすかさず回り込んで逆クロスに打つ。少し短いボールをクロスに打って相手をコートの中に入れてから、相手のポジションより後ろにバウンドさせる深い球を入れてランニングショットさせている間にネットにつく。まるでシングルス戦術の教科書のような試合が展開された。二人とも足が速く、コートカバーよいのでかなり動かさないと抜くことかが出来ない。ヒューイットはナダルがワイドに振られたボールをしのいで打ち返し、センターに戻ろうとしたところへ、ライジングで同じワイドに切り返し逆をつくパターンがうまかった。短くなったボールを逆クロスへ決めるフォアもさえていた。お互いに好不調の波があり、ミスを連続する場面を相互に繰り返したためにスコアがもつれたが、調子がいいときに二人の攻めは実に見事だった。ヒューイットは何度も波がきてゆれたが、最後には自分のテニスをしっかりして全豪では初の4回戦突破を成し遂げた。ナダルは今後に大いに期待のもてる内容だったのではないだろうか。
そのヒューイットの前にはコリアを下したナルバンディアンが立ちふさがる。これもまた侮れない相手ではある。男子はサフィンがベスト4一番乗りを上げた。そして今夜はフェデラー対アガシ戦がある。今夜も眠れない。
2005年01月26日 充実の全豪ベスト4、
男女ともQFが終了し2004年オーストラリア・オープンのベスト4が出揃った。
男子はトップ4シードが揃い踏みである。如空がテニスを観戦するようになってからグランドスラムで初めての出来事である。現時点のハードコートでフェデラー・ロディック・ヒューイット・サフィンが如何に強いかを物語る。これでSFは去年末のマスターズカップと全く同じ組合せになってしまった。結果も全く同じになりそうで恐い。
フェデラーはアガシをストレートで下した。試合自体はとてもしまった内容だったが、大事なところでストローク戦を制していたのはフェデラーだった。ストロークがさらに進化中のフェデラー、一体何所まで強くなるのか。
ロディックとサフィンは順当に勝ち進んだ。
大会直前の予想に大きく裏切られているのはヒューイットだ。彼はロディック同様楽なドローになっていると予想したが、ふたを開けてみると1Rのクレメン、2Rのブレーク、3Rのチェラ、4Rのナダル、そしてQFでナルバンディアンとどれもタフな試合になっている。去年の全米は決勝まで全てストレートだったのとは対照的だ。クレメンはストレートだったが、ブレークとチェラは1セットを取られ、ナダルに続いてQFでナルバンディアンと2試合連続のフルセットマッチとなった。しかもこのナルバンディアン戦、2セットダウンからナルの追い上げを許し、しかも最終セット10-8までもつれた。今年のヒューイットは去年のサフィンと印象が重なるところがある。去年サフィンもタフドローの中、接戦を繰り返して決勝まで勝ち進んだが、そこで力尽き、フェデラーの前にあっさりと屈した。全く同じ経緯をヒューイットは歩んでいる。二試合連続の5セットマッチを戦った彼の前に立ちふさがるのはロディック、相手の棄権でQFを2セット半で終わらせた。ヒューイットはどちらかというとロディックを得意としているが、この状況では苦戦するだろう。そして、そこで勝ちあがったとしても、そこには万全の体制のフェデラーが待っている。これは去年の全豪のサフィンと同じ道のりであり、結果は去年末のマスターズカップ決勝と同じになる可能性が大である。サフィン対ロディックという新鮮な決勝戦を見てみたいものだが・・・・
女子のトップハーフはダベンポートとデシーがSFで当たる。モリックおしい。ダベンポート相手にフルセット7-7まで競り合いながら敗退してしまった。もしボトムハーフからシャラポワがセリーナを倒して上がってきた場合、決勝で迎え撃つのはダベンポートよりモリックの方が面白くなると思っていた。彼女はシャラポワに最もかけているもの、緩急をつけたラリーをするからだ。ダベンポートはシャラポワのアップテンポのラリーに付き合ってしまって主導権を握れないような気がしている。その前にセリーナがシャラポワの前に立ちふさがっているのだが、相性が悪いというか、セリーナはシャラポワを止められまい。苦手意識が芽生え始めていると思う。大穴デシーも忘れてはいけないのだが、大方の興味は決勝に向いている。
2005年01月27日 セリーナがシャラポワを止めた!
全豪女子SF
S・ウィリアムズ 26 75 86 シャラポワ
セリーナがシャラポワを止めた。取ったセット数では負けたシャラポワの方が上回るというフルセットの接戦を制してのセリーナ逆転勝ち、決勝進出である。第一セットを取られた時点でシャラポワペースだった。今のシャラポワは、逆転勝ちはしても逆転負けはしない選手だ。その彼女相手に試合をひっくり返すとは見事だ。第一セットで圧倒されながらもあきらめずに第二セットで良くぞ喰らいついた。第三セットも6-6までいってそこから2ゲームを良くぞ取りきった。映像は今晩になるまで見られないが、ネット上のデータでは、セリーナの取ったサービスエースの数は3セットでわずかに4つ。ウィリアムズの勝ちパターンでない。シャラポワのハードヒット・ラリーに付き合って、そこから逆転したのだ。スコアを見る限りシャラポワにアクシデントがあったようにも見受けられない。シャラポワも接戦が続き体力的には不利な状況下にあったと思われるが、この灼熱のフルセットを最後まで集中力を切らさずに競り合った精神力は素晴らしい。負けてもシャラポワをたたえる拍手は惜しみないものがあるだろう。
しかしセリーナ・ウィリアムズ、良くぞ戻ってきてくれた。今日負けていれば、おそらくセリーナは完全に過去の人となっていただろう。君には同情と応援の拍手は似合わない。かつて女王ヒンギスを叩きのめし、姉ビーナスを退けたように、憎らしいまでに強い、うらまれるほどにタフな、ブーイングを受けるほどに恐ろしい、圧倒的強者としてのセリーナ・ウィリアムズの姿こそがふさわしい。
今年の全豪は男子だけなく女子も好試合の連続だ。熱戦を送り届けてくれる選手たちにひたすら感謝。
2005年01月27日 サフィンがフェデラーを止めた!
サフィン来たー!
全豪男子SF
サフィン 57 64 57 76 97 フェデラー
やったぜサフィン、信じていたぜサフィン、フェデラーを止めるのはサフィンだって。えらい、よくやった。123セットは1ブレイク差、第4セットはタイブレーク、そして最終セットは6-6から二ゲーム差を良くぞ取りきった。よく最後まで集中して戦いきった。接戦で決して崩れないフェデラーを倒すには、フェデラー以上の集中力が必要なのだ。良くぞ最後まで戦いきった。見事だぞサフィン。
今日はダベンポートもフルセットの末の見事な勝利だった。しかしなんと言っても、シャラポワを止めたセリーナ、そしてフェデラーを止めたサフィン。この二人の見事なテニスに大いに勇気つけられた。今まで信じていても実現しなかった何かが今日、実現したような気がする。かつて持っていたものを失ってしまった二人。そして、それを失っていた日々を経て、再び大事な「何か」を今日取り戻したセリーナ・ウィリアムズとマラット・サフィン。この二人の素晴らしき才能に盛大な拍手を送ろうではないか。
2005年01月29日 熱戦が続くメルボルン
南半球のオーストラリア・メルボルンでヒューイットがロディックを1セットダウンから2セット連続のタイブレークを制して見事な逆転劇を演じていた金曜日の夜、北半球の日本・大阪の御堂筋沿いのオフィスの一角で、河内房如空は絶望的な仕事量を前にして頭を抱えていた。この週の前半に急に入った別件の仕事に追われていて、週末締切の本来の仕事がまだ終わっていないのだった。幸い、仕事は明日土曜日の便に乗せて発送しても間に合うらしい。関係各者に状況を説明して、仕事の引渡しを明日に伸ばしてもらった。ヒューイットが地元の声援を背景に勝利を決めたことをパソコンの画面上の片隅に表示させているリアルタイム・スコアボードで確認したとき、如空はこの夜は家に帰れないことを悟った。
全豪女子シングルス決勝の行われる土曜日の朝、午前7時に仕事をやり遂げ、疲れた体を馴染の24時間食堂のテーブルにつけさせて、昨日取れなった晩御飯をかねた朝食の納豆定食を食べながら考えた。今から帰宅してコートに向かえば、土曜朝一のダブルスの練習に間に合う。しかし、体は仮眠なしの徹夜作業のため、疲労困憊である。常識的に考えれば練習は休んで、土曜昼一の仕事の引渡しまで睡眠をとることを選択するだろう。しかし、常識が負けた。その二時間後、如空はコートに立っていた。
練習が終わるとラケットを担いで一目散に職場に戻る。仕事関係者に内容を説明し、チェックを受けたあと、修正してクライアント提出用の成果品を大量に出力した。出力している最中にインターネットでチェックすると、メルボルンではセリーナ・ウィリアムズがダベンポートに1セットリードされていた。出力が終わり、成果品を引き渡し、馴染みのお好み焼きやで豚玉とビールを昼・夜兼用の食事として取ると、帰宅した。セリーナがいつの間にか逆転して久しぶりの優勝を決めていた。その試合を録画してあるので観戦しようと思ったが、睡魔には勝てず、インターネットに繋いであるノートパソコンを閉じるとベッドに倒れ込んだ。土曜の午後6時に眠りについて翌日の午前6時まで12時間、夢を見ることなく死んだように眠った。
全豪男子シングルス決勝の行われる日曜日は、如空が今年幹事をしているサークルが所属するテニス連盟組織の役員懇談会がある。懇談会といっても各サークルの代表者が集まってダブルス大会をするのが主な内容だ。十分な睡眠をとったので今日は元気だ。役員懇談会のあとはシングルスの練習である。テニス三昧の一日である。
疲れ果てて、家に帰るとサフィンがヒューイット相手にセットカウント2-1で第4セットも1ブレークでリードしている。3度目の正直、全豪タイトルまであと少しと迫るサフィン。さあ、ヒューイット、ここから挽回できるか。
2005年01月30日 サフィン 三度目の正直
2005年オーストラリア・オープン男子決勝
サフィン 16 63 64 64 ヒューイット
本当におめでとうサフィン。最終セットのサフィンは2000年のUSオープン決勝でサンプラスを破ったあの完璧なテニスを再現していた。同じビックサーブ・ビックストロークで押すロディックを破ったヒューイットには,今のサフィンでも勝てないかも知れないと思っていた。現に第一セットはヒューイットのペースだった。しかし、サフィンは見事にその予想を覆した。ヒューイットが表彰式のスピーチでたたえていた。「彼は誰もが勝てないと思っていた男を倒したのです。」と。その「誰もが勝てないと思っていた男」皇帝フェデラーを破ったときも、そして地元のヒーローにして信じられないタフマッチを戦ってきた男ヒューイットも破ったときも、サフィンはとても静かに勝利の瞬間を迎えた。そこでサフィンを襲っていた感情は「強い奴をやっつけてやった」という快感ではなく、「困難な仕事をやり遂げた」という男の達成感ではなかっただろうか。全豪オープンの決勝に3度進み、2度までも阻止されたサフィン。3度目のチャレンジでついに成し遂げた生涯二つ目のグランドスラム優勝である。この大会で大きな壁を乗り越えることができたのかも知れない。
連勝記録を止められたとはいえ、フェデラーは依然として最強のNo1選手として君臨している。全米、マスターズカップ、そしてこの全豪と連続して決勝に進出しながらタイトルを逃しているヒューイットはさらにその闘志を燃え上がらせるだろう。そして未完の大器ロディックは新しいテニスを模索している。その新しい自分のテニスを見つけたとき、再びグランドスラムタイトルを、そしてNo1を狙ってくるはずだ。そんなライバル達の間でサフィンは、これからも淡々と自分の仕事をこなしていくようにテニスをしていくだろう。そんな、素晴しい男たちの熱い戦いを見ることが出来て我々は本当に幸せである。
今年の全豪は充実していた去年を上回る、ここ数年のグランドスラムでは、まさにベスト・オブ・グランドスラムトーナメントだった。男子だけでなく女子の試合も素晴しかった。素晴しい試合を見せてくれた選手たちに感謝。
2005年01月31日 ヒューイットの拳が向けられる先
ヒューイットのガッツポーズは彼がツアーにデビューしてきたときからいろいろ問題にはなっていた。「カモーン」の雄たけびと共に。しかし、ヒューイットがグランドスラムタイトルを取り、No1ランキングになり、周囲が認めるようになると、あの派手なガッツポーズと雄たけびは、「あれがヒューイットのスタイルなのだから」と半分あきらめ、半分なれてきたこともあり、問題視されることがなくなっていった。そして2003年には、ヒューイット自身がスランプになり、その存在自身が世間から忘れられるようになってしまっていた。
2004年の初頭より復調し始めて、夏のハードコートシーズンで一気に加速したヒューイットの存在は、当然TVでの露出も多くさせるというものだ。去年のMSシンシナティや全米オープン
・マスターズカップでは、いやというほどヒューイットの試合を見た。そして復活したのはテニスだけでなく、ガッツポーズもさらにヴァージョンアップしていることを知る。
一つはセットを取ったときによく見せる地面に向かって何度もこぶしを引き上げるポーズ。まあ、あれはよい。見ていて応援したくなる、彼のファイティング・スピリッツの素晴らしい発露だととらえている。
問題はもう一つの掌を第三関節のところで直角に折り、そろえた指を自分の顔に向けるポーズだ。一説によると北欧式ガッツポーズらしいが正確なところは知らない。観客に向けて行うとき、ファミリーボックスに向かって行うときはよいが、時にヒューイットはあれを相手選手に向かって行っていた。本人の意図にかかわらず、やられた相手は明らかに挑発行為と受け取ることだろう。よくまあ、やられた選手は怒らずに平静に受け取れるものだ、やはりプロの選手はクレバーだなあと如空は感心していた。
しかし、実はみんな怒っていた。その怒りがこの今年の全豪オープンで炸裂している。
2回戦のブレークはネットについた自分をトップスピンロブで抜かれたとき、ガッツポーズをするヒューイットに向かって「ハイハイ、お上手お上手」と皮肉をこめてわざとらしい大げさな拍手をしつこくヒューイットに向かってやっていた。そして自分がウィナーを取るとヒューイットの北欧式ガッツポーズをわざと真似してやり返していた。
ナイスガイとしてその性格のよさが知られるブレークですらこの状況である。アルゼンチンの核弾頭、チェラが黙っている訳がない。3回戦で度重なるガッツポーズに切れたチェラはサーブをわざとヒューイットのボディに向けて放ち、さらにコートチェンジの間にベンチについたヒューイットにつばを吐きかけた。審判台の後ろで行われたことなので審判は直接介入しなかったが、これは許されることではない(追記:試合後彼は罰金を課せられている)。ただこの許されざる行為を招いているのはヒューイット自身である。
クレバーなナダルは4回戦でヒューイットなど見向きもせずに自分のテニスをしつづけたのだが、QFの相手ナルバンディアンは違った。彼もヒューイットの態度に対して頭に血を上らせながらプレイをしていた。コートチェンジのすれ違いざまに肩がぶつかったとき汚い言葉をヒューイットに吐きつけたナルバンディアン。ナルの行為もまた許されない。しかし、それを招いたのはやはりヒューイットである。敗戦の記者会見でナルバンディアンは公式にコメントまでした。「ウィナーでのガッツポーズはまだしも、相手のミスに対してガッツポーズを行うことは許せない」と。
ロディックはさすがに実力者で「あくまでテニスで倒す」とSFで奮戦した。
意外なことかもしれないが、決勝の相手サフィンとはお互いに敬意を持って尊敬しあう仲なのだそうだ。サフィンは常々メンタルで崩れてしまう自分のテニスを振り返り、すさまじいメンタルタフネスを持つヒューイットを尊敬していると複数のメディアで語っている。それだけに彼のガッツポーズはあまり気にはならないらしい。サフィンはよく切れるが、それは完璧主義者ゆえに自分のイメージ通りのテニスが出来ずに、自分に腹を立てているのであって、相手の態度に左右される選手ではないのだ。もちろんサフィンは勝利した余裕もあったろうが、決勝戦がそれまでのヒューイットの試合のように険悪な雰囲気にならず、お互いが敬意を持って戦いあう好試合になりとてもよかった。今年の全豪が全体的に素晴らしかったために、最後を汚されずにすみ、とにかくよい気分で終わりを迎えられたことは一観戦者として見ても喜ばしい。
年齢と実績・ランキングを考えると、今のヒューイットに意見できる人間は限られている。海外のメディアに叩かれたくらいではヒューイットはその態度を改めないだろう。しかし、ヒューイット、もう少し大人になってくれないかなあ。せめて相手のミスに対するガッツポーズだけは止めてくれないか。みんな君のことを尊敬したいのだよ、自慢したいのだよ。コートの上での振る舞いで失望させるようなことはやめてくれ。立場が上がると許される自由は制限されるようになる。これはどの世界でも同じだ。ジュニアたちに「ヒューイットがしているから」と相手を挑発する行為を正当化させるようなことは止めてほしい。極東の小さな島国の一テニスファンの戯言なのかもしれない。でもそう思っているファンは多いと思うぞ。
ヒューイット婚約のニュースが流れている。クライシュテルスとの破局から半年も経っていない。ヒューイットは誰かから応援してもらってエネルギーを得ないと戦えないタイプなのかもしれない。試合中も必死で自分を鼓舞している結果があのガッツポーズなのだということもわかる。でももう少し考えてほしい。
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