第073房 「新年早々振り回し」(2006/05/13)
「今日は寒いので、走り回って体を温めてもらいましょう。」と年頭の挨拶が終った後にシングルスのコーチは徐に言った。
フォアとバックへ交互に厳しい球をコーチが出す。右に左に走り回ってボールを拾う、所謂「振り回し」の練習が始まった。
「フォアはオープンスタンスで取りに行って、打つときの軸足の蹴りでセンターに戻る。逆にバックはクローズドになってもかまいません。打ち終わってから後ろ足を外側に出して、それで外側をけってセンターに戻るのです。」
「ふくらはぎで踏ん張っていては動きが遅くなりますよ。太ももで踏ん張るんです。太ももの後ろ側に意識を集中させて体幹部を回して打つんですよ。」
「振られてもがんばってクロスに深く返球してください。楽してストレートに打つと、そこに相手が待っていてオープンコートに打たれますよ。ショートクロスもだめです。さらに厳しい角度をつけて返球されます。クロスに深く打つんです。苦しくてもがんばってクロスです。」
コーチの声は耳には届いても頭の中に入っては来ない。自分の番が終ると次の自分の番が回ってくるまで、皆肩を大きく上下させて呼吸を整えるだけで精一杯だ。
振り回しの後もきつい練習が続く。今度はコーチが厳しい球を球だしして、それを拾ってからの練習生同士1対1でフリーゲームである。クロスに深く打たなければすぐに速攻をかけられてポイントを失う。逆にこちらが振られた相手を攻めるときはすぐに仕掛けないとチャンスを失う。これがまた決まらないのだ。
「如空さん、相手のリカバーのボールを待ちすぎです。もっとコートの中に入って、踏み込んでライジングで打たないと。ボールを落としてから打っているので相手が戻ってきてしまっているじゃないですか。だからポイントが取れていないのです。相手を振ってオープンコートができたら、打つタイミングを早くしてオープンコートに打ち込むんですよ。速くて強い球を打とうとしてボールを呼び込んで待つと、その間に相手が戻ってきてしまうじゃないですか。」とコーチが言う。振り回しの練習で足がガタガタなのだ。そのため前後の動きが遅くなっているのだ。そのため楽してボールを待ってしまう。でもそれでは練習にならない。歯を食いしばってステップインして前で打つ。苦しい。しんどい。この練習が実を結ぶ日がいつか訪れるのだろうか。
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