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第046房 2006年東レ・パンパシフィック・オープンTV観戦記 (2006/03/07))

 

2006年02月01日 異なる地域、異なる季節、異なるサーフェイスで

WTAは全豪開けのこの週はたった一大会だけ、極東の島国、日本でインドアのティアT大会が開催される。ご存知東レ・パンパシフィック・オープンである。ダベンポートとS・ウィリアムズが欠場したが、第一シードシャラポワ、第二シードディメンティエワ、第三シードデシー、第四シードミスキナの、それでも豪華な顔ぶれである。。そしてヒンギスがワイルドカードでデシーの山にいる。順当に行けば土曜日の準決勝でシャラポワとヒンギスの対決が実現することになる。ついに実現するか夢の対決。マスコミは去年ほどシャラポワ・フィーバーに舞い上がっている様子はなく、やや穏やかな報道の仕方になっている。その分、今年はテニスの試合を観戦するファンにとっての注目度が上がっているといえよう。USオープンの中継からは撤退したくせにしっかりとこの東レだけは決勝・準決勝をTBSが今年も中継する。QFまではGAORAが生中継だ。ちなみにQFは順当に行けばシャラポワ対ハンチェコワ、デシー(ヒンギス)対イワノビッチ、リホフツワ対ミスキナ、ディメンティエワ対バディソワとミーハーな日本人好みの美人選手が揃い踏みとなる。TV局にとっては嬉しいことだ。
シャラポワもヒンギスも日本では飛びぬけて人気の高い選手だ。ヒンギス対シャラポワという対決がこの日本で実現することを大いに期待しよう。

2006年02月03日 2006東レQF直前

東レ・パンパシフィック・オープンQFの組み合わせは下記の通り
シャラポワ対ストーサー
ヒンギス対キレリンコ
バイディソワ対ディメンティエワ
リホフツェワ対ミスキナ

ストーサーがハンチェコワを、キレリンコがイワノビッチを、其々破りQFに進出している。だがこの四つの試合は其々話題性充分で、QFを放送するGORAさんは嬉しい限りだろう。東レは会場がたった一つの体育館でしかないので重要な試合を同時に進行させることが出来ない。その為、今日のチケットを買った人はこの4試合を立て続けに観戦出来るのだ。日本で最大級のツアー大会のクライマックスである。大いにテニス観戦ファンはこの機会を楽しみたいものだ。熱戦を期待しよう。

2006年02月04日 期待に応える二人

東レ・パンパシフィックオープン2006 QF
シャラポワ 61 64 ストーサー
ヒンギス 62 61 キレリンコ
ディメンティエワ 36 61 62 バイディソワ
ミスキナ 46 62 63 リホフツェワ

キレリンコをヒンギスが一蹴、そのヒンギスを全豪で苦しめたストーサーをシャラポワが一蹴。うむ・・・・ヒンギス大丈夫か。やっぱりシャラポワのテニスは世間で言われているより強い。お姫様は思ったより手ごわい。さてヒンギスのテニスがどこまでシャラポワに通用するか、注目しよう。
ボトムハーフのSFは2004年全仏決勝の再現、ディメンティエワ対ミスキナである。どちらもQFで苦戦している。球足の速いサーフェイスならディメンティエワ有利だろうが、相手のミスキナは不調かと思うと接戦を続けてものにして、いつの間にか優勝している不思議な選手だ。予断は許されない。

さあ、久しぶりに期待された顔ぶれをベスト4にそろえることが出来た東レである。ダベンポートとセリーナが欠場したが、そのおかげでシャラポワもヒンギスも順当にSFに進出した。大会関係者もTV局もほっとしていることだろう。特にランキングが低いヒンギスはQF以前でダベンポート・シャラポワ・セリーナと当たって、そこで止められしまう可能性があったと思われる。しかし、神の見えざる手は日本のテニス放送を救うべく人気者二人をここまで勝ち進めてくれた。さあ、最高の注目度の中で行われる東レSF、TVでもいよいよ地上波に登場である。ヒンギスよ、TVを見ている連中に「テニスって見ているだけでも面白いんだぞ」って所を見せてやってくれ。そして、かなうならWTAのプリンセスを倒せ。世間の期待は接戦の末のシャラポワの勝利だろうが、そんな期待、裏切ってやれ。


2006年02月04日 ヒンギス、シャラポワを突破

東レ・パンパシフィックオープンSF
ヒンギス 63 61 シャラポワ

ヒンギスが勝ってしまった。しかもストレートで。ヒンギスを応援した人は数多いだろうが、ヒンギスのストレート勝ちを予想した人はどれほどいただろう。
第一セットは緊迫していた。サービスゲームを互いにキープし合い4-3まで進んでいた。ヒンギスはそれまで何度もブレークポイントを握っていたが、そのたびにシャラポワはサービスの力で切り抜けた。しかし、第8ゲームは切り抜けることが出来なかった。ようやくブレークに成功するとそのままヒンギスはセットポイントを走り抜けて第一セット先取した。
シャラポワのショットの方が威力はある。しかし、角度とコースはヒンギスの方が厳しかった。たとえばディースコートからのサービスにおいて、スライスサーブをワイドに入れて、相手をコートの外に追い出し、反対のオープンコートへフォアの逆クロスを入れるという、シングルスの定番パターンを両者ともに良く使った。TVの画面で比較すると良くわかるのだが、スライスサーブ自体の切れはシャラポワの方が鋭い。しかし、決めのフォアの逆クロスのコースはヒンギスの方が厳しかった。シャラポワの逆クロスの方が、威力がありボールが深いのだが、ベースラインに抜けていく。ヒンギスの逆クロスは回転が多くかかっているムーンボール気味でスピードはシャラポワのショットより遅いのだが、浅くてサイドラインに抜けていく。シャラポワの逆クロスはヒンギスに追いつかれるが、ヒンギスの逆クロスはシャラポワのラケットの先を抜けていく。他のショットに関しても終始そんな感じで、ゲームの主導権を握っているのはヒンギスだった。
第二セット、ファーストゲームをシャラポワが取った後、ヒンギスがゲームを連取していく。ヒンギスはショットの緩急をさらにつけて、ネットにも盛んに出るようになった。ポイントを面白いように取っていく。対するシャラポワは珍しくペースを乱されてあせっていた。明らかに無茶なショットを打ちに行き、オーバーペースのラリー、オーバーパワーのショットが続き、第二セットは半分シャラポワの自滅であった。
ダベンポートやウィリアムズ姉妹、ベルギー勢を相手にあれほどいい試合をし、劣勢でも挽回してくるシャラポワである。そのシャラポワをこうも一方的に降すヒンギスのテニスってなんなのだろう。ならばヒンギスのテニスがダベンポートやウィリアムズやベルギー勢に通用するのかといわれればそうではあるまい。ヒンギスはシャラポワのような粘り屋を粘らせずに粘りを断ち切るのが上手い。それが今日の圧勝の原因ではないだろうか。
いつもは10代の選手とは思えない集中力でプレーするシャラポワだが、今日はさすがに若さが出た。第二セット、自分のテニスが出来なくなると崩れて無茶打ちが目立ち、そこから立ち直って自分を取り戻すことが出来なった。あれほどメンタルの強いシャラポワの集中力を乱れさせるとは、ヒンギスのテニスは侮れない。
第二試合はディメンティエワが64 36 64 という接戦の末ミスキナを下して決勝へ。決勝はヒンギス対ディメンティエワとなった。ちなみに第二試合のことをTBSは微塵も報道しなかった。相変わらずだね。去年準決勝でも第二試合のことはこれっぽちも知らせず、決勝シャラポワ対ダベンポートでもシャラポワがセットを取った第一・第三セットだけ放送してダベンポートがセットを取った第二セットは全てカットした。もう少し配慮があってもいいんじゃないか。
さて、明日もマルチナのあの素晴らしいテニスがコートで披露されるのだろうか。デメは地味だが時にシャラポワより手ごわい存在になる。どんなドラマが繰り広げられるのか。明日も熱戦を期待しよう。


2006年02月06日 天国と地獄:ヒンギスの場合

4年前の2002年、全豪女子シングルス決勝戦、カプリアティ対ヒンギスは文字通りの死闘となった。マッチポイントを4つも握りなら決められず、ヒンギスはカプリアティの粘りと灼熱の太陽の前に崩れていった。この敗北はGSタイトルが取れずに苦しみの中にいたヒンギスのテニス人生にとどめを刺したようなものだった。一週間後、失意と絶望の中、それでもヒンギスはこの東レ・パンパシフィック・オープン決勝でセレス相手に見事なテニスを展開し、優勝を飾った。そしてこの2002年の東レの優勝が、ヒンギスの最後のシングルスタイトルとなった。その年の全米を過ぎたあたりのドイツの大会で敗退した後、彼女は左足首の靭帯を断裂、長期戦線離脱し、そのままコートに4年も戻って来なかった。そのヒンギスの現役最後の対戦相手がエレナ・ディメンティエワだった。
WTAのプリンセスをSFで完璧なまでのテニスで退け、自分が最後のシングルスタイトルを取った大会で、自分が現役最後の対戦相手となったディメンティエワを相手に決勝を戦う。ヒンギスにとって最高の復活劇の舞台が用意されていたのだ。
しかし、この世知辛い世の中、そう何もかも上手くいくわけではなかった。

東レ・パンパシフィック・オープン決勝
ディメンティエワ 62 60 ヒンギス

まあ、ディメンティエワのサーブの良く入ること。しかもいいサーブがファーストで入ってくる。デメのことを良く知らない人は普通じゃんと思うかも知れないが、普段のディメンティエワとは肘が肩から上に上がらない横振りの「ちょん切りスライスサーブ」しか打てない選手なのだ。ダブルフォールとも多い選手としても知られている。それが、打点が前になってフラット気味にサーブが良く入るもともとストロークとリターンでは定評のあるデメである。GS決勝二度進出はフロッグではない。調子に乗せると彼女のストロークは手がつけられない。ブレーク合戦で始まった試合は、途中からラリーで圧倒されたヒンギスが主導権を握れず、いいようにデメに打ち込まれて第一セットを失う。
第二セット、サーブ&ボレーを果敢に試みるヒンギス。ストローク戦で勝てないと判断してネットラッシュしたのは良いが、今日のデメには無力。パスにロブにとヒンギスの方がデメに振られ抜かれ、途中からは完全に平常心を失い、無茶打ちさせられ、自滅して行った。
昨日、完璧なテニスで第二セットのシャラポワを自滅させたヒンギスは、皮肉なことに完璧なデメのテニスの前に今日の第二セットで自滅させられた。シャラポワの若さを露呈させた直後に今度は自分の甘さを露呈させられ事になるとは思いもしなかったろう。出来れば準決勝のヒンギスのテニスと決勝のディメンティエワのテニスをぶつけてみたかった。しかし、本人はそれほど悪くなかったという今日のヒンギスのテニスで昨日のシャラポワを突破することが出来たともいえまい。一大会、安定してコンスタントにいい調子を発揮し、維持し続けることがいかに難しいかを示した試合だった。
ディメンティエワはWTAツアーで通産14度決勝に進み4度しか優勝していない。内ニ度はGSの決勝である。ディメンティエワもまたここまで苦しいキャリアを強いられている。しかも、TV中継していたTBSの放送のコメントが正しければディメンティエワはGSだけでなくティアTクラスの優勝も初らしい。ほんまかいな。去年、クライシュテルスとモーレスモが長いトンネルを抜けたようにディメンティエワもまたこれがブレークスルーになればよいが。
さて、ツアーがいよいよ本格的に展開しだす。シャラポワもヒンギスもディメンティエワも今後、どのような活躍を見せるか。注目していこう。






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