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第019房 「スタッタードステップ」(2005/05/07)



人によって難しいと感じるところは違う。

相手の短くなったボールをベースラインからアプローチショットを放ってネットに付くという一連のアプローチプレイにおいて、如空の仲間達は「アプローチショットが難しい」という。ネットより低いところで打つときは体重移動を伴うコントロール重視のショットで、厳しいところにボールを運び、ボレーで勝負する。ネットより高いところで打てるときはしっかりとスタンスを決めてハードヒットしてウィナーを狙い、しのがれたらそれをさらにボレーで仕留める。このミドルコートでのアプローチショット、実は如空はそれほど苦にしていない。低い打点も高い打点でも。もちろん上級者と呼べるほど素晴しく上手なわけではない、あくまで初中級レベルでの話である。

如空が苦手としているのはその後のボレーである。アプローチ直後のファーストボレーがどうもうまく行かない。ダブルスの前衛のように始めからネットについているときはよいのだが、ベースラインである程度ストロークをしてからネットに行くと間違いなくミスる。ボールをバンドさせてから厚いグリップで打つストロークに体が慣れている状態で、いきなり薄いグリップでボールをダイレクトに打つボレーにスムーズに移行できないのだ。ダブルスでもシングルスでもコーチには同じ事を言われる。「如空さん、ストロークと同じタイミングでボレーしちゃあ駄目ですよ。」と。しかし、体が言うことをきかない。如空はやはり不器用なベースライナーなのだ。オールラウンダーへの進化は難しい。いっそ、厚いグリップのままスイングボレーを打ってやろうかとも思う。

シングルスのコーチが変わり、新しくなったコーチも、如空にアプローチで同じ欠点を指摘する。彼はその修正方法として、スプリットステップを変えてみろという。
「ベースラインでは相手が打つ直前に上に跳びますよね、スプリットステップ。ネットに付いたとき、ベースラインと同じタイミングで相手が打つときにステップすると反応が遅れます。距離が近い分、ボールはベースラインより速く飛んでくるのですから。自分のボールが相手コートでバウンドしたときステップを踏んでみてください。そうすれば反応が後れることはなくなります。タイミングだけだでなくステップ自体も変えてみてください。ベースラインなら上にピョンと飛びますが、ネットでは下にズンと沈む感じで、スタンスを広げて腰をさらに落とすようにステップを踏むのです。そうすれば上手くタイミングを合わせられますよ。」
簡単に言うが、スプリットステップは習慣なので一度身に付いたベースラインでのステップをネットでのみ変更するというのは難しいぞ。体に覚えこませるのにどれだけ時間がかかるか。しかし、それをやらなければアプローチへの道は開けない。体にそのタイミングを覚え込ませるべく練習だ。

ちなみに、このコーチが言う下にズンと沈むネットでのスプリットステップとはスタッタード・ステップと呼ばれるもので、ネットに突進する際、急ブレーキをかけるよう止まってステップを踏むのでなく、スタンスを徐々に左右に広げていくのである。そうすると走る速度は徐々に遅くなり、腰は徐々に沈んでいく。そして、相手のボールを低い視線でしっかりと捉え、ボレーを打つたびに上に浮き上がりがちな腰を、ステップを踏むごとにきちんと低く抑えるというステップと言われる。が、ウィークエンドプレーヤーにはちょっと酷なステップである。太腿がすぐにパンパンになる。テニスは足ニス、足腰を鍛えろって事か。


 


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