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第七房 コリアのカウンターショット (2004/07/25)

 

2004年の全仏の録画ビデオを再鑑賞して、改めてギジェルモ・コリアのテニスに魅了された。

コリアのスイング自体はけして美しいとも早いとも感じない。如空はスイングスピードが速くてフォームの美しい選手(アガシ・フェレーロ・フェデラー等)に惹かれるので、今までコリアにはあまり注目していなかった。しかし、コリアのボールの拾い方、カウンターの打ち方に次第に引き込まれていく。あれは、如空がシングルスで相手に攻められて時に「こんな風に拾って、返球できたら」とイメージしているプレイそのものなのだ。前後の動き、特にドロップショットの処理に悩みを持つ私にとって、あの動きはまさに理想、あんなふうに相手のドロップショットを切り返してエースを奪いたい。テニス技術書もコーチのレッスンもドロップショットの打ち方を教えることはあっても、ドロップショットの打ち返し方、切り返し方を教えることはない。ドロップショット処理に悩みを持つものにとってコリアは素晴しいお手本だ。

クレーでのコリアはフォアサイドの短い球を拾いに行くとき、軸足になるはずの右足を前に出してスライドする。通常なら、フォアハンドで前に詰めるときは右利きならスタンスをスクエアに構えて左足を前、右足を後ろでサイドステップして前進して、そのままスイング。遠い球をとるときはクロスステップでダッシュして、最後に左足を出してスライドしてそしてフォアハンドスイングが普通のステップだ。しかし、コリアは右足と右腰を前に出し、上半身は逆に左手・左肩を前に出し、上体をひねって、捻り戻しでスイングしてドロップショットを拾う。小さなワイパースイングからヘビートップスピンをかけて短めのループショットでオープンコートに切り返す。ストレート・ショートクロス自由自在。相手のいるところを良く見ている、しっかりとオープンコートに返球している。ボールにそれほどスピードがなくても、相手から遠いところに打っているのでしっかり決まる。
バックハンドでの短いボールの処理もコリアは素晴しい。両手打ちバックハンドの弱点は片手打ちに比べて短いボールの処理が難しいことにあるといわれる。コリアはしかし、こちらは基本通り右足を前に出し、スクエアスタンスのままスライドさせてボールに追いつきフォア同様小さいワイパースイングでストレート・ショートクロスにヘビートップスピンを返球する。肘を上手く折りたたんで非常にコンパクトなワイパースイングを行う。男子選手の両手打ちバックハンドはヒットのとき肘を伸ばすタイプが多いので、このコンパクトなバックハンドワイパースイングというのは意外とお目にかかることがない。
もちろん、あのプレイはショットだけでなく並外れたフットワークと反応の速さが必要で、アマチュア愛好家が簡単にまねできるものではないことは良く理解しているが、理想のイメージがあるということは大切なことだ。コリアに感謝。

コリアは、相手を本当に良く見ている。常にオープンコートにボールを打っている。ストレート、クロスにしっかりと打ち分け甘くセンターに入ることが少ない。またフォアもバックもしっかり肩を入れてから打っているので、クロスかストレートかコースを読みにくい。どれもテニスの基本だが、逆に基本が以下に大事かということを教えてくれる。
相手に深い球を打たれて、ロブで返すときもラインぎりぎりの絶妙なところに打ち返す。アングルの強打もショートクロス、あるいはポール巻き込みのストレートで切り返す。ドロップショットを拾われてもロブボレーで相手の頭を抜く。あんなふうに相手のショットを切り返せればどんなに素晴しいだろう。同じカウンターショットの名手としてヒューイットやナルバンディアンが上げられるが、彼らのあのライジングの低い軌道のカウンターでなく、トップスピンで相手のいないところに落とすところがコリアの個性だ。
今年の全仏QFでのモヤ戦の第一・第二セットはまさにコリアのテニスを象徴している試合だと思う。モヤが強打でガンガン攻めてきている。それに対しコリアは緩急をつけたスピンのカウンターで対抗する。相手にリードされても崩れない、落ち着きを失わない、最後に集中して一気に逆転して7-5でセットを奪う。相手は「俺の方が攻めているのになぜ決まらない、なぜ負ける」と思うことだろう。

アルゼンチンのコリアは同国のナルバンディアンと共にジュニア時代から注目されていた選手だ。去年の全仏でアガシを破り、一気にメジャーになる。しかし、去年から大阪では地上波で全仏を決勝しか放送しなかったのでこの試合を観戦することが出来なかった。その年の全米オープンQFでまたアガシに当たり、初めてTVでコリアの試合を観戦することが出来た。バックハンドダウンザラインとドロップショット&ネットを武器に攻めるコリアだが、ハードコートではアガシの方がまだ勝っていた。
今年はクレーシーズン大活躍、フェレーロが不調であったため、モヤと共に今年のクレー王者の本命視されていた。容姿がモヤに似ていることから「リトルモヤ」と呼ばれることがあるが、その元祖スペインのカルロス・モヤを全仏QFで破り、ローランギャロスのタイトルを取るだけだったはずのコリア。しかし悲劇が決勝で彼を襲う。

セットカウント2-1リード、コリアペースの決勝戦第4セットで足のケイレン発生。
実はコリアは数年前、ドーピング疑惑をかけられ、それ以降薬品の使用に神経質になっている。疑惑以降、「あんなモノにたよらなくてもやれるってこと証明したかった」と栄養剤・サプリメントの類を一切取らなかった。試合中も飲むのはミネラルウォーターだけ。このことが直接の原因なのかケイレンを起こしやすい体質になってしまっている。敗北の記者会見でこのことを涙ながらに語るコリア。
しかし、実際にはコリアは試合中マッチポイントを握っている。トレーナーに15分ほどで回復するといわれたコリアは第4セットを捨てた。ほとんど動かずプレイし、チェンジコートではバナナと水をひたすら取り続ける(共にケイレン防止に有効)。そして、第5セット、完全とはいえないまでも走れるようになったコリアは早い段階でフラットの一発勝負でポイントを稼ぎ、やりにくそうなガウディオを尻目に6-5にして二度もマッチポイントを握る。しかし、ここでとりきれずに最後は6-8で落とし、敗れる。

フェレーロも全仏タイトルを取るのに苦労した。コリアにもまたこの試練を乗り越えて欲しいものだ。


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