第113房 「ポイントにかかる時間を短縮せよ」(2007/08/23)
今日のシングルスの練習はコントロールに重点が置かれた。まずはサイドラインとベースラインの交点にかごを置いて、そのかご狙ってストロークを打つ。フォアのストレート、バックのストレート、フォアのクロス、バックのクロスの4連打でひたすら狙う。まあ、当たらないこと。ピンポイントでターゲットを狙うと短くなる。
「もっと深くに打ってください。サービスラインとベースラインのど真ん中に落ちていますよ。ターゲットのさらに奥を狙うつもりで打ってください。そのためには軌道を高くしなくてはいけません。ネットを通る位置をもっと上に上げてください。」
うむ・・・ネットの上を狙うとボールが深くなるが、今度はコースの角度が甘くなる。難しいな。如空は3球ほど当てて、他の人より成績は良かったのだが、「まだまだです」とコーチはにべもない。
続けてサービスラインからチャンスボールでターゲットを狙う。今度はさっきより楽だ。かなり高い確率で当てられる。でもね、それがなぜ試合でミスるかな。メンタルも鍛えないと。
その後延々とストロークのラリーをした。
「如空さん、フォアのトップスピンを打つときはねじ伏せないと入りませんよ」
とコーチは言う。
「上に振り上げるじゃないですか。グリップも面も。で、そのまま上でフィニッシュすると面が上を向いてオーバーしやすくなっているのです。ボールを捕らえて、上に振り上げた後、面を下に向けて左腰にグリップを持ってきてください。左肩でなく左腰です。よくプロの選手がしているでしょう。侍が腰に刀をしまうような感じで。そうすれば打つときの面が地面と垂直になりやすくなります。安定します。ムーンボールよりもハードヒットしてスピンを打ちたいときは押さえ込むのですよ。上に振り上げてそのまま脱力すると面が上を向いてロブになりやすいです。それでハードヒットすればオーバーします。わかりますね、この理屈。」
理屈はわかるのですけどね、コーチ、強引に押さえ込みにかかると疲れること、体力的にきついですわ。これを連打で続けるのはきつい。
パス対ネットの練習をした後、2ゲーム先取のゲームをした。1つ勝ったあと、コーチと対戦した。
今日はストロークの調子がいい。フォアは右肘を前に出してから肩を回す、バックは左肩を一度引いてから左肩を前に押し出す。最近これを意識してストロークが安定している。そこに来てさっきのストロークの練習が効いている。フォアのフィニッシュで押さえ込むこと意識するとボールがベースラインで落ちてくれる。ボールが入る、ラリーが続く、ストローク戦になる。フォアのハードヒットのラリーの末に放ったショートクロスがウィナーになった。如空のサービスゲームで30-30である。勢いよく肩をまわしてサーブを打ったらセンターに入ってエースになった。次のサーブをコーチは力んでリターンでネットにかけた。コーチ相手にサービスゲームをキープした。周りから「おおお」という驚きの声が上がる。このコーチはレッスン生にポイントは与えてもゲームは与えない人だ。ポイントが劣勢になるとフェデラーのようにギアを上げてあっという間に逆転する。それがいつものコーチのゲームである。それがミスもあったが如空が取ったのでみんな驚いているのだ。でも一番驚いているのは如空のほうである。
次のコーチのサーブ、本気ではないサーブ、それでも十分に速くて威力のあるサーブ、そのサーブをまあ、きれいにリターンできた。調子に乗ってセカンドサーブを叩いてネットに出たらロブで抜かれ、パスで抜かれた。コーチがキープして1-1、次の如空のサービスゲーム、30-30までいったが、そこで如空の下半身にどっと疲れが来てショットを打つときに踏ん張れなくなった、コーチが二ポイントをきっちり取って2-1で当然のごとくコーチが勝った。
「如空さん、この前のシングルスの大会、予選突破して本選に上がったそうですね。」
試合の後コーチが声をかけてくれた。あれは対戦相手の自滅もあっての話ですと如空は言ったが、
「相手を自滅させるためにはこちらが安定していなくてはなりません。如空さんが崩れないから相手が崩れるのです。ショットが安定してきた証拠ですよ。」
と言ってくれた。だが、
「このままでは本選で勝ち進めませんよ。」
とも言う。
「安定すればラリーが続く、打ち合いになる。ベースラインからのストローク戦を延々つづければ足に疲れが来て動けなくなります。そして精神的な集中力も途切れます。さっきの私とのゲームも最後にばてて、集中力が切れて、ミスしたでしょう。」
「勝ち進もうと思えばもっとポイントを短い時間で取ることを覚えなければいけませんよ。サーブからの3球で決めるフォーメーションを使うとか、ネットに出て粘りを断ち切ってポイントを取るとか、そういうことをして体力を温存しながらポイントを取ることを使っていかないと、気合だけで打ち合っても、足がついてきませんよ。そして疲れると集中力が切れます。ミスします。そして負けてしまうのです。ストロークを打つのが好きだからってストロークだけでは勝ち残れないのですよ。ジュニアですらそうなのですから、まして体力のない社会人テニスではなおさらです。」
おお、コーチ、この一ヶ月ほど如空が漠然と感じていることを見事に見抜いていたのですね。あなたはすごい人だ・・・・
速攻だ、速攻。体を鍛えて体力をつける他にもう一つ方法があった。速攻を身に付けてポイントに要する時間を短縮するのだ。そうすればもう一つくらいは勝てるようになるかもしれない。よし、速攻の練習だ。フォーメーションだ、ネットだ。リスクを背負ってでも時間を短縮するのだ。