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第七房 「ボレーボール」(2004/11/14)

 

何年前のことだったか忘れたが、所属していたサークルが団体戦に出場するので、その前にとあるサークルと大会と同じルールで練習試合をしたことがある。尼崎駅前のインドアコートでダブルスをした。そのとき「大阪市旭区最強ペア」と呼ばれる女ダブペアと対戦してボコボコにやっつけられた。

彼女達はけして若いとはいえないペア、けしてフットワークがいいとはいえないペア、けしてサーブもリターンも強いとはいえないペア、大人になってからテニスを始めたペア、しかし彼女達は強烈に強いペア。
彼女達はリターン以外の全てのボールをバウンドさせずにボレーで返球する。あれはネットプレーではない。我々がコーチに「絶対そこに立つな」と厳命されるベースラインとサービスラインの間、通称「デッドゾーン」でストロークの深い球をダイレクトで返すのだ。Volley(ボレー)とはボールをダイレクトで打つことである。サッカーでも空中にあるボールをトラップせずに打つとボレーキック・ボレーシュートになる。バレーボールはVolleyballでダイレクトにボールを打ち合う競技のことだ。彼女達のしていたテニスはまさにラケットを使ったバレーボール、いや「ボレーボール」である。どんな球も壁のごとく打ち返してきて、じりじりとネットに詰めてくる。やがてやることがなくなりロブが上がったところをスマッシュで決める。何故かスマッシュが異常に上手いのだ。特にペアの片方は学生時代にバレーボールの選手だったそうで、身長も高く、目線より高い球は全てスマッシュで打ちこまれた。同じオーバーヘッドでも、サーブは入れるだけのサーブなのに、何故かスマッシュは完璧な打ち込みなのだ。
ゲームを取るどころか、ポイントすら数えるほどしか取らしてもらえなかった。レディーステニスの恐ろしさをいやというほど教えられた試合だった。

そのときの旭区最強ペアのデッドゾーンでのボレーを今でもよく覚えている。スタンスを前後に広く取り、後ろ膝をコートにつけ、ラケットの面もグリップもコートすれすれの低い位置にセットし、しかし上体はしっかり起きており、その形でぴたっと止まる。陸上のスプリンターがクラウチングスタートで腰を上げる直前のようなフォーム。ボールが来る前にその体制が出来ており、ボールを捉えたときも動かない。壁のように止まっているまま、ボールだけが打ち返されている。高い打点からの打ち込み対してもぶれることがなかった。

今日、テニスをしているときに、その旭区最強ペアのボレーをふと思い出した。ダブルスの練習で、相変わらず、サーブとストロークがいい感じなのに、ボレーが決まらず、腐っていたところで思い出した。仲間達と後半ゲームをしたとき、その旭区最強ペアを何故か思い出し、サーブ&ボレーのファーストボレーで同じフォームをしてみた。

とてもいい感じでローボレーが返球できた。

今まで如空はローボレーを打つ前に止まって打っていなかった。走り込んで打っていた。姿勢が低いつもりでも、実際は低くなろうと腰を下ろす過程でボレーを打っていた。面を作ってボールを捉えているのでなく、面を作りながらボールを打っていたのだ。体制を作り、面を作り、そして止まってボールを呼び込まなければならなかったのだ。
サーブ&ボレーの上手い人が流れるようにファーストボレーを拾ってネットにつくのは、その止まる瞬間が以上に短く、一瞬でしかいないので止まって打っているように見えていなかっただけなのだ。

止まって打つ感覚でファーストボレーを打つ。これでサーブ&ボレーが成功するようになった。成功すると気分がよくなって、さらに積極的にネットに出るようになる。非常に動きの良いダブルスになり、とても気分がよかった。

止まって打つ感覚はけして万能なコツというわけではなく、ゆるい勢いのないボールを打つときは足を使って前に押し出さなければうまくいかない。しかし、いい感じでサーブ&ボレーが出来て非常に気分がよかった。いずれは旭区最強ペアのようにリターン以外はボールをバンドさせない「ボレーボール」のダブルスを出来るようになりたいものだ。修行は続く。

 


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