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第074房 「ネットまでの距離」(2006/05/13)



「ダブルスでネットにアプローチするとき、ファーストボレーは外側の腕で打つよう心がけてください。ディースサイドなら右利きはフォアでボレー、アドサイドならバックでボレーです。正面に来たら体をセンターに捌いて外側の面で打ちます。ここで外側に体を回り込ませて内側の面でボレーを打つとセンターに穴が開いて、次センターを抜かれます。」
今日は久しぶりに演説好きのコーチのダブルスレッスンである。彼の講演にしばし耳を傾けよう。
「上手い人なら注意するのはディースサイドです。かっこつけて正面にきたボールをバックハンド逆クロスで打ったはいいが、体がワイドに流れていてセンターを抜かれることがよくあります。しかし、皆さんはまだまだヘタですね。正面に来たボールをフォアで打っているでしょう。そういう人が気をつけるのはアドサイドです。アドサイドにおいて正面に来たボールを回り込みフォアボレーで処理すると、次にセンターに穴をあけて抜かれることになるのです。」
コーチ、ワイドは開けておいて良いのですか?
「深いクロスへの返球はセンターからでも届きます。手が届かないのはショートクロスです。でもショートクロスはセンターに突き球を打つより難しいです。相手の選択肢の簡単な方を潰しておいて、難しいほうを選ばせるのが戦術の基本です。」
と言うわけでせっせとアプローチの練習をして体を温める。

「アプローチする人はポジションを確認しながら前に出てください。目指すのはコートの真中ですよ。サービスラインはコートの真中ではありませんよ。」
へ?そうなの。
「ベースラインからサービスラインまで歩いてみてください。何歩歩きましたか?」
6歩でした。
「次にサービスラインからネットまで歩いてください。何歩でしたか?」
7歩でした。
「そうです。サービスラインからネットまでの距離はベースラインからサービスラインまでの距離より一歩多いのです。だからコートの中央にポジションするのであればサービスラインから半歩ネット側に進んだところに立つのです。ここが並行陣の定位置です。ここからあとどれだけ前に出るかはその人のスマッシュの力量によります。スマッシュが得意でどんなロブも下がりながらのジャンピングスマッシュで返せるという人はネットにべた詰めすればよいし、オーバーヘッドは絶対に打たないと決めている人はここから前に出てはいけません。」

体が温まったところで並行陣対雁行陣の陣形練習に移る。今日のお題はショートクロス、雁行陣後衛はストロークでひたすらセンターに突き球を打ちつづけ、相手並行陣をセンターに寄せたらショートクロスで開いたワイドを狙いウィナーを奪うという、成功すれば無茶苦茶格好いい戦術である。しかし、簡単には成功しない。相手をセンターに寄せるところまで上手くいくが、仕上げのショートクロスが決まらない。
ショートクロスへは平面的に角度だけを気にして打っても入らない。センターへ打つ球よりショートクロスに打つ球はネットが高くラインまでの距離が短い。それを頭に入れながら軌跡をイメージして打っているがそれでも入らない。
「ラインまでの距離とネットの高さだけでなくネットまでの距離を計算に入れていないから入らないのです。」
とコーチはいう。
「センターに打つ球よりショートクロスに打つ球はエンドラインまでの距離が短く、ネットが高い、だけが違いではありません。ネット上の通過点までの距離を比較するとセンターに打ったほうが短くてショートクロスに打ったほうが遠いのです。これを計算に入れないから入らない。ショートクロスはネットを越えてからエンドラインまでの距離は短いが、打点からネットまでの距離はセンターより遠いのです。だからセンターに打つようにボールの軌跡の一番高いところをネット上に持ってくるとラインをオーバーしてしまうのです。ボールの軌跡の一番高いところがネットより内側に来るようにして打ってみてください。」
おお、なんとなくショートクロスが入って来た。
さすがですねコーチ。

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