第三房 「ジャックナイフ」(2004/07/22)
「トロイ」という映画を見た。この映画の中で「ジャックナイフ」が使われている。別に折りたたみ式の大型ナイフのことではない。テニスで両手打ちバックハンドの選手が前足一本でジャンプして高い打点を打つ技のことだ。
もちろん映画の中ではテニスをするわけではない。舞台は紀元前のギリシャ、「トロイの木馬」作戦で有名なギリシャ対トロイの戦争の物語である。この中で、ギリシャ軍のエリート戦士アキレス(ブラット・ピットが演じる)がトロイの王子との一騎打ちのシーンで「ジャックナイフ」をしてみせる。つまり右手に持っている剣を高い位置から相手に突き刺すのに、右足を前に振り上げた後、左足一本で立ち、上げた右足を後ろに蹴り戻す、その反動で剣は上から前に振り出される。剣は片手で持たれているが、原理は両手打ちバックハンドと同じ「ジャックナイフ」である。
この動きが起こるのは、足の踏ん張りの効かない高い位置で肩を効果的に回すために起こる。足の踏ん張りが効く重心の低い打点では足のスタンスが固定されているので足から腰・肩と順番に回転方向に回していける。しかし、足の踏ん張りの効かない空中ではそうは行かない。そこで空中では広げた足をハサミのように交差させて腰を逆回転させその反動で肩を回すのである。その為には、「タメ」の状態の時、肩とは逆方向に腰は捻られていなければならない。
この原理は別に両手打ちバックハンドの高い打点に限った話ではない。後ろに下がりながらのジャンピング・スマッシュのときのシーザス・ジャンプも同じ原理(シーザスはハサミのこと)だし、サーブのとき後ろ足が一旦前足に引付けられ、ヒットのときに後ろ足が大きく跳ね上がるタイプのサービススイングをする人はこの原理を無意識に使っている。バレーボールのスパイクも同じだ。踏ん張りの効かない空中で肩を回転させるのに腰を肩とは反対に回転させ、その反動で肩を回しているのだ。さらにサッカーのキックは足を鋭く振るために肩を腰とは逆方向に回転させる。原理は同じだ。
ジャンピングショットを打つとき、このことを意識するといい球が打てるそうだ。
戻る