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第096房 「4スタンス理論とテニス」(2007/08/02)

 

男子プロテニス現No1のフェデラーのフォアハンドは他の選手とはスイングが違うと、前々から漠然と感じていた。特に気になっているのはヒット直前のモーションで両手両足が伸びきってまるで大の字開いているかのような状態になっていることが多い事。脇が開いていて、大リーグのランディ・ジョンソン投手のサイドスローのようなスイングをする。もう一つ、ワイドに大きく振られたとき、オープンスタンスで取ることが多いのだが、フェデラーはクローズドスタンスでもよくとる。だけでなく、体重移動して前足(つまり左足に)に体重が乗り切ってフィニッシュすることが多く、高くて深いボールを後ろ足一本で立って打つときも前足をサッカー選手のように振って打つことが多い。いまどきの選手のベースライン上での動きとはやや違う動きをするので、いつも不思議なフォアだと感じていた。
先日、とある本を読んで、その違いを知るきっかけがここにあるのではと思うことがあった。
「キミは松井かイチローか 4スタンス理論」廣戸聡一著・池田書店
これは野球の本だが、選手のタイプを重心のあり方で4タイプに分けて、タイプごとにその特色と目指すべき方向を示している。一つには立っているとき・動いているときの重心のあり方で、つま先に重心があるタイプをA型、踵に重心があるタイプをB型と分類している。そしてもう一方で足の内側に重心がある内股タイプをT型、足の外側に重心がある蟹股タイプをU型として分類、その二つの分類の組み合わせで、AT型、AU型、BT型、BU型の4タイプに大きく野球選手のタイプを分けて、それぞれに理想のモーションをバッティング、ピッチング、フィールディング、ランニングで示している。
このうちT型とU型の分類に関しては、分類自体がはっきりとしておらず、あまり意味のない話だと思うのだが、A型とB型の分類は「なるほど」と感心させられる部分が多々あった。そして、これはテニスに十分応用の聞く話しだと思った。A型を「つま先重心型」としB型を「踵重心型」としよう。要は力を入れて動くときあるいは物を動かすときに足のつま先と手の指先に力を入れるタイプが「つま先型」で、足の踵と手の掌に力が入るタイプを「踵型」と思えばよい。上記の本はこんな安易な分類をしているわけではないが、如空なりの解釈はこういうことである。そしてこの本の野球理論をテニス理論に置き換えてみた。あくまで如空なりの考え方である。
「つま先重心型」
レディでは前傾姿勢でお尻を突き出す。踵を浮かしてつま先に重心が乗っている。ボールを追うときは、ボールの来たほうの足の膝をまずボールに向けて動かす。グリップは指で握り、薬指側より人差し指側主導である。
テイクバックは後ろの手でラケットを引き、肘を高く上げる。前足、前腕でラケットを引っ張り出す感覚のスイングになる。腰の回転に間をおかず、肩を回転させる。スクエアスタンスのとき、前足が軸の中心になる。打点は前足のさらに前。体重移動では前足に体重を乗せきる。前傾姿勢。スピンをかけるためラケットを振り上げるとき、体も上に伸び上がる。両手打ちバックハンドでは前の手が主導で振り子のスイングになる。
ネットでは肘は曲げてヘッドを落とした構え。
サーブではトスアップ後のトロフィーポーズで足を引き寄せず、体もひねらない。
「踵重心型」
レディでは背筋を伸ばして上体を起こす。膝を前に突き出し踵を地面につけて、重心は踵にある。ボールを追うとき、ボールの来たほうの逆の足でけって、体を押し出して動く。グリップは掌から握り、人差し指側より薬指側主導である。
ストロークでは、テイクバックは前の手でラケットを押し下げ、肘を低く位置させる。後ろ足、後ろ腕でラケットを押し出す感覚のスイングになる。腰を回した後も肩を残してためを作ってから肩をまわしてスイング。スクエアスタンスのとき後ろ足が軸の中心になる。打点はへその前。体重移動しても後ろ足に体重を少し残す。後ろに反る感覚。スピンをかけるためラケットを振り上げるとき、体は逆に下に沈みこむ。両手打ちバックハンドでは後ろの手が主導でレベルスイングになる。
ネットでは肘を伸ばしてヘッドを立てた構え。
サーブではトスアップ後のトロフィーポーズで足を引き寄せ、体をひねる。
実際にはこの「つま先重心型」と「踵重心型」の二つの特徴を時と場合に分けて使い分けていることだろう。フォアとバックで違うとか、低い打点と高い打点で違うとか、そんな形ではないだろうかと思う。だが、なかなか面白い考え方だと思う。ストロークのフォアハンドに関しては男子プロの多くは「踵重心型」で女子プロの多くは「つま先重心型」だと思うのだがエナンのフォアは「踵重心型」でフェデラーのフォアハンドは「つま先重心型」と分類すれば、エナンのフォアが他の女子と違い、フェデラーのフォアが他の男子と違う意味が良くわかる。もちろんこれらは仮説であって、それを証明する手段を如空は持たない。だが自分で試してみる価値はある。金曜日と土曜日の連休にダブルスのレッスンを取って、試してみた。
如空は「つま先重心型」の特徴を多くもっているので、まずは「つま先重心型」の特徴のテニスを意識してやってみた。フォア・バック・サーブ・ボレー、どれもが好調で「おおお!自分にあったテニス理論についにめぐり合えた!」と感動していたら、土曜日の練習でボレーがぼろぼろだった。日曜日に取ったシングルスの練習ではボレーだけ「踵重心型」でやってみようとおもう。
身体のメカニズムを研究し、そこで発見された理論(つまりコツ)を実践して、それを上達の助けとする過程は如空の好むところである。スポーツは体でするもので、あまり頭で考えすぎるとよろしくないという理屈が一方であり、それはそれで一理あるとは思う。だが、面白いのだから止められない。プロではなく、あくまで趣味だからこそ、スイングや体の動きを研究して、理論として仮説を立て、それを実践してみて検証する。その繰り返しが、試合に勝つということ以外にスポーツにおける楽しみを提供してくれる。如空にはそれが楽しい。
野球というスポーツは日本においてメジャーであるだけでなく、歴史が長いので、バッティングにしてもピッチングにしてかなり論理的な研究がなされている。手塚一志氏の野球におけるバッティング理論とピッチング理論も独自の発想と論理的な根拠付けでとても面白かった。これをテニスに応用しようといろいろ自分なりに研究したものだ。だが、今回はその手塚氏の数々理論や高岡氏の「二軸理論」に匹敵する興味深い理論であった。当分この研究に没頭してみよう。

 

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