第016房 「カマキリスマッシュ」(2005/05/06)
漸く今年の初打ちをすることが出来た。毎年、友人達とコートを取って3日の昼か仕事初日の夜などに初打ちをするのだが、今年は多忙のためそれらには参加できず、今日のダブルスの練習が初打ちになってしまった。
しかし、毎年初打ちは休みボケと寒さのせいで調子が悪いのだが、今年の初テニスはことのほか調子がよい。休みの間に色々考えていたことを今日試してみてのだがそれがみなうまくいった。
その中で、特筆すべき点は今日の練習でスマッシュミスがゼロだったことだ。ゲーム形式ももちろんだが、特にスマッシュの連続ヒットで30球近く打ってノーミスだった。こんなことは今までに無かったことだ。ダブルスの練習でネットの並行陣対ベースラインの並行陣になり、コーチがベースラインからネットの並行陣に対してロブを上げ、それをネットについているペアがスマッシュして、ベースラインの並行陣がそれを拾ってそこからフリーゲームという練習をわがコーチはよくやらせる。その練習でもノーミス。ミスしないだけでなく、クロス・ストレート・逆クロス・深い・浅いが自由自在に打てた。ラリーを続けるためにベースラインの並行陣ペアに向かって返しやすい深いボールを打つことも、相手の頭を越すために浅い位置に叩きつけることもほとんどこちらの思ったとおりに出来た。この原因は「かまきりスマッシュ」が成功したことによる。
如空はテニスをはじめてからスマッシュは基本的に苦手だった。数年経って「ボールの頭を押さえる振らないスマッシュ」を使うようになった。それからはとりあえずネットに付いたときそれほど高くない浅いボールはこれで打てるようになった。しかし、高いロブや後ろに下がりながらのスマッシュ、またはコートの浅い位置に叩きつけて相手の頭を越すスマッシュは中々打てなかった。上手くヒットするときもあるが大事なところではミスしてしまい、試合では使い物にならなかった。シングルスではネットにいながらスマッシュできるボールを落としてフォアで強打するパターンでしのいでいた。
如空のスマッシュミスは当たる瞬間の手首の角度がばらばらで、ゆえに面が上を向いたり下を向いたりでまともにスイートスポットで捉えていなかったことが原因だ。スイートスポットに当たってもオーバーすることが多かった。何故か他の人によく見られる「ネットに当たるスマッシュミス」はフレームショットしない限りは如空の場合は少なかった。フラットサーブは上手く当たるのにスマッシュはなぜ当たらないのかとずっと悩んでいた。
そこで考えた。始めから手首とラケットの角度を下向きに突けてスイングしたらコートに入るのではないかと。去年のシングルスの最後の練習のとき、偶然この形になり、スマッシュが突然入りだしたことがきっかけだった。如空はそれまでサーブもスマッシュもラケットと腕は上に振り上げる、振り上げたラケット面が前方やや下向きなるのでボールは高い打点からコートに打ち下ろされていくのだと考えていた。実際、フラットサーブはそれで上手くいっている。
しかし、スマッシュをふかしてベースラインの中にいれることが出来ない如空を見ていたシングルスのコーチは「ラケットを下から上に振り上げるな。面を下に向けたまま頭の上にラケットをセットしてボールをそのまま高いところから打ちおろせ。」と怒鳴ってきた。そんなことしたらネットするかこちらのコートに叩きつけてしまうではないかと思ったが、コーチに言われたことはとりあえず試すことがレッスンの鉄則。面を下に向けてラケットを上に高く上げてそこからラケットごとボールを捕まえに行ったら相手コートにボールが突き刺さった。
コーチに言わせるとしたから上にラケットを振り上げるオーバーヘッドスイングは、サービスやグランドスマッシュ、下がりながらのジャンピングスマッシュに使うスイングでネットでのスマッシュは上から下に叩きつければいいのだ、ということだった。考えてみれば当たり前のことなのだが、サーブのスイングをコンパクト(テイクバックをなくす)にするスイングというスマッシュの考えに固執していたので、そこに思いが至らなかった。
だが、それよりも如空の興味を引いたのはそのときのスマッシュのグリップだ。「面を下に向けろ」といわれて如空は片手打ちバックハンドのハンマーグリップでイースタンとウェスタンの間くらいの厚い握りでスマッシュしたのだった。バックハンドストロークで打つ面の裏がスマッシュの面になるようなかっこうになる。これなら拳を突き上げるようにグリップを上げると面は下を向く。そこでリストを効かせようと考えずに、そのままグリップごとボールを捕まえに行くとボールが相手コートに向かっていく。面白いのはこのグリップで面を下に向けてラケットを上に上げると体が自然とボールに対して横を向くのだ。当然、フットワークもよくなる。このグリップでオーバーヘッドスイングをすると腕とラケットがカマキリの前足のように見えるので「かまきりスマッシュだな」と仲間達と冗談を言っていた。
今日、あまり深く考えずにこの「かまきりスマッシュ」を使ったが、確実にボールを捉えられるだけでなく、打ちたいところに打てたので、正直びっくりしている。グリップ以外に今日特別の理由があるかもしれないし、明日にはまた不調になっているかもしれない。もう少し研究してみようとも思う。また、このスマッシュでは下がりながらのジャンピングスマッシュや深い位置からのスマッシュは打てない。けして誰がやってもうまくいく万能のコツというわけでもない。
しかし、新年早々、今まで出来なかったことがまた一つ出来るようになった。とても気分のいいスタートだ。
後日、シングルの大会で好調だった「カマキリスマッシュ」を予選リーグでミスして、「やっぱり昨日はまぐれだったんだ」と落ち込んでいた。だが、それはラケットを高くセットして上から下に叩きつけるという原則を忘れて、肩口にラケットをセットしてラケットを振り上げていたからだ。最後の試合でそれを修正して、相手の頭を越す、コートに叩きつけるスマッシュが打ててとても気分がよかった。
おかげで、カマキリスマッシュは親指の付け根がポイントだと分かった。ヒットの時小指から人差し指まで指の側で握ると、脇が閉まり、肘が下がる。手首は折れやすくなり、ラケット面は上を向きやすい。フォアハンドストロークの時はこれでよいのだが、オーバーヘッドスマッシュの場合、これだとボールがふけるか、ラインオーバーしてしまう。親指の付け根の側からグリップを握ると肘が外を向き、脇があき、肘が高く上がり、ラケット面は下を向き、ヘッドが走ってボールの頭を押さえやすくなる。これがカマキリスマッシュの成功のコツだったのだ。当初、不調だったが途中から好調になったのはこれが原因だった。不調のときと好調の時の自分を冷静に観察し、比較して、その違いからうまく行くコツを探し出す作業が効果的だ。
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