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第024房 「腰を切れ」(2005/05/07)



最近「腰を切れ」とシングルスのコーチはうるさく言う。

「腰を切る」とは最近の人は「ジャックナイフ」として知られる腰の逆回転で肩を回す体の使い方である。
右利きの人がバックハンドを打つとき、胸を左に向けてターン、正面に向けてヒット、という過程で肩を回す。このとき腰の動きは本来は肩と同じく、ヘソを左横に向けてターン、正面に向けてヒットとという過程を経る。腰が先に回り肩が腰より少し遅れて回ると威力のあるスイングが出来るといわれる。野球のバッティングもゴルフのスイングも同じ原理である。
しかし、テニスの場合、いろいろな打点で打てなければならない。横方向に遠い球、あるいは食い込まれた球(打点が足元に近い球のこと)、高い位置の球を打つ場合に、腰を肩と同じ方向に回すといい球が行かない場合が多い。「ドアスイング」と言って片開きの扉がバッタンと開くように、体が力なく回ってしまい、ボールに力が伝わらない。腰を肩と同じ方向に回す体の使い方は、両足で地面をしっかりと掴み、前に体重移動出来るときには有効な体の使い方だ。しかし、足で踏ん張れない高い球、体重が移動している方向とボールの打つ方向が違う横に遠い球、前に踏み込めない足元に食い込まれた球などは、腰を肩とを同じ方向に回すと威力のある球は打てない。
そこで足の踏ん張りを期待せず、体のひねり戻しでパワーを得る。ヘソを正面に向けたまま胸は横に向けて体幹部を雑巾を絞るようにひねる。そしてヘソを正面から横に向ける反動で胸を横から正面に向ける。腰を肩と逆回転させる反動と、ひねられた体幹部の元に戻ろうとする力を利用してラケットを振り、ボールに当てる。
ダブルスのコーチはこれを「腰を回さずにブロックする」と表現し、シングルスのコーチは「腰を回さずに切る」と表現する。ロシアのマラット・サフィンが高い打点をバックハンドで強打するときに使うジャックナイフという打法の腰の使い方だ。

最近、オープンスタンスでのテニスを薦める如空のコーチ陣だが、その背後にある思想というのはどうもこの「腰を切る」と表現している腰の逆回転でのスイングをリカバーでは使えということのようだ。
打点を前で、いい高さでとらえられるときは腰を先に肩と同じ方向に回し、遅れて肩を回す教科書とおりのスイングをするべきである。それは世界中のテニスのセオリーだろう。問題は遠い球、高い球、食込まれた球など自分のベストの打点で打てない球をいかに打ち返すかである。テニスは一球だけ多く相手コートに返球すればいい競技だ。ベストショットを打てなくても、とにかくラケットにボールを当てることが出来たなら、ネットを越して相手コートに入れることを目指す。このときボールを上手くコントロールするためには「腰を切る」と上手くいくとコーチたちは言う。むしろ、足が遅く、フットワークが悪いウイークエンドプレーヤーならば、腰を順回転させて打てるときと同じくらい、腰を逆回転させて打つ場面が試合ではあるはずだと。そして、このバックハンドでよく見られる「腰を切る」動作はフォアでも使うべきだという。
打ちにくい打点で打たされるとき、ただの手打ちになるか、順回転ほどでなくても逆回転でしっかりと腰の入ったショットを打ってリカバーするか。この違いがポイントを握るのだと。

体をひねってから戻す、腰を逆回転させるためには肩のターンとは逆に腰をターンさせておかなければならない。だからスクエアからクローズドのスタンスでは体を捻れないので足をオープンスタンスにしておけということらしい。ただ如空の考えとしてはバックハンドではクローズドスタンスからでも「腰を切る」ことは出来るし、実際には肩と腰を反対に回転させてバックを打つ選手が多いので、バックではクローズドスタンスの選手が多いのだと思っている。

大事なことはスタンスにかかわらず腰のラインを肩のラインが追い越していくことでスイングすること。つまり左右の腰を結ぶラインを左右の肩を結ぶラインが順回転して追い越すことが大事で、その手段として腰が順回転するのがベスト、逆回転がセカンドベスト、腰の回転を伴わなずに、ゆえに肩も回らずに手打ちになるのは極力避ける。
足が弱いウィーク・エンド・プレーヤであればなおのこと、ベストの打点に入れない場合のほうが多い。このリカバーショットのレベルアップが重要であるという点は共通している。そして、その手段として「腰を切れ」といっているのだ。コーチたちの最近の指導を如空はそう理解している。

今日のダブルスの練習で「腰を切ること」ことをうるさいほど言われたので、こちらもかなり意識してリカバーは「腰を切って」打った。フォアはまだまだだがバックハンドはいいボールがリカバーでも返せた。フォアで腰を切るときはグリップをやや薄めにしないと、厚いままのグリップでは上手くいかないようだ。
錘をつけた50Pテンションのピュアドラのストロークでのアジャストもいい感じになってきた。スピンでもフラットでもまずスイートスポットに当てることに集中することだ。そうすればボールはだんだんコントロールできるようになっていく。

先日、シングルスのコーチに言われた「えらそううに構える」リターンを、ダブルスのゲーム形式で試してみた。苦手の両手バックからのフラットリターンでナイスショットが連発だった。リターンエースも取れた。「えらそうに構え」て「腰を切」って打ったらエースになった。「如空さん、それですよ、それ、そのリターンです。」とコーチが嬉しそうに声をかけてくれた。これが両手バックのリターンのコツなのだろうか。もっと研究してみよう。



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