第137房 「ドロップショットはスライスロブ」 (2009/08/30)
先週の日曜日のシングルスの練習はドロップショットからの展開だった。
相手がベースラインからボール出しをして、それを対戦者がドロップショットで返球、相手はネットに猛ダッシュしてそれを拾い、そこからフリーの展開である。
「ドロップショットを拾うにはまずネットを越すことが先決です。ですが少しでも余裕があるときはコースに気を配りましょう。ワイドに落ちたドロップショットはショートクロスかストレートです。まあ、ショートクロスの方が簡単ですね。ネット際からストレートに打つのは高さ・軌道・タッチ・回転等、とても高度な技術が必要とされます。ですがショートクロスを読まれて相手に先に動かれているときは、タメを作ってストレートに打つことも時には必要です。クロスに打てばストレートを抜かれます。ここは厳禁です。」
「ドロップショット自体一発で決まるのはサイドライン近くに落としたときですが、拾われた場合、逆襲しやすい場所でもあります。それに比べてセンターに落とされたドロップショットは走る距離が短い分、追いつきやすいですが、そこからどう展開するか悩むところです。センターに深く返せばロブがきます。ワイドに打てばストレートパスかショートクロスパスを狙われます。センターのドロップショットをショートクロスに返球できればいいのですが、サイドラインにいるときより距離が短いのでリスクは高くなります。センターにドロップショットを落とし返すのも手です。どちらにしろこれというセオリーがないところです。だからあまりネットプレーが上手でない相手をネットにおびき出すにはセンターにわざとドロップショットを落とすという選択肢もあります。そのことを頭にいれて展開してください。」
とコーチが与えたテーマはあくまでドロップショットをどこに打つか、どこに打ち返すか、という点であった。しかし・・・・如空はドロップショットが下手なのだ。
如空がドロップショットを打つ番になると練習が止まる。ドロップショットがネットを越えないのだ。ネットを越えるときは深く行き過ぎてドロップショットにならない。相手はネットダシュすることなく、落ち着いてハードヒットしてくる。ドロップショット側が7ポイントを取ると交代なのだが、なかなか如空の番がおわらない。右親指の押さえを工夫して、ようやくドロップショットがネット際に落ちるようになった。なんとか7ポイントを取って次の番の選手交代した。次の人は如空とは対照的にドロップショットがとても上手い。
「ほら、ドロップショットの軌跡をよく見てみてください。」
とコーチが手招きして如空を呼び、ドロップショットの達人の技を指差して解説する。」
「ネットよりかなり高い位置までボールが上がっているでしょう。でもボールが深くならずにネット際に落ちる。なぜだかわかりますか。ボールの弾道軌道の頂点が自分のコートのど真ん中、サービスラインよりやや前あたりを狙っているからですよ。だからネット際に落ちるのです。でも如空さんがさっきまで打っていたショットはまっすぐネットまで飛んでくる。そこからボールが失速して落ちてくれるのを待っている。でもそれではボールは深くなってしまうし、勢いがなければネットにつかまるのです。ボールの勢いは上に逃がして、水平方向の距離を短くするのです。ドロップショットはスライスロブなのですよ。スライスロブの頂点をネットより自陣側にすることでネット際に落とすのです。如空さんは普通のスライスストロークの軌道でドロップショットを打ってしまうからネットするか深くなってしまうかになるのです。もっと高く打ってみてください。ボールが高いと受ける側は一瞬ボールが深く来るのではないかと思って、ネットダッシュへの最初の一歩が遅くなります。これも効果があるのです。ボールのスピードを落として距離を短くするのでなく、ボールを高く上げて短く飛ばすのです。スライス回転をかけていればボールが高く上がっても、バウンドはネットより高く弾まなくなりますから叩かれる心配もありません。スライスロブですよ、ドロップショットは。」
スライスロブなのですか、ドロップショットは。なるほどねえ・・・・ということで最後のゲーム形式でもドロップショットからの展開を色々試してみる。如空がスライスロブで打つと高く上がりすぎていかんわ、勢いを上に逃がすとはいえ、上げすぎだ。もう少しタッチを学ばなければね。などとドロップショットに夢中になっている間に練習が終わった。