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第074房 2008年 オーストラリア・オープンTV観戦記(2008/10/18)

 

2008年01月11日2008全豪ドロー

2008年オーストラリア・オープンのドローが出た。例によってドローを4つの山に分け、如空の独断と偏見による展望を見てみよう。

男子第一シードはフェデラー。ATPに君臨する圧倒的強者、如空が「皇帝」と呼ぶフェデラーは今年3連覇となる4回目の優勝を目指す。皇帝の山であるトッ プハーフの上半分には第七シードに去年の準優勝者にしてマスターズカップでフェデラーに勝っているゴンザレスがいる。その他、ベルダスコ、モナコ、ベルディッヒ、ブレーク、リュビチッチ、アルマグロなどが揃ったが、皇帝の進撃を止められそうな気配はあまり感じられない。
第三シードはジョコビッチ。去年の出世頭にして「第三の男」として定着しつつあるジョコビッチの山、トップハーフの下半分は反対側にジョコビッチ同様去年 大活躍したフェラーが第五シードでいる。その他、ツルスノフ、ヒューイット、バクダティス、ナルバンディアン、フェレーロ、ステパネックと、さらにノー シードでベッカー、ロクス、マリッセ、サフィン、T・ヨハンソン、キーファー、というここだけでグランドスラム大会を開催できるのではないかというほどに 豪華な実力者が集中した。このタフドローをジョコビッチが突破する事は簡単なことではあるまい。
第四シードはダビデンコ。彼の山であるボトムハーフの上半分には、反対側に第八シードのガスケがいる。以下アンドレーべ、チェラ、マレー、ユーズニー、カ ルロビッチ、ワウリンカ、などが揃った。比較的層の薄い山ともいえるが、だからといってダビデンコが圧倒的に優位というわけでもなく、混戦になる可能性は 大である。
第二シードはナダル。不動のNo2の山であるボトムハーフの下半分は反対側に第六シードのロディックがいる。以下、ニーミネン、ロブレド、モヤ、マチュー、シモンらが揃った。決して楽なドローではないが、ナダルが万全のテニスを展開すれば突破可能な山であると思われる。
去年、4大大会全てに決勝進出し、リトルスラムを成し遂げたフェデラーであるが、マスターズシリーズでは大苦戦であった。それは皇帝の覇権を足元から揺るがす前兆であったのか、一時的な落ち込みで、これより回復に向かうのか、皇帝フェデラーの力量が問われる今年の全豪である。今回、第三シードジョコビッチ が第一シードフェデラーの入るトップハーフに入った。これは第二シードナダルにはいい条件になる。だが第三シードの山はここ数年のグランドスラムでもまれ に見る超タフドローである。去年末より調子を落とし、ホップマンカップでもフィジカルに不安を残したジョコビッチに、去年全米並みの活躍を期待するのは少 し酷かもしれない。去年フェデラーを倒した上でMSマドリッド・パリ大会を連覇したナルバンディアンにも注目が集まるが、こちらも直前の報道では体調は万 全ではないらしい。こうなると比較的条件の恵まれたナダルの決勝進出に期待がかかる。前哨戦では途中で体力を使い果たして決勝敗退したナダルであるが、そ の驚異的なバイタリティーをここで発揮してもらいたいものである。全豪は去年フェデラーの失セット0優勝で終わった。今年は誰かがフェデラーを止めるにし ても、フェデラーが最終的に優勝するにしても、とにかく、「強い奴がさらに強い奴に挑み、好試合が展開される」という大会を期待したい。

女子の第一シードはエナン。現女王の山であるトップハーフ上半分は反対側になんと第五シードシャラポワが入った。以下スキアボーネ、ゴルビン、ディメン ティワ、ペアーらが揃った。去年の最終戦ツアー選手権決勝エナン対シャラポワ戦の再現がQFで実現すれば、これは注目の一戦となろう。
第三シードはヤンコビッチ。彼女の山であるトップハーフの下半分は反対側にS・ウィリアムズが控える。以下モーレスモ、シュニーダー、バイディソワ、ズボ ナレワ、アザレンカが集う。去年の覇者S・ウィリアムズ、一昨年の覇者モーレスモの復調具合が気にかかる。バイディソワの侮れない存在である。ヤンコビッ チは圧倒的優位にあるとはいえまい。
第四シードはイワノビッチ、彼女の山であるボトムハーフの下半分は、反対側に前年度全英覇者V・ウィリアムズが第八シードでいる。他ミルザ、リー、バルトリ、サフィーナ、ボンダレンコ、スレボトニク、らが集う、実力者が集まっているが、QFはイワノビッチ対S・ウィリアムズになる可能性が大なのではないだ ろうか。
第二シードはクズネツォワ。彼女の山であるボトムハーフ下半分は反対側に第六シードチャクベターゼがいる。以下キリレンコ、サファロバ、ハンチェコワ、ペトロワ、ラドワンスカらが揃った。絶対的本命不在で混戦になりそうな雰囲気である。
去年大活躍したセルビアコンビ、ヤンコビッチとイワノビッチがグランドスラムでトップ4シードを張ることになった。だが去年と同じテニスを展開している限 り、ベスト4止まりではないだろうか、更なる高みへと自らのテニスを発展できるか見ものである。それは地味な第二シードクズネツォワにもいえることであ る。一方で、年間を通じては安定しないが、突発的に強くなれば、その強さは相変わらずで、グランドスラムさえも制覇してしまうウィリアムズ姉妹の調子の波 が、この全豪では上に来るか、下に来るかで結果は大いに左右されるだろう。それでも女王エナンが優位にある事は、変わりない。
WOWOWアナログは1月14日(月)の深夜より録画中継を開始する。今年もまたグランドスラムが始まる。熱戦を期待しよう。

 

2008年01月15日 全豪2008 初日

全豪開幕、でいきなりマレーダウン、他にもモヤダウン、チェラのダウンもあったが、基本的に順当な一日であった。女 王エナンは62 62で順当な初戦突破であったが、スコアの数字ほど対戦相手中村を圧倒できていたわけでなく、ゲームを取るのに時間がかかっていた。中村は善戦したほうだ と思う。
WOWOWアナログの中継はズボナレワ対杉山であった。杉山はズボナレワの棄権で初戦を突破した。ズボナレワは全豪直前の大会で決勝まで進出していたが脚 の故障で決勝戦は棄権した。その負傷した箇所がまた悪化したようであった。杉山は女子のグランドスラム大会連続出場記録を更新、1994年のウィンブルド ンから55大会連続出場だそうだ。だが今回、さすがにシードは付かず、逆に自らシード選手のズボナレワと当たることになってしまった。それでも相手の棄権 とはいえ、初戦を突破したのだから、この勝利を生かしてもらいたいものである。
ところで今年からウィンブルドンの放送権をWOWOWが取得したと発表があった。 これで今年から四大大会全ての中継をWOWOWは行うことになる。個人的にはNHKよりWOWOWのほうが良い点が多いと思うので、うれしい変更ではある のだが、未だに地上波のみでしかTVを見られない人はテニスを見る機会がかなり減ってしまうことなる。これがテニス人口の増減に微妙に影響を与えるような 気がするが結果は如何に。

 

2008年01月16日 全豪2008 二日目

リュビチッチダウン、ステパネックダウン、アルマジロ・・・・じゃなかったアルマグロダウン、バルトリとサフィーナもダウン、他にもシードダウンはあったが、概ね順当な全豪二日目である。ジョコビッチがまた試合終了後にインタビューアーの要請でシャラポワの物まねをやらされていた。中継で会場に来ていたフィリポーシスに対するWOWOW進行役ダバディ氏のインタビューがあった。彼は「引退はまだ考えていない」と言っていた。
WOWOWアナログの録画中継は森上対クライチェック、バクダティス対T・ヨハンソンである。

いやあ、森上は安定しているわ。そして強い。今回もフリルのスコートで登場の森上はフォア・バック両手打ちである。ラケットをロングタイプに変えたそう だ。森上はストロークではスピンとフラットを使い分け、ボールが短くなるとガンガンネットに詰めていく。クライチェックはいいサーブを打っているのだが、 森上のリターンはそれを受け止め、強気で叩いていった。サングラスをかけて試合に臨んでいるクライチェックは左手首を痛めているらしく、この日バックはス ライスオンリーだった。森上はクライチェックのバックにボールを集めクライチェクに攻めさせなかった。結局最後まで一気に森上はクライチェックを押し切っ た。
全豪タイトルホルダーのヨハンソンと全豪ファイナリストのバクダティス、似たような体格の二人は激しい乱打戦を展開した。バクダティスはこの試合でまた脚 を痙攣させた。二人共あの身長であの強いサーブを打てるとは見事である。サーブだけでなくショットの威力という点ではヨハンソンが上回っているように見え るのだが、勝ったのはバクダティス。ディフェンスの固さ、カウンターショットの冴え、そして尻上がりに調子を上げたサーブの威力でバクダティスが勝利を手 にした。
今回の全豪はサーフェイスをリバウンドエースからプレクシクッションという新しい素材に変更しているらしい。TVで試合を見る限りはボールのバウンドも選 手たちの動きにも大きな変化はないように思える。だが、一昨年、リバウンドエースの滑りにくさが仇になり、足を取られて転倒する選手が続出したが、そのような事故の多発がこの変更で少なくなるのなら、それは歓迎するべきものだろう。評価は二週間の大会全日程を終えてからもう一度してみよう。
ところでこの全豪初戦の勝利でダベンポートがグラフを抜いて、女子の生涯獲得賞金額で歴代一位となることが決まった。ダベンポートってそんなに稼いでいる のかい。毎年の好成績に加え、実働年数の長さから考えると当然といえば当然かもしれないが、それでも凄いママさんだ。そのダベンポート、なんと二回戦で去 年のファイナリストシャラポワと対戦する。第五シードのシャラポワにとっては迷惑至極の話だろう。果たしてこの対戦の行方は如何に。注目していこう。

 

2008年01月17日 姫のトラ退治 全豪2008三日目

ロブレドダウン、ゴルビンダウン、シュニーダーダウン、後のシード勢は順当だった2008年全豪三日目である。WOWOWアナログの録画中継は杉山対ベレビニスとシャラポワ対ダベンポートだった。
杉山はよく脚が動くこと。小気味よく動き、鋭くウィナーを奪う。見事なテニスで二回戦を突破した。
シンプルな白い衣装で現れたシャラポワはエンジン全開で試合に入ってきた。第一セットを最初から5ゲーム連取してダベンポートを圧倒する。今日のシャラポ ワはサーブがいい。ストローク戦でも角度の付け方が厳しく、サイドラインに抜けていくアングルショットを多用し、ダベンポートは振り回されていた。接戦が 予想されたこの元No1対決は、終わってみれば61 63 のストレートでシャラポワの圧勝であった。とりあえず最初の関門を予想以上のいいテニスで突破 したシャラポワ、自分より上位にいる4人が待つ舞台まで勝ちあがれるだろか、注目しよう。

 

2008年01月18日 全豪2008 四日目

ツルスノフがダウン、ボンダレンコがダウン、後のシード勢はほとんどが勝ち進む、順当な全豪四日目であった。WOWOWアナログの録画中継はキリレンコ対森上、ジョコビッチ対ボレッリであった。
森上は61 61というスコアでキリレンコに圧倒された。森上の調子がどうとかではなく、キリレンコが最初から気合の入ったプレーで押し捲った。過去に何 度か森上に負けている格上のキリレンコは、その森上を確実に押さえにかかっていた。自分からはミスしない、そして強気で攻める、淡々としながらも、キリレ ンコの強い意志が感じられる試合運びであった。
始めて見るボレッリは鋭い切れのあるいいストロークを打つ選手だった。だがジョコビッチは慌てない。マイペースなテニスで淡々と攻める。サーブの確率はあまりよくなく、ミスもやや多めだったが、それでも61 62 62というスコアであっさりと勝ってしまった。プレーが低いレベルでもあの強さを維持する戦 術は見事である。
WOWOWはこの全豪中継でウィンブルドンの放送権が取れたことを毎日宣伝している。如空はこのニュースを聞いたとき、WOWOWが日本での放送権を独占 したのだと勝手に思い込んでしまった。だがよく考えると、WOWOWが全豪・全仏・全米を放送しているときに、地上波のTV局が4回戦くらいから放送して いる場合がある。もし同じパターンだとすると、WOWOWがウィンブルドンを中継しても、NHKでも民放でも、地上波のどこかが放送することもできるわけ で、そうなる場合もあるかもしれないわけだ。
そういえばGAORAは東レとジャパンオープンの放送権をQFかその直前まで持っているようで、一回戦から放送するが、準決勝・決勝の生中継の放送権はない様で、地上波が代わりに放送している。(GAORAは後日録画中継で決勝等を放送している)こちらも同様にGAORAが放送権を取ることはないのだろう か。放送する側は競争にさらされて苦しくなるが、見る側としては選択肢が多い方がよい。

 

2008年01月19日 強く美しく 全豪2008五日目

シード同士の対決が始まる3回戦、そこでついにロディックダウン、モーレスモダウン、順当な進行の中にも波乱が少しづつ起こり始めている、そんな全豪五日目である。
WOWOWアナログの録画中継はバイディソワ対杉山、アザレンカ対セリーナ・ウィリアムズである。
大きな体格を存分に使って、タメを作ってからゆったりとしたスイングでドッカーンと大砲を撃ってくるバイディソワ、フォアもバックもサーブも体重が乗った 重いボールを打ってくる。長い脚をもてあまし気味で、フットワークがゆったりしているが、大きなスタンスでボールを追う。ダベンポートに良く似ているテニ スだ。対抗する杉山は小気味よいフットワークでコートを縦横無尽に走り回り、バイディソワを揺さぶる。ストレートで敗れたが、第一セットも第二セットもいい内容の試合であった。ところで、ステパネックと婚約した18歳のバイディソワ、今日は赤いワンピース姿で現れたが、きれいになったね。10台後半の女の 子って変っていくのが早いわ。
前年度覇者セリーナは今のところ死角なし、優勝した去年よりよほど安定した強さで勝ち進んでいる。これから二週目以降の上位勢との対戦が見ものである。

 

2008年01月20日 青いコートの波乱 全豪2008六日目

第二シードクズネツォワダウン!第六シードチャクベターゼダウン!去年のファイナリストゴンザレスダウン!小さな波 紋が大きな波乱となりつつある全豪六日目である。メルボルンは雨らしく、屋根のある二つのメイン会場でのみ試合が進行しているという。ジョコビッチは圧勝 したが、それ以外は接戦で長い試合ばかり、WOWOWアナログの録画中継が始まった深夜になってもまだヒューイットとバクダティスの試合は続いている状態 である。圧倒的強さを見せ付けながら勝ち進んできた皇帝フェデラーも例外ではない。一回戦でも二回戦でも3セット18ゲームを取るまでに3ゲームしか落と さなかった皇帝陛下、それがセルビアのティプサレビッチにセットカウントで途中先行される大苦戦となった。TBが二セットあり、フルセットの末の最終セッ トはなんと10-8、一歩間違えれば三回戦敗退の大ピンチであった。危機を乗り越えた皇帝陛下は第二週以降どんな試合を見せてくれるだろうか。
WOWOWアナログの録画中継はブレーク対グロージャン、イバノビッチ対スレボトニクである。

2セットダウンからの大逆転でブレークが勝利した。壮絶なフルセットマッチであったらしいが、録画中継は試合をつぎはぎだらけで試合の流れが良くわからなかった。勝ったブレークも良かったが、負けたグロージャンも素晴らしいテニスを展開していた。フランス人らしい変化自在なテクニックと、小さい体に秘められた身体的・精神的強さ、この剛柔併せ持つテニスがグロージャンのテニスである。年齢的に厳しくなってきてはいると思うが、まだまだその素晴らしいテニス を見せて欲しいものである。
昨日見たバイディソワの赤いワンピース素敵だがイバノビッチの水色のワンピース綺麗だ。 新しいサーフェイスのブルーのコートに合わせているかのようなウェアだ。その青いウェアのイバノビッチはこの波乱の六日目の中で、比較的順当に勝利した。 イバノビッチって、打ち合っていく間にどんどんショットが鋭くなっていき、相手が振り切られるようなラリーを展開させる。イバノビッチ自身も前後左右にか なり動かされているのだが、素晴らしいフットワークで、こちらは振り切られることはない。スレボトニクの出来はけして悪くなく、打ち負けているわけではないのだが、イバノビッチを攻めきれずに、逆にカウンターの餌食になる場面が多々あった。ラリーを見ている限り、両者に差があるようには見えないが、やはり ツメの部分でイワノビッチが一枚も二枚も上手であったかのように思う。
さて、波乱はさらに増幅するか、逆に終息に向かうのか。その行方を見守ろう。

 

2008年01月21日 青いコートの波乱2 全豪2008七日目

昨日の最終戦ヒューイット対バクダティスは朝の4時までやっていたらしい。フルセットの死闘末に勝ち残ったのは ヒューイットであった。ヨハンソン、サフィン、そしてヒューイットと熱戦を繰り広げてここまで来たバクダティスには拍手を送りたい。ちなみに勝ったヒュー イットはQFでジョコビッチとあたる。
雨天順延となった試合をまず消化した全豪七日目、ある意味、如空がナダル・ジョコビッチ以上に打倒フェデラーを期待していた第十シードナルバンディアンが 負けた。そのナルバンディアンを倒したのはなんとフェレーロである。フェレーロは先週の大会で決勝まで進んでいるし、これは復活しつつある兆候だろうか。 そのフェレーロはQFで同じスペインのフェラーと対戦する。
第四シードのダビデンコは同じロシアのユーズニーに破れ、第八シードのガスケも同じフランスのツォンガに敗れた。これで、ボトムハーフは新鮮な顔ぶれに なって来たというべきか、やや地味になりつつあるともいえる展開である。そんなボトムハーフでも第二シードのナダルは勝ち残っている。四回戦もマチューの棄権を受け、QFでニーミネンの挑戦を受ける。
女子では去年の覇者S・ウィリアムズはバイディソワを退けQFに駒を進めた。ボトムハーフに入るセリーナは決勝進出の可能性が高くなってきている。一方去 年の準優勝者シャラポワはディメンティエワを退け、QFに進出したが、そこに待っているのは現女王エナンである。快勝したとはいえ二回戦でダベンポートに あたるし、シャラポワはタフドローが続く。ここを乗り切れるかどうか。エナン対シャラポワは近々でも去年末のツアー選手権決勝で大接戦となったカードだ。 エナンは今回シャラポワを圧倒するために最初から飛ばしてくるだろう。対するシャラポワはどう出るか。中盤の大一番になる可能性大である。
WOWOWアナログはツォンガ対ガスケ、シャラポワ対ディメンティエワであった。
マレーに勝ったことで注目をあびたツォンガはフォアの逆クロスを多用する選手でガスケ以上にクレーコートの特性を持っているような選手であった。だがサー ブと高い打点のフォアが強く、ハードコートでも十分強い。力でガスケをねじ伏せた。マレーに勝ったことも偶然ではあるまい、そう思わせる力は十分ある。た だテニスがまだ単調であることは否めず、今後の課題となろう。
シャラポワもディメンティワもリターンが良かった。長いラリーが続くストローク戦となるかと思われたが、どちらも早めにポイントを取りに来た。サーブの威 力とネットへの早い詰めでシャラポワが上回っていた。この試合だけでなくこの大会の女子の試合を見て全般的に思うのだが、上位選手と下位選手の間にスト ロークではそれほど差があるように思われない。むしろサーブとリターン、あるいはネットへの詰めとそれに対応するカウンターショットなど、ストローク以外 の部分で差がついているように思われる。この試合もストロークで負けてはいないディメンティエワであったが、総合力で勝るシャラポワの優位は崩せなかった。
明日にはベスト8が出揃う。去年とは顔ぶれが変わってきつつある今年の全豪、青いコートの波乱は続くのか、注目しよう。

 

2008年01月22日 ベスト8出揃う 全豪2008八日目

台風一過、という感じでペトロワがラドワンスカに敗れた以外はほぼ順当に格付け(シード)通りの結果が出た全豪8日目である。4回戦が終わり男女ともベスト8が出揃った。QF(順々決勝)の組合せは下記の通り。

男子
フェデラー対ブレーク
ジョコビッチ対フェラー
ツォンガ対ユーズニー
ニーミネン対ナダル

ふむ・・・今回こそ、ナダルに決勝まで来て欲しいよな。トップハーフのSFで予想される第三シードジョコビッチ対第一シードフェデラーの対決がこの大会の山だろうか。嵐の前の静けさのような不気味な雰囲気がこのQFには感じる。

女子
エナン対シャラポワ
ヤンコビッチ対S・ウィリアムズ
V・ウィリアムズ対イバノビッチ
ハンチェコワ対ラドワンスカ

トップハーフは大激戦だ。だがそれでもエナンが本命であることに変わりはない。ボトムハーフはヴィーナスの出来次第だが、それでもイバノビッチの可能性の方が大きいだろう。だが、大波乱が起こる可能性もある。先の読みにくい女子ベスト8である。
WOWOWアナログの録画中継はハンチェコワ対キリレンコ、フェデラー対ベルディッヒであった。
キリレンコは飛ばしていた。第一セットは6-1で先取、第二セットも先にブレークした。ここまで来れば流れは変わらないだろうと思うが、流れは変わった。 第二セット6-4でセットを取ったのはハンチェコワである。キリレンコのボールが入らなくなってきた。最終セットもそのままリードするハンチェコワ。だが 今度はハンチェコワがおかしくなった。ボールを入れに行っている。そこに開き直ったキリレンコがガンガン打ってきて追い上げる。5-4となった。そこでキ リレンコの方もおかしくなった。らしくないフォアのミスを連発してハンチェコワにマッチポイントを献上してしまう。最後はハンチェコワがフォアのアングル ショットでウィナーを決めて、波の激しい試合を締めくくった。
ようやく、皇帝の動く姿をTVで見ることが出来た。先日のフルセットの大苦戦はどんな内容であったのか、映像を見ていないのでよくわからないが、この日はそんな二日前の苦戦の影響など微塵も感じさせない磐石の出来で、安定した強さを発揮するベルディッヒを退けた。
さあ、いよいよベスト8激突のQFである。熱戦を期待しよう。

 

2008年01月23日 女王の敗北 全豪2008QF1

全豪2008男子準々決勝
ナダル 75 63 61 ニーミネン
ツォンガ 75 60 76 ユーズニー

第一セット、最初にセットポイントを握っていたのはニーミネンの方であった。しかし、ナダルは動じない。強気の攻めでピンチを切り抜ける。5-5-にして 次のニーミネンのサービスゲーム、この試合最初に握ったブレークポイントをきっちりモノにして、第一セットをナダルがそのまま奪った。ナダルの勢いは加速 していく。ヘビートップスピンがライン際に落ちて、サイドラインをとらえて抜けていく。ストローク戦で勝てないことを知るニーミネンは積極的にネットに出て対抗するが、ナダルのパスとロブはそのニーミネンを抜き去っていく。第三セットは1ゲームしか取らせず、ナダルが快勝でベスト4に進出を決めた。ここま でナダルは失セット0である。
フランスの若手ツォンガがノーシードでありながらグランドスラムベスト4に進出した。スピンもフラットも使いこなせるオールラウンダーが果たしてナダルに如何に挑むのか、SFは見ものである。

女子準々決勝
ヤンコビッチ 63 64 セリーナ・ウィリアムズ
シャラポワ 64 60 エナン

気合の入ったヤンコビッチが、セリーナ相手に先行、第二セットのブレーク合戦の末、勝利を?ぎ取った。去年の女子単覇者をヤンコビッチは青いコートに沈めた。
デイセッションでセリーナの敗退を知った二人、エナンとシャラポワ、もうこの大会にはモーレスモもクズネツォワもいない、事実上の決勝戦だという覚悟でこのQFに臨んだことだろう。だが女王の気合は空回りし、シャラポワはエナンの連勝を32で止めた。シャラポワはバックが武器だが、今日はフォアの調子がよ かった。特に逆クロスの角度の付いたショットは見事であった。またサーブの出来も良かった。動かされたエナンは踏ん張って打つことが出来ずにラリーの主導 権を奪えなかった。シャラポワが先行した第一セット、終盤でシャラポワはやや固くなり、エナンにチャンスが来る。第8ゲームでブレークバックにエナンは成功する。シャラポワリードの5-4となった第十ゲーム、長いデュースが繰り返された。ショットが安定しているのはどちらかといえばエナンのほうであろう。 だがボールにくらい付き、ボールをないがなんでも相手コートに返すシャラポワが最後にゲームを取り、セットを奪った。第二セット、長いラリーが応酬され る。二人とも角度を付け合って、コートを縦横無尽に走り回る。だが最後に相手を抜き去るのはシャラポワである。シャラポワがエナンのサービスゲームをブ レークした。そしてそのまま、シャラポワはエナンを押し切った。あのエナンが打ち合いを挑んで負け、走り合いを挑まれて負けたのだった。
激戦の予想がされた女子のトップハーフは現女王と前年度覇者が敗北した。徐々にギアを上げるシャラポワを、セルビアコンビ、ヤンコビッチとイワノビッチは止めることが出来るだろうか。女子シングルスは未知の領域へ脚を踏み入れつつある。更なる熱戦を期待しよう

 

2008年01月24日 南半球の欧州勢 全豪2008QF2

全豪2008男子準々決勝
フェデラー 75 76 64 ブレーク
ジョコビッチ 60 63 75 フェラー

フェデラーはブレークをお得様にしているような部分もあるのでまあ予想通りの結果なのだが・・・・ジョコビッチは強すぎるだろう。今のフェラー相手にここまで圧倒できるかね。第三セットは競ったがそれでもジョコビッチの圧勝にかわりない。録画中継を見たがサーブが強く、攻めが早かった。磐石の出来といえよ う。これでジョコビッチもナダル同様に失セット0でSF進出である。

女子準々決勝
イバノビッチ 76 64 V・ウィリアムズ
ハンチュコバ 62 62 ラドワンスカ

こちらも予想通りになったが、ヴィーナスはもう少し粘れたような感じも受ける。WOWOWアナログでイバノビッチ対ウィリアムズは録画中継された。第一 セットは途中でブレーク合戦が繰り広げられた。今日のヴィーナスはサーブに迫力がない。やや緊張気味でミスも多かった。だがイバノビッチも畳み掛けるには 勢いが不足していた。TBになってヴィーナスの自滅でイバノビッチはセットを奪った。調子に乗れないヴィーナスに対して、イバノビッチは決して不調ではないのだが、ヴィーナスを突き放せないでいる。それでもネットプレーでは堅実で、こつこつとポイントを貯めていく。第二セットで3-3となった第七ゲーム、 ヴィーナスのサービスゲームでデュースが繰り返された。ヴィーナスが我慢のプレーでキープに成功した。イバノビッチも次のサービスゲームをキープして 4-4となった。我慢のラリーが続く中、イバノビッチがまたブレークポイントを握る。最後にはドロップショットで前に出させたヴィーナスにネットでミスさ せ、イバノビッチがブレークに成功した。そしてそのブレークが決定打になり、イバノビッチが勝利を決める。ヴィーナスはサーブで圧倒できず、我慢のラリー で粘り、イバノビッチに対抗したが、それでも我慢しきれず自滅する場面が大事なところで出た。もう少しの我慢が出来れば逆のスコアに出来たかもしれないと 思う内容の試合であった。
さて男女ともベスト4が出揃った。SFの組合せは下記の通り。

男子
フェデラー対ジョコビッチ
ナダル対ツォンガ
女子
シャラポワ対ヤンコビッチ
イバノビッチ対ハンチェコワ

見事にヨーロッパ勢で占められたベスト4である。アジア勢・南米勢どころか、アメリカ勢までがまったくいない。まして女子は完全に東欧スラブ系ではないか。セルビア勢の3人が残っているところに、去年の勢いが一時的なものでなかったことを示していよう。
女子第一シードのエナン敗退という波乱はあったが、エナンに勝ったシャラポワが勝ち残っている。男女とも充実のベスト4である。さあ、いよいよ準決勝、WOWOWアナログも完全生中継になるスーパー木曜日である。最高の熱戦を期待しよう。

 

2008年01月25日 断固たる決意 全豪2008女子SF

全豪2008女子準決勝第一試合
シャラポワ 63 61 ヤンコビッチ

ヤンコビッチは腰を痛めていたようだ。途中で目を赤くして、苦悶の表情を浮かべながらプレーしていた。そういえばQFでシャラポワに敗れたエナンも膝に故 障を抱えて、完全な状態ではなかったらしい。ある意味、シャラポワの今回の進撃は相手の不調にも助けられている。だが、それでも、シャラポワは強いわ。 チャンスをモノにすると、一気に波に乗って、たたみかけ、その波を自らは手放すことなく、最後まで勝ちきる。去年手に入れそこなった全豪タイトルを今度こそ その手に掴むため、シャラポワは直向に突き進む。次の試合のハンチェコワとは実に対照的である。

全豪2008女子準決勝第二試合
イワノビッチ 06 63 64 ハンチェコワ

ハンチェコワは試合開始直後から8ゲーム連取した。そしてそこからイバノビッチに逆転された。際どいボールがなぜかイワノビッチに有利なところに落ちていく。不運が続き、ハンチェコワに動揺が走る。ミスが続いてハンチェコワがセットを落とした。セットオールになって、ファイナルセットに突入した。ポイント が長くなった。ゲームに時間がかかるようになった。両者の力が均衡した状態で4-4まで来た。ブレークポイントを握られたハンチェコワ、そこでネット際の 攻防での痛恨のボレーミス。イバノビッチがブレークに成功して、サーブイングフォーザマッチを迎える。最後は長引かせずにイバノビッチが綺麗にゲームを 取って二度目のグランドスラム決勝進出を決めた。
ハンチェコワはイバノビッチにテニスの内容で負けていたとは思えない。まして序盤は圧倒していたのだ。だが、ハンチェコワは勝負のかかった大事な場面で相 手のミスを期待してしまうところがある。先日の対キリレンコ戦でもそうだった。そこに不運なポイントが続くと、せっかくの自分の流れを相手に持っていかれるようなことがよくある。第一試合のシャラポワのように、最後までポイントを自分で取りきって勝つのだという断固たる決意と姿勢がハンチェコワにあれば、 今日の試合の結果はもう少し違ったものになっていたのではないだろうか。
女子の決勝はシャラポワ対イバノビッチである。今日のハンチェコワへの流れを変えたように、シャラポワの今の勢いをイバノビッチは止めることが出来るだろか。全豪女子シングルスも後は決勝のみとなった。熱戦を期待しよう。

 

トゥルーブルー震撼 全豪2008男子SF1

全豪2008男子準決勝第一試合
ツォンガ 62 63 62 ナダル

本当にあのコートに立っていた男は数日前に対ガスケ戦で始めて如空が見たあのツォンガと同じ男なのか。全然別人ではないのかと思うほどに、コートの中の ツォンガは大きく見えた。第一セットからバナナをむしゃむしゃ食い、第一セットの終わりでも第二セットの終わりにもトイレ休憩を入れていた。不敵なまでに 落ち着いていた。立っている後姿がとてつもなく大きく見えた。あれが始めてグランドスラムのSFに進出して、不動のNo2に挑もうとするノーシード選手の 姿であろうか。皇帝フェデラーですらあれほど苦しむナダルの左利き特有のトップスピン、それがツォンガにはチャンスボールにしかならなかった。ライジング でネットより高いところからフラットドライブのハードヒットをコーナーに叩き込む。フォアからもバックからも。ツアー最高の防御力を誇るナダルの鉄壁の ディフェンスを貫いてウィナーを決めた。サーブも強い。最初は回転量の多いサーブをワイドに入れてナダルをコートの外に追い出していたが、途中からガンガ ン強いサーブを叩き込み、エースを奪っていった。サーブとストロークが強いだけではない。強打の後のネットの詰めが非常に早い。所謂アプローチショットで はなく、強打して振り切った後にネットに詰めているのだが、それでもナダルがパスを打つ前にネット前に詰めている。それもべた詰めだ。ローボレーになることが少なく、ほとんどネットの上で余裕のボレーを決めていた。パスとロブの名手であるナダルがネットでのツォンガをほとんど抜けなかった。その驚愕の強さ に、第一セットが終わったところで観客はスタンディングオベーションでこの新しいヒーローをたたえた。試合終了時でない、第一セットが終わった時点でこれほどの観客を魅了してしまうほどの見事なテニスであった。不屈の闘志を持つナダルが途中で完全に気持ちを挫かれていた。
この日に限って言えば、もう一つ特筆すべきことは、ツォンガの予測の的確さと、ナダルの読みの悪さがあった。ネットに出たツォンガは完全にナダルのパスの コースを読んでいるのではないかと思えるほどに、ナダルの打つところに立っていた。リターンでも、ネットでも、ストローク戦でも、ツォンガが逆を突かれる という事がほとんどなかった。一方ナダルはツォンガの行動をほとんど予測不可能なようであった。何度も逆を突かれ、棒立ちのままツォンガのボールを見送る シーンが多々あった。コートを縦横無尽に走り回り、脅威のコートカバーとその予測力でウィナー級のボールを何度も拾って守り抜く難攻不落の要塞ナダルが、 この日、ツォンガのショットを何度も見送らなければならなった。予測のいいナダルがなぜ、今日に限ってツォンガへの読みをはずしまくったのか、そして、相 手の裏を突くのが得意なナダルのショットをあそこまで的確になぜツォンガは予測できたのか。今日のツォンガには地力の強さに加え、神懸り的な強さもあった ように思える。
2000年全米決勝でサンプラスを破ったサフィン、2003年のウィンブルドンSFでロディックを破ったフェデラー、これらの試合を見たときに感じた震えるほどの驚きを、ナダルを破ったツォンガに感じた。この試合をフェデラーは見ていただろうか、ジョコビッチは見ていただろうか、どう感じただろうか。
トゥルーブルーのコートを震撼させた木曜日は終わった。
明日はいよいよ大一番、去年の全米決勝の再現となるフェデラー対ジョコビッチ戦である。その勝者の前に立ちはだかるツォンガは今日のプレーをさらに上回る テニスを決勝で展開することが出来るだろうか。全豪男子シングルスも残りあと2試合、どの試合も要注目である。熱戦を期待しよう。


2008年01月26日 皇帝を乗越えて 全豪2008男子SF2

全豪2008男子準決勝第二試合
ジョコビッチ 75 63 76 フェデラー

両者共に攻めが早い。いきなりハードヒットを打つ、すぐさまネットに詰める。第7ゲーム、ジョコビッチのサービスゲームでフェデラーがブレークポイントを 握る。二人とも慎重になって長いラリーになる。スライスを混ぜ緩急を付けたフェデラーのストロークの前にジョコビッチはミスをしてフェデラーがブレーク成 功、4-3でリードする。フェデラーの調子が上がり始めた。ネットに出たジョコビッチに対して信じられない角度にバックハンドからショートクロスを放ち、 追うジョコビッチを転倒させた。流れが完全にフェデラーに来ているように見えた。だがフェデラーの5-4で迎えた第10ゲーム、サーブイングフォーザセッ トでフェデラーにミスが続く。ジョコビッチのリターンがフェデラーを狂わせた。ジョコビッチはここでブレークに成功、5-5となる。次のサービスゲームを ジョコビッチがキープし、ジョコビッチの6-5となった。長いストローク戦になるとジョコビッチがフェデラーを押す場面が増えた。フェデラーは押されて ネットしてしまうショットが増える。ジョコビッチが鮮やかにフォアのクロスを決めて30-30、ジョコビッチに攻められ、ネットに出たジョコビッチを抜くべく打ったバックのストレートパスがラインを割った。30-40でジョコビッチにセットポイントが来た。フェデラーは攻めるがジョコビッチが攻め返す。 ジョコビッチの圧力に抗しきれず、フェデラーのバックがまたラインを割った。第一セット7-5、最後はジョコビッチの4ゲーム連取でジョコビッチが第一 セットを先取した。

WOWOW中継解説の柳恵誌郎氏はジョコビッチのリターンをさかんに褒めている。解説の通り、ジョコビッチのリターンが安定していて、フェデラーはサービ スゲームにおいてサーバー側の有利さを発揮できずにいる。第二セット第四ゲーム、リターンからストローク戦を有利に進め、フェデラーのサービスゲームでブ レークポイントを握った。最初のピンチはフェデラーが乗り切る。だがデュースになった後、ジョコビッチのストロークに押されてネットにボールをかけて、再びブレークポイントになる。フェデラーが攻める。バックハンドダウンザラインの強打からネットに出てアングルボレー、決まったと思ったそのボールを、ジョ コビッチはポールの外から回し込んだ。ブレーク成功、3-1とジョコビッチがリードする。流れが完全にジョコビッチのものになった。ジョコビッチのスト ロークが深いところに突き刺さる。第6ゲームもジョコビッチがブレークに成功し5-1とし、サーブイングフォーザセットを迎える。ここでフェデラーが綺麗 なリターンエースを含む連続ポイントを決め、フェデラーにブレークポイントが来る。ジョコビッチのショットがラインを割ってフェデラーブレーク、と思いきや、チャレンジでインの判定、やり直しでジョコビッチがデュースに戻す。ジョコビッチの集中力が少し落ちている。そこにすかさず付け入るフェデラー、サー ブアンドボレーに出てきたジョコビッチを抜いてフェデラーがブレークに成功した。フェデラーに落ち着きを取り戻し始め、次のサービスゲームをきっちりキー プした。ジョコビッチの真価が問われる二回目のサーブイングフォーザセット、サーブを打つ前のボールをつく回数が増える。明らかに精神的な緊張を強いられ ていた。ジョコビッチの攻めが甘い。フェデラーが切り返し、デュースになる。内なる自分自身のプレッシャーと戦うジョコビッチ、だが最後はサービスエース を決めた。ジョコビッチが自分自身にも打ち勝ち、第二セット6-3で連取した。
第三セット第二ゲーム、ジョコビッチのサービスゲームで0-40のブレークポイントになった。だがそこでサーブの力で5ポイント連取してピンチを乗り切った。まるでフェデラーのごとく。デュースにもつれる長いゲームが繰り返される。だが両者とも、大事なところでサーブの力でピンチを乗り切り、苦労しながら もキープに成功した。緊迫したキープ合戦が続く。先にサービスゲームをするフェデラーは最後のジョコビッチのサービスゲームでセットポイントになるブレー クポイントを握ったが、やはりここでもジョコビッチはサーブの力で乗り切り、キープに成功、6-6TBとなる。両者共にサーブがいい。サーブをキープし 合ってジョコビッチのTB6-5、ジョコビッチのマッチポイントを握る。ここでラリーの末、フェデラーのフォアがネットにかかった。ジョコビッチがスト レートでフェデラーを下した。サーブ、リターン、ストローク、ネットプレー、コートカバー、大事な場面でも集中力、あらゆる局面で、ジョコビッチは自分の テニスを展開し、見事にフェデラーを上回った。素晴らしい勝利である。
フェデラーは2004年全仏でクエルテンに負けて以来、グランドスラムでストレート負けがなかった。それどころか2005年全英で優勝してから、GS10 大会連続で決勝に進出していたのだ。しかもその間、全仏決勝の対ナダル戦以外では負けていなかった。そのフェデラーが負けた。ATPに君臨する圧倒的強 者、如空が「皇帝」と呼ぶエントリーランキングNO1の男、フェデラーがグランドスラムで負けた。ナダル以外の男に決勝進出を阻止された。ジョコビッチが 見事に去年の全米決勝での借りを返したのである。
No2ナダルも昨日ツォンガの圧倒的パフォーマンスの前に敗れた。そして今日はジョコビッチが自分のテニスをやりきってNo1フェデラーを倒した。長らく 続いた皇帝フェデラーの覇権、ナダルとの二強体勢が今大きく揺らごうとしている。去年のグランドスラムだけを見ていればわからない、マスターズシリーズで の大苦戦から徐々に始まった「皇帝の覇権の崩壊」がいま現実のモノになりつつある。ただの一敗ではない。グランドスラムでのストレート負けだ。コートの中 でフェデラーは少し覇気を失っていた。それでもフェデラーは強かった。決して弱くなかった。だがジョコビッチが試合後半戦っていた相手は自分中にいる内な る精神的な敵であり、目の前の皇帝の脅威は今までほどの圧力にはなっていなかった。ついに皇帝は追いつかれてしまった。今までに築き上げたアドバンテージ をジョコビッチに一気に縮められてしまった。如空にはそう見えた。
今年の全豪男子シングルス決勝はジョコビッチ対ツォンガとなった。それぞれ第一シードと第二シードを倒してここまで来たのだ。ファイナリストにふさわしい 二人と言ってよい。両者共にGS初タイトルがかかるが、この試合はそれだけでなく、今後数年のATPにおけるトップランカーたちの力関係に大きな影響を与えることになるだろう。新たなる時代を切り開くものは誰か。その資格を問う決戦が迫る。その行方に注目しよう。

 

2008年01月27日 青いコートの上の白い勝者 全豪2008女子決勝

真夏のメルボルン、灼熱の太陽に照らされて濃い影の中にトゥルーブルーのコートが浮かび上がる。静かな、とても静かなコートの中で、シンプルな白いウェアと青いウェアを身につけた美しい二人の対決が始まった。

全豪2008女子シングルス決勝
シャラポワ 75 63 イバノビッチ

緊張感が漂うコートで、二人はサービスからの速い攻めを展開する。サービスゲームをキープし合って2-2となった。第五ゲーム、青いウェアのイバノビッチ のサービスゲームで白いウェアのシャラポワがポイントを先行する。シャラポワのボールが深くて、イバノビッチはミスを強いられる。ダブルフォールトでブ レークポイントが来る。コーナー深くに返球されるシャラポワのボールにイバノビッチは崩されてブレークを許してしまった。ここでシャラポワのギアが上る。ショットの威力を上げ、コースの角度を厳しくした。シャラポワの綺麗なウィナーが出る。だがイワノビッチはカウンターショットのうまい選手だ。徐々に シャラポワのサーブにタイミングが合い始める。リターンからの強打で主導権を握る。第八ゲームのサービスゲームでシャラポワは捕まった。イバノビッチの切り返しにブレークポイントを握られ、圧力がかかったサーブを外し、ダブルフォールトでシャラポワはブレークバックされてしまう。4-4となった。イバノ ビッチの圧力はさらに増す。第十ゲームで再びイバノビッチにブレークポイントを握られた。だがシャラポワはサーブの力でピンチを切り抜ける。今度はイワノ ビッチにミスが続き、第十一ゲームでシャラポワがブレークポイントを握る。イバノビッチはボールを抑えきれない。ミスでシャラポワのブレークを許してし まった。シャラポワのサーブイングフォーザセット、シャラポワはサーブの力でラブゲームキープして7-5、第一セット先取に成功する。
第二セットの第一ゲームで長いデュースが繰り返されるが、イバノビッチは乗り切ってキープに成功する。だがキープ合戦の末の第七ゲームで、ダブルフォール トでシャラポワにブレークポイントが来る。今度はイバノビッチは逃げ切れなかった。イバノビッチのショットが最後にはラインを割り、シャラポワはブレーク に成功した。一方でシャラポワのサービスゲームはどんどん勢いがシャラポワについて行き、イバノビッチは得意のリターンで攻められなくなってきていた。淡々とシャラポワはサービスゲームをキープして、5-3まで来た。第九ゲーム、イバノビッチは最初のサービスをダブルフォールトする。次のポイントもフォア をネットにかける。0-30でシャラポワのフォアハンド逆クロスが炸裂、チャンピオンシップポイントが来た。シャラポワのミスが続いて30-40までイバ ノビッチが戻す。だがイバノビッチの踏ん張りもここまでだった。ネットにアプローチしたシャラポワに向かって放たれたイバノビッチのパスはラインを大きく それて、勝負は決まった、第二セット6-3、見事なストレート勝利であった。
シャラポワのサービスに対抗するイバノビッチのリターン、それが途中でタイミングが合い始め、ガンガン攻めることが出来たのに、結局中盤でブレークに結び つけることが出来なかった。そこにこの試合のポイントがあったように思う。そして後半、そのイバノビッチのリターンを再び無力化したシャラポワのサービス の冴えが今日の勝因であった。またカウンターショットの使い手イバノビッチに対して、強打だけでなく、威力はなくてもコーナー深くに返球し続けたシャラポ ワの配球がイバノビッチを封じ込めた点も大きかった。シャラポワもプレッシャーからミスを重ねるシーンがあったが、それを致命傷にならないよう、すぐにリ カバーした点も見事である。同じ20歳同士の対決であったが、自らのテニスの采配という点でシャラポワの方が一枚上手であった。それが大事なところで発揮 された素晴らしい勝ち方であった。
勝利の瞬間、緊張が解けたシャラポワが涙を流していた。思えば去年のこの全豪決勝でセリーナ・ウィリアムズの前に3ゲームしか取らせてもらえず、ほとんど 公開処刑の形でその強いハートを挫かれたシャラポワ。それ以後、精神的にも肉体的にもスランプになり苦しい2007年だった。その苦しい時期を乗り越えて、再びこの全豪舞台に帰って来た。ダベンポートを倒し、ディメンティワを退け、女王エナンを打倒し、ヤンコビッチとイワノビッチという台頭してきたセルビアコンビを連破して、シャラポワはキャリア三つ目のグランドスラムタイトルを手に入れた。インタビューでは親しい人の死も最近あったといっていた。強化されたフォアハンド、相変わらず強いバックハンド、安定度を増したサーブ、無理をしない的確な配球、そしてなにより、あの強いハートが戻ってきた今のシャラポ ワのテニスは、堂々とグランドスラムタイトルホルダーとして名乗れる強さを持ったテニスである。
結果として再び混迷の状態に戻りつつある女子テニス界、シャラポワの進撃が始まるのか、女王エナンの巻き返しなるか、セルビア勢の更なる躍進はありうるの か、ウィリアムズ姉妹にはまだ余力が残されているのか、可能性を見せた他の選手たちの動向は如何に。今年一年、WTAツアーは面白くなりそうだ。そんな予 感をさせる全豪2008女子決勝であった。

 

2008年01月28日 双頭の鷲は舞い降りた 全豪2008男子決勝

フェデラーもナダルもいないグランドスラム男子シングルスの決勝は何年ぶりのことだろう。準決勝でフェデラーを倒した男とナダルを倒した男が、共にアディダスの黒いウェアを身にまとい、共にウィルソンのラケットを握って、全豪決勝の舞台であるトゥルーブルーのコートに 立った。

全豪2008男子決勝
ジョコビッチ 46 64 63 76 ツォンガ

第一セットはいきなりジョコビッチのブレークから始まった。最初にサーブをしたツォンガにはやや固さが見られ、フォアのミスが多かった。だがジョコビッチ もフォアのミスが多い。次のサービスゲームを相手にツォンガに先行され、ブレークバックをされてしまう。次のサービスゲームをツォンガはキープしたが、 ジョコビッチはブレークポイントを握られる。長いデュースが繰り返される。ジョコビッチのショットが際どいオンラインで入ってくる。スパーショットを連発 してピンチを切り抜けた。共にデュースにもつれる長いゲームが続くが、それでもお互いにキープを続けていく。ツォンガの強打が入り始める。徐々にツォンガ の圧力が増していき、ジョコビッチが押され始める。ツォンガの5-4でジョコビッチのサービスゲーム、ツォンガの神がかり的なショットが入り、ブレークポ イントが来る。ジョコビッチが攻めて、ネットに出る。だが、そのジョコビッチのボレーをぎりぎりで追いついたツォンガがロブで抜いた。なんとロビングエー スでツォンガがブレーク、第一セット6-4でツォンガが先行する。
ツォンガの強打はどんどん入っていく。一方でジョコビッチの精密なショットが崩れミスが増えていく。第二セットになってもジョコビッチの苦しい状況が続 く。それでもジョコビッチは耐えてキープし続け3-3まで来た。追い詰められながらも、ショットの精度を上げて、ジョコビッチはミスを減らし始めた。連続 強打を切り返してくるジョコビッチの前に、ツォンガが今度は我慢しきれなくなりミスが増える。第七ゲームでツォンガのサービスゲームがブレークされた。ス トロークのミスは減ったものの、ファーストサーブの入りが悪く、ダブルフォールトも多いジョコビッチであるが、それでも要所を確実にしめ、最後のサー ブイングフォーザゼットをラブゲームキープ、第二セットを6-4で取り返した。
ツォンガは例によってバスルームブレークを取った。両者共に自分のサービスゲームをラブゲームキープして第三セットは始まった。第三ゲーム、ツォンガの サービスゲームで見事なバックハンドダウンザラインでブレークポイントをジョコビッチが握った。ツォンガがデュースにまで戻したが、長いラリーの末、フォ アを外してジョコビッチのブレークを許してしまった。胸を叩いて雄叫びを上げるジョコビッチ。これでジョコビッチが波を引き寄せた。ジョコビッチは5-3 としたツォンガのサービスゲームでブレークポイントを握る。ジョコビッチの深いストロークの前にミスを重ねるツォンガ、準決勝でのフェデラーもこの深いス トロークに押されて崩れた。長いデュースの末、やはりツォンガはミスさせられ、ブレークされてしまった。それはセットポイントになっていた。6-3で第三 セット、ジョコビッチが取り、セットカウントでリードした。
第四セット、ツォンガは自分のテニスをやりきるために、右に左に強打を打ち込む。走り回って、鉄壁のディフェンスを見せるジョコビッチ、だが第4ゲーム、 酷使されたジョコビッチの脚が悲鳴を上げた。左足が痙攣の一歩手前の状態になった。苦しいジョコビッチ、第五ゲームのサービスゲームをデュースに持ち込まれる。だがツォンガもやりくいらしく、ミスをして大事なチャンスを逃してしまった。ジョコビッチのキープで3-2になったところで、メディカルタイムアウ トが取られた。治療して、脚の不安を取りえず抑えることに成功したジョコビッチは再び自分のテニスを展開する。ツォンガも自分のテニスを貫く。キープ合戦 の末、6-6でTBに突入する。二ポイント目で先にミニブレークしたのはジョコビッチ、さらにツォンガがここで痛恨のダブルフォールトで5-1になった。 ジョコビッチの万全のテニスの前に、ツォンガのショットは二度までもラインをオーバーし、ジョコビッチがチャンピオンシップポイントを一発で決めた。
準決勝でナダルを叩きのめしたツォンガの豪打は高い打点から繰り出されるからこそ、威力がある。その点、今日のジョコビッチはベースライン深くにコント ロールされた正確なショットでツォンガを高い打点から打たせなかった。また現在フェラーと共にツアー屈指と呼ばれる高いリターンの技術でツォンガの強い サーブを無力化したことも大きかった。自身のサーブは確率がよくなく、また途中で脚の故障もあり、決して万全の体制ではなったが、自分の持てる武器を駆使 して怪物のような強さを持つツォンガを封じ込めた。そして、速い攻めと、ピンポイントでラインを捕らえる鋭いショットが素晴らしいウィナーを何本も生み出 した。見事な勝利である。
敗れたものの、ツォンガがこの全豪で展開した豪快なテニスは見ているものを魅了する。彼のその力はまだまだ未知数である。今後、ツアーの中で大きな存在となっていくことだろう。

会場は赤白青のトリコロールカラーで満たされていた。半分はツォンガの応援のため、彼の母国フランスの国旗を使って応援している。だがもう半分は実はジョ コビッチの応援団が持っていたジョコビッチの母国セルビアの国旗である。セルビアの国旗もフランス同様トリコロールカラーなのだ。フランス国旗が右から赤 白青の縦縞であるのに対して、セルビアの国旗は上から赤青白の横縞である。フランスの国旗が色だけなのに対し、セルビアの国旗には紋章が入っている。 その紋章は「双頭の鷲」である。オーストリア・ハンガリー帝国の王家ハプスブルグ家の紋章であったことから、その伝統を受け継ぐ地域の一つであるセルビア が国旗にこの紋章を採用したと思うのだが、この「双頭の鷲」の元来の意味は東西に分裂したローマ帝国の正当支配者の意味である。鷲はローマ皇帝の象徴であり、二つの頭は西ローマ帝国を中心とするヨーロッパと東ローマ帝国を中心とするオリエントの二つの領土を象徴している。かつて西ローマ帝国に領土的野心を 持っていた東ローマ帝国の皇帝が「東も西も自分のものだ」という意思表示に使われたのが、その起源であり、旧ロシア帝国も同じ意味合いを表明するためにこの双頭の鷲の紋章を使ったという。
この数年、ATPツアーの世界は分裂後のローマ帝国同様に二分されていた。ハードコートとグラスコートの世界を皇帝フェデラーが支配し、クレーコートの世 界を赤土の覇者ナダルが支配している。その二つの世界を今、ジョコビッチが手に入れるべく動き始めた。去年の全仏より、四大大会連続でベスト4進出、全米 は決勝に進出し、そしてこの全豪でタイトルを手に入れた。ハードも芝も赤土も、その全ての世界を支配する資格を持つのはこのジョコビッチだ。その意思を表明するかのごとく、ジョコビッチの母国の国旗にある双頭の鷲が青いコートの観客席でゆれていた。双頭の鷲の紋章の継承者、ノバク・ジョコビッチがその世界 の一部を手に入れた。双頭の鷲は舞い降りた。そんな感じのする全豪男子シングルス決勝であった。


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