2004年 テニス界10大ニュース ベスト2
ウィリアムズ・シスターズとベルギー・コネクションの失速
ロシア勢の台頭も、ダベンポートとモーレスモの1・2フィニッシュも、それは結果でしかない。原因はこれ。2002年からグランドスラム決勝を連続4大会姉妹対決にした妹セレナと姉ビーナスのウィリアムズ姉妹、そしてその後3度GS決勝をベルギー人同士の対決としたジスティーヌ・エナン・アーデンとキム・クラシュテルス、ヒンギス引退後女王の座を引き継いだこの4強が4人ともそろいもそろって不調に終わったのだ。男子はトップ選手で不調に泣いたのはフェレーロ位なものだが、それに対して女子のこの大混乱は一体なんだったのだろうか?
年頭の全豪こそベルギー勢同士の決勝となり予想通りの展開で幕を開けた2004年。これで誰しもがウィリアムズVsベルギー勢の4つ巴の熾烈なトップ争いが今年は繰り広げられるだろうと予想したはずだ。2003年のエナンとキムはセレナとビーナスが戦線を離脱している間に台頭してきた感があった。現に2003年のウィンブルドンではベルギー勢を押さえてウィリアムズが6度目の姉妹決勝を実現し「WTA最強は私達」と強烈にアピールしている。ベルギー勢は万全の体制のウィリアムズのいる大会で彼女達を倒してこそ、No1を名乗れるのだ。特に2003年の女王エナンは2002年の女王セレナとは色々因縁がある。2003年の全仏準決勝のトラブルしかり、である。
2004年の全仏は真の女王は誰か、その決着をつける最高の舞台になるはずだった。
しかし、エナンはその後GSでセレナの元まで勝ちあがってくることは出来なかった。そしてセレナは全仏と全米で天敵カプリアティ相手に死闘の末敗退してしまう。不運なジャッジミスにも泣かされた。そしてウィンブルドンと最終戦ツアー選手権では決勝に進みながら姉ビーナスでもエナンでもない、シャラポワに敗退してしまった。ツアー選手権では途中で古傷が再発し、コートに立てる状態ではなかったという。
不運に見舞われたが、それでもセレナはウィンブルドンとツアー選手権で決勝まで行った。エナンは全豪を取り、オリンピックも金メダルを取った。深刻なのはビーナスとキムである。
ビーナスは今年一年に関しては完全に「並み」の選手になってしまっていた。かつての相手を圧倒するサーブとストロークの強打、そして得意のドライブボレーは完全に消えている。フォアハンドに至っては腰の回転が使えていない手打ちだなどと、まるで初心者に対するレベルの指摘が新聞紙上でなされている。
そしてキム・クライシュテルスは全豪の最中から怪我に泣かされ、その後一年間完全にシーズンを棒に振ってしまった。ヒューイットの応援席でしか姿を現さないキム。そして来年からはそのヒューイットの応援席にも姿を見せなくなってしまう。4強という言い方は他の3人に対して失礼だという言い方もある。なぜならクラシュテルスはまだグランドスラムのタイトルを取っていないのだ。
今年大活躍したロシア勢もダベンポート・モーレスモ・カプリアティも最盛期のウィリアムズやベルギー勢より強いのだろうか。4強の彼女達より素晴しいテニスをしたのだろうか。そうは思えない。セレナもエナンもビーナスもキムも自分で勝手に弱くなってしまったのだ。明らかにモチベーションが下がっている。ロシア勢のような勝利への飢え、ダベやカプのようなベテランらしい落ち着きとここぞというときの集中力の上げ方、それらが4人には欠けている。いや去年までは持っていたのだ。なぜここにきてモチベーションが下がるのだ。
怪我に病気、プライベートな事情とテニス以外の部分で不本意であった年でもあった。来年こそはこれが「女子テニスの最高峰だ」という素晴しいテニスを披露してWTAを盛り上げて欲しい。